企業兼大株主武田薬品工業東証プライム:4502】「医薬品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 タケダの企業理念と「私たちの約束」

 当社の企業理念は、当社が誰であるか、何を行うか、どのように行うか、なぜそれが重要なのかというタケダのストーリーを伝えています。私たちの存在意義は、世界中の人々の健康と輝かしい未来に貢献することにあります。このため私たちは、「Patient」(すべての患者さんのために)、「People」(ともに働く仲間のために)、「Planet」(いのちを育む地球のために)の約束のもとに、データとテクノロジーの力を活用しながら、革新的な医薬品を創出し続けるという「私たちが目指す未来」(ビジョン)を追求しています。当社は、「私たちの価値観」(バリュー)に従い、あらゆるステークホルダーのことを考慮した上で意思決定を行っており、患者さん、株主、社会に対する長期的な価値を創造し、従業員、関わる地域コミュニティ、私たちが暮らす地球に対して良い影響を提供し続けることができるよう努めています。


 事業環境

 現在の地政学的な環境は、世界的な緊張の高まりと分極化が進む状態にあります。このような状況を背景に、保護主義や貿易紛争が拡大し、世界貿易に圧力をかけるとともに、供給網に影響を及ぼし、世界経済の先行きに不確実性をもたらしています。当社のバリューチェーンは米国、欧州、日本およびシンガポールを中心に構築されており、特に米中間の貿易摩擦の影響を抑える役割を果たしています。また、当社は、患者さんに悪影響を与える懸念がある貿易障壁について、ヘルスケア製品を対象から除外するよう提言しています。

 現在、バイオ医薬品業界が直面している最大の課題は、増大する需要に対して医療財源が不足していることにあります。この課題は、欧州や日本において価格圧力を増大させるだけでなく、市場成長を抑制する要因ともなっています。

 米国のインフレ抑制法の導入は、医療費の個人負担の予測可能性の向上など、メディケア受給者に利点をもたらした一方、政府によるかつてない薬価交渉制度の設立は、製薬企業による米国内における研究開発投資を減速させる可能性があります。

 当社では、がん免疫療法や細胞療法、遺伝子治療などの医療技術の探求に加え、近年急速に普及しているテクノロジーや人工知能(AI)の活用を通じて、イノベーションのスピードをさらに加速させています。また、これらのテクノロジーとAIは、将来的に当社の生産性を向上させるだけでなく、今後も続くと想定される価格圧力に対処する手段としても大きな役割を果たすと考えています。

 このように困難で急速に変化する外部環境の中において、当社の患者さんへのコミットメントと、患者さんをサポートするための取り組みは、これまで以上に重要になっています。

Patient(すべての患者さんのために)

 当社の研究開発は、3つの重点疾患領域(消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス、およびオンコロジー)における希少疾患とより有病率が高い疾患において、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変え得るような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しています。研究開発プログラムの優先順位付けは、アンメット・メディカル・ニーズ、科学的なバリデーション、開発プロセスの迅速化、および市場機会に基づいて行っています。また、パイプラインの開発加速から、製造工程における品質と効率性の向上、医療従事者や患者さんの対応に至るまで、データ、デジタルおよびテクノロジー(「DD&T」)とAIをバリューチェーンにわたって活用しています。

 当社の2030年以降の持続的な成長は、後期開発段階のパイプラインに支えられる見込みです。2026年3月期(2025年度)の開始時点で、6つの臨床第3相開発プログラムを有しています。そのうちの最初のプログラムであるrusfertideは、2025年3月に良好な臨床第3相試験のデータを得ました。また、oveporextonのナルコレプシータイプ1、zasocitinibの乾癬に対する臨床第3相試験のデータ読み出しも、2025年末までに予定しています。これら3つのプログラムの承認申請は、2025年度から2026年度に実施できる見込みです。また、2027年度から2029年度にかけて、後期開発プログラムに係る追加の5つの承認申請も見込まれています。主要な研究開発活動の内容および進捗の詳細については、「6 研究開発活動」をご参照ください。

DD&Tは、医薬品開発のプロセスにおいて、ますます重要な役割を担っています。例えば、現在では、匿名化された大規模な患者データベースに照合することで、臨床試験プロトコルを検証し、より効果的な被験者募集方法を評価することが可能となりました。

 タケダの成長製品・新製品は、患者さんやコミュニティに価値を提供し続けています。当社の売上高トップの製品であるENTYVIO(国内製品名:エンタイビオ)の成長は、米国における皮下注射製剤の上市が寄与しています。ENTYVIO Penは中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎およびクローン病を対象としており、世界50カ国以上において患者さんに治療の柔軟性や選択肢を提供しています。

 当社は患者さんを最優先に考え、医薬品の研究開発から製造、販売に至るまで、医療アクセスと公平性の観点を事業に取り入れており、価値に基づいた段階的な価格設定や患者さんのための支援プログラムを提供しています。また、世界中の地域コミュニティや政府と協力し、地域の医療システムの強化にも取り組んでいます。

 また、デング熱ワクチンQDENGAのグローバル展開にも注力しています。QDENGAは、本ワクチンの需要が最も高い多くの流行国を含め、今や世界約30カ国で接種できるようになりました。特に低所得国や中所得国でのアクセス向上を重視しており、これらの地域での普及促進に力を入れています。当社は現在、生産拡大とともに、デング熱感染率の上昇に対抗するためQDENGAを必要とする世界中のコミュニティと連携することに取り組んでいます。

 当社は、2030年までに年間1億回接種分のQDENGAの供給目標を達成するため、インドのBiological E社と提携契約を締結しました。ドイツのジンゲンにある当社工場のワクチン製造能力を補完する本契約により、同社は、年間最大5,000万回接種分を製造する予定です。

People(ともに働く仲間のために)

 当社は、科学技術がどれほど進歩しても、知識を核とした「人」の力が会社を支えることを認識しています。当社は、あらゆる種類の差別を排除し、多様性と包括性を推進する職場環境を整備しています。また、従業員の生涯学習とキャリア成長を支援し、心身の健康維持(ウェルビーイング)を推進しています。このようなアプローチが、人々の暮らしを豊かにする治療法を創出する能力の向上につながると考えています。

 生涯学習とキャリア成長は従業員のやる気や専門性を高め、新しい発想につながり、結果的に患者さんへの価値創造につながります。当社は、従業員のスキルアップやケイパビリティを開発し、持続的な成長に向けて、機動的で柔軟な組織を構築しています。

 また、AIは、人材開発へのアプローチをも変革しています。Career Navigatorのプラットフォームは、従業員が個々のキャリアパスを描くことを可能とし、AIを活用して社内の募集職種やメンターシップ、学習機会に関する情報を個別化することで、従業員が可能性を最大限に発揮できるよう支援しています。さらに、AIによるコーチングやロールプレイを通じて、従業員がリスクのない環境下で新しいスキルを実践できるよう支援しています。

 当社は、事業の将来性をより確かなものとするため、従業員のデジタル活用能力をさらに向上させる必要があると考えています。2024年7月には、新たなデジタルデクステリティ(デジタル技術を迅速に習得し、効果的に活用する能力)の最初の重要なステップとして、当社の学習プラットフォームにおいてEveryday AI Learningを立ち上げました。Everyday AI Learningは、AIおよび生成AIに必要なスキルを育成するためのプラットフォームです。

 また、当社では、生涯学習への取り組みを全社的に推進しています。例えば、製造部門および品質部門においては、従業員は毎月3時間をスキルの向上やスキルの再習得のために利用することができます。この時間は、必須のトレーニングや業務に関連したトレーニングの時間とは別に提供されています。

 当社は、グローバルなバイオ医薬品企業として、世界中の従業員と患者さんの多様性を認識し受け入れるとともに、この強みを活かしてイノベーションを推進し続けています。

 当社は、従業員が目標に向かって前進、成長し、可能性を最大限に発揮できるようウェルビーイングの向上に取り組んでいます。当社のグローバルなウェルビーイングプログラムは、精神的、身体的、社会的、経済的な側面を取り入れています。当社の全従業員はThrive Globalプログラムにアクセスし、睡眠、栄養、運動といったウェルビーイングの要素を管理することができます。また、この1年間において、ウェルビーイングの取り組みを強化するためにさらなる施策を講じました。この一環として、従業員支援プログラムをより多くの国に拡大させ、全ての従業員が同じ福利厚生や支援を利用できるようになりました。

 当社は、職場における安全確保に取り組んでおり、製造拠点においては重大な傷害や死亡事故防止に焦点を当てた安全文化を醸成しています。リスク評価プロセスでは、事案につながる可能性のあった活動や体系的な安全プログラムの課題を特定しています。また、四半期毎に製造ネットワーク全体で「Lessons Learned(教訓)」イベントを開催し、発生した可能性のあった事案を紹介し、再発防止策について議論しています。

Planet(いのちを育む地球のために)

 当社は、「私たちの存在意義」(パーパス)に基づき、地球環境を損なうことのないよう事業を展開しています。公衆衛生は地球環境と密接に関連しており、気温の上昇に伴い、感染症は増加し、影響を受ける地域の患者さんの医療アクセスに係る困難な課題も増加する可能性があります。

 当社は、環境課題に対する高い意識を持って積極的に取り組んでいます。「私たちの存在意義」(パーパス)を実現するためには、人々の健康には健全な地球環境が必要であり、人々の健康に貢献するだけでは充分ではないと考えています。当社では、環境負荷を低減するためにクリーンエネルギーを優先的に使用するだけでなく、ネットゼロの達成およびバリューチェーン全体で温室効果ガス排出を無くすべく、ネットゼロのロードマップを進めるための取り組みに注力するとともに、バリューチェーンを超えた自然の力を活かした炭素除去プロジェクトへの投資を継続しています。当社は、2035年度までに当社の事業活動における温室効果ガス排出量を、2040年度までにバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量をネットゼロにすることを目指しており、短期、長期を含めた目標について、SBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアチブ)の認証を取得しました。

 当社は、温室効果ガス排出量削減の目標に向けて、着実に進展を続けています。例えば、最近、デング熱ワクチンを製造するドイツのジンゲンにある製造施設でバイオマス熱プラントの稼働を成功裏に開始したことを発表しました。この新しいバイオマスボイラーは、現在使用されているガスの多くを廃木材に置き換えることを目指しており、CO2排出量を最大80%削減することが期待されています。

 また、当社は製品の設計や開発にライフサイクルの視点を取り入れることで、バリューチェーン全体で環境負荷を最小限に抑えることを目指しています。さらに、天然資源保全プログラムにおいては、気候変動以外の環境負荷の低減を目指す活動として水の保全、責任ある廃棄物処理、生物多様性保全などに取り組んでいます。

DD&Tは、当社の環境への取り組みを支える重要な要素でもあります。大阪工場では、水使用の各箇所にセンサーやモニターを設置、データを解析して水の使用量を最適化する方法を検討、成功事例を標準化することで、年間45万リットルの蒸留水の使用量を削減し、年間200万リットル以上の水道水の使用量を削減しました。同様のプロジェクトとして、電力消費量の削減や太陽光やその他のグリーンエネルギーの利用拡大にも取り組んでいます。

 財務展望

 当社は、持続的な成長と長期的な価値創造を支える確固たる財務基盤を有しており、強固な枠組みのもと、戦略的な取り組みを柔軟に推進し、価値ある成果を生み出すことが可能となっています。

 タケダの成長製品・新製品*は、中長期的に売上成長を牽引していく上で非常に重要であり、人々の暮らしを豊かにする治療法の発見や開発へのさらなる投資を支える役割を果たすものと期待しています。これら製品の力強い持続的な売上成長は、差し迫る医療課題に対応し、世界中の患者さんに深い恩恵をもたらす革新的な治療法を推進させることを可能にします。当社は、このようなビジョンを実現するため、組織の機動性を向上させるとともに、DD&TやAIを活用しながら全社的な効率化プログラムにも取り組んでいます。中長期的には、当社はCore営業利益率を30%台前半から半ばまでに引き上げることを目指しており、潤沢なキャッシュ・フローを維持してまいります。

 また、当社は、売上成長を実現し事業運営の卓越性をさらに強化するため取り組むとともに、人生を変え得る治療法の発見や開発に対する長期的なコミットメントを堅持しています。研究開発投資は、価値創造を追求する上で重要な投資であり、6つの後期開発パイプラインはグローバルで、合計100億~200億米ドルのピーク時売上収益に達する可能性**を秘めています。これら後期開発プログラムを2030年までに上市し成功を収めることは、持続的な成長と現金の創出に大きく貢献することにつながります。

 当社は、重要なフェーズにある開発を着実に進め、これらのプログラムを市場に投入してまいりますが、投資資本に対する魅力的なリターンを実現することについても引き続き注力してまいります。当社は、革新的な治療法の発見と開発に対する戦略的かつ規律ある投資を通じて、社会やすべてのステークホルダーに対して価値を創出していくことを目指しています。後期開発パイプラインを成功裏に上市させることとあわせ、事業運営の卓越性を引き続き高めることで、株主資本利益率やその他の財務指標、さらには企業価値の向上につなげてまいります。

* タケダの成長製品・新製品(2025年度)

 消化器系疾患:ENTYVIO、EOHILIA

 希少疾患:タクザイロ、リブテンシティ、アジンマ

 血漿分画製剤:GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、ハイキュービア、キュービトルを含む免疫グロブリン製剤、

                HUMAN ALBUMIN、FLEXBUMINを含むアルブミン製剤

 オンコロジー:アルンブリグ、FRUZAQLA

 ワクチン:QDENGA

** ピーク時売上収益の範囲は、技術的及び規制上の成功確率を考慮して調整されていない推定値であり、予想または目標とみなされるべきではありません。ピーク時売上収益の範囲は、将来起こりうるとは限らないさまざまな商業的シナリオについての当社の評価に基づきます。

[主要製品一覧]

 消化器系疾患領域における主要製品は以下の通りです。

・ENTYVIO(ベドリズマブ):ENTYVIO(国内製品名:エンタイビオ)は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎・クローン病に対する治療剤です。ENTYVIOは、2014年に米国および欧州において発売以来、売上が伸長しており、2025年3月期の当社グループの売上トップ製品でした。現在、ENTYVIOは世界70カ国以上で承認され、皮下注射製剤は米国、欧州および日本において承認されました。当社は本剤の可能性を最大化するため、その他の国においても本剤の承認取得を進め、さらなる適応症の開発を行ってまいります。2025年3月期におけるENTYVIOの売上収益は9,141億円となりました。

・EOHILIA(ブデソニド経口懸濁液):EOHILIAは好酸球性食道炎(EoE)の治療薬で、コルチコステロイド薬です。米国食品医薬品局(FDA)による承認を受けた初めてかつ唯一の11歳以上のEoE患者さんへの12週間の投与を適応とする 経口治療薬です。2024年2月に米国FDAによる承認取得後上市しました。2025年3月期におけるEOHILIAの売上収益は55億円となりました。

・タケキャブ/VOCINTI(ボノプラザンフマル酸塩):酸関連疾患の治療剤タケキャブは、2015年に日本で発売され、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制などの効能により飛躍的な成長を遂げました。タケキャブ(中国の製品名:VOCINTI)は、2019年に胃食道逆流症の治療剤として中国で承認されました。2025年3月期におけるタケキャブ/VOCINTIの売上収益は1,308億円となりました。

・GATTEX/レベスティブ(テデュグルチド[DNA組換え型]):非経口(静脈栄養)サポートを必要とする短腸症候群(SBS)の治療薬です。成人用および小児用の効能を有するGATTEX/レベスティブが米国、欧州、日本において承認されました。2025年3月期におけるGATTEX/レベスティブの売上収益は1,463億円となりました。

 希少疾患領域における主要製品は以下の通りです。

・タクザイロ(ラナデルマブ):タクザイロは、遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作予防に用いられます。タクザイロは、HAEの患者さんにおいて慢性的に制御不能な酵素である血漿カリクレインに選択的に結合し、減少させる完全ヒト型モノクローナル抗体です。タクザイロは(12歳以上の患者さんへの適応として)2018年に米国と欧州にて、2020年に中国にて、2022年に日本にて承認され、さらなる地理的拡大を目指しています。2023年に、2歳以上の小児患者さんに対する治療薬として、FDAおよび欧州委員会の承認を取得しました。また、2025年2月に、12歳以上の遺伝性血管性浮腫患者さんへの皮下投与用のタクザイロの追加の選択肢である2mLのプレフィルドペンが欧州医薬品庁(EMA)から承認されました。2025年3月期におけるタクザイロの売上収益は2,232億円となりました。

・リブテンシティ (maribavir):リブテンシティは、成人患者さんと小児患者さん(12歳以上で体重35 kg以上)に対する、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、またはシドフォビルに対して遺伝子型抵抗性(無しも含みます)を示す難治性の移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症治療薬であり、2021年12月に米国において発売され、2022年11月に欧州、2023年12月に中国において承認されました。リブテンシティは、高いアンメット・メディカル・ニーズによる順調な市場浸透、急速なエリア拡大、迅速なマーケットアクセスにより、上市後も好調な業績となりました。2025年3月期におけるリブテンシティの売上収益は330億円となりました。

・アジンマ(遺伝子組換え ADAMTS13-krhn):アジンマは先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)の成人および小児患者さんの予防的治療薬ならびに酵素補充療法であり、欠乏したADAMTS13酵素を補充することによりcTTP患者のアンメット・メディカル・ニーズに対応するFDAに承認された初めてかつ唯一の遺伝子組換えADAMTS13(rADAMTS13)です。 また、アジンマ(一般名: アパダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)/シナキサダムターゼ アルファ(遺伝子組換え))が、日本においては12歳以上の患者さん、欧州(EMA市場)においてはすべての年齢層の患者さんを対象としたcTTP治療薬として承認されました。2025年3月期におけるアジンマの売上収益は71億円となりました。

・エラプレース(イデュルスルファーゼ):エラプレースは、ハンター症候群(ムコ多糖症II型またはMPS II)に対する酵素補充治療薬です。2025年3月期におけるエラプレースの売上収益は972億円となりました。

・リプレガル(アガルシダーゼ アルファ):リプレガルは、ファブリー病に対して米国以外の市場で販売され、2020年に中国でも承認された酵素補充療法治療薬です。当社は、2022年2月に大日本住友製薬株式会社から「リプレガル」の日本における製造販売承認を承継し、同剤の販売の移管を受けました。ファブリー病は、脂肪の分解に関与するリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼAの活性の欠如に起因する遺伝子性の希少疾患です。2025年3月期におけるリプレガルの売上収益は779億円となりました。

・アドベイト(抗血友病因子(遺伝子組換え型)):アドベイトは、血友病A(血液凝固第Ⅷ因子欠乏)の治療薬であり、出血の制御と予防、周術期管理および出血の頻度を予防または軽減するために行う定期補充療法に使用されます。2025年3月期におけるアドベイトの売上収益は1,118億円となりました。

・アディノベイト/ADYNOVI(抗血友病因子(遺伝子組換え型) [PEG化]):アディノベイト/ADYNOVIは、血友病A治療薬であり、遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤です。アディノベイト/ADYNOVIは遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤アドベイトと同じ製造工程で作られ、当社がネクター社より独占的にライセンス取得しているPEG化(体内での循環時間を延長し、投与頻度を減らすための化学修飾処理)技術を追加したものです。2025年3月期におけるアディノベイト/ADYNOVIの売上収益は646億円となりました。

・ビプリブ(ベラグルセラーゼアルファ点滴静注用):ビプリブはI型ゴーシェ病に対する長期酵素補充療法治療剤です。2025年3月期におけるビプリブの売上収益は535億円となりました。

