企業兼大株主IDEC東証プライム:6652】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。


(1)サステナビリティ

①ガバナンス

 当社グループの活動方針を策定する機関として、CSR委員会を設置しています。委員長は代表取締役社長とし、CSR委員会の傘下には、ESGに、私たちの強みである「安全:Safety」 「品質:Quality」を加えた「ESG+Sa+Q」の5つの分野の専門委員会を設けています。各専門委員会の委員長は執行役員とし、専門知識や経験を持ったメンバーで構成され、それぞれのテーマに即した施策に取り組んでいます。CSR委員会は年2回開催しており、議論した重要事項については、必要に応じて経営会議や取締役会に報告され、監督される体制となっています。

 また、CSR委員会で議論された内容は、CSRリーダーがCSR職場研修会で社員一人ひとりと共有し、CSR活動の実践並びに、意見が言い合える風通しの良い職場づくりを目指しています。2023年3月期の社員からの意見・提案は約354件あり、各専門委員会に共有され、当社グループのCSR活動の参考としています。

②戦略

 当社グループは『The IDEC Way』に基づき、IDEC Group Code of Conduct(行動基準)・CSR憲章・国連グローバル・ コンパクトの10原則を重要な指針として定め、事業活動を通じた社会課題の解決により、持続可能な開発目標(SDGs)を達成していくための取り組みを行っています。また、2018年に立ち上げたCSR委員会を中心に、持続的な活動を推進しています。

 市場環境が大きく変化している中で、気候変動をはじめとする地球規模の様々な社会課題に対応していくことは、グローバル企業として必要不可欠となっています。多様な社会課題を解決し、日々変化するお客さまのニーズにお応えするとともに、当社グループが持続的な成長を実現するため、2050年のありたい姿を想定し、そこからバックキャストして2030年のビジョンを策定しました。

 また、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けて、サステナビリティ対応にも注力していますが、2050年に当社グループとして「カーボンニュートラル」を実現するための取り組みや、グローバルでの成長拡大に向けた人的資本の強化にも今後さらに力を入れていきます。

 今後も、サステナビリティに関する基本方針のもと、ILO傘下のISSA(International Social Security Association)が推進するVision Zeroキャンペーンへの賛同・登録を通じた、社内外全ての人々の安全・健康・ウェルビーイングの追究や、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同による気候変動などの地球環境問題への配慮、リスクと機会に対する将来対応想定など、持続可能な社会の実現に向けて、事業活動を通じたグローバルな課題解決への取り組みを推進していきます。

(サステナビリティに関する基本方針)

 私たちは、IDECの経営理念である『The IDEC Way』で掲げる「Vision:いつも、ずっと、みんなに新しい安心を」、「Mission:人と機械の最適環境を創造」に基づいて事業活動を行っています。

 また、『The IDEC Way』のOur PrinciplesやIDEC Group Code of Conduct(行動基準)において、実現のために取るべき行動を明記しており、その実践を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。

③リスク管理

 サステナビリティ全般に関するリスクと機会は、マテリアリティ分析において、ステークホルダーの重要度と事業としての重要度の両軸でマッピングしており、「気候変動」と「企業基盤」に関わるリスクについては、当社グループのリスクマップに統合して管理しています。

 リスクの重要項目については、リスクマネジメント委員会において評価、管理しており、年に1回経営戦略企画本部でリスクと機会を見直すこととしています。

④指標及び目標

 マテリアリティ(重点課題)を特定し、2022年から開示していますが、2050年のありたい姿、2030年のビジョンを策定したことに伴い、改めて見直しを行いました。4つ目の項目として「企業基盤」を追加し、気候変動の対応に加えて、人的資本やガバナンスの一層の強化を図っていきます。

 マテリアリティの見直しに伴い、2030年の目指すべき姿を実現するための取り組みテーマを設定し、テーマごとにサステナビリティKPIを掲げています。また、マテリアリティやサステナビリティKPIは、中期経営計画の取り組みテーマにも一部連動しています。

(2)気候変動

気候変動への対応

●当社グループの環境経営

 当社グループは2050年のありたい姿を想定するとともに、2030年のビジョンを制定し、地球温暖化や気候変動対応をはじめとする社会問題にグローバル企業として向き合いながら、持続的な成長を目指しています。

