武田薬品工業
【東証プライム:4502】「医薬品」
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企業概要
当年度の研究開発費の総額は7,302億円であります。なお、当社の研究開発費の予算は、全社的に決定されており、特定の支出は開発の結果および優先事項に応じて再配分の対象となる場合があるため、当社の研究開発費について、疾患領域あるいは臨床試験段階毎の内訳を報告しておりません。
医薬品の研究開発のプロセスは、長期にわたり多額の費用を伴い、その期間は10年を越えることもあります。このプロセスには、新薬の有効性および安全性の評価のための複数の試験、データを審査し販売承認の可否を判断する規制当局に対する申請が含まれます。こうした精査の過程を通過し、臨床での治療に用いることができる候補物質はごく僅かです。承認取得後も、上市後の製品に対しては、ライフサイクルマネジメント、メディカルアフェアーズやその他の投資を含め、継続的な研究開発活動による支援が行われます。
臨床試験は、地域的および国際的な規制ガイドラインを遵守し、通常5から7年もしくはそれ以上を費やして実施されるものであり、相応の費用を伴います。通常、臨床試験は医薬品規制調和国際会議(ICH)が制定したガイドラインに沿って実施されます。これに関わる規制当局は、米国では食品医薬品局(FDA)、欧州連合では欧州医薬品庁(EMA)、日本では厚生労働省(MHLW)、中国では国家薬品監督管理局(NMPA)です。
ヒトの臨床試験は以下の3相で実施されます(各相が一部重複することもあります):
・臨床第1相試験
少人数の健康な成人の志願者を被験者として、薬物の安全性、吸収、分布、代謝、排泄について評価するために実施
・臨床第2相試験
少人数の志願患者さんを被験者として、安全性、有効性、用量および用法を評価するために実施
臨床第2相試験は臨床第2a相と臨床第2b相の2つのサブカテゴリーに分割されることがあります。臨床第2a相試験は通常臨床上の有効性または生物学的活性を示すためにデザインされたパイロット試験であり、臨床第2b相試験は薬物が最少の副作用で生物学的活性を示す最適用量を探索するために行われます。
・臨床第3相試験
大人数の志願患者さんを被験者として、既存の薬剤またはプラセボと比較した安全性および有効性を評価するために実施
これら3相のうち、臨床第3相にかかる開発費用が最も大きく、臨床第3相試験へ進めるか否かの決定は、医薬品開発における重要なビジネス判断となります。臨床第3相試験を通過した候補薬物については、管轄の規制当局に新薬承認申請書(NDA)、生物製剤承認申請(BLA)または医薬品販売承認申請(MAA)を提出し、規制当局より承認を取得した場合に上市が可能となります。NDA、BLA、MAAの作成には、膨大な量のデータの収集、検証、分析が必要であり、多額の費用が伴います。製品上市後も、保健当局により有害事象の市販後調査や、当該医薬品のリスク・ベネフィットに関する追加情報を提供するための市販後試験の実施を求められることがあります。
当社の研究開発は、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変え得るような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しております。当社は、「革新的なバイオ医薬品」、「血漿分画製剤」および「ワクチン」の3つの分野において研究開発活動を実施しております。「革新的なバイオ医薬品」に対する研究開発は、当社の研究開発投資費用の中で最も大きい比率を占めております。「革新的なバイオ医薬品」における重点疾患領域(消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、オンコロジー)には、希少疾患および有病率がより高い疾患のいずれにおいても、未だ有効な治療法が確立されていない高い医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)が存在する疾患に対し、当社はベスト・イン・クラスあるいはファースト・イン・クラスとなりうる画期的な新規候補物質を創出してまいりました。当社は希少疾患と有病率がより高い疾患のいずれに対してもコミットしており、当社が探求している患者さんの人生を根本的に変え得るような医薬品の多くは、当社の重点疾患領域および血漿分画製剤領域における希少疾患を治療するものとなります。当社では新たな研究開発能力、さらには次世代プラットフォームに対して社内および外部との提携によるネットワークを通じて投資し、細胞療法の領域の強化を図っております。また、当社はイノベーションの質を向上させ、実行を加速させることを目指し、データ・デジタル技術を活用しております。
当社のパイプラインは、当社事業の短期的および長期的かつ持続的な成長を支えるものです。初回の承認取得後も上市後の製品に対して、地理的拡大や効能追加に加え、市販後調査および剤型追加の可能性を含めた継続的な研究開発活動による支援体制が整っております。当社の研究開発チームは、販売部門との緊密な連携を通じ既発売品の価値の最大化を図り、販売活動を通じて得られた知見を研究開発戦略やポートフォリオに反映します。
自社の研究開発機能向上への注力に加え、社外パートナーとの提携も、当社研究開発パイプライン強化のための戦略における重要な要素の一つです。社外提携の拡充と多様化に向けた戦略により、様々な新製品の研究に参画し、当社が大きな研究関連のブレイクスルーを達成する可能性を高めます。
当社の主要な研究開発施設には以下を含みます:
• グレーターボストン地区研究開発サイト:当社のボストン研究開発サイトは米国マサチューセッツ州のケンブリッジおよびレキシントンに位置しています。本サイトは当社の研究開発部門のグローバル本部であり、グローバルでの消化器系・炎症性疾患およびオンコロジー領域の研究開発の中枢です。加えて、血漿分画製剤を含む他の疾患領域の研究開発も支援しています。最先端の細胞療法の製造施設を備えた、当社の細胞療法研究の拠点です。さらに当社は、ケンドール・スクエアに新たに建設中の約60万平方フィートの最新鋭の研究開発およびオフィス施設について、15年間のリース契約を締結し、2026年より入居する予定です。
• 湘南ヘルスイノベーションパーク:日本の神奈川県藤沢・鎌倉地域に位置する湘南ヘルスイノベーションパーク(以下、「湘南アイパーク」)は、当社の湘南研究所を外部に開放する形で、2018年に設立された日本初の製薬企業発サイエンスパークであり、当社のニューロサイエンス研究の主要拠点です。当社はより多様なパートナーを招致し、湘南アイパークのさらなる成功を目指すため、2020年に信託設定、2023年には湘南アイパークの運営事業を当社が設立した会社に承継しました。当社は、アンカーテナントとして今後も日本におけるライフサイエンスの研究活性化に注力します。