 血漿分画製剤(PDT)領域における主要製品は以下の通りです。

・GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG(静注用人免疫グロブリン10%製剤):GAMMAGARD LIQUIDは、抗体補充療法用免疫グロブリン(以下、「IG」)の液体製剤です。GAMMAGARD LIQUIDは、原発性免疫不全症(PID)の成人および2歳以上の小児患者さんに対して使用され、静注または皮下注のいずれかの方法で投与します。また、GAMMAGARD LIQUIDは、成人の多巣性運動ニューロパチー(MMN)患者さんに対しても静注投与にて使用されます。2024年1月に、米国において、GAMMAGARD LIQUIDが、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)の成人患者さんの治療薬として承認されました。GAMMAGARD LIQUIDは、米国以外の多くの国で製品名KIOVIGとして販売されています。KIOVIGは、欧州において、CIDPを含む、複数の適応症への使用が承認されています。

・ハイキュービア(ヒト免疫グロブリン注射製剤10%):ハイキュービアは、ヒト免疫グロブリン(IG)および遺伝子組換え型ヒトヒアルロニダーゼ(Halozyme社よりライセンス取得)からなる製剤です。ハイキュービアは、PID患者さんに対して最長で1ヶ月に1回の投与で、1回あたりの注射部位一ヶ所でIGの全治療用量の投与が可能な唯一のIG皮下注用治療薬です。ハイキュービアは、米国では成人PID患者さんへの使用、欧州においてはPID症候群および骨髄腫患者さんまたは重度の続発性低ガンマグロブリン血症および回帰感染を伴う慢性リンパ性白血病患者さんへの使用、また日本においてはPID患者さんまたは無又は低ガンマグロブリン血症を伴う続発性免疫不全症の患者さんへの使用が承認されております。2024年1月に、ハイキュービアは、米国において、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)の成人患者さんの再発予防の維持療法として、また、欧州においては、すべての年齢のCIDPの患者さんの維持療法として承認されました。

• キュービトル(ヒト免疫グロブリン皮下注用20%製剤):キュービトルは、原発性体液性免疫不全症の成人および2歳以上の小児患者さんに対する補充療法に用いられます。キュービトルは、欧州では特定の続発性免疫不全の治療薬としても承認されています。キュービトルは、プロリン不含で、投与部位1ヶ所あたりの耐用量内で最大60 mL(12g)および1時間あたり60 mLまで投与可能な唯一の20%皮下IG治療薬であり、従来の皮下IG治療薬と比較してより少ない投与部位および短い投与時間での使用が可能です。

2025年3月期におけるGAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、ハイキュービア、キュービトルを含む免疫グロブリン製剤の売上収益は7,578億円となりました。

・FLEXBUMIN(ヒトアルブミンバッグ製剤)およびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤):FLEXBUMINおよびヒトアルブミンは、濃度5%および25%の液体製剤として販売されています。両製品とも、血液量減少症、一般的な原因および火傷による低アルブミン血症、ならびに心肺バイパス手術時のポンプのプライミングに使用されます。また、FLEXBUMIN 25%製剤は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)およびネフローゼに関連する低アルブミン血症、ならびに新生児溶血性疾患(HDN)にも適応されます。2025年3月期におけるFLEXBUMINおよびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤入り)を含むアルブミン製剤の売上収益は1,414億円となりました。

 オンコロジー領域における主要製品は以下の通りです。

・アルンブリグ(ブリグチニブ):アルンブリグは、非小細胞肺がん(NSCLC)治療に使用される経口投与の低分子未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤であり、クリゾチニブ投与中に進行した、またはクリゾチニブに不耐性を示す患者さんに対する治療薬として、2017年に米国で迅速承認され、2018年にEUにおいて、クリゾチニブの治療歴を有する患者さん向けの販売承認を取得しました。2020年に米国とEUの両方において、新たにALK陽性転移性NSCLCと診断された患者さんに対する効能が追加されました。2021年1月に、日本において、ファーストラインおよびセカンドラインの治療薬として承認されました。また2022年3月に、アルンブリグは中国において承認されました。2025年3月期におけるアルンブリグの売上収益は364億円となりました。

・FRUZAQLA(フルキンチニブ):フルオロピリミジン、オキサリプラチン、およびイリノテカンを含む化学療法、抗VEGF療法、および抗EGFR療法(RAS野生型で医学的に適切な場合)の治療歴があるmCRC成人患者に対する治療薬です。FRUZAQLAは、3種類のVEGF受容体キナーゼすべてに対して選択性を有する内服阻害薬として、米国、欧州、日本のほか、世界中の幾つもの国々で承認されております。当社は中国本土、香港、マカオ外でのフルキンチニブのグローバル開発、商業化および製造をさらに進めるための独占的ライセンスを有しています。フルキンチニブは中国ではHUTCHMED社により開発および販売されています。2025年3月期におけるFRUZAQLAの売上収益は480億円となりました。

・リュープリン/ENANTONE(リュープロレリン):リュープリン/ENANTONEは、前立腺がんや乳がん、小児の中枢性思春期早発症、子宮内膜症や不妊治療、子宮筋腫による貧血の症状改善に用いられる治療薬です。リュープロレリンの特許期間は満了していますが、製造の観点から後発品の市場参入は限定的です。2025年3月期におけるリュープリン/ENANTONEの売上収益は1,193億円となりました。

・ニンラーロ(イキサゾミブ):ニンラーロは、多発性骨髄腫(MM)治療に対する初めての経口プロテアソーム阻害剤です。ニンラーロは、再発又は難治性の多発性骨髄腫の効能で、2015年に米国で承認されて以来、2016年に欧州、2017年に日本、2018年に中国で承認されております。日本においては、多発性骨髄腫の維持療法の治療薬としても承認を受けております。2025年3月期におけるニンラーロの売上収益は912億円となりました。

・アドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン):アドセトリスは、ホジキンリンパ腫(HL)および全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の治療に使用される抗癌剤で、2020年5月には中国で承認され世界70カ国以上で販売承認を受けております。当社は、現在Pfizer Inc.の完全子会社であるSeagen, Inc.とアドセトリスを共同開発し、米国およびカナダ以外の国での販売権を保有しています。2025年3月期におけるアドセトリスの売上収益は1,290億円となりました。

・アイクルシグ(ポナチニブ塩酸塩):BCR-ABLに作用するチロシンキナーゼ阻害薬であり、慢性骨髄性白血病(CML)とフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)の治療に適応となります。2016年に米国において全面的な承認を取得した後、2020年と2024年に米国において適用拡大の承認を取得しました。当社は米国とオーストラリアにおいて販売権を取得しております。米国とオーストラリア以外の地域では、認可を受けたパートナー5社により60を超える市場において販売されており、当社はこれらのパートナーから、供給、ロイヤリティおよびマイルストンの支払を受領しており、その水準はパートナーによって異なります。2025年3月期におけるアイクルシグの売上収益は707億円となりました。

 ニューロサイエンス領域における主要製品は以下の通りです。

・VYVANSE/ELVANSE(リスデキサンフェタミンメシル酸塩):VYVANSE/ELVANSE(国内製品名:ビバンセ)は、6歳以上の注意欠陥・多動性障害(ADHD)患者さんおよび成人の中程度から重度の過食性障害患者さんの治療に用いられる中枢神経刺激剤です。2023年以降、米国において後発品が市場に参入したことにより、売上は減少しました。2025年3月期におけるVYVANSE/ELVANSEの売上収益は3,506億円となりました。

・トリンテリックス(ボルチオキセチン臭化水素酸塩):トリンテリックスは、成人大うつ病性障害の治療に適応される抗うつ薬です。トリンテリックスはH. Lundbeck A/S社と共同開発し、当社は米国および日本での販売権を保有しており、米国では2014年、また日本では2019年より販売しています。2025年3月期におけるトリンテリックスの売上収益は1,257億円となりました。

ワクチン領域における主要製品は以下の通りです。

・QDENGA(4価デング熱ワクチン):QDENGAは4種のワクチンウイルス型すべての遺伝子型の“バックボーン”として弱毒化された生の2型デングウイルスをベースに構築されています。QDENGAはテング熱流行国および渡航市場を含む29カ国において販売されています。2025年3月期における QDENGAの売上収益は356億円となりました。

 売上収益の地域別内訳は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 事業セグメントおよび売上収益」をご参照下さい。

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