 サステナビリティ対応、とりわけ気候変動への取り組みは、社会的な要請の高まりに応えるだけではなく、地球環境保護の観点からも企業として不可欠な取り組みと言えます。さらに、私たちが持続的な成長を目指す上で、今や環境戦略は事業戦略の重要な一部となっていることから、環境対応を移行機会として積極的に捉え、環境配慮型製品の開発、環境エネルギー事業などの活動を通じて、私たちのパーパスである、世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングの実現に貢献する戦略を推進しています。

 具体的には、「環境負荷低減に向けた取り組み推進」を中期経営計画の基本戦略の取り組みテーマに掲げて、サステナビリティKPIを設定し、その目標達成に向けて私たちの移行機会を反映させたアクションプランを進めています。

 当社グループは、2050年のありたい姿を目指しつつ、カーボンニュートラルの実現に向けて、私たちが今できることから始めています。

●担当執行役員メッセージ

 当社グループが社会的な責任を果たしていくために、サステナビリティ対応、その中でも特に気候変動への取り組みは、グローバルで事業活動を行う企業として不可欠だと考えています。マテリアリティでも、3つ目の項目として「気候変動への対応」を掲げており、2030年の目指す姿を実現するため、サステナビリティKPIを設定し、目標達成に向けたアクションプランを推進しています。

 一方で技術開発・環境担当の上席執行役員としては、開発推進と環境対応の両方の目線で、メーカーとして効果的に両立できる形を日々考えています。環境対応は、リスク面でIDECの事業存続に今後大きく関わる要素であるのみならず、機会面ではメーカーとして大いにビジネスチャンスとなり得る要素であるということを、当社グループ内に浸透させていきます。

●環境に配慮した製品開発と設備投資

 「環境配慮型製品開発手順書」を制定し、設計段階から、省エネルギー・省資源化、脱炭素を目指した製品開発を行っています。使用部品点数の削減・軽量化、再生プラスチックの段階的採用、主要製品のライフサイクルアセスメント(LCA)やカーボンフットプリント(CFP)算出を進めている他、IDEC独自基準に基づいて新製品の環境配慮度合いを点数化し、基準を満たした新製品は環境配慮強化型製品として、ISO/JIS Q 14021(タイプⅡ)に準拠したIDECオリジナルのエコマークを貼付しています。2020年3月期以降に発売した、新製品に占める環境配慮強化型製品の累計比率は、2023年3月期74.1%となりました。

 また、環境に配慮した開発への投資を促進する仕組みとして、2023年3月期より内部炭素価格(ICP)を導入しました。初年度のICPは6,000円に設定し、2024年3月期は8,000円、以降は毎年金額を見直す予定です。

 社内でICPのコンセプトを浸透させるために、環境戦略委員会でモデルケースを選定し、CO2削減量の算出やICP適用後の投資対効果への影響度などを検討しています。

 事例として、省エネルギー対応の新規生産設備導入や、従来品よりも環境負荷を低減する環境配慮強化型製品への開発投資、省エネ空調設備の導入、ガソリン車から電気自動車への置き換えなどをシミュレーションし、ICP利用の活性化を促進しています。

●自家消費型太陽光発電の導入拡大

 国内外のオフィスや工場に自家消費型の太陽光発電設備の導入を加速することで、再生可能エネルギーへの電力の置き換えによる環境負荷低減を図っています。

 IDEC(単体)においては、これまでの発電設備に加え、2023年3月期より新たに1か所が稼働開始し、2024年3月期にはさらに3か所の設備の増設を計画しています。

 国内グループ会社では、IDECファクトリーソリューションズ株式会社の工場、及び本社社屋の2か所に設置した設備が稼働しています。グローバルでは、米国オフィス・工場や英国の工場で、自家消費型が稼働しています。

●環境エネルギー事業

 グループ会社のIDECシステムズ&コントロールズ株式会社では、2012年から太陽光発電所の建設からアフターフォローまでをワンストップで提供する再生可能エネルギー事業を展開しています。

