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【東証スタンダード:9377】「倉庫・運輸関連業」
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企業概要
文中における将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、技術力を極め、環境社会に貢献することをグループ共通の企業理念としており、企業活動を通じて「経済的価値」と「環境・社会的価値」を創出することを目指しております。
(2) 目標とする経営指標
当社は東京証券取引所へ提出している「スタンダード市場の上場維持基準への適合に向けた計画書」に基づき、経過措置期間終了の2025年3月末までに、スタンダード市場の上場維持基準の適合「流通株式比率25%以上」に向けて、速やかに流通株式比率の改善ができるよう取り組みを進めてまいりました。
その結果、2025年3月末時点において、東京証券取引所より、上場維持基準(分布基準)への適合状況について「適合」の通知を受領し、全ての基準において適合していることを確認いたしました。
これにより、最重要課題の一つであった「上場維持基準への適合」を無事に達成いたしました。引き続き株主との対話を重視したIR活動やガバナンス体制の強化を継続し、さらなる企業価値の向上を目指してまいります。
2024年度の経営計画では、資本効率の高い経営を目指し、人的資本投資/研究開発投資の実行を加速化させることを織り込み一時的な増収減益としていました。投資計画を着実に実行しつつ、業績も堅調に推移し、最終的には増収増益を達成しております。2025年度においては、これまでの取組により成長基盤が整い、遅れていた老朽化設備の更新投資についても2024年度に更新計画を立案し、2025年度より本格的に推進するため、2025年度期初には10億円の資金調達も行っております。
このような足元の業績進捗及び事業環境の変化を踏まえ、「中期経営計画2022-2025」の最終年度(2026年3月期)の目標値を以下のとおり上方修正しております。
◇修正後の中期目標(2026年3月期)
・連結売上高:160億円以上(従来:150億円以上)
・営業利益率:10%以上(変更なし)
・ROE(自己資本利益率)10%以上(変更なし)
このような業績と経営基盤の強化を背景に、当社は2025年度上期中を目途に、次期中期経営計画(2026~2030年度)の策定・公表を予定しており、その最終年度となる2030年度には、連結売上高200億円以上を目指す方針です。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、「中期経営計画2022-2025」において、3つのステートメントを宣言しています。「ESG経営の推進」により、「成長の実現」と「戦略投資と還元の両立」の達成を実現させるために、経営戦略の3本の柱である、「選択と集中」、「事業基盤のシフト」、「経営基盤の強化」を実行することとしてきました。
2025年度は中期経営計画期間最終年度となりました。中期経営計画期間3年間で3つのステートメントの進捗につきましては、以下のとおり着実に実行してまいりました。
3つのステートメント:
「ESG経営の推進」では、環境社会実現に向けた貢献、人材育成と社員福祉の充実、経営の透明性健全性に重きを置いたガバナンス強化
「成長の実現」では、新たな環境事業の創出、空港外領域事業の更なる展開
「戦略投資と還元の両立」では、資本効率の向上、積極的な戦略投資と機動的な株主還元に加え人的資本投資・研究開発投資を実行
経営戦略の3本の柱:
「選択と集中」では、安定した利益の確保と低採算事業の事業性評価やビジネスモデルの見直しと新たな成長事業への経営資源の再配分を行ってまいります。低採算事業につきましては、改善策を講じ立て直しを図ってまいります。業績改善が見込まれない場合には、当社の主力事業との関連性等も踏まえ、必要に応じ事業売却や事業縮小も含めた対応を行ってまいります。当事業年度末現在、選択と集中の一環としてAGP電気サービスは2023年3月末に新規契約を停止しました。現在は、一部些少な契約を残しておりますが、順次解約を進めております。
