太平洋工業
【東証プライム:7250】「輸送用機器」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、提出日現在における当社グループの判断で記載したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営の基本方針
当社グループの主力事業分野である自動車産業は、モビリティ社会に向けた大変革期にあります。
そうしたなか、多様な従業員が力を発揮し、新しい価値を創造することが当社の社会的存在意義であると考え、2023年4月に「思いをこめて、あしたをつくる」をパーパスと位置付けました。
これに併せて、中長期経営構想としての「Beyond the OCEAN」、そのマイルストーンとしての中期経営計画「NEXUS-26」を発表し、その方針に基づいて取り組みを進めています。詳細は、当社WEBサイトに記載しています。(https://www.pacific-ind.co.jp/company/our_way/management_plan/)
当社グループは、これからも社会から必要とされる存在であり続けるため、ステークホルダーの皆様との信頼を醸成し、太平洋工業グループの世界中の仲間たちと新たな価値づくりを進め、持続可能な社会の実現に貢献する企業をめざします。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中長期経営構想「Beyond the OCEAN」
長期的なトレンドと、モビリティ価値の変容のなかで、当社が生き残っていくためには、「技術×現場力」と「信頼とNo.1シェア」といった当社の強みを徹底的に活かすことが重要となります。そのための鍵は、一人ひとりの従業員が力を発揮して新しい価値づくりにチャレンジしていくための「パーパスを実現する人財戦略」です。そこに、「売上と利益の共成長」「多様な技術による価値創出」「サステナビリティと経営の統合」を加えたの4つの注力テーマを長期的な基本戦略とし、取り組みを進めています。
中長期的な成長の前提として、サステナビリティに関する課題を経営に統合することが重要です。これは、当社と社会・環境のつながりを経営基盤としてとらえ、事業成長との相乗効果を創出するということです。その要となるのが、従業員です。従業員が力を発揮して、技術やデジタルといったツールを駆使することで、「売上と利益の共成長」を実現し、財務価値とともに非財務的な価値を創造していきます。
事業戦略としては、多様な技術を活かし、主力のプレス製品の収益力をさらに高めていきます。また、バルブ製品と樹脂製品で新市場を積極的に開拓し、資本効率を高めつつ成長をめざしていきます。さらにモビリティ以外の分野にも果敢に挑戦し、次世代の柱を創造する芽を育てていきます。
これらは当社のサステナビリティ経営におけるマテリアリティとも合致しています。(マテリアリティについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)戦略」に記載しています。)
経営目標としては、財務的な価値のみでなく、非財務的な価値も踏まえた目標を策定しています。財務価値目標は、資本効率を高め、持続可能な成長を実現するべく、売上高を2026年度2,100億円とし、その後も持続的な成長をめざしていきます。また、2026年度の営業利益率を7%以上、ROEを8%以上としましたが、2030年度には、それぞれ10%以上に高めることを目標としています。
非財務価値目標として、事業を通して社会課題を解決するというマテリアリティも踏まえ、主力事業のモビリティ分野では、2026年度の電動車向け売上比率を50%、2030年度には70%に高めていきます。新事業では、2026年度までの新規商品・サービス上市件数を15件、2030年度には35件をめざしていきます。
また、サステナビリティ価値の目標として、従業員が力を発揮し、持続可能な成長を実現するため、従業員エンゲージメントを指標としています。2023年度に第1回の調査を実施し、肯定的回答率を48.2%から2026年度に60%向上、2030年度に70%に向上することを人的資本の目標としました(対象は単体)。自然資本では、既に長期目標として、CO2排出量の削減を2030年度に2019年度比50%にすることを掲げていますが、そのマイルストーンとして、2026年度には30%削減をめざしていきます。
中期経営計画「NEXUS-26」
「NEXUS-26」では、パーパスとして多様な人財が活躍できる企業となる人財戦略を基盤としています。その人財が、当社の強みである多様な技術のポテンシャルを引き出し、既存の顧客基盤の深耕に加え、新市場を開拓していくこと、さらにサステナビリティも踏まえた価値を一体的に創造していくことで、売上と利益の共成長を図っていくというのが、基本的な考え方となります。