 特にここ数年で導入が進んでいる、工場・倉庫・店舗・施設など建物の屋根を利用した自家消費型太陽光発電設備は、グリーンエネルギー利用によるCO2削減で環境への貢献を実現します。また、災害時の非常用電源として周辺地域に提供することにより、安全・安心という目に見えない地域貢献が実現できることから、事業の推進を通じて、より良い社会の実現を目指しています。

●サーキュラーエコノミーの実現に向けて

 当社グループは、カーボンニュートラル実現のため、限りある資源を有効活用する、サーキュラーエコノミーの取り組みを推進しています。メーカーとして、製品の設計や開発段階だけではなく、製造工程や物流、梱包資材に至るまで、環境負荷の低減と環境問題を重視した経営を進めています。

 一例として、品質関連部門の資料や設計図の電子化など、ペーパレス化による紙消費量の削減を各拠点で実施しています。また2022年2月には、本社食堂に生ごみを水と炭酸ガスに完全分解する生ごみ処理機と、排水に含まれる油分や残飯、野菜くずなどを分離・収集する、グリーストラップを恒常的に浄化できる装置を導入しました。これにより、本社食堂でこれまで排出されていた年間約8tの生ごみをほぼゼロにすることが可能となりました。

 蘇州工場(中国)では、使用していたビニール袋の代わりに、再利用可能なソフトトレイやバケツを活用することで、ビニール袋の使用量削減を推進しています。最終的には、ビニール袋の使用量をゼロにすることで、年間約2.7tの削減を目標としており、今後同様の取り組みを国内外の拠点にも展開する予定です。

 その他にも、製品梱包資材の見直しとして、2021年12月にバイオマスプラスチック25%以上のフィルムを使ったエアキャップを日本の2拠点で採用するなど、当社グループ全社でサーキュラーエコノミーの実現に向けた環境負荷低減の取り組みを進めています。

 今後も環境マネジメント組織のグローバルネットワークを通じて、それぞれの環境対応の取り組みを当社グループ全体へ横展開させていきます。

●生物多様性

 事業継続を支える上で生物多様性を重要な要素と考えており、様々な取り組みを行っています。2023年4月にIDEC本社の緑地は、公益財団法人都市緑化機構が運営するSEGES(社会・環境貢献緑地評価システム)に認定され、企業緑地の優良な保全、創出活動を対象とした「そだてる緑」部門に選ばれました。在来種を中心とした緑地整備などにより、野鳥や昆虫などが生息できる場所を提供し、生物多様性保全・向上に貢献しています。

 また、国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)における、生物多様性フレームワーク採択を要請するBUSINESS FOR NATUREの声明にも賛同、署名しています。

TCFD提言に沿った情報開示

①ガバナンス

 代表取締役社長が委員長を務めるCSR委員会の専門委員会である環境戦略委員会が中心となり、気候関連財務情報の開示に取り組んでいます。

 環境戦略委員会は様々な部門の社員で構成されており、環境担当上席執行役員のもと、毎月開催しています。

 委員会は、環境対応を事業計画に戦略的に組み入れるため、より環境経営にシフトした活動を目指して、2022年12月に環境マネジメント委員会から環境戦略委員会に名称を変更しています。委員会では、環境配慮型製品の環境項目審査、製品のカーボンフットプリント算出試行、内部炭素価格の活用促進、TCFD提言に沿った情報開示の準備、環境イベントの企画運営などを行っています。

 環境戦略委員会での決定事項はCSR委員会を通じて、あるいは直接、経営会議に上程して方針が決定され、その後取締役会に報告される体制にな

 っています。

②戦略

 シナリオ策定

 2020年のコロナ禍以降、とりわけ2022年は欧州をはじめとする世界的に不安定な情勢の影響によるエネルギー供給問題が発生しています。エネルギー需給構造の不安定さが顕在化しただけではなく、燃料価格高騰による物価高やインフレーションの進行が進む中、EUでは石炭や石油などの化石燃料消費量が増加し、世界規模でも経済活動の回復に伴いCO2排出量が増加し続けるなど、パリ協定で定められたCO2排出量削減目標の達成が困難な状況にあることが、国際エネルギー機関が発行する、世界エネルギー展望2022年版(WEO2022)でも報告されています。

 これらの状況を踏まえた上で、パリ協定の長期目標である、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求するシナリオと、現時点での世界的情勢に沿ったシナリオを、移行リスクシナリオと物理的リスクシナリオからそれぞれ2つずつ選定しました。

 具体的には、移行リスクシナリオはWEO2022のSTEPS(2.6℃シナリオ)とNZE(1.5℃シナリオ)を、物理的リスクシナリオはIPCC第5次報告書のRCP2.6(2℃シナリオ)とRCP8.5(4℃シナリオ)を採用しました。

各々のシナリオに基づく世界観を認識した上で、当社グループのリスクと機会の分析を実施しています。

(出典:国際エネルギー機関発行「WEO2022」)

 リスクと機会

 環境戦略委員会では、環境情報開示のグローバルスタンダードの一つであるCDP質問書のリスクと機会項目を参考にしながら、当社グループで想定されるリスクと機会の洗い出しを行いました。具体的には、財務上の潜在的影響額、影響の程度、発生確率、時間的接点などを数値化して、定量的に主要リスクと機会それぞれの優先対応項目を選定しました。

 その上で、外的環境の変化と、そこから発生し得る事業へのインパクトを想定し、環境戦略として行うべき当社グループの対応を検討し、リスクと機会の一覧表とマップに展開しました。

③リスク管理

 環境戦略委員会で検討した、気候変動に関するリスクと機会の抽出結果、及びマッピングにおいて重要と評価したリスク項目は、当社グループのリスクマップに統合して管理しています。さらに、マテリアリティの自然資本に関わるリスクと機会にも反映させています。

 環境推進室では、特に環境に関わるリスク管理項目を年度ごとのリスク管理表に展開し、達成指標を定めて達成状況をリスクモニタリング部会に報告しています。

 

 

 

 

 

 

●移行計画

 当社グループでは、環境戦略を自社の事業戦略の重要な一部と捉え、移行計画を中期経営計画に反映させています。具体的には、カーボンニュートラルを目指して、CO2排出量削減の指標と目標を定め、他の環境対応目標と合わせて中期経営計画のサステナビリティKPIとしています。

 自社のCO2排出量削減の手段として、自家消費型太陽光発電設備の導入を計画的に進める一方、今年度から国内でCO2フリー電力の部分的導入を始めています。CSR調達ガイドラインとグリーン調達ガイドラインを定め、サプライヤーへの環境負荷軽減への協力依頼も毎年継続しています。

 事業に関しては、環境配慮型製品の開発や、環境エネルギー事業などに代表される、環境に関わる事業活動の事業貢献度の向上に計画的に取り組んでいます。そのため、リスクと機会の分析は、環境戦略を事業戦略に取り込む上での重要なプロセスと考えており、自社の移行機会となり得る要素を基に、主要機会一覧の表にあるような、当社グループの今後の対応を検討しています。検討した内容は、今後の中長期の経営計画に段階的に反映させて、より具体的な行動計画へと落とし込んでいきます。また、その指標として環境関連事業活動に対する事業貢献度の数値化の検討を始めています。

 環境関連事業活動の中核の一つとなる、環境配慮型の製品開発に関しては、その必要性と事業貢献に関わる重要性、そして移行機会を活かしたビジネスチャンスの創出を、各部門へこれまで以上に浸透させていきます。

 こうした移行計画に関わる活動は、当然のことながら、当社グループのパーパスである、「世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現することへの貢献」に対し、環境側面における調和のとれた取り組みとなっています。

④指標及び目標

 CO2排出量削減については、2025年3月期までにScope1と2で24%削減、2031年3月期までに50%削減(2020年3月期比)を中期経営計画で目標としており、2024年3月期より達成進捗度を役員報酬に反映させる制度を導入しています。

 2023年3月期のCO2排出量に関しては、排出量係数のより低い電力会社への切り替えと、前年度に導入した自家消費型太陽光発電設備の稼働等により、Scope2のCO2排出量が2022年3月期より減少しています。近年の好調な売上増加により工場の稼働が増えたことで、これまで自社CO2排出量は2020年3月期で増加傾向にありましたが、ようやく2020年3月期に対して若干下回る結果となりました。なお、各工場で稼働率の向上を継続的に推進しているため、売上高原単位は順調に減少しつつあり、また、CO2をどれだけ少なくして効率的に利益を稼いだかを表す指標である炭素利益率(ROC)は、大きく増加しています。

 2024年3月期は、自家消費型太陽光発電設備の計画的追加導入、排出量係数の低い電力への契約切り替えに加えて、本社をはじめとする国内主要工場でCO2フリー電力の30%導入開始による効果が期待でき、中期削減目標達成を目指します。

 Scope3に関しては、2023年3月期より、当社グループ(連結)の上流(カテゴリ1-8)と下流(カテゴリ9-15)両方の算出を開始しました。全般的には、カテゴリ11の販売した製品の使用が、Scope3排出量の大半を占めています。したがって、メーカーとして今後も環境に配慮した製品の開発をさらに推進することで、顧客に提供する製品の使用時の排出量低減に努めていきます。

 上流に関しては、カテゴリ1の購入した物品・サービスが大半を占めています。サプライヤーに提供しているCSR調達ガイドラインとグリーン調達ガイドラインに基づいて、サプライヤーの環境対応向上とCO2排出量削減を継続的に依頼していきます。今後は、より具体的な指標を定めて、特に主要購入先とのサプライヤーエンゲージメントの向上を図る予定です。

(3)人的資本

 人的資本の取り組み

人材戦略

 IDECでは4つのマテリアリティの一つとして、「企業基盤:価値創造を促進する経営構造の整備、組織風土の醸成及び人材の育成」を掲げています。持続的な成長と企業価値向上を実現するためには、企業の活性化や人的資本の強化が必要不可欠となるため、2030年の目指す姿を掲げ、中期経営計画の施策やサステナビリティKPIとも連動させながら、様々な取り組みを推進しています。

 2019年からエンゲージメントサーベイ(従業員意識調査)を実施しており、エンゲージメントスコアをサステナビリティKPIに設定し、現状と課題の把握、重点課題を中心とした対策を行うことで、エンゲージメントの向上に取り組んでいます。また、今後グローバルでの事業拡大をさらに推進していくためにも、ディーセント・ワークや、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みも不可欠です。人材の多様性確保に向けて、グローバル人材の採用や女性管理職比率の向上などにも注力しています。

 なお、中長期の人材戦略として、重要ポジションの充足とリーダー人材の育成を掲げており、グループ全社での持続的成長を実現するために、次世代の経営を担う幹部候補者を計画的に選抜、育成しています。

①ガバナンス

 経営戦略と人事戦略を立案していくため、代表取締役直轄の組織として、2023年3月期に経営戦略企画本部を新たに設置しました。関係各部と調整しながら、長期ビジョンや中期経営計画、サステナビリティKPIなどの策定、経営・人事戦略の立案、経営資源マネジメントなどを牽引しています。重要事項は経営会議に上程しており、方針決定後に取締役会へ報告する体制としています。

 また全社安全衛生委員会の専門部会として、ディーセント・ ワーク推進部会を2022年に設置し、働き甲斐のある職場環境づくりや、社員のウェルビーイング実現に向けた社員満足度向上を目指した取り組みを行っています。

②戦略

●人材育成方針・社内環境整備方針

 当社グループは、「世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現すること」を私たちのパーパスとして定めるとともに、「Pioneer the new norm for a safer and sustainable world.(いつも、ずっと、みんなに新しい安心を)」というVisionを 『The IDEC Way』で掲げ、全ての人々に幸福と安心をもたらし、より安全で持続可能な社会の実現を目指しています。

 当社グループのVisionの実現に向けて、グローバルベースで事業をさらに発展させていくとともに、事業活動を通じて様々な社会課題の解決に貢献するため、多種多様な強みを持ち、能力を発揮できる人材や、情熱を持って自律的に未来を切り開ける、次世代を担う人材の採用・育成を重点テーマに定めています。今後もダイバーシティ&インクルージョンを積極的に推進し、様々な人材育成施策を実施していきます。

 また、当社グループは職場の安全と心身の健康を守るとともに、人権を尊重し、差別のない健全な職場環境の確保に取り組んでいます。

●人材マネジメントシステムの強化

 人材育成方針、エンゲージメントサーベイを踏まえた人事制度の導入、多面評価の実施、人材育成強化のため教育制度の充実を図っています。また、キャリア開発会議で社員一人ひとりの育成を考える仕組みを構築しています。

(新人事制度)

 2019年に実施した、エンゲージメントサーベイで明確になった人事諸制度の課題(評価、給与・ボーナス、昇進昇格など)を踏まえ、2022年に新人事制度を導入しました。

 新人事制度では、多様なキャリア志向に対応するため、コースを複線化し、個々人の要望・強みを活かせる機会を提供するとともに、「目標管理(評価)」と「報酬」の透明性を高め、求められる役割、行動や仕事の成果に応じた公正な評価、処遇を実現しています。

(多面評価制度)

 2023年3月期より、多面評価制度を新たに導入し、日頃の職務行動や職務遂行能力について「気付き」をもたらすことで、自己認識を変化させ、行動変容を促しています。

(キャリア開発会議)

 社員の成長支援と組織への適材適所の実現を図るための新しい取り組みとして、2023年3月期から「キャリア開発会議」を行っています。キャリア開発会議では、本部単位で部門長が集まり、メンバーの能力開発などの課題を共有・明確化し、役割配置の検討や、今後の昇進昇格を含めた、社員の育成プランの検討を行っています。

 また、ストレスチェックの集団分析結果のフィードバック、セルフレポート(自己申告書)の傾向や意見も共有し、職場環境の改善にも役立てています。

(教育制度)

 当社グループは人材への投資によって社員を育成し、様々な社会課題を解決し、カスタマーサクセスを実現するため、多様な研修制度を用意しています。体系的な社内外研修制度やキャリアアップ支援制度の他、グローバルで通用する人材育成を目指し、若手社員を対象とした海外トレーニー制度を導入しています。

 また、グループ全社での持続的成長を実現するため、当社グループの将来を牽引する、次世代経営幹部候補の早期育成を図る、選抜型教育プログラムも導入しています。

●ディーセント・ワークの推進

 IDECでは、DXの推進による業務効率化や、電話等を含むITインフラ基盤の整備、計画的年休・男性の育児休業取得の奨励等、様々な働き方改革を推進してきました。より柔軟な働き方を可能にするため、裁量労働制も導入しており、今後フレックスタイム制の導入、既存の在宅勤務制度や特別休暇制度の見直しについても、現在検討を進めています。

 また2023年3月期より、安心して働き続けられる働き甲斐のある職場環境づくりや、社員のウェルビーイング実現、社員満足度向上を目指して、ディーセント・ワーク推進部会を立ち上げ、以下の目標を掲げて、組織を横断した情報共有や全社施策の検討を行っています。

 ディーセント・ワーク推進部会を始め、関連する部門が連携することで、全ての社員にとって、働き甲斐のある環境づくりを推進していきます。

・労働時間管理の適正化

・柔軟な働き方の実現

・仕事と家庭の両立支援

・女性活躍推進支援

 

 

●IDECのダイバーシティ&インクルージョン

 ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを推進し、様々な経験、専門知識、知見を有する、多様な人材が人間性を尊重し、性別、性的指向、性同一性、国籍、社会身分、門地、宗教等を問わず活躍できる環境の整備や支援体制の充実に取り組んでいます。

 

 

 

(女性管理職の育成と登用)

 多様な人材がチャレンジできる環境・風土づくりの一環として、女性活躍に向けた取り組みを推進しています。2025年3月期末までに、IDEC単体の女性管理職者数を15名とする目標を掲げ、女性活躍推進のキーとなる幹部社員を対象とした意識改革研修、全女性社員を対象としたキャリア研修などの取り組みを進めています。

 

 2023年4月時点で15名となり、1年前倒しで目標を達成しています。

(外国籍人材の採用と登用)

 2023年3月期末のIDEC単体の外国籍社員は63名です。うち執行役員2名、部門長2名が外国籍を有しており、国籍に関わらず採用を行い、様々な部門で活躍しています。

 また、主要会議における議事録の多言語化を推進するなど、環境整備にも力を入れています。

(キャリア人材の採用と登用)