「事業基盤のシフト」では、これまで日本国内の主要空港に対して行ってきたサービスや事業を、空港外や海外、地方に対しても提供してまいります。さらには新規産業(物流保守サービス)への参入、新商材の拡充、多角化を推し進めてまいります。当事業年度末現在、物流保守サービスにつきましては、鋭意、市場開拓を進めております。今後は、AI、IoT等の革新技術を取り入れたサービス形態の変革を推し進める計画です。
「経営基盤の強化」では、組織体制の整備、事業運営管理の適正化、中長期的な企業成長に向けて適正な財務基盤の構築により、引き続き経営基盤の強化に努めてまいります。
当社が有する高い技術力を駆使し、環境社会に対する更なる貢献に努めるとともに、空港の安全を遵守・維持するために培われた技術と経験を活かして、地方空港、海外空港、空港外に対してもサービスの提供を拡充し、さらなる社会貢献と企業成長に挑戦してまいります。
(4) 当社グループ中期経営計画(2022-2025)3年間の取組実績について
① ESG経営の推進
区分 | 取組内容 |
環境社会実現に向けた貢献 | ・航空機用地上電源設備(GPU)利用の促進 ・電動ブレーキクーリングカート製品を開発し、市場に導入 ・バッテリー駆動式GPU(Be power.GPU)を開発し、市場に導入 ・省エネ法に基づく評価制度7年連続Sクラス評価を獲得 ・水素運搬・充てん作業助成業務を受注 ・CO2排出量29.4万トン削減 ・100%バイオディーゼル燃料の実証検証 ・脱炭素及び環境に関する協議会への参加 ・エネルギーマネジメントシステム( EMS )の開発 ・空港内車両のEV化(5台導入済み) |
人材育成と社員福祉の充実 | ・ダイバーシティ研修の実施、推進プロジェクトの設置 ・国際女性ビジネス会議の参加(2023年より常勤役員全員参加) ・女性従業員24人(うち、管理職4人) ・外国籍従業員 2019年から5年連続採用 2025年3月時点59人(全体の約10%) ・柏ガーデン野菜収穫イベント、地域の子ども食堂への寄付活動 ・男性の育児休業取得率100%(33.3%から109.1%) ・従業員の賃金水準を2年連続引き上げ(2024年3.6%、2025年8.2%) ・従業員株式給付制度(J-ESOP)の導入 |
経営の透明性/健全性に 重きをおいたガバナンス | ・改定コーポレートガバナンス・コードへの準拠対応 (2025年3月 残7項目未対応) ・機関投資家及び個人投資家に向け説明会の定期開催 (四半期ごとの年間4回開催、2022-2025中期経営期間累計:24回) ・機関投資家向けの現場見学実施 ・One on One ミーティングの拡充
2022年: ・指名・報酬委員会の設置。取締役選解任や報酬決定における客観性・透明性を制度化し、独立社外取締役主導で審議プロセスを明確化 2023年: ・経営の中核機能である財務・資本政策を担う執行役員の取締役就任/取締役会9名体制の確立 2024年: ・経営体制の刷新 ・CxO(チーフオフィサー)制度の導入 ・利益相反取引に関する特別委員会の設置など経営の透明性と公正性向上 ・空港業界外からの女性役員の登用により、意思決定の視野を広げ、組織に新たな発想と柔軟性をもたらす経営体制へ進化 2025年: ・東京証券取引所スタンダード市場の上場維持基準に適合 |
② 成長の実現
③ 戦略投資と還元の充実
区分 | 取組内容 |
成長事業投資 | 成長事業への投資として16億円の予算を計画しておりましたが、検討対象であった空港内EV化関連事業のM&A案件について、財務デューデリジェンスの結果、想定以上の財務リスクが判明したため、当該投資を見送る判断をいたしました。この結果、当該分野における当期の投資実行はありませんでした。 |
空港再編・拡張への設備投資 | 空港再編工事に関連して2億61百万円の投資を計画しておりましたが、工事工程の見直し等により、当期の実行額は約2億円にとどまりました。 |
既存設備の更新投資 | 老朽化した既存設備の更新に対し、当初6億円程度の投資を予定しておりましたが、工事業者の人員不足等の影響を受け、一部工事が次期以降に繰り延べとなったことから、当期の投資額は4億51百万円となりました。 |
人的資本投資/研究開発投資 | 成長投資の一部と計画していた、人的資本投資を1億70百万円、研究開発投資を88百万円実施いたしました。 |
株主還元の拡充 | 中期経営計画期間(4年間)における累計総還元性向は100%以上とする方針のもと、当該3年間における配当総額は21億50百万円となり、(自己株式44万株の取得・消却を含む)累計総還元性向は概ね100%を維持しております。 |
(5) 当社を取り巻く経営環境
◆政治的な側面(政府の方針や影響する法律・制度など)
・ GX(グリーントランスフォーメーション)政策の制度化と空港インフラへの波及
政府は2023年に内閣官房GX実行会議にて「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定し、再エネ導入、インフラ投資、カーボンプライシングなどを含む脱炭素政策を加速させています。また、国土交通省航空局も2022年に「空港分野の脱炭素化アクションプラン」を策定し、APU*1使用時間短縮、GPU*2/PCA*3の導入、EV化を空港事業者に求めています。
これにより、GPU導入促進、再エネ調達、エネルギーマネジメントシステム(以下、「EMS」という」)による電力制御の高度化といった“インフラ側”の脱炭素責任が明確化されつつあり、当社は規制に適応するインフラ提供事業者としての役割を果たすことが、事業機会とリスクの両面に直結する状況にあります。
このような政策環境の下、当社は環境負荷低減と収益性の両立を実現する成長戦略の一環として、設備更新やエネルギー関連技術への戦略的投資を積極的に推進してまいります。
*APU:補助動力装置(Auxiliary Power Unit)
*GPU:地上動力設備(Ground Power Unit)
*PCA:空調設備(Pre Conditioned Air)
・ ガバナンス強化と透明性の確保に向けた社会的要請
企業経営におけるガバナンスの高度化は、金融庁・東京証券取引所・内閣府が連携して進める重要政策分野であり、上場企業には形式的遵守を超えた経営判断の独立性、取締役会の実効性、説明責任の強化が求められています。
また、2023年12月に東京証券取引所が公表した「支配株主を有する上場会社における独立社外取締役に期待する役割」では、実質的支配構造への対応、利益相反管理、説明責任の明確化が一層重視される方向性が明示されました。当社は、法的にはいかなる株主も“支配株主”に該当しておりませんが、主要株主間の意思形成のあり方によっては実質的な影響が及ぶ可能性があるという認識のもと、ガバナンス上のリスクを適切に管理することが重要だと考えています。
そのため当社は、「独立性の確保」「説明責任の遂行」「非財務情報の適切な開示」を通じて、形式的支配関係の有無にかかわらず、市場や社会からの信頼に足るガバナンス体制の構築に取り組んでまいります。
あわせて、経営陣の報酬制度や株主還元方針、サステナビリティ及びサイバーリスクへの対応体制などについても、非財務情報の開示を含む形で適切に整備・運用し、投資家・社会からの信頼向上に取り組んでまいります。
※以下、本有価証券報告書では、「支配株主」という用語を用いますが、これは東京証券取引所が形式的に定義する「議決権過半数を保有する単独株主」ではなく、「実質的に取締役構成・株主提案・資本政策に対して共同で影響力を行使しうる株主グループ(日本航空株式会社、日本空港ビルデング株式会社及びANAホールディングス株式会社(以下、「主要株主3社」という)を指して使用しております。主要株主3社の議決権合計保有比率は71.14%にのぼり、みなし共同保有者相当となり、支配株主と同様の行動が可能な構造となっている点を、評価・ご理解の前提としていただけますと幸いです。
・人的資本経営と構造的賃上げへの政策対応
政府は「新しい資本主義実現会議」や「骨太の方針」を通じ、人的資本投資、労働生産性の向上、構造的な賃上げの実現を中核戦略として推進しています。企業に対しては、スキル開示、エンゲージメントの可視化、ダイバーシティ、健康経営の推進などが求められており、当社としても、多角的な労働力の確保、勤務体制を含めた働き方の見直し、処遇改善と人的資本投資を三位一体で推進し、多様な人材の活躍とイノベーション創出を支える組織基盤の構築に取り組んでまいります。
◆ 経済的な側面
航空・空港需要は経済状況に大きく左右され、訪日観光需要の回復は当社の動力設備稼働率向上に寄与しています。中国、韓国、台湾、ASEAN諸国からのインバウンド需要は継続的な拡大が見込まれ、当社の主要事業においても回復基調が続いています。
一方で、環境問題に対する関心が高まるなか、燃料価格や電力料金、人件費、資材調達費といったコストの上昇により、収益に対する下押し圧力も強まっており、戦略的な価格転嫁や設備投資の選別が求められています。為替変動の影響は現時点では軽微ですが、中長期的には資材調達コストのリスク要因となる可能性もあるため、調達戦略の多様化とコスト管理の徹底が重要となっています。
◆ 社会的な側面
労働人口の減少と人材の多様化への対応について、日本社会における少子高齢化は、空港業界の現場人材確保にも大きな影響を与えており、当社では技能継承・属人化解消・多様な人材確保を重要課題と捉えています。特に2025年度は、以下の取り組みを重点的に推進します。
・外国人技術者の採用・育成(Airport Ground Power (Thailand) との連携)
・女性・高齢者・非専攻層、及び非正規社員の積極登用
・マルチスキル化とDX(デジタルトランスフォーメーション)による現場高度化
・ダイバーシティとエンゲージメントを両立させる文化醸成
・本社機能(法務・人事・企画等)の専門化と強化
これらを通じて、現場と本社の両面から持続可能な組織力を構築してまいります。
従来は、現場起点の組織構造を見直す観点から現場経験者の異動を中心に担ってきた本社機能(間接業務)についても、専門性・継続性・客観性の観点から構造的な改革を進めています。
これまでは、現場志向が強く、管理機能・制度設計・戦略立案といった業務が十分に機能してこなかったという課題がありました。現在は、法務・経営企画・人事・総務などの間接部門に対し、社外から専門性を持つ人材を計画的に採用・配置することで、組織としての質的転換を図っています。これは単なる人材補充ではなく、全社的な業務高度化と内部統制の強化、ひいては本社機能の「経営の中枢」化を通じて、戦略性と実行力を備えた全社経営体制への転換を目指しています。
これまでの有価証券報告書等における開示のとおり、社員数の推移は以下のとおりであり、非正規社員を含めた全体としての人員数に大きな変動はなく、むしろ横ばいから微増の傾向にあります。
期末日 | 正社員数 | 総人員数(非正規含む) |
2022年3月31日 | 679人 | 727人 |
2023年3月31日 | 662人 | 722人 |
2024年3月31日 | 638人 | 742人 |
2025年3月31日 | 625人 | 740人 |
このように、正社員数は業務効率化等の観点から計画的に調整されている一方で、非正規社員を含めた全体人数はむしろ維持・強化されております。
当社は業務の効率化を進めており、定型業務のマニュアル化などを推し進めており、選択と集中をしつつ適切なリソース配分に努めています。
◆ 技術的な側面
空港インフラを取り巻く、AI、IoT、EMS、再エネ制御、サイバーセキュリティなどの先進分野の技術環境は急速に進展しており、これらは空港運営の脱炭素化に向けた取り組みによる環境負荷低減、空港インフラ整備の効率的な運用、安全性向上などの将来を見据えた持続可能性に直結する変革要素となります。
当社ではこれらを単なる業務効率化の手段にとどめず、事業競争力の源泉と捉え、研究開発 R&D(Research and Development)の強化を通じて、技術の蓄積・製品化・標準化を推進しています。今後は空港外・海外市場への技術展開も視野に、先端技術と自社ノウハウの融合を加速してまいります。
(6) 優先的に対処すべき事業継続上及び企業成長上における課題と施策
当社グループは、空港をご利用される全ての皆様に、中立的な立場で社会インフラサービスを公平に提供し続けられるサステナブルな会社を目指しております。
社会インフラを担う企業として、“安全”且つ外部環境の変化に即した“常に進歩・発展をした”サービスを提供し続ける責務を担っていると自覚しております。また、“技術”を駆使した設備投資を行い、“環境社会に貢献する”サービスを提供することを企業理念に掲げています。
これらを実現するためにESG経営を推進し、「成長の実現」と「戦略投資と還元の両立」を図り、持続的な成長を成し遂げて、企業価値向上と株主の皆様の共同の利益を最大化する事が最大の使命であると認識しており、その実現に向けた取り組みを推進してまいります。
① 財務視点から見た課題:成長の実現を見据えた「資本効率を意識した戦略投資と還元」の実現
当社は、独立した上場企業として、持続的な成長による企業価値の向上を目指し、成長事業の創出が急務であると認識しており、そのために必要となる事業投資、機能や事業を具備するためのM&Aなどの実行に加え、成長事業の創出を支える技術開発、新たな自社製品/機能を具備するための研究開発、省人化・省力化に資する研究開発など、当社の根幹を支える技術について、資金投入を積極的に推進し成長事業の創出を実現してまいります。
このために、戦略投資と還元の両立を目指し、成長分野への資本投入を行い、投下した資本コストを上回る形でのキャッシュリターンの最大化を図りたいと考えており、営業キャッシュ・フロー計画として、手元資金に加えて当該期間中の営業キャッシュ・フローと、資本効率の向上を目的にした調達を行うことで、財務レバレッジを高めながら、戦略投資と株主還元の充実を図る計画をしておりました。しかしながら、前述のとおり、この2年間の実績としては、将来の成長の実現に向けた「戦略投資」の実行が計画より遅れており、自己資本比率が上昇しました。
航空需要の回復が著しく業績は順調に推移しましたので、利益増加によるROEは向上したものの、資本効率の向上は図られなかったことは否めません。
現中期経営計画のFY25(2026年3月期)は、当社の将来のために、積極的に収益機会を求めて戦略投資の実行を推し進めると同時に、投資事業の収益性を見極めながら株主還元の充実を図り、戦略投資と還元の両立を実現してまいります。
・ BSを意識した経営の推進
中期経営計画策定から過去3年間、成長事業の創出に対する資本投入は実現できていません。2025年度からは、資本効率の向上を重要視し、売上や利益のみを意識した経営ではなく、経営資源の適切な配分による利益最大化を目指すBS経営へシフトします。
資本効率の高い経営を目指し、成長事業を創出するための戦略投資、空港再編・拡張に対する設備更新投資、それらを実行していくための人的資本投資、外部環境の変化に適応するための革新的な技術の進歩・発展に必要となる研究開発投資等を積極的に推し進められるよう再計画を行い、成長分野への積極的な資本投入により、資本効率を高めて企業価値向上を目指します。
・ 戦略投資の実行
2025年度からは当社の将来に向けて、成長分野への積極的な資本投入を行い営業キャッシュの最大化を追求していきたいと考えており、一時的に営業利益率の減少及びフリーキャッシュフローのマイナスを計画しております。
戦略投資に関しては、過度な投資とならぬよう、株主還元方針を念頭に、業績状況に沿って適切に投資と還元をバランスさせるだけではなく、投資事業の収益性や効率性を見極めながら、慎重に資金を活用してまいります。なお、資金計画については、これまで、利用に慎重であった有利子負債も、市場の動向と事業の状況を注視しながら積極的に活用し、当社の稼ぐ力の向上と成長のために活用してまいります。ただし、財務の健全性の維持の観点から、D/Eレシオ0.5倍を上回らないようにすることといたします。
② 「優先して対処すべき課題」の解決に向けた、業務執行運営体制の改革
a)CxO制度の導入
コーポレートガバナンス体制を強化しつつ、成長戦略の実現を事業領域の枠を超え、スピード感をもって事業部間の連携強化や資源配分の最適化を行うことを目的に、CxO制度を導入しています。
CxOは次の役割を担います。
・ 経営目標の達成に向けて戦略を立案し、各戦略担務ごとの方向性を決定し、進捗をモニタリング
・ 特に戦略目標である成長事業の創出、技術研究開発、財務戦略、資本政策等の実行を加速させるため、必要な指導を実施
・ 各戦略担務の成長/事業投資において、適切に投資判断基準を充たしているか否かの判断を行う
CxOは、最高経営責任を担うCEO、技術面から経営をサポートし、新規事業開発、技術研究開発の実現を担うCTO(最高技術責任者)、中期経営計画達成及び上場維持、企業価値向上に向けた戦略の立案と実行プロセスの構築を担うCSO(最高戦略責任者)、縦割り組織の壁を越えて横断的に業務を推進し、全社的な目標達成に向けオペレーションを一貫して管理を担うCOO(最高執行責任者)に加え、財務戦略、配当計画・資金調達の戦略立案と実行を担うCFO(最高財務責任者)の5名体制により、スピード感を持った経営の実践に努めてまいります。
b)戦略担務の設置
CxO制度の導入に加えて、各役員の担当部門における執行責任を負う従来の方式に加え、戦略目標の実行の加速化を目的に、各執行役員に合計9つの戦略担務を設定し、最終目標である企業価値向上に向けて、総力を挙げて推進してまいります。
具体的な戦略担務は、次のとおりです。
戦略担務の名称 | 具体的な内容 |
既存事業の基盤強化(売上増加) | 動力供給事業において安定的に更新投資及び新規投資が実行可能な基盤強化を目的に持続的事業成長を目指してまいります。 ①適切なプライシング、②ターゲット航空会社(新規顧客)のGPU利用による売上獲得、③地方空港展開による売上獲得 |
既存事業の基盤強化(費用抑制) | ・動力供給事業における移動機材対応 ①DX等の技術を導入し、移動式GPU機材の機材渡しの仕組みを検討 ②具体的な交渉を開始 ・BPR*1:業務を可視化し、DX化の推進と業務集約などを複合的に組み合わせ た業務効率化の更なる推進を図ります。 |
事業開発推進(M&A) | 将来のAGPのために、新たな収益の柱となる成長事業の創出を果たすための事業開発を推進し、必要な機能を具備するためのM&Aや出資なども行ってまいります。①物流倉庫関連の事業領域拡大、②グリーン電源の確保 |
研究開発推進 | 成長事業の創出を支える技術開発、新たな自社製品/機能を具備するための研究開発、省人化・省力化に資する技術研究開発を新たな組織R&Dを設置し推進してまいります。 |
人的資本投資・ ダイバーシティ推進 | 前述のとおり、優秀な人材の確保・維持に向けた採用力強化、従業員の自発的能力開発を目的に従業員の賃金水準の引き上げを2年連続で実施しました。 加えて、外部人材の活用や幹部候補生の採用などを継続し、また、ダイバーシティ研修などを含む各種の研修による能力開発を促進するなど、従業員の成長とともに企業価値を高める施策を継続実行してまいります。 |
BPR推進*1 | 既存業務領域における適正人員を可視化し、業務効率化・標準化を推進するとともに、適正なシフト編成を確立し、一人当たりの生産性向上を図ってまいります。 |
GPU*2設備の投資抑制 | 動力供給設備の更新投資について、埋設管等のコンポーネント、動力供給設備機材について、既存の技術に新たな技術を融合させて投資コストの削減を図ります。 |
コーポレートガバナンス強化 | 前述のとおり、独立した上場会社として備えるべきガバナンス水準を備え、公平で透明性を持った経営を実践することを目的に、コーポレートガバナンス・コード全項目の準拠に取り組み、これを契機に最適な資本構成や適切なガバナンスの仕組みを整え企業価値の向上を図ります。 |
上場維持・資本政策・財務戦略 | スタンダード市場上場維持基準を達成しましたが、最適な資本構成や適切なガバナンスの仕組みを整え、企業価値向上に資する施策を推し進めます。継続的・安定的な配当に加え、自社株買い等の株主還元策を含む総合的な資本政策を実施し、自己資本比率を適正化します。さらに、将来の成長に向けた積極投資に必要な資金は資本効率を考慮しつつ、負債と自己資本のバランスを取った最適な資金調達を実行してまいります。 |
*1 BPR:Business Process Re-engineeringの略称
*2 GPU:Ground Power Unitの略称
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