• オーストリア ウィーン研究開発サイト:オーストリア ウィーンに位置する当社の研究開発サイトであり、研究開発および血漿分画製剤のプログラムを支援しています。本研究サイトは、生物学的製剤の研究開発に注力するとともに血漿分画製剤の製造施設を備えています。ウィーンのドナウシュタット地区には最高の環境基準に準拠したグリーンビルディングとして新しい研究開発施設が2026年に設立されます。
当社の2024年4月以降の主要な研究開発活動の進捗は、以下のとおりです。
研究開発パイプライン
消化器系・炎症性疾患
消化器系・炎症性疾患において、消化器系疾患(肝疾患を含む)および免疫介在性の炎症性疾患の患者さんに革新的で人生を変え得るような治療法をお届けすることに注力しております。炎症性腸疾患(IBD)においては、ENTYVIO(国内製品名:エンタイビオ)の皮下注射製剤の上市や、IBD治療パラダイムにおけるENTYVIOのバックボーン治療薬としての位置づけを実証し、患者さんの予後をさらに改善する方法への理解を深めるため、実臨床エビデンスを構築する臨床試験を実施するなど、フランチャイズのポテンシャルを最大化しております。Zasocitinib(TAK-279)は、ベスト・イン・クラスとなる可能性を有する次世代の経口チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬であり、複数の免疫介在性の炎症性疾患の治療薬となる可能性があります。また、fazirsiran(TAK-999)は、α-1アンチトリプシン欠損関連肝疾患に対するファースト・イン・クラスのRNA干渉治療薬となる可能性があり、後期開発段階にあります。Mezagitamab(TAK-079)は、免疫性血小板減少症(ITP)やIgA腎症など複数の免疫介在性疾患に対する疾患修飾薬としてベスト・イン・クラスとなる可能性を有する抗CD38抗体です。さらに、当社は、自社創製、社外との提携および事業開発を通じて炎症性疾患(消化器系、皮膚科系、リウマチ性の疾患に加え、厳選した希少血液疾患および腎疾患(アジンマ、mezagitamab(TAK-079))、肝疾患、神経性消化器疾患における機会を探索し、パイプラインの構築を進めております。
[ENTYVIO/エンタイビオ 一般名:ベドリズマブ]
- 2024年4月、当社は、ENTYVIO点滴静注製剤による導入療法後の成人の中等症から重症の活動期クローン病に対する維持療法として、ENTYVIO皮下注射製剤が米国食品医薬品局(FDA)により承認されたことを公表しました。本承認は、VISIBLE2試験(SC CD試験)のデータに基づきます。本試験は、0週および2週時点に非盲検下にてENTYVIOの点滴静注製剤による静脈内投与を2回実施後、6週時点で臨床的改善を達成した、中等症から重症の活動期クローン病成人患者全409例を対象に、ENTYVIO皮下注射製剤による維持療法の安全性と有効性をプラセボと比較して評価した無作為二重盲検臨床第3相試験です。52週時点における長期の臨床的寛解率において、ENTYVIO皮下注射製剤108mgを維持療法として2週間ごとに投与した群では、プラセボ投与群と比較し統計学的に有意に高い結果(ENTYVIO皮下注射群:48%、プラセボ投与群:34%、p<0.01)を示しました。臨床試験において、ENTYVIO皮下注射製剤の安全性プロファイルは、点滴静注製剤の既知の安全性プロファイルと概ね一致していましたが、皮下注射製剤の副作用として注射部位反応(注射部位の紅斑、発疹、そう痒症、腫脹、挫傷、血腫、疼痛、蕁麻疹、浮腫)が追加されました。
[アジンマ 一般名:アパダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)/シナキサダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)]
- 2024年8月、当社は、先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)の小児および成人患者のADAMTS13欠乏症の治療薬として、欧州委員会(EC)がアジンマを承認したことを公表しました。本承認は、希少疾病用医薬品指定の確認を含むものであり、2024年5月に当社が発表した欧州医薬品評価委員会(CHMP)の肯定的見解に基づきます。本承認は、cTTPを対象とした初の無作為化、比較対照、非盲検、クロスオーバー第3相試験から得られた有効性、薬物動態、安全性および忍容性データの中間解析を含む包括的エビデンスおよび継続試験の安全性および有効性データに基づくものです。本臨床第3相試験のデータは、2024年5月にThe New England Journal of Medicine誌に掲載されました。
- 2025年3月、当社は、アジンマについて、12歳未満の小児cTTP患者への適応拡大に関する製造販売承認事項一部変更承認申請を厚生労働省に行ったことを公表しました。今回の申請は、主に0歳から70歳のcTTP患者(日本人5名を含む)を対象としたグローバル臨床第3相試験である281102試験における安全性および有効性のデータ、およびグローバル臨床第3b相継続試験であるTAK-755-3002試験における安全性および有効性のデータに基づくものです。
[リブマーリ 一般名:マラリキシバット]
- 2025年3月、当社は、回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬リブマーリについて、アラジール症候群(ALGS)・進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)における胆汁うっ滞に伴うそう痒を効能または効果として厚生労働省から製造販売承認を取得したことを公表しました。ALGSは、胆汁うっ滞により、最終的には進行性の肝機能障害を引き起こす稀な遺伝性疾患です。PFICは、肝細胞の胆汁を分泌する能力が低下し、肝細胞内に胆汁の蓄積が起こることにより、進行性の肝疾患に至る稀な遺伝性疾患です。どちらも小児慢性特定疾病や指定難病に指定されています。本承認は、ALGSを対象とした国内臨床第3相TAK-625-3001試験およびPFICを対象とした国内臨床第3相TAK-625-3002試験、ならびに海外で行われた複数の臨床試験の結果に基づくものです。リブマーリは、Mirum Pharmaceuticals, Inc.社が開発した薬剤であり、当社は、2021年9月に日本における独占的開発・販売に関するライセンス契約を締結しました。
[開発コード:TAK-079 一般名:mezagitamab]
- 2024年6月、当社は、持続性もしくは慢性の一次性免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病:ITP)の患者を対象としたmezagitamabの安全性、忍容性および有効性を評価する臨床第2b相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(TAK-079-1004試験)の良好な結果を第32回国際血栓止血学会(International Society on Thrombosis and Haemostasis Congress:ISTH)の口頭Late-Breakthrough Sessionで発表しました。TAK-079-1004試験は、慢性もしくは持続性のITP患者を対象に、3つの用量(100mg、300mgおよび600mg)を週1回、8週間にわたり皮下投与した後に8週間を超えて安全性追跡調査を行い、プラセボと比較評価しました。主要評価項目は、グレード3以上の有害事象、重篤な有害事象、および投与中止に至った有害事象を含む、試験治療下で有害事象を発現した患者の割合です。副次評価項目は、血小板反応、血小板反応の完全寛解、臨床的に意義のある血小板反応、止血血小板反応です。臨床第2b相試験の結果、評価した3つの用量すべてにおいて、mezagitamabの投与により血小板反応がプラセボと比較して大幅に改善することが示されました。Mezagitamab群では、血小板数の迅速かつ持続的な増加(治療閾値50,000/μL以上)が認められ、その効果が最終投与(8週目)から16週目まで8週間持続したことから、血小板反応に対する迅速な効果および治療後の効果が示されました。本試験で新たな安全性シグナルは検出されず、ITP患者においてmezagitamabの良好な安全性および忍容性プロファイルが示され、安全性プロファイルはこれまでに実施されたmezagitamabの試験と一致していました。当社は、ITP患者を対象としたmezagitamabの国際共同臨床第3相試験を2024年度下期に開始する予定です。なお、mezagitamabは米国食品医薬品局(FDA)よりITPを対象にオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定を取得し、本プログラムはファストトラック(優先審査)の対象とされております。
- 2025年6月、当社は、完全ヒト免疫グロブリンIgG1モノクローナル抗体mezagitamabが、慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を予定される効能・効果として厚生労働省よりオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定を取得したことを公表しました。Mezagitamabは血小板数の迅速かつ持続的な改善をもたらすようにデザインされており、国際共同臨床第3相試験が進行中です。
ニューロサイエンス(神経精神疾患)
当社は、高いアンメット・ニーズが存在する神経疾患および神経筋疾患を対象に、革新的治療法に研究開発投資を集中させ、社内の専門知識や外部パートナーとの提携を生かし、革新的なパイプラインを構築しています。当社のニューロサイエンス(神経精神疾患)における重点領域として、オレキシン生物学、希少神経疾患および神経変性疾患に注力しています。オレキシン生物学の関与が示唆される希少な睡眠・覚醒障害およびその他の疾患に対する標準治療の再定義を目指し、オレキシンの可能性を最大限に引き出すために最適化された治療薬ポートフォリオ(oveporexton(TAK-861)、TAK-360など)の開発を推進しています。また、当社のポートフォリオ全体にわたり、疾患生物学の理解、トランスレーショナルなツール、革新的モダリティ、デジタルイノベーションの進展を活用し、治療薬の開発および患者さんへのアクセスを加速させています。
[開発コード:TAK-861 一般名:oveporexton]
- 2024年6月、米国睡眠学会および睡眠研究学会の第38回年次総会であるSLEEP2024において、ナルコレプシータイプ1(NT1)を対象としたoveporextonの臨床第2b相試験の良好な結果を発表しました。NT1患者112名を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照反復投与試験であるTAK-861-2001試験で、主要評価項目と副次評価項目において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が示され、有効性は8週間の投与期間にわたり持続しました。主要評価項目の覚醒維持検査(MWT)では、プラセボと比較して本試験で評価したoveporextonのすべての用量で統計学的に有意かつ臨床的に意味のある睡眠潜時の延長が認められました(プラセボとのLS平均差はすべてp≤0.001)。エプワース眠気尺度(ESS)および1週間あたりのカタプレキシー発現率(WCR)を含む主な副次評価項目でも一貫した結果が得られ、眠気およびカタプレキシー(筋緊張の突然の消失)の頻度に関する主観的評価項目がプラセボと比較して顕著に改善しました。本試験を完了した被験者の大部分は長期継続投与(LTE)試験に登録され、一部の患者は投与期間が1年に達しました。Oveporextonの安全性および忍容性は概ね良好であり、治験薬と関連のある重篤な有害事象または有害事象による投与中止はありませんでした。臨床第2b相試験および現在実施中のLTEにおいて、肝毒性や視覚障害の事例は認められていません。主な有害事象は不眠症、尿意切迫、頻尿および唾液分泌過多でした。大部分の有害事象の重症度は軽度から中等度であり、そのほとんどが投与後1~2日以内に発現し、一過性でした。米国食品医薬品局(FDA)は、臨床第2b相試験のデータに基づき、oveporextonをNT1患者の日中の過度の眠気(EDS)治療薬としてブレークスルーセラピーに指定しました。2025年5月、当社はNT1患者におけるoveporextonの臨床第2b相試験データがThe New England Journal of Medicine誌に掲載されたことを公表しました。
[開発コード:TAK-935 一般名:ソチクレスタット]
- 2024年6月、当社は、ソチクレスタットについてSKYLINE試験およびSKYWAY試験のトップラインデータを発表しました。SKYLINE(TAK-935-3001)試験は、難治性のドラベ症候群(DS)患者を対象としてソチクレスタット+標準治療とプラセボ+標準治療を比較評価した臨床第3相多施設共同無作為化二重盲検試験です。ソチクレスタットは、プラセボと比較した、けいれん発作の発現頻度のベースラインからの減少という主要評価項目をわずかに達成しませんでした(p値=0.06)。6つの重要な副次評価項目のうち、ソチクレスタットは16週間の投与期間にわたり、レスポンダーの割合、介護者および医師による全般印象改善尺度-改善の指標、並びに発作強度および持続時間のスケールにおいて臨床的に意義があり、名目上有意な結果を示しました(すべてp値≤0.008)。SKYWAY(TAK-935-3002)試験は、難治性のレノックス・ガストー症候群(LGS)の患者を対象としてソチクレスタット+標準治療とプラセボ+標準治療を比較評価した臨床第3相多施設共同無作為化二重盲検試験です。ソチクレスタットはプラセボと比較して、major motor drop(MMD)発作の発現頻度のベースラインからの減少という新たな主要評価項目を達成しませんでした。SKYLINE試験およびSKYWAY試験では、事前に特定したサブグループの患者において、ソチクレスタットは16週間の投与期間にわたり、主要評価項目および副次評価項目である介護者および医師の全般印象改善尺度-改善、並びに発作強度および持続時間スケールで臨床的に意義があり、名目上有意な治療効果が示されました。SKYLINE試験およびSKYWAY試験のいずれにおいてもソチクレスタットの忍容性は概ね良好であり、これまでの臨床試験と一致する安全性プロファイルが示されました。
- 2025年1月、当社は、ソチクレスタットの開発プログラムを中止する決定を公表しました。本決定は、2024年6月に公表した、ソチクレスタットのDSを対象とした臨床第3相SKYLINE試験およびLGSを対象とした臨床第3相SKYWAY試験が主要評価項目を達成しなかったことに基づいています。6月の公表以降、当社はソチクレスタットのLGS開発プログラムを中止し、米国食品医薬品局(FDA)とソチクレスタットのDSの治療に関する総合的なエビデンスについて協議しました。FDAは、現在の臨床データパッケージではソチクレスタットのDSに対する新薬承認申請(NDA)を支持するための有効性に関する実質的なエビデンスの要件を満たしていないと当社に通知しました。SKYLINE試験およびSKYWAY試験のデータは、ClinicalTrials.govで公開されています。
オンコロジー
オンコロジー領域では、当社の治療薬のポートフォリオへのアクセスを確立し世界中の患者さんの治療に貢献するとともに、将来治療薬となりうるパイプラインの推進に注力しています。研究開発の取り組みにおいては、3つの疾患領域および4つのモダリティに焦点を当てています。当社は胸部、消化器および血液がんに対する治療薬の開発を推し進めており、血液がん領域では、骨髄性腫瘍に対するrusfertide(TAK-121)、elritercept(TAK-226)を含む治療薬ポートフォリオを拡充しています。注力するモダリティには抗体薬物複合体(ADC)、複雑な生物学的製剤、低分子化合物およびガンマ・デルタT細胞療法が含まれます。また、強固な提携ネットワークを活用することで、社内の専門性とグローバル拠点を補完しています。当社は、患者さんを通じて得られるインスピレーションおよびあらゆるイノベーションを活用することで、がんの治癒を目指しております。
注)2024年度第4四半期より、rusfertideはオンコロジーポートフォリオに含まれます。
[アドセトリス 一般名:ブレンツキシマブ ベドチン]
- 2024年6月、当社とファイザー株式会社は、第60回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会および第29回欧州血液学会(EHA)年次総会において、German Hodgkin Study Group(GHSG)が、アドセトリスと化学療法との併用療法を評価する臨床第3相HD21試験の良好な結果についてレイトブレーキングオーラルプレゼンテーションにて発表することを公表しました。GHSGが発表する4年時点での解析では、欧州における現在の標準治療レジメンと比較して優れた無増悪生存率(PFS)と忍容性の改善が示されました。HD21試験は、臨床第3相無作為化国際共同前向き非盲検試験であり、IIb/III/IV期古典的ホジキンリンパ腫と新たに診断された患者を対象に、アドセトリスとエトポシド、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダカルバジンおよびデキサメタゾンの併用療法(BrECADD)を、標準治療であるブレオマイシン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびprednisone(eBEACOPP)と比較して評価するデザインです。ASCOにおける発表では、GHSGが実施したHD21試験の4年PFS解析の詳細が発表されます。48ヵ月後、BrECADDはBEACOPPと比較して優れた有効性を示しました[BrECADD群PFS:94.3%、eBEACOPP群PFS:90.9%、ハザード比(HR):0.66(95% CI:88.7-93.1; p<0.035)]。3年時点の解析ですでに報告したように、BrECADDによる治療はBEACOPPと比較して治療関連罹患(TRMB)の発現率の有意な低下(n=738、42% vs 59%、p<0.001)ならびに臨床的に意味のある有害事象の減少とも関連していました。BrECADD群の患者におけるアドセトリスの安全性プロファイルは、承認された他のアドセトリス併用レジメンと一致しており、安全性に関して新たなシグナルは認められませんでした。
- 2025年6月、当社は、欧州委員会(EC)より、リスク因子を有するⅡb期、Ⅲ期およびⅣ期の未治療の成人ホジキンリンパ腫患者に対するアドセトリスとエトポシド、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダカルバジンおよびデキサメタゾン(BrECADD)の併用療法の承認を取得したことを公表しました。本承認は、2025年4月の欧州医薬品評価委員会(CHMP)による肯定的見解に基づくものです。BrECADDとして知られるホジキンリンパ腫のフロントライン治療におけるアドセトリス併用療法の承認は、無作為化臨床第3相HD21試験の結果に基づきます。本試験では、欧州における標準治療であるブレオマイシン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾンの増量レジメン(eBEACOPP)と比較して、BrECADDが治療関連合併症率(TRMB)において有意に優れた安全性を示し、無増悪生存率(PFS)の非劣性を示したことにより、安全性および有効性の複合主要評価項目を達成しました。