 キャリア採用で、高い専門性を持つ人材を積極的に採用しています。IDEC単体におけるキャリア人材として、2020年3月期から2023年3月期までの3年間で累計57名を採用し、うち管理職採用は16名です。

 また、事業革新を推進できるDXやAI人材、お客さまの課題に対して最適なソリューションを提案する技術営業や新製品開発などを担える、高い専門的知識を持った人材の採用・育成を積極的に推進しています。今後も、事業強化のために必要となる専門性や知識を有するキャリア採用を、積極的に進めていきます。

(障がい者の就労機会の創出と活躍機会への取り組み)

 2022年3月期より企業グループ算定特例を適用しており、2023年3月期末のIDEC国内グループの障がい者雇用数は41名(換算人数50名)、雇用率は3.0%となっています。

 障がいのある社員との定期的な面談を通して、就労状況を確認し、職場環境を整えることで、法的雇用率以上の雇用率を維持しています。

(LGBTQ+への理解・支援)

 誰もが生き生きと働くことのできる職場環境構築に向けて、LGBTQ+に関する社内教育を2022年3月期より実施しています。社内相談窓口担当者への研修を実施し、LGBTQ+に関する理解を深めるため、カミングアウト時の基本的な対応について、具体的にイントラネット上に掲載し、社員が閲覧できるようにしています。

 今後も、社員のアイデンティティが侵害されることのない環境づくりを推進していきます。

●社員の健康維持増進と安全文化の構築

 当社グループでは、社員とその家族が「心身ともに健康である」ことが全ての基盤であるという認識のもと、「IDECグループの健康宣言」を制定し、健康への取り組みを推進しています。ウェルビーイング向上のための第一歩は、社員の安全と健康の確保であり、職場におけるケガや病気などの原因を取り除き、未然に防止する取り組みを推進しています。

 2019年には、社員の健康を推進するため、フィットネスジムやヘルスケアセンターなどを備えた厚生棟を本社構内に新設し、専属産業医と常勤の保健師が健康管理に取り組んでいます。さらに2022年には、企業内診療所を本社厚生棟に開設し、全ての社員のメンタル、フィジカル双方からの健康確保を目指していきます。

(生産現場における安全衛生の積極的な推進)

 世界で一番安全・安心・ウェルビーイングを追究・実現する企業となるため、2018年に労働安全衛生のVision Zeroキャンペーンに日本で初めて賛同・登録し、Vision Zeroを推進する専門部門を日本で初めて設置しました。CSR委員会の安全推進委員会や品質マネジメント委員会において、多様な取り組みを行っています。

 また、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001認証を、2019年に滝野事業所で初めて取得し、2022年には国内の全生産事業所(滝野・福崎・尼崎・竜野・木場)で取得しました。海外においても認証取得を進めており、2023年3月期に蘇州で取得し、今後台湾、タイ工場にも拡大することで、レベルアップを図っていく予定です。

 各職場では、労働環境の改善や労働災害の未然防止につなげる「気付き報告」や、リスクアセスメントを組織横断的に行うなど、安全で快適な職場環境づくりに取り組んでおり、職場の安全・安心を強力に推進す

るために必要な知識、技術を有する社員の教育も積極的に推進しています。これまでの取り組みを評価いただき、2022年には毎年全国で1社しか選ばれない、中央労働災害防止協会の会長賞を受賞しました。2022年に日本で行われたビジョンゼロ・サミットでは、IDECが推進役としてサミットを牽引し、人々が安全かつ健康に働く世界を目指す、地球規模の予防文化活動の啓発などを、世界に発信しました。

 また、IDECの安全文化構築の取り組みは、2023年5月に日経BPより発行された書籍において、ロレアルやナイキ、BMWといった、世界の名だたる企業とともにベストプラクティスとして紹介されており、ウェルビーイングのグローバル推進企業の1社として認知されています。今後は、人間の可能性を最大限に引き出す技術である「ウェルビーイング・テクノロジー」への取り組みを推進していきます。

(全社安全衛生委員会での取り組み)

 各拠点の安全衛生体制の上部組織として、「全社安全衛生委員会」を設置し、当社グループ全体の労働災害の防止、社員の健康の増進、快適な職場環境の形成に向けた活動に取り組んでいます。また労務、安全衛生に関する課題や対応を協議し、組織横断的に情報共有を図りながら活動を展開しています。