プレス事業については、超ハイテン技術を活かした電動車向け新製品や既存ボディシェル部品の拡販による受注の拡大をめざしています。開発・拡販は順調に進んでおり、2023年に稼働を開始した東大垣新工場は順次稼働率を上げているほか、米PACIFIC MANUFACTURING OHIO, INC.でも第5工場の建設を進めるなど、堅調な需要に裏打ちされた設備投資を継続しています。
樹脂事業についても、BEV(電気自動車)向けの製品開発・拡販は順調に進んでおり、物量増加に向けた生産体制の構築に取り組んでいます。今後のBEV動向も見極めながら、需要に合った生産能力の増強を進めていきます。
バルブ事業では、熱マネジメントシステム用電子膨張弁をはじめとした、電動車向けバルブの開発・拡販を進めています。今後の市場拡大を見据え、事業拡大と競争力強化のため、電動車向けバルブを生産する工場を建設し、今年3月に竣工しました。
新事業では、モビリティ以外の分野で長期的な当社の事業の柱を作っていくために、社会課題解決に貢献する商品を軸に開発を進めており、昨年度には6件の新商品・サービスをリリースしました。これまでにリリースしてきた、牛体調モニタリングシステムや、物流管理システム、ウレタン端材活用の防災マットなど、ポテンシャルのある商品を、いかに認知度を高め、拡販していくかが課題だと考えており、それぞれの製品特性に合わせた効果的な拡販活動を進めていきます。
サステナビリティに関する取り組みは、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照下さい。
財務戦略
財務戦略としては、当社は財務価値指標としてROE目標を設定し、資本効率の向上をめざしています。収益体質基盤の強化、投資効率の向上、バランスシートマネジメントを進めることで、資本効率を向上しつつ、持続的な成長を進め、継続的に株主に還元していきます。基本的な考え方は、以下のとおりです。
*財務方針
・ 創出した営業キャッシュ・フローを源泉に戦略投資・株主還元を実行し、一時的な不足分は借入で充当
・ 資本効率を意識した投資がもたらす利益成長とバランスシートマネジメントの推進で、ROE「2026年度8%以上」、
「2030年度は10%以上」をめざす
*資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
ROEを重要な経営指標と位置づけ、中長期的な企業価値向上をめざした取り組みを推進します。PBR1倍以上の達成に向けては、ROEの向上による資本収益性の改善にとどまらず、市場からの将来への成長期待を表すPERの改善にも取り組みます。IR・対話・開示の充実に加え、サステナビリティ経営の推進により事業リスクを管理・低減することで、資本コストを低減します。
*収益体質の強化および資産効率の向上
ROE目標達成に向けては、事業戦略と財務戦略の両輪で進めていきますが、事業面における収益体質の強化や資産効率の向上に向けた取り組みは重要と考えています。事業別に販売・コストなどのKPIを設定し、デジタルツールの活用により生産・管理業務の効率化を進め、コスト低減を図るなど、収益体質の強化を図っています。
資産効率とキャッシュ獲得能力向上のため、事業別のROA・キャッシュフロー・設備投資収益率の向上、遊休設備の処分、棚卸資産・低収益資産の圧縮を推進し、その結果としてグループのROE向上につなげていきます。
*キャッシュアロケーションとめざすバランスシート構成
持続的な成長のための投資や配当の原資は、持続的に創出する営業キャッシュ・フローを基本とし、必要に応じて外部資本も活用し資本効率の向上を図ります。成長機会を逃さず、必要時に機動的な資金調達を可能とするため、外部機関(日本格付研究所:JCR)の格付評価も重視しています。株主還元を強化することで、過剰に自己資本を増やさないようコントロールしつつ、現在の格付評価A-を維持するため、自己資本比率60%を目安としてバランスシートをマネジメントし、資本効率向上と財務健全性維持の両立を図ります。
*投資の考え方
当社グループでは、電動化の進展に向けた市場ニーズの増加に応え、プレス・樹脂・バルブの各事業において電動車向け製品の生産能力を拡大するため、積極的な成長投資を推進しています。新規投資の意思決定時には資本コストを意識し、能力増強設備投資の実施時には投資利回り・投資回収期間、WACCを指標として投資効率の検証を行うことで、資本効率の向上をめざしています。
また、従業員エンゲージメント向上のための人的資本投資も推進しています。2023年11月に稼働開始した東大垣工場のプレス新工場は、デザインやレイアウトの工夫、空調設備の導入など、働きやすい環境を整備しています。2025年7月に完成する技術開発センターでの開発環境整備も含め、従業員のパフォーマンス向上により、収益性向上と中長期的な成長をめざしています。
