IDEC
【東証プライム:6652】「電気機器」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、真のグローバル企業となり、100周年に向けて持続した成長を続けることができるよう、『The IDEC Way』を制定しております。『The IDEC Way』は、Vision、Mission、Core Valuesの3つの要素で構成しており、その最も重要な基盤として、創業の理念「人間性尊重経営」を位置付け、継承しております。
世界経済の動向は依然不透明な状況にありますが、どのような市場環境であっても、当社グループがグローバル で持続的に成長し、社会課題の解決に貢献していくため、2050年のありたい姿を想定し、そこからバックキャストして2030年のビジョンを策定しております。
人と機械の最適環境を創造し、世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現すること。これは創業以来 変わることのない、私たちの想いであります。当社は、誰もが健康で、幸せに、生き生きと暮らすことのできる社会を実現するための取り組みを推進しております。
(2)目標とする経営指標
当社グループでは、リーマンショックや新型コロナウイルスの感染拡大など、市場環境の変化に合わせて構造改革を推進してまいりました。しかし、これからグローバルで更に事業を拡大し、収益性を向上していくためには、過去の延長線上の取り組みでは限界があります。そのため、新中期経営計画では抜本的な構造改革を全当社グループにおいて推進することで、高収益体質のグローバル企業へと変革し、3年後の2028年3月期に売上高770億円以上、営業利益13%以上の達成を目標としており、実現に向けて以下の施策を軸に、さまざまな構造改革を推進してまいります。また、収益性だけでなく資本効率の向上に向けて、株主資本コストを8%とし、それを踏まえて資本コスト(WACC)を6%に設定しております。これを上回るリターンを創出し、企業価値を向上していくために、ROE(自己資本利益率)とROIC(投下資本利益率)を指標としており、2025年3月期はROE2.8%、ROIC2.1%となりました。今後はROE10%以上、ROIC7%以上を目指しております。ROE、ROICを更に向上していくために、事業・拠点の再編や、今後の改革に繋がる積極的な投資拡大、キャッシュマネジメントなどを行ってまいりました。今後、継続的に資本コスト6%を上回るよう、運転資本、生産設備など資本効率の向上を進めていくとともに、更なる収益性の向上を実現するためにグローバルでの拠点再編や事業改革、DXなどを加速することで、抜本的なコスト低減を推進してまいります。資本コストや株価を意識した経営を実践することで、健全な財務基盤を維持しながら、持続的な企業価値向上を目指します。
(ROICツリー)
(売上高と営業利益率の推移)
事業で稼いだキャッシュについては、DX投資や、顧客ニーズを満たすためのカスタム・ソリューション開発投資、M&Aや新拠点設立などの、インオーガニックな成長のための投資を行うことで、資本効率を向上させつつ、成長を加速させてまいります。また、従来どおり安定的な配当などの株主還元は維持し、株価水準を踏まえて自己株式の取得も機動的に行っております。
中長期的な企業の成長のために必要な各種投資は積極的に行いつつ、収益性の向上と安定的な配当の実施を継続し、株主資本コストを上回ることができるような経営・財務戦略を推進してまいります。
(キャッシュアロケーション)
(3)投資単位の引下げに関する考え方及び方針等
当社は、株式の流動性を高め、個人株主の増加を図ることを資本政策上の重要課題と認識しております。そのため、利益還元の充実に加え、個人株主の皆さまに向けた説明会の開催、分かりやすい株主通信の作成やホームページの拡充などの対応を進めております。
(4)中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、2026年3月期から始まる3か年の新中期経営計画を発表いたしました。新中期経営計画では、顧客中心のビジネス構造へと変換し、市場変化への対応力を向上させることで、真のグローバル企業「新生IDEC」へと生まれ変わっていくための取り組みを推進してまいります。
(3年間で進めていく構造改革の施策)
・各地域の顧客ニーズに対応するため、グローバル・マトリックス・マネジメント組織へと刷新
これまで、市場環境の変化により業績が悪化した際には、さまざまな構造改革を行うことで回復させてきました。しかし今後は、市場環境がたとえ変化したとしても、高い収益性を確保できる体制にしていくために、当社グループ全体で基盤整備を行っております。
2025年4月から、当社グループの組織を地域軸と事業・機能軸からなる、グローバル・マトリックス・マネジメント組織体制へと抜本的に見直しました。これまでは、グループ会社ごとに機能別組織があり、日本を中心とした機能を軸としたプロダクトアウトの組織モデルとなっておりました。今後は各地域と、事業・機能ごとに責任者を任命し、事業計画に対する責任を明確化するとともに、グローバルな事業戦略と地域戦略を整合させることで、顧客を軸としたマーケットインの組織モデルへと変わります。
なお、当社とAPEMブランドは異なる市場をターゲットにしているため、ビジネスユニット(BU)を分けた体制としております。本社機能についてもグローバル化を進め、グローバルのリーダーシップは、どこの国からでも行える体制となりました。
各地域に対して、事業とグローバル機能の2軸となる事業運営体制へと変えることで、戦略の立案から実行、ステアリングまで、より迅速な判断を実現する体制にしてまいります。この新しい組織体制により、地域市場の動向に更に効果的に適応できるだけでなく、事業部とグローバル機能が緊密に連携し、イノベーションとオペレーショナル・エクセレンス※を推進できるようになります。
また、地域と事業機能における責任を明確にすることで、意思決定の迅速化を図り、グローバル戦略の実行において、よりシナジーのあるアプローチを創出いたします。
運営方法は、毎月各エリアのBU・機能責任者が集まるBUレビューを行い、その後、各エリアのグループ会社を運営する責任者によって構成する、リージョナルエグゼクティブ会議を行います。それらの結果を踏まえて総合レビューを行うのは、各地域、事業・機能の責任者で構成された、Global Operations Committee(GOC)であります。GOC会議においてグローバルメンバーがレビューし、年度計画や中期計画達成のための軌道修正などのディスカッションを行います。
このような組織の進化により、当社グループの競争力、効率性、グローバルリーダーシップを強化し、より統合された、対応力のあるビジネスフレームワークをつくり、「新生IDEC」実現に向けた取り組みを加速させてまいります。
※オペレーショナル・エクセレンスとは、業務の効率や生産性を高めることで競争優位性を確立し、磨き上げることであります。
・拠点・事業のグローバル最適化の推進
前中計期間から、継続的に事業や拠点の最適化は推進してきましたが、新中期経営計画でもグローバル最適化のための再編を推進してまいります。
グローバル・マトリックス・マネジメント体制への移行に伴い、マーケティングや開発をはじめとする各機能も、地域横断的な体制へと移行し、地産地消を推進してまいります。
さまざまな地域やバックグラウンドを持ったチームによって、グローバルの顧客ニーズをタイムリーにとらえるマーケティング体制を構築いたします。開発体制については、日本、米州、欧州の3極体制とし、差別化要素を明確化して、技術リソースを的確に配分し、開発プロセスもグループで共通化することで、変化への対応力を強化いたします。
拠点再編については、米国にあったIDECとAPEMの拠点を2025年4月に統合し、新本社をカリフォルニア州サンディエゴに建設しております。これまでは当社ブランド製品の現地開発、生産はしていませんでしたが、これからは現地ニーズを踏まえた企画・開発、生産を推進するための組織体制としております。また、メキシコにも組立を行う工場を新設し、北米事業の更なる強化を推進してまいります。
EMEAや日本、アジア地域においても、複数ある生産拠点の統合・集約・新設や、生産移管してまいります。グローバルで拠点再編や、更なる外注の活用を推進することで、生産効率や収益性の向上、リードタイム短縮を実現いたします。
事業の観点では、選択と集中を前提とした事業ポートフォリオ見直しの一環として、「その他」の売上高に含まれていたノンコア事業の再編を2025年3月期に行いました。微細気泡生成システムなどのファインバブル事業は収益化が困難であり、主要事業とのシナジーも期待できないことから、IFBテクノロジーズ株式会社へ事業を承継いたしました。また、太陽光発電関連の事業を行っていた、グループ会社のIDECシステムズ&コントロールズ株式会社の全株式を譲渡しております。
新中期経営計画では、主力の制御機器事業への選択と集中を推進し、「HMI・安全・安心」という当社グループの強みを活かせる事業を軸に、顧客の潜在ニーズに応える製品・サービスを展開することで、持続的な事業成長を実現いたします。
最も強い競争力を持つHMI事業については、当社とAPEMの販売、設計、販売機能を融合することで、売上と収益を向上してまいります。
HMIの次に収益性の高い安全関連については、市場成長性が高いカテゴリーであることから、よりグローバルでの拡大を推進していくため、パートナーシップを含めて安全製品やモビリティサービスなどを中心とした、ソリューション事業を強化してまいります。
その他の事業についても、より収益性を向上させるための取り組みを推進するとともに、グローバルでの不採算製品の統廃合や価格の見直しなども並行して行うことで、事業ポートフォリオの最適化を図ってまいります。
・幅広いコンポーネンツを活かした顧客課題を解決するソリューションの展開
顧客中心のビジネス構造へと転換するための取り組みの一環として、前中計でも行っておりましたソリューション事業の拡大を加速してまいります。
当社ブランドの製品は、多様な業界でご利用いただけるよう幅広くラインアップした汎用製品を、代理店経由で販売するビジネス構造が主流となっていることから、コンポーネンツ販売は従来どおりの販路で今後も継続してまいります。
ソリューション事業については、当社グループのコンポーネンツを活かし、顧客課題を解決するためのカスタム・ソリューション提案を行うことで、高付加価値ビジネスとして強化してまいります。
例えば、2023年に買収したez-Wheelの製品を活用した、AMR・AGV開発キットやアシストシステムなどが一つの例として挙げられますが、当社グループのHMI・安全機器や、ソフトウェアと組み合わせることで、強みを活かした提案をしてまいります。これらのソリューションは、特定のアプリケーションに特化したパッケージとして横展開ができるものから、顧客ごとにフルカスタムしたものまで、多様な展開が可能となります。
安全規制が厳格化するグローバル市場(特に欧州・中国)に対応するため、当社グループによる安全コンサルティングサービスを通じて、お客さまの困りごとの「その先」へ支援を拡げる、サービスによるソリューションについても強化してまいります。
HMI-Xの実現に向けて、顧客視点から生み出されたソリューションを幅広く展開していくことで、売上高に占めるソリューション販売の比率を3年後の2028年3月期に15%以上とすることを目指しております。
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