日野自動車
【東証プライム:7205】「輸送用機器」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」ことを会社の使命とし、人流・物流の課題の解決を通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。
会社の使命を果たすため、「HINO基本理念」、「HINOサステナビリティ方針」、「HINO行動規範」から成る企業理念「HINO ウェイ」を定め、以下、3つを共有の価値観として、当社グループは事業活動及び健全な企業風土の醸成に取り組んでおります。
「誠実」:コンプライアンスを徹底し、誠実に行動します。
「貢献」:安全・環境にこだわり、未来の社会を支えます。
「共感」:互いを尊重し、安全安心な職場をつくります。
(2)会社の環境及び対処すべき課題
<会社の環境>
1)エンジン認証不正問題への対応
当社のエンジン認証不正問題については、米国市場におけるエンジンの排出ガス認証試験および性能の問題について米国連邦およびカリフォルニア州当局による調査が継続していましたが、2025年1月16日に米国当局との間で和解に至りました。これは、米国における当社の過去のエンジン認証問題を一括して解決するものとなります。
日本市場においては、国土交通省から型式指定取消の処分を受けたもののうち、大型エンジン「A09C」搭載車の出荷を2023年2月より再開しました。大型エンジン「E13C」は型式指定の再申請に向けて劣化耐久試験を進めており、中型エンジン「A05C(HC-SCR)」については対応に時間を要していることから現行モデルの再申請はせず、エンジンを「A05C(尿素SCR)」の1機種に統合した2026年モデルで対応します。
また、当社に対する訴訟については、2022年8月に提起された米国の集団訴訟、2022年9月および2023年4月に提起された豪州の集団訴訟、2023年10月に提起されたカナダの集団訴訟はすべて和解に至っております。2025年3月に提起されたニュージーランドの集団訴訟については現在係争中です。当社のエンジン認証不正問題の詳細については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (10) エンジン認証不正問題」をご参照ください。
当社は二度と不正を起こさないため、2022年10月に「3つの改革」を策定しました。すべての礎となる企業理念「HINO ウェイ」に則り、会社の使命を実現して再び社会への責任を果たしていくため、経営層の強い覚悟と率先垂範により経営・企業風土・クルマづくりにおける改革を進めております。国土交通省からの是正命令に対しても、「3つの改革」を含む抜本的な再発防止策に取り組み、進捗を定期的に報告してまいりました。現在は、同省からの是正命令である社内チェック体制の再構築、 コンプライアンスおよびガバナンス強化、開発体制の見直し、組織風土の抜本的改革等、再発防止策を全て実施フェーズに移しています。これらの施策を社内で仕組みとして定着させるべく、従業員への教育の拡充等にも継続的に取り組んでおります。
2024年度の具体的な取り組みとして、品質マネジメントシステムに関する国際規格「ISO9001」の認証を2024年4月に取得いたしました。データの適切な管理体制の強化に向けては、認証試験データの自動保存化とアクセス管理を強化した外部新システムを導入しております。また、この問題を 風化させないために、認証不正問題の公表を行った3月4日を新たに「再出発の日」と位置づけ、全社での振り返りを毎年実施しております。
「3つの改革」を更に深化させ、組織風土・業務執行の継続的な改善を実行していくために、経営層と従業員が何度も意見交換をする機会を持ち、これまでの取り組みや成果の振り返り、施策の見直しを行っています。
また、米国当局との和解内容を受け、当局と合意した市場措置および超過排出による環境への影響を相殺するための環境負荷軽減プロジェクトを、確実に実施してまいります。更に、米国環境法等をより意識した「コンプライアンス・プログラム」を策定・実施し、自浄作用を働かせながらコンプライアンスの改善・強化を今後とも継続します。こうした取り組みを自律的なものとして定着させることで、当社の使命である「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献」できるよう、努めてまいります。
2)事業および経営環境の強化に向けて
当連結会計年度における世界経済は、インフレの落ち着き、貿易持ち直し等による実質所得の改善を背景に底堅い成長を維持しています。国内の製造業においても、デジタル化・脱炭素化・サプライチェーン強靱化に向けた取り組みや人手不足対応などを背景に、投資活動の拡大傾向が続きました。一方で、各国の政権交代や紛争などの地政学的な変化と相まって、他社と同様に不確実性が高まっています。
このような状況において、当社がこれからもお客様へ継続的に価値を提供していくには、商品・サービスを軸とした経営を行い、私たちの強みであるクルマのQDR=「商品品質」を、クルマの稼働を支えるサービスとお客様ビジネスの困り事を解決するソリューションの「トータルサポート品質」で最大化し、「2つの品質」が相互に支え合うことで「総合品質」を向上して、お客様からパートナーとして選ばれ続けること、あわせて経営基盤の強化に取り組んでまいります。
商品については、大型トラック「日野プロフィア」、中型トラック「日野レンジャー」、小型トラック「日野デュトロ」、観光・路線バスなどの改良モデル等、まだ出荷再開に至らない型式車両がある中でも、できる限りお客様のニーズにお応えする商品を提供してまいりました。
トータルサポートについては、国内外の販売会社の拠点新設・拡充・更新等を継続的に進め、スピーディーで質の高いサービスを提供し、お客様のビジネスに貢献し続けていくための体制整備に注力しております。
また、こうした既存事業の競争力強化に加え、カーボンニュートラルの実現、人流・物流に関する社会課題の解決に向けた取り組みを継続してまいりました。
カーボンニュートラルの実現に向けては、内燃機関車と電動車の両輪で適材適所に対応するマルチパスウェイによるアプローチで取組みを進めています。2022年6月に発売した小型BEVトラック「日野デュトロ Z(ズィー) EV」は、脱炭素社会の実現を目指す全国のお客様に幅広くご愛用されており、2024年度の販売台数は560台を超えるレベルに達しました。燃料電池トラック「日野プロフィア Z FCV」は、水素社会の普及を目指し、お客様に実際に使用していただく走行実証を通じて実用化に向けた取り組みを推進しています。2025年4月から開催中の日本国際博覧会(大阪・関西万博)においては、ENEOS株式会社様と西日本ジェイアールバス様とