企業兼大株主本田技研工業東証プライム:7267】「輸送用機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社および連結子会社の研究開発は、先進の技術によって、個性的で国際競争力のある商品群を生み出すことを目的としています。製品に関する研究開発につきましては、当社のほか、㈱本田技術研究所、ホンダディベロップメントアンドマニュファクチュアリングオブアメリカ・エル・エル・シーを中心に、また、生産技術に関する研究開発につきましては、当社のほか、ホンダディベロップメントアンドマニュファクチュアリングオブアメリカ・エル・エル・シーを中心に、それぞれ現地に密着した研究開発を行っています。

 当社は電動事業のさらなる強化、加速をはかるため、電動事業の強化に向けて2022年4月に発足した事業開発本部をベースとし、電動事業開発本部を発足しました。この本部に、四輪事業に関わる事業戦略機能とEVの商品開発機能、ならびに二輪・パワープロダクツ事業に関わる電動領域の戦略および開発機能を集約し、「電動事業のさらなる加速」とモビリティの拡がりによる「新たな価値創造」の実現をめざしていきます。

 当連結会計年度に発生した研究開発支出は、1兆2,106億円となりました。

 また、当社および連結子会社では研究開発支出の一部について、無形資産に計上しています。連結損益計算書に計上されている研究開発費の詳細については、連結財務諸表注記の「21 研究開発費」を参照ください。

 セグメントごとの研究開発活動の状況につきましては、以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。詳細は「3 事業等のリスク」を参照ください。

(二輪事業)

 二輪事業では、「チャレンジする組織風土を最大化し、今後の環境変化を乗り越え、手の届く価格で、お客様に喜んでもらえる商品を創造し続けられるものづくり集団となる」を方針として、研究開発活動に取り組んでまいりました。

 主な成果として、クラッチコントロールを自動制御することで、ライダーの手動によるクラッチレバー操作を不要とした、「Honda E-Clutch」を搭載する、「CB650R E-Clutch」「CBR650R E-Clutch」をタイプ設定し、2024年6月に日本、2024年9月に米国にて発売しました。「Honda E-Clutch」は、発進、変速、停止など、駆動力が変化するシーンで、ライダーのクラッチレバー操作を必要とせず、最適なクラッチコントロールを自動制御することで、違和感のないスムーズなライディングを実現する電子制御技術です。また、ライダーの要求に幅広く対応するため、電子制御によるクラッチコントロール中でも、ライダーがクラッチレバー操作を行えば、通常のマニュアルトランスミッション車と同様、手動によるクラッチコントロールを行えるようにしています。

 また、「X-ADV」はHonda二輪車として初めて、着色済みのバイオエンジニアリングプラスチックを外装の一部に採用することにより、省資源化や製造工程におけるCO2削減(注1)に寄与しています。加えて、販売店から回収したHonda四輪車の廃棄バンパーや自動車、家電などの製造過程において発生する余分な樹脂をリサイクル材として使用しています。

 さらに、 2024年11月にイタリア・ミラノで開催された「EICMA 2024」にて発表した「PCX」は、日本をはじめとした先進国やインドネシア、タイなど、グローバルで販売を開始しました。「PCX」にはアバンギャルドで流麗なデザインを採用し、新形状のヘッドライトにはバイファンクション機能付きシグネチャーを搭載しました。さらに、海外のお客様に向けて新たに追加されたデラックスバージョンでは、スマートフォンと接続することで、通話やナビゲーション機能などを利用できるHonda独自のサービス「Honda RoadSync」、5-inch TFTメーター、アップグレードされたサブタンク付きリアサスペンションを搭載し、お客様の幅広いニーズに対応しました。

 加えて、二輪車として世界で初めて(注2)「電動過給機」付き新型V型3気筒エンジンを搭載したコンセプトモデルを初公開しました。二輪車として世界初の電動過給機を採用し、エンジン回転数に関わらず任意に過給をコントロールする事で、低回転からハイ・レスポンスなトルクデザインを実現しています。加えてスペースが限られている二輪車において、自由度高く配置可能な特徴を活かしてマスを集中化し、インタークーラーを必要としない設計を行う事で軽量化にも貢献しています。今後、HondaのFUNモデルへの適用を予定しており、量産化に向け、引き続き開発を行っていきます。