[FRUZAQLA/フリュザクラ 一般名:フルキンチニブ]
- 2024年6月、当社は、フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤、オキサリプラチン、およびイリノテカンを含む化学療法、抗VEGF療法ならびに抗EGFR療法による治療歴があり、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤又はレゴラフェニブのいずれかによる治療中に進行した、もしくはこれらに不耐の転移性大腸がん(mCRC)成人患者に対する単剤療法として、FRUZAQLAが欧州委員会によって承認されたことを公表しました。本承認は、国際共同臨床第3相試験であるFRESCO-2試験の結果に基づくものです。
- 2024年9月、当社は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1/2/3に対して選択性を有する経口のチロシンキナーゼ阻害剤フリュザクラカプセル1mg/5mgについて、がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌を効能または効果として、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。本承認は主に国際共同臨床第3相試験であるFRESCO-2試験の結果に基づくものです。
[ニンラーロ 一般名:イキサゾミブ]
- 2024年8月、当社は、ニンラーロの剤形追加として、厚生労働省よりニンラーロカプセル0.5mgの製造販売承認を取得したことを公表しました。本剤形追加により、多発性骨髄腫における維持療法において、ニンラーロの低用量製剤による新たな治療選択肢(1.5mg用量(0.5mgカプセル×3))を提供することができ、従来よりも低用量の用量調節が可能となることで患者の状態に合わせた、より適切な用量調節の実現を目指すことが可能になります。本承認は、主に国際共同臨床第3相試験であるTOURMALINE-MM3試験ならびにTOURMALINE-MM4試験の結果に基づくものです。
[カボメティクス 一般名:カボザンチニブ]
- 2024年9月、当社は、新規ホルモン療法(NHT)による1回の前治療歴があり、測定可能な骨盤外リンパ節腫大を有する去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)患者を対象に、カボザンチニブと免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブの併用療法と2剤目のNHTを比較した、Exelixis社が主導する国際共同臨床第3相試験(CONTACT-02試験)の全生存期間(OS)に関する最終解析結果が2024年欧州腫瘍学会(European Society for Medical Oncology Congress:ESMO 2024)において発表されたことを公表しました。CONTACT-02試験の主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)およびOSでした。追跡期間中央値24.0ヵ月において、OSの最終解析では、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法に統計学的に有意な差はないものの、改善傾向が示されました(ハザード比:0.89、95%信頼区間:0.72-1.10、p=0.296)。本試験では、複数の集団(骨転移を有する患者集団、および肝転移を有する患者集団)において特にOSの延長が示唆されました。
[ベクティビックス 一般名:パニツムマブ]
- 2024年11月、当社は、ベクティビックスについて、KRAS G12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんに対し、KRAS G12C阻害剤であるルマケラス(ソトラシブ)との併用療法として、日本国内における効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったことを公表しました。本申請は、KRAS G12C変異陽性の既治療の転移性の結腸・直腸がん患者を対象として、ベクティビックスと、ルマケラスの2用量(240mgまたは960mg)を併用投与した際の有効性および安全性を評価する、臨床第3相、国際共同、多施設共同、ランダム化、非盲検、実薬対照試験(CodeBreaK 300試験)に基づくものです。
[開発コード:TAK-121 一般名:rusfertide]
- 2025年3月、当社とProtagonist Therapeutics社は、臨床第3相VERIFY試験の良好なトップライン結果を公表しました。本試験は瀉血依存の真性多血症(PV)患者の標準治療に追加する治療として、被験者をrusfertide群またはプラセボ群に無作為に割り付け実施されました。Rusfertideは、米国食品医薬品局(FDA)から希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)指定およびファストトラック指定を受けている、ファースト・イン・クラスのヘプシジン模倣薬として開発中のペプチド治療薬です。
- 2025年6月、当社とProtagonist Therapeutics社は、臨床第3相VERIFY試験の詳細な結果を第61回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会のプレナリーセッションにおいて発表したことを公表しました。本試験は、主要評価項目である臨床的奏功割合を達成しました。臨床的奏効とは、20週から32週の間に瀉血の適格性がないことと定義されました。Rusfertideと現在の標準治療を併用した患者の76.9%が臨床的奏効を達成し、プラセボと現在の標準治療を併用した群では32.9%でした(p<0.0001)。Rusfertide群で観察された反応は、リスクの有無や併用されている細胞減少療法の種類にかかわらず、すべてのサブグループで一貫していました。さらに、VERIFY試験において、rusfertide群はプラセボ群と比較し主な副次評価項目すべてで統計学的に有意な結果を示しました。欧州連合(EU)規制当局に事前指定された主要評価項目でもある、Rusfertide群の患者1人あたりの平均瀉血回数は0.5回であり、プラセボ群の患者1人あたりの平均瀉血回数は1.8回でした(0~32週目;p<0.0001)。Rusfertide群の患者の27%が0週から32週の間に瀉血を必要とした一方、プラセボ群では78%でした。Rusfertide群における0週から32週の平均瀉血回数は、リスクの有無や併用されている細胞減少療法の使用を含むすべてのサブグループにおいて、プラセボ群と比較して減少していました。事前に設定された他の3つの主な副次評価項目であるヘマトクリット値のコントロールおよびPROMIS Fatigue SF-8aとMFSAF TSS-7を使用した患者報告アウトカムも統計学的な有意差をもって達成されました。Rusfertideは概ね良好な忍容性を示し、大半の有害事象は低グレードであり重篤ではなく、rusfertideに関係すると判定された重篤な有害事象は報告されませんでした。主要評価項目の分析の時点で、rusfertide群とプラセボ群の比較においてがんのリスク増加のエビデンスは認められませんでした。最も頻度が高かった治療関連有害事象は、局所注射部位反応(55.9%)、貧血(15.9%)、疲労(15.2%)でした。