 全社安全衛生委員会の傘下には、4つのテーマ(交通安全、健康づくり、設備安全、ディーセント・ワーク)に特化した「専門部会」を設置し、全社的な課題の洗い出し、対応策の協議などを行っています。

●コンプライアンス

 職務を行う上での基本的な行動指針を、「IDEC Group Code of Conduct」としてグローバルに発行しています。グループ理念である『The IDEC Way』のもとに「IDEC Group Code of Conduct」を位置付け、社員がとるべき行動を「Workplace」「Social」「Business」の3軸に集約し、グローバルにも伝わりやすい構成としています。日本語、英語の他、中国語、フランス語、タイ語、ベトナム語、クメール語に翻訳し、社内イントラネットで国内外のグループ会社社員が必要な時に、いつでも自由に閲覧できるようにしています。

 コンプライアンス研修は、Code of Conductの理解を深める研修と、コンプライアンス違反事例などを踏まえた事例研究を階層別研修の中で継続的に実施しています。また、内部監査の一部としてコンプライアンス違反がないかどうかの監査を行い、コンプライアンスの軽視や違反によるリスクを適切に認識しています。

●人権の尊重

 創業当時から「人間性尊重経営」を理念としており、当社グループを取り巻く全ての人々が高い人権意識を持ちながら、持続的な社会の発展に貢献していくために、事業活動における人権に対するコミットメントを基本方針としています。

『The IDEC Way』に基づき、具体的な行動指針となるよう「IDEC Group Code of Conduct」を定めており、その中の人権・職場環境に対する行動として、性別、国籍、社会身分、門地、宗教等によって差別しないことなど、人間性を尊重するための行動指針を定めています。また「国際人権章典」や、国連の「ビジネスと人権に関する国連指導原則」、国際労働機関 (ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」など、人権に関わる国際規範を支持・尊重するとともに、国連グローバル・コンパクトに署名し10原則を支持しています。

 取締役会は、人権課題に関するコミットメントの遵守や取り組みに関する監督責任を持っており、当社グループは人権基本方針のもと、社員を含む全てのステークホルダーの人権尊重に向けた取り組みを推進していきます。

●社員エンゲージメントの向上

 会社と社員の信頼関係や、社員の全般的なモチベーションを向上させることを目的として、2019年に1回目のエンゲージメントサーベイを実施し、調査結果から見えてきた課題に対して、様々な取り組みを推進してきました。

 2022年10月には2回目となる調査を実施し、総合的な指標である「職場の総合的魅力」、「会社の総合的魅力」が、ともにスコアアップするなど改善が見られ、取り組んできた施策に一定の効果がありました。一方で、まだ改善が必要な項目も多いことから、2回目の結果についても全社をあげて、今後対応策を実施していきます。

 また、2024年3月期から社長表彰制度を新たに導入しました。新制度では、テーマ別に設定される表彰部門とは別に、グループ理念を体現した社員や、Core Valuesを基にした、働く上で具体的に意識するべき考え方・行動である、Principlesに沿って行動した模範的な社員を表彰する部門も設定し、グループ理念の浸透を図ります。

 このように、様々な施策を通じて社員のエンゲージメントの向上を目指していきます。

③リスク管理

 人的資本に関するリスクと機会は、マテリアリティ分析において、ステークホルダーの重要度と事業としての重要度の両軸でマッピングしており、「企業基盤」の人的資本に関わるリスクについては、当社グループのリスクマップに統合して管理しています。

 リスクの重要項目については、リスクマネジメント委員会において評価、管理しており、年に1回、経営戦略企画本部で人的資本に関するリスクと機会を見直すこととしています。

④指標及び目標

 当社グループのマテリアリティとして、価値創造を促進する経営構造の整備、組織風土の醸成及び人材の育成を掲げており、2030年の目指す姿を定義しています。

 その達成に向けて、「働きやすい職場環境づくり」と「人的資本への投資拡大」という取り組みテーマで、それぞれサステナビリティKPIを設定し、目標の達成に向けた取り組みを推進しています。

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