「環境負荷ゼロ社会の実現」へ向けた取り組みとして、2040年代には全ての二輪製品でのカーボンニュートラルを実現することを目標にしています。この目標を達成するため、今後の環境戦略の主軸として二輪車の電動化に取り組んでおり、2024年を電動二輪車のグローバル展開元年と位置付け、電動二輪市場への参入を本格化しています。

2024年10月にインドネシアにおいて、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」2個を動力用電源に採用した「CUV e:」、固定式バッテリーを搭載した「ICON e:」の電動二輪パーソナルコミューター2機種を発表しました。「CUV e:」は、Honda独自開発の自社製モーターを採用し、磁気回路と構造の最適化により高効率化を図ることで、航続距離向上に寄与しています。また、バイクとスマートフォンをBluetoothで接続することで、通話やナビゲーション機能などを利用できるHonda独自のサービス、「Honda RoadSync Duo」を装備したタイプも設定しています。「ICON e:」では、後輪にコンパクトなインホイールモーターを採用し、パワーコントロールユニットがモーター出力を効率的に制御することで、一充電あたりの走行距離50km以上(注3)を実現しました。「CUV e:」と「ICON e:」は、両モデルともインドネシア国内での生産を予定しており、それぞれの地域のニーズに応じて適切な場所で生産をするとともに、インドネシアを皮切りにグローバルに展開していきます。また、電動コミューターのラインアップの強化により、「Honda Mobile Power Pack e:」 搭載モデルのみならず、固定式バッテリー搭載モデルも加わることで、今後もお客様の求めに応じて多様な選択肢を増し、電動二輪車をより身近なものにしていきます。

 また、2024年11月にインドにおいて、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」2個を動力用電源に採用した「ACTIVA e:」、固定式バッテリーを搭載した「QC1」の電動二輪パーソナルコミューター2機種を発表しました。「ACTIVA e:」は、Honda独自開発の自社製モーターを採用し、定格出力4.2kW、最大出力6.0kW、また磁気回路と構造の最適化により高効率化を図ることで、日常の使い勝手に十分な航続距離102km(注3)を実現しています。さらに、バイクとスマートフォンをBluetooth接続することで、通話やナビゲーション機能などを利用できるHonda独自のサービス、「Honda RoadSync Duo」を装備したタイプも設定しています。「QC1」では、後輪にコンパクトなインホイールモーターを採用し、定格出力1.2kW、最大出力1.8kW、またパワーコントロールユニットがモーター出力を効率的に制御することで、一充電あたりの航続距離は80km(注3)を実現しています。「ACTIVA e:」と「QC1」は、両モデルともインド国内での生産となり、インド市場で高まる電動モビリティへのニーズに応じて電動コミューターのラインアップを強化していきます。また、インドの主要3都市(ベンガルール、デリー首都圏、ムンバイ)において、ホンダパワーパックエナジーインディアプライベート・リミテッドがバッテリーシェアリングサービス「Honda e:Swap」を展開し、お客様により安心な移動体験を提供します。

 さらに、2024年11月にイタリア・ミラノで開催された「EICMA 2024」にて、電動二輪車のコンセプトモデル「EV Fun Concept」、「EV Urban Concept」を初公開しました。「EV Fun Concept」では、Hondaの四輪車とパワープロダクツで培ったノウハウと技術を応用し、 「EV Fun Concept」のシステムおよび充電機能を構築しました。加えて、バッテリーは四輪車と同じ規格の急速充電器「CCS2(注4)」に対応し、軽さとのバランスを最適化して、急速充電に対応するとともに、街中での使い勝手に必要十分な航続距離100km以上を想定して開発しており、2025年に投入を予定しています。また、「EV Urban Concept」では、機能を研ぎ澄ますことで生まれる本質的かつ精緻なスタイリングデザインや直感的なHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)、ソフトとハードの融合が生み出す新しい体験によって、人や社会と協調・共鳴していく近未来のモビリティの姿を具現化しました。より多くのお客様へ移動の自由を開放するとともに、お客様一人ひとりのモビリティライフの可能性を拡張することをめざします。

 モータースポーツでも、2024 MFJ全日本トライアル選手権シリーズに、㈱ホンダ・レーシングが運営するワークスチーム(注5)「Team HRC」として、電動トライアルバイク「RTL ELECTRIC」で参戦するなど、新たな電動二輪車レースに挑戦することで、技術の強化を進めていきます。

 二輪事業に係る研究開発支出は、1,035億円となりました。

(注) 1 塗装の工程がなくなることによりCO2削減に寄与しています

2 当社調べ(2024年11月時点)

3 当社テスト値

4 Combined Charging System Type2の略称、電気自動車急速充電器用コネクターの仕様

5 マシンを製造しているメーカーが運営しているチーム

(四輪事業)

 四輪事業では、「魅力ある強い商品のために総合力を発揮し、ものづくりプロセスの深化により、四輪事業を永続的に成長させる」を方針として研究開発に取り組んでまいりました。

 主な成果として、2024年6月に3代目となる新型「FREED」を発売しました。新型「FREED」では、「FREED」ならではの取り回しのしやすいボディーサイズを維持するため、2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」搭載による全長の拡大を45mm(注1)に留めました。また、1列目のシート形状を工夫し、ウォークスルーや2列目シートへのアクセス性を向上するなど、さらに使い勝手を高めています。新型「FREED」は、2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー(主催:日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会)で「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。

2024年12月には独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」の次世代技術を公開した「Honda e:HEV事業・技術取材会」を開催しました。「e:HEV」の特性を生かしながら、ドライバーとクルマの一体感を際立たせる「操る喜び」を追求した新機能「Honda S+ Shift」を新たに追加し、2025年に発売予定の「PRELUDE」を皮切りに順次搭載していきます。また、次世代「e:HEV」では、小型・中型それぞれのシステムにおいて、エンジン、ドライブユニットをはじめとする構成部品および制御技術の刷新を行い、環境性能と走行性能のさらなる向上をめざします。

「環境負荷ゼロ社会の実現」へ向けた取り組みとして、当社グループは2040年までにEV・FCEV販売比率をグローバルで100%とする目標を掲げ、各地域の市場特性にあわせたEVの投入を進めています。

2024年10月に新型軽商用EV「N-VAN e:」を発売しました。「N-VAN e:」は、大容量バッテリーの採用、電動アクスルの小型化、高電圧部品の集中配置による部品占有スペースの最小化などにより、商用ユースに求められる実用航続距離と大容量の荷室空間の両立をめざしました。主な商用ユースの一つである配送業務にも十分対応する一充電走行距離として、WLTCモードで245km(注2)を実現したほか、充電時間は普通充電(6.0kW出力)(注3)で約4.5時間、急速充電(50kW)(注4)で約30分と、利便性も追求しています。さらに、バッテリー冷却・加温システムにより、高温や低温によるバッテリーの性能低下を抑制し、特に冬季における充電時間の短縮と航続距離の向上に寄与します。

 北米においては、2025年1月に米国ネバダ州ラスベガス市で開催された「CES 2025」において、2026年にグローバル市場への投入を開始するEV「Honda 0 シリーズ」の「Honda 0 SALOON」、「Honda 0 SUV」のプロトタイプを世界初公開するとともに、「Honda 0 シリーズ」に搭載する独自のビークルOS「ASIMO OS」を発表しました。

 シリーズのフラッグシップである「Honda 0 SALOON」は、新開発のEV専用アーキテクチャーをベースに、「Honda 0 シリーズ」の開発アプローチである「Thin, Light, and Wise.(薄い、軽い、賢い)」を具現化する数々の次世代技術を搭載します。「CES 2025」ではその中でも、Hondaが世界で初めて実用化した自動運転(AD)レベル3技術に裏打ちされる信頼性の高い自動運転技術や、「ASIMO OS」によりユーザー一人ひとりに“超・個人最適化”された移動体験など、「Honda 0 SALOON」における“Wise”の一端を紹介しています。「Honda 0 SALOON」の量産モデルは今後、北米市場へ投入し、その後、日本や欧州などグローバルへの展開を予定しています。

 さらに、「Honda 0 シリーズ」の第1弾となる、中型SUVのプロトタイプ「Honda 0 SUV」は、「Thin, Light, and Wise.」のアプローチをSUVに適用することで、空間の広さを一層拡張し、開放的な視界と自由度の高い広々とした居住空間を実現しました。「ASIMO OS」がもたらす、ユーザー一人ひとりに“超・個人最適化”され、進化し続ける空間価値やデジタルUXを実現するとともに、Honda独自のロボティクス技術で培った、3次元ジャイロセンサーを用いた高精度の姿勢推定と安定化制御などにより、さまざまな路面環境において安心で意のままのダイナミクスを実現します。「Honda 0 SUV」の量産モデルは、今後、北米市場へ投入し、その後日本や欧州などグローバル各地域へ展開していきます。

「ASIMO OS」は、ソフトウェアプラットフォームとして、AD(自動運転)/ ADAS(先進運転支援システム)やIVI (In-Vehicle Infotainment:車載インフォテイメント)などのクルマのシステムを制御するECU (Electronic Control Unit)を統合的にコントロールします。

 この「ASIMO OS」を基盤として車載ソフトウェアを常にアップデートすることで、移動に楽しさや快適性をもたらす空間価値やデジタルUX、人車一体の操る喜びを司るHonda独自のダイナミクス統合制御などの機能やサービスを、車両を販売した後も、OTA(Over The Air)を通じ、ユーザー一人ひとりの嗜好やニーズに合わせて進化させていきます。例えばAD技術において、「Honda 0 シリーズ」では、まず高速道路での渋滞時アイズオフから自動運転技術を搭載し、OTAによる機能アップデートを通じて、運転支援・ADレベル3適用の範囲を拡大していきます。自動運転レベル3では、運転主体が人からクルマへと変わり、映画鑑賞やリモート会議など、これまでにはできなかった「ドライバーによる移動中のセカンドタスク」が可能となります。Hondaは、この技術を進化させることで、「交通事故死者ゼロ」の実現に向けて取り組むとともに、世界に先駆けて全域アイズオフを実現し、移動の新たな可能性を切り開きます。「ASIMO OS」は、「Honda 0 SUV」や「Honda 0 SALOON」の量産モデルを含む、「Honda 0 シリーズ」の各モデルへの搭載を予定しています。

Hondaは、これからもカーボンニュートラル達成に向けた取り組みを推進していきます。

 四輪事業に係る研究開発支出は、1兆742億円となりました。

(注) 1 3列シートの場合

2 一充電走行距離は定められた試験条件での値

    WLTCモード:市街地、郊外、高速道路の各走行モードを平均的な使用時間配分で構成した国際的な走行モード

3 普通充電は、充電残量警告灯が点灯した時点から、満充電までのおおよその時間

4  急速充電は、充電残量警告灯が点火した時点から、充電量80%までのおおよその時間

(パワープロダクツ事業及びその他の事業)

 パワープロダクツ事業では、「暮らしの“未来”を創造し「役立ち」と「喜び」を更なる高みへ」を方針として、研究開発活動に取り組んでまいりました。

 主な成果として、2025年2月に米国・マイアミで開催された「マイアミ国際ボートショー2025」にて、モデルチェンジした大型船外機「BF250」「BF225」「BF200」「BF150」「BF140」「BF135」「BF115」の7機種を世界初公開しました。機能面においては、操船サポート機能を充実させ、操船用品の拡充として「電子制御リモートコントロールシステム(DBW)新型フラッシュマウントリモコン」と「7インチ大型マルチファンクションディスプレイ」を新たに設定しました。また、人間工学に基づいてデザインされたグリップ形状や、大型ディスプレイにより、直感的な操作を可能としています。加えて、船外機のエンジン回転数や速度に合わせて、あらかじめ設定した船体姿勢へ自動制御することで、より簡単で快適な操船を実現する「トリムサポート機能」や「クルーズコントロール機能」に加え、自動で船外機本体のフルチルトアップ/ダウン(注1)をおこなう「オートマチックチルト機能」を装備するなど、スムーズで快適な航行を実現しています。さらに、新型「BF250」「BF225」「BF200」は、O₂センサーを採用することで空燃比制御の高精度化を実現し、燃費・環境性能をクラストップレベル(注2)だった従来モデルに対してさらに向上させました。また、オイルフィルター交換時、エンジンカバー内へのオイル漏れを防ぐ機構を追加し、メンテナンス時の作業性を高めています。なお、これらの製品は2025年半ばから日本、北米、欧州やアジア地域で順次発売する予定です。

 船外機以外については、2024年7月にロボット芝刈機/草刈機「Miimo」シリーズの改良モデル「Miimo HRM2500 Live」と「Grass Miimo HRM4000 Live」を発売しました。従来モデルでご好評をいただいている刈取性能、走破性はそのままに、新モデルでは、エリアワイヤーを識別する信号を1種類から4種類に増やし、隣接する複数の作業エリアを識別できるようにしました。これにより、これまで2台以上の「Miimo」シリーズを同時に使用する際に発生していた刈り残しが発生せず、より広範囲の芝刈り・草刈りを手間なく行いたいというニーズに応えました。

 さらに、2024年10月に米国・ルイビルで開催された「Equip Exposition 2024」にて、電動歩行型芝刈機「HRN」「HRX」「HRC」を発表しました。「HRN」「HRX」「HRC」は空冷ブラシレス電動モーターを搭載しており、モーター内部の主要部品に新鮮な空気を送り込むことで、モーターが低温に保たれ、屋外の厳しい運転条件下でも優れた性能を発揮します。このモーターは高トルクを発揮して回転数を維持するため、きれいで均一なカットが可能であり、中程度の消費電力でありながら、高い出力を実現しています。なお、「HRN」「HRX」「HRC」は2025年の投入を予定しています。

 また、汎用エンジンについては、2024年10月より単気筒「GX」シリーズのハイエンドモデルとなる「GX430」の生産を開始しました。排気量425cm3の「GX430」は、「GX」シリーズの耐久信頼性と従来の「GX390」との搭載互換性を有するサイズを保ちながら、クラストップクラスの出力性能を実現しました。建機、農機、発電機等の一般搭載用とし、高圧縮比化と吸排気ポート形状の見直しにより現「GX390」比+10%の高出力化を実現しています。さらに、排気量アップによる燃料消費増加を、吸排気システムおよびクーリングファンなどの冷却システムの工夫により、現「GX390」同等レベルにまで抑えました。排ガス規制対応は中国排ガス規制第二段階の認可取得済であり、今後、国内向け日本陸内用内燃機関協会三次規制に適合予定です。加えて、東南アジアや南米、特にタイやフィリピン市場でご好評をいただいているロングテールボート搭載専用仕様としてより高出力タイプを設定しました。

「環境負荷ゼロ社会の実現」へ向けた取り組みとして、2025年2月より1年間の予定で、スウェーデンで交換式バッテリー搭載電動二輪車のレンタルおよびシェアリングサービスを展開するGoCimoとスウェーデンのマルメ市においてバッテリーシェアリングサービスの実証実験を実施しています。Hondaが欧州で販売する電動二輪コミューター「EM1 e:」を用いて、マルメ市内3カ所に設置するバッテリー交換ステーション「Honda Power Pack Exchanger e:」で、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」のバッテリーシェアリングサービスの検証を行っています。この取り組みを皮切りに、欧州の大都市で法人ユーザー向けを中心にHondaの製品を用いたバッテリーシェアリングサービスを拡大していくことで、欧州における二輪車の電動化促進と、交換式バッテリーの普及をめざし、モビリティの電動化をサポートするとともに、低炭素社会の実現に貢献していきます。

 航空機においては、Honda独自の最先端技術を開発して、空の世界においても新しい価値を創造し、長期的な観点から航空機ビジネスを成長させていくためのビジネス基盤の構築をしてまいりました。

2024年10月に最新型機「HondaJet Elite II」のオートスロットル機能について、米国連邦航空局(FAA)より認証を取得しました。これにより「HondaJet Elite II」は、ベリーライトジェットカテゴリー内のツインエンジンジェット機として、オートスロットル機能を搭載する世界初のモデルとなります。オートスロットル機能は、パイロットが設定した条件に合わせてエンジンの出力や機体のスピードなどを自動的に調整するシステムです。離陸時から着陸時まで、飛行中のさまざまな状況でシステムによる制御がパイロットのスロットル操作をサポートすることで、パイロットの作業負荷を大きく軽減するとともに、乗客の皆様の搭乗体験をより快適なものとします。今回のFAA認可を受け、まず米国向けの機体にオートスロットル機能が新たに導入されます。また、今後、日本を含む他の国と地域でもオートスロットル機能の導入を検討していきます。