その他の希少疾患品目
当社の研究開発は、3つの重点疾患領域(消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、オンコロジー)にわたり、希少疾患および有病率がより高い疾患のいずれにおいても、未だ有効な治療法が確立されていない高い医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)が存在する疾患に注力しております。その他の希少疾患品目においては、遺伝性血管性浮腫に対するタクザイロなどの既発売品に加え、高いアンメット・メディカル・ニーズが存在する複数の疾患に焦点をあて取り組んでおります。希少血液疾患においては、アドベイト、アディノベイト/ADYNOVIを通じて、出血性疾患治療における現在のニーズへ対応することに注力しております。また、リブテンシティにおいては、移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症の治療を再定義することを目指しております。当社は、希少疾患の患者さんに対し革新的な医薬品を届けるという当社のビジョンを実現するための取り組みに注力します。当社は、希少疾患において当社が有する専門能力の活用が可能であり、希少疾患に対する当社のコミットメントおよびリーダーシップを高める可能性のある、後期開発段階の事業開発機会の探索を今後も継続する予定です。
[リブテンシティ 一般名:マリバビル]
- 2024年6月、当社は、リブテンシティ錠200mgについて、臓器移植(造血幹細胞移植も含む)における既存の抗サイトメガロウイルス(CMV)療法に難治性のCMV感染症を効能または効果として、厚生労働省から製造販売承認を取得したことを公表しました。本承認は、主にHSCTまたはSOT後で既存の抗CMV治療に難治性のCMV感染・感染症を有する患者を対象とした海外第3相非盲検試験(SOLSTICE 試験)および日本人の造血幹細胞移植(HSCT)または固形臓器移植(SOT)後でCMV 感染・感染症を有する患者を対象とした国内第3相非盲検試験に基づくものです。
[タクザイロ 一般名:ラナデルマブ]
- 2025年2月、当社は、青年期(12歳以上)および成人の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者を対象に、タクザイロの2mLプレフィルドペン皮下注射製剤が追加の皮下投与選択肢として欧州医薬品庁(EMA)により承認されたことを公表しました。タクザイロは現在、150mgプレフィルドシリンジ製剤、300mgプレフィルドシリンジ製剤および300mgバイアル製剤が承認されています。追加の皮下注射の選択肢となるタクザイロ300mgプレフィルドペン製剤の承認は臨床試験の結果に基づきます。
[ボンベンディ 一般名:フォン・ヴィレブランド因子(遺伝子組み換え)]
- 2025年6月、当社は、ボンベンディについて、18歳未満のフォン・ヴィレブランド病(VWD)患者に対する用法・用量追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を厚生労働省に行ったことを公表しました。本申請は、主に海外臨床第3相非盲検試験(071102試験)および海外臨床第3b相継続投与試験(SHP677-304試験)における18歳未満のVWD患者の出血時ならびに周術期に関する安全性および有効性のデータに基づくものです。
血漿分画製剤
当社は、血漿分画製剤(PDT)に特化したPDTビジネスユニットを設立し、血漿の収集から製造、研究開発および商用化まで、エンド・ツー・エンドのビジネスの運営に注力しております。本領域では、様々な希少かつ複雑な慢性疾患に対する患者さんにとって生命の維持に必要不可欠な治療薬の開発を目指しております。本領域に特化した研究開発部門は、既発売の治療薬の価値最大化、新たな治療ターゲットの特定および血漿収集から製造に至るまで血漿分画製剤のバリューチェーン全体にわたる効率性の最適化という役割を担っております。短期的には、当社の幅広い免疫グロブリン製剤ポートフォリオ(ハイキュービア、キュービトル、GAMMAGARD LIQUIDおよびGAMMAGARD S/D)における効能追加、地理的拡大および総合的な医療テクノロジーの活用を通じたより良い患者体験を追求しております。また、当社は、グローバルに販売している20種類以上にわたる治療薬ポートフォリオに加え、20%促進型皮下注用免疫グロブリン製剤(TAK-881)および低IgA含有免疫グロブリン液剤(TAK-880)といった次世代の免疫グロブリン製剤の開発、およびその他の早期段階の治療薬候補(高シアル化免疫グロブリン(hsIgG)を含む)の開発を行っております。
[ハイキュービア 一般名:遺伝子組換えヒトヒアルロニダーゼ含有皮下注(ヒト)免疫グロブリン10%(開発コード:TAK-771)]
- 2024年6月、当社は、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)患者におけるハイキュービアの安全性および有効性を評価する長期継続試験である臨床第3相ADVANCE-CIDP3試験のデータを発表しました。本結果はハイキュービアの良好な長期安全性および忍容性と低い再発率を示しており、CIDPに対する維持療法としての使用を支持しております。これらの結果は、末梢神経学会(PNS)年次総会のポスターセッションで発表される予定です。ADVANCE-CIDP3試験はCIDPを対象とした臨床試験として、これまでで最長の延長試験です。本試験はADVANCE-CIDP1試験から85名の患者を登録し、主要評価項目は安全性、忍容性および免疫原性でした。ハイキュービアの投与期間中央値は33カ月(0カ月から77カ月)で、全追跡期間の累積は220人年でした。ハイキュービアの安全性および忍容性プロファイルは既知のプロファイルと一致しており、新たな安全性に関する懸念は認められませんでした。