(3) 経営環境、中長期的な経営戦略及び対処すべき課題
当社では、中期経営計画「NEXUS-26」で、以下の4つのテーマを主要課題としてとらえ、取り組みを進めています。
① パーパスを実現する人財戦略
人財戦略は、パーパスである「思いをこめて、あしたをつくる」に込められた、全ての働く人が、「思い」をもち、活躍できる企業となることをゴールとしています。そのためには、従業員エンゲージメントを把握し、高めていくことで、挑戦できる風土を醸成していくことが必要となります。挑戦できる風土を醸成していくことが、人権の尊重、安全と健康、労働環境改善といった基盤整備と、人財育成・ダイバーシティ&インクルージョンといった事業成長に結びつく施策の強化を促し、それらがさらに従業員エンゲージメントを高めるという好循環を生み出すものと考えています。
具体的な人財戦略の考え方は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)戦略 人財戦略の考え方(環境整備方針)」を参照ください。
② 売上と利益の共成長
前中期経営計画「OCEAN-22」の財務目標のうち、営業利益とROAが未達であったこと、資本市場から資本効率に対する要求が強まっていることなどから、当社では資本効率を意識しながら、営業キャッシュ・フロー内で成長投資を果敢に実施し、「売上と利益の共成長」を実現していきたいと考えています。各事業の成長戦略の基本的な考え方は以下のとおりです。
・プレス製品は、生産変動に耐えうる改善に支えられた現場力をベースに、軽量化や生産時のCO2削減など脱炭素への寄与を踏まえ、ボディ骨格の構造提案により大物部品の一括受注を増やし、付加価値を高めることで売上も利益も高めていきます。
・樹脂製品は、強みである防音・加飾技術を応用し、新規顧客への拡販を強化するとともに、サーキュラーエコノミーを踏まえた材料・製品開発で、持続可能な成長をめざしていきます。
・バルブ・TPMS製品は、無線通信技術や高品質といった強みを活かし、電動化時代に選ばれる高い付加価値を生み出す、スピード感ある開発型事業展開の実現をめざしていきます。
・新製品は、これまで開発した製品をバージョンアップして深化を追求しつつ、新分野への探索を強化し、社会課題を解決するデータビジネスを柱へ育てていきたいと思っています。
③ 多様な技術による価値創出
当社全体の技術開発戦略としては、既存事業の多様なコア技術を深化させ新価値を創造するとともに、開発環境を整備し新規事業の創出を加速することにより、既存事業と新規事業の開発連携を図っていきます。今年7月には東大垣工場に技術開発センターが完成予定で、「共創空間」をテーマに、開発・生産技術の一体的な研究開発と、新規事業創出の実現を図っていきます。
また、知財戦略として、新価値創造に資する効果的な知財を生み出すべく、知財分析・人財育成・体制整備を進め、グループ全体の知財マネジメント力強化を図っていきます。
これらの取り組みが一体となり、高付加価値で社会に資する事業成長を推し進めていきます。
④ サステナビリティと経営の統合
当社は、サステナビリティに関する15の重要課題(マテリアリティ)を特定し、KPIを定め取り組んでいます。また、「PACIFIC環境チャレンジ2050」を公表し、2050年のカーボンニュートラルを含む長期目標を掲げ、取り組みを加速しています。こうした取り組みを経営課題と位置付けるため、「Beyond the OCEAN」「NEXUS-26」について、あるべき姿からのバックキャスティングの視点を踏まえ、時間軸を長期におきつつ策定を進めました。その過程で、あるべき姿として、「思いをこめて、あしたをつくる」をパーパスと位置付けるとともに、マテリアリティとの整合性を確認しています。「NEXUS-26」は、「人財の活躍・人権の尊重」、「自然共生社会の実現」、「ステークホルダーとの信頼醸成」といったマテリアリティ(2025年改定)を基盤としており、事業においても、プレス製品やバルブ製品を通じた脱炭素への貢献、樹脂製品におけるサーキュラーエコノミーへの取り組み、社会課題解決を意識した新事業開発と、それぞれサステナビリティの視座が含まれています。さらに、経営目標の非財務価値目標では、マテリアリティに関連した事業価値目標として、電動車向け売上比率、新規商品・サービス上市件数、サステナビリティ価値目標として、従業員エンゲージメント、CO2排出量を掲げ、サステナビリティと経営の統合を図っています。
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