 また、2025年2月に米国ノースカロライナ州グリーンズボロ市内の生産工場にて、新型小型ビジネスジェット機「HondaJet Echelon」の型式認定用テスト機の製造を開始しました。今後の「HondaJet Echelon」型式認定用テスト機の製造、および将来の量産開始を見据え、生産工場内に「HondaJet Echelon」専用の生産ライン開設を進めており、2024年末には、各工程で使用する主要設備の搬入を完了しています。さらに、2025年1月には、ASITF(Advanced Systems Integrated Test Facility:システム統合検証施設)内のフライトシミュレーターによる初飛行を行い、飛行制御システムなど、主要な航空機システムの検証を開始しました。今後は、型式認定用テスト機の初飛行および型式証明取得に向けた取り組みを加速していきます。

 パワープロダクツ事業及びその他の事業に係る研究開発支出は、328億円となりました。

(注) 1 船外機を水面から引き上げる、または操船可能な角度に船外機を調整するための操作

2 当社調べ(2025年2月時点)

 次世代技術分野においては、量産化に向けて独自に研究開発を進めている全固体電池のパイロットラインを、栃木県さくら市の本田技術研究所(栃木Sakura)の敷地内に建設し、2024年11月に初公開しました。パイロットラインの延床面積は約27,400㎡で、電極材の秤量・混練から、塗工、ロールプレス、セルの組み立て、化成、モジュールの組み立てまでの各工程の検証が可能な設備を備えています。従来の液体リチウムイオン電池の製造プロセスをベースにしながら、全固体電池特有の工程となる固体電解質層の緻密化に寄与し連続加工が可能な、ロールプレス方式を採用することで、電極界面との密着性を高めるとともに生産性の向上をめざしています。さらに、正極と負極の一体化を含む一連の組み立てプロセスを集約するとともに高速化することにより、1セルあたりの製造時間の大幅な短縮をめざします。また、作業の安全性や電池性能の確保に必要な低露点環境を最小化する生産管理技術を構築するなど、使用電力をはじめとした間接コスト低減にも取り組んでいます。今後、このパイロットラインで量産プロセスの確立に向けた技術検証を行いながら、並行してバッテリーセルの基本仕様を決定し、2020年代後半に投入する電動モデルへの搭載をめざします。

2025年2月に開催された「H2&FC EXPO(春)~第23回 水素・燃料電池展~」にて、2028年3月期に量産開始予定の「次世代燃料電池モジュール」、ならびに2026年に生産開始予定の燃料電池定置電源について、それぞれ仕様およびスペックを世界初公開しました。「次世代燃料電池モジュール」は、ゼネラルモーターズ(GM)と共同開発した現行モデルの次世代となるモデルで、当社グループが独自に開発した燃料電池モジュールです。定格出力150kWを実現するほか、現行モデルに対して製造コストを半減し、耐久性を2倍以上に向上します。また、容積出力密度(注)を3倍以上に高めて小型化を実現したことで、搭載レイアウトの自由度が向上しています。当社グループは、「次世代燃料電池モジュール」の搭載・適用ドメインや販売地域を拡大していくことで、持続可能なエネルギー社会の実現へのさらなる貢献をめざしていきます。また、2026年に生産開始を予定している燃料電池定置電源は、Hondaの燃料電池自動車「CR-V e:FCEV」にも搭載されている燃料電池を活用し、工場や事業所などの大型施設向けに水素由来のクリーンな電力を供給する定置型蓄電システムです。冷却システムや内部レイアウトの設計を最適化することでコンパクトなサイズを実現し、お客様の設置環境に柔軟に対応します。加えて、信頼性の高いバックアップ電力を迅速に提供するために、起動から10秒以内に電力の供給を開始する高い応答性をめざしています。当社グループは、本製品を通じてお客様の多様な電力ニーズに対応する電力を供給することはもちろん、製品の導入からアフターサービスまで幅広い支援を行い、お客様の脱炭素化に貢献していきます。

 なお、これらの取り組みに係る研究開発支出は各事業に配分されています。

(注) 単位容積あたりから出力できる電気エネルギー

 当連結会計年度末時点において、当社および連結子会社は、国内で11,800件以上、海外で25,400件以上の特許権を保有しています。また、出願中の特許が国内で4,700件以上、海外で10,600件以上あります。当社および連結子会社は、特許の重要性を認識していますが、特許のうちのいくつか、または、関連する一連の特許が終了または失効したとしても、当社および連結子会社の経営に重要な影響を及ぼすことはないと考えています。

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