- 2024年12月、当社は、ハイキュービアについて、無又は低ガンマグロブリン血症を効能又は効果として、厚生労働省から製造販売承認を取得したことを公表しました。無又は低ガンマグロブリン血症は、原発性免疫不全症(PID)または続発性免疫不全症(SID)による抗体が無いまたは減少した状態で、重篤な感染症の再発リスクが増加することを特徴とする疾患です。本承認は、主に有効性、安全性、忍容性および薬物動態を評価するために実施された、日本人のPID患者を対象とした2つの主要な非盲検非対照臨床第3相試験(TAK-771-3004試験、TAK-771-3005試験)に基づくものです。また、本製造販売承認申請の評価資料には、北米のPID患者を対象とした2つの海外臨床第3相試験(160603試験、160902試験)も含まれました。
- 2025年6月、当社は、ハイキュービアについて、CIDP及び多巣性運動ニューロパチー(MMN)の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)の適応追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を厚生労働省から取得したことを公表しました。本承認は、日本人のCIDP患者およびMMN患者を対象とした国内臨床第3相試験(TAK-771-3002試験)、ならびにCIDP患者を対象とした2つの海外臨床第3相試験(161403試験および161505試験)に基づくものです。
[献血グロベニン-I 一般名:静注(ヒト)免疫グロブリン]
- 2025年2月、当社は献血グロベニン-I 10%静注について、厚生労働省に対し製造販売承認申請を行ったことを公表しました。本剤は、国内で承認を得ている当社の献血グロベニン-I静注用の剤型を凍結乾燥製剤から液状製剤へ改良し、有効成分濃度を既存製剤の5%から10%へと高濃度化した静注用人免疫グロブリン製剤です。有効成分濃度の高濃度化により、投与液量が減少し、投与時間が短縮するとともに、より少ない水分負荷での大量療法が可能になることが期待されます。
ワクチン
ワクチンでは、イノベーションを活用し、デング熱(QDENGA)、新型コロナウイルス感染(COVID-19)(ヌバキソビッド筋注)など、世界で最も困難な感染症に取り組んでおります。当社パイプラインの拡充およびプログラムの開発に対する支援を得るために、日本の政府機関およびWHO(世界保健機関)、PAHO(Pan American Health Organization)、Gavi(Global Alliance for Vaccines and Immunization)を含む主要な世界的機関とのパートナーシップを締結しております。これらのパートナーシップは、当社のプログラムを実行し、それらのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な能力を構築するために必要不可欠です。
[ヌバキソビッド筋注 一般名:組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン]
- 2024年9月、当社は、2024年4月に製造販売承認申請を行ったヌバキソビッド筋注1mLについて、SARS-CoV-2による感染症の予防を効能または効果として厚生労働省から製造販売承認を取得したことを公表しました。ヌバキソビッドは、オミクロン株JN.1系統に対応した1価ワクチンです。本製剤は、パンデミック下のまん延予防の緊急の必要性に応じた特例臨時接種と異なり、1日に多数の方に接種することを想定しない場合の流通および使用に適した1回0.5mL 接種2回分のバイアル製剤です。本承認は、抗原株の変更に係る臨床および品質のデータに加え、ヌバキソビッドがJN.1およびKP.2、KP.3を含むその下位系統に対しても中和抗体を誘導することが認められた非臨床データに基づきます。
パイプラインの現状
当社グループの各疾患領域および事業分野における研究開発活動の概要は、以下に示すとおりです。後出する主要な疾患領域および事業分野において開示されている当社グループパイプライン上の治療薬の候補物質は、それぞれ異なる開発段階にあり、現在開発中の候補物質の開発中止や新たな候補物質の臨床ステージ入りにより、パイプラインの内容は今後変わる可能性があります。以下に示す候補物質が製品として上市に至るかは、前臨床試験や臨床試験の結果、様々な医薬品の市場動向、規制当局からの販売承認取得の有無など、様々な要因に影響されます。本表では当社が承認取得を目指しているパイプラインの主な効能および2024年度中に承認されたパイプラインを掲載しています。掲載している効能以外にも、将来の効能・剤型追加の可能性を検討するために臨床試験を行っています。以下の表記載は、米国・欧州・日本・中国に限定していますが、当社グループはその他の地域でも開発活動を行っています。以下、「グローバル」の表記は、米国・欧州・日本・中国を指します。下記の表にあるパイプラインのモダリティは、「低分子」、「ペプチド・オリゴヌクレオチド」、「細胞治療」、「生物学的製剤他」のいずれかに分類しています。
2025年5月8日(決算発表日)における当社グループの消化器系・炎症性疾患領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
開発コード <一般名> 製品名 (国/地域) | 薬効(投与経路) | モダリティ | 適応症/剤型追加 | 国/地域 | 開発段階 |
MLN0002 <vedolizumab> ENTYVIO (グローバル) | ヒト化抗α4β7インテグリンモノクローナル抗体 (注射剤) | 生物学的製剤他 | クローン病(皮下投与製剤) | 米国 | 承認(24/4) |
潰瘍性大腸炎・クローン病(小児) | グローバル | P-Ⅲ | |||
潰瘍性大腸炎・クローン病(小児)(皮下投与製剤) | グローバル | P-Ⅲ | |||
TAK-755(注1) <apadamtase alfa/ cinaxadamtase alfa> (米国、欧州、日本) | ADAMTS13 酵素補充療法 | 生物学的製剤他 | 先天性血栓性血小板減少性紫斑病 | 欧州 中国 | 承認(24/8) 申請(25/3) |
免疫性血栓性血小板減少性紫斑病 | 米国 欧州 | P-Ⅱb P-Ⅱb | |||
TAK-625(注2) <maralixibat> | 回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害薬 | 低分子 | アラジール症候群 | 日本 | 承認(25/3) |
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症 | 日本 | 承認(25/3) | |||
TAK-999(注3) <fazirsiran> | GalNAcベースRNA干渉(RNAi)(注射剤) | ペプチド・オリゴヌクレオチド | α‑1アンチトリプシン欠乏症に伴う肝疾患 | 米国 欧州 | P-Ⅲ P-Ⅲ |
TAK-279 <zasocitinib> | チロシンキナーゼ2(TYK2) | 低分子 | 乾癬 | グローバル | P-Ⅲ |
乾癬性関節炎 | グローバル | P-Ⅲ | |||
クローン病 | ― | P-Ⅱb | |||
潰瘍性大腸炎 | ― | P-Ⅱb | |||
TAK-079 <mezagitamab> | 抗CD38モノクローナル抗体(注射剤) | 生物学的製剤他 | 免疫性血小板減少症 | グローバル | P-Ⅲ |
IgA腎症 | ― | P-I | |||
TAK-227/ZED1227 (注4) | トランスグルタミナーゼ2阻害薬(経口剤) | 低分子 | セリアック病 | ― | P-Ⅱb |
TAK-101(注5) | Tolerizing Immune Modifying nanoParticle(TIMP)(注射剤) | 生物学的製剤他 | セリアック病 | ― | P-Ⅱ |
TAK-004 | ペプチドアゴニスト(注射剤) | ペプチド・オリゴヌクレオチド | 悪心、嘔吐 | ― | P-I |
(注1)KMバイオロジクス社との提携
(注2)Mirum社との提携
(注3)Arrowhead Pharmaceuticals社との提携
(注4)Zedira社およびDr. Falk Pharma社との提携、開発はDr. Falk Pharmaが主導
(注5)COUR Pharmaceuticals社との提携
2025年5月8日(決算発表日)における当社グループのニューロサイエンス(神経精神疾患)領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
開発コード <一般名> 製品名 (国/地域) | 薬効(投与経路) | モダリティ | 適応症/剤型追加 | 国/地域 | 開発段階 |
TAK-861 <oveporexton> | オレキシン2受容体 | 低分子 | ナルコレプシータイプ1 | グローバル | P-Ⅲ |
TAK-341/MEDI1341 (注1) | 抗α‑シヌクレイン抗体 (注射剤) | 生物学的製剤他 | 多系統萎縮症(MSA) | ― | P-Ⅱ |
TAK-594/DNL593 (注2) | 脳内移行性を有するプログラニュリン融合蛋白質 (注射剤) | 生物学的製剤他 | 前頭側頭型認知症 | ― | P-Ⅱ |
TAK-360 | オレキシン2受容体 | 低分子 | 特発性過眠症 | ― | P-Ⅱ |
ナルコレプシータイプ2 | ― | P-I | |||
TAK-925 <danavorexton> | オレキシン2受容体 | 低分子 | ナルコレプシー | ― | P-I |
(注1)Alexion社(AstraZeneca社の子会社)との提携
(注2)Denali Therapeutics社との提携、開発は同社が主導
2025年5月8日(決算発表日)における当社グループのオンコロジー領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
開発コード <一般名> 製品名 (国/地域) | 薬効(投与経路) | モダリティ | 適応症/剤型追加 | 国/地域 | 開発段階 |
TAK-113(注1) FRUZAQLA (米国、欧州) (日本) | VEGFR阻害薬(経口剤) | 低分子 | 治療歴を有する転移性大腸がん(mCRC) | 欧州 | 承認(24/6) |
がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発大腸がん(CRC) | 日本 | 承認(24/9) | |||
SGN-35(注2) | CD30モノクローナル抗体薬物複合体 (注射剤) | 生物学的製剤他 | ホジキンリンパ腫におけるBrECADDレジメン(brentuximab vedotin、etoposide、cyclophosphamide、doxorubicin、dacarbazine、dexamethasone)(フロントライン)(注3) | 欧州 | 申請(24/4)(注4) |
TAK-121(注5) <rusfertide> | ヘプシジンミメティックスペプチド(注射剤) | ペプチド・オリゴヌクレオチド | 真性多血症 | 米国 | P-Ⅲ |
TAK-226(注6) <elritercept> | アクチビンAおよびB阻害薬(注射剤) | 生物学的製剤他 | 骨髄異形成症候群(MDS)に伴う貧血 | 米国 欧州 | P-Ⅲ(注7) |
骨髄繊維症(MF)に伴う貧血 | ― | P-Ⅱ | |||
TAK-853(注8) <mirvetuximab soravtansine-gynx> | 抗体薬物複合体 葉酸受容体α(FRα)が標的(注射剤) | 生物学的製剤他 | プラチナ製剤感受性卵巣がん | 日本 | P-Ⅲ |
プラチナ製剤抵抗性卵巣がん | 日本 | P-Ⅱ | |||
TAK-012 | 可変デルタ1 (Vδ1) | 細胞治療 | 再発・難治性の急性骨髄性白血病 | ― | P-Ⅰ |
(注1)HUTCHMED社との提携
(注2)Pfizer社との提携
(注3)German Hodgkin Study Groupが実施したHD21試験のデータに基づく申請
(注4)2025年6月、当社は欧州委員会(EC)より承認を取得したことを公表
(注5)Protagonist Therapeutics社との提携、開発は同社が主導
(注6)Keros Therapeutics社との提携
(注7)ElriterceptのMDSを対象とした試験は被験者登録中
(注8)AbbVie社との提携、プラチナ製剤感受性卵巣がんを対象としたグローバルP-Ⅲ試験は同社が主導
2025年5月8日(決算発表日)における当社グループのその他の希少疾患品目のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
開発コード <一般名> 製品名 (国/地域) | 薬効(投与経路) | モダリティ | 適応症/剤型追加 | 国/地域 | 開発段階 |
TAK-620(注1) <maribavir> LIVTENCITY | ベンズイミダゾールリボシド系阻害薬 (経口剤) | 低分子 | 臓器移植(造血幹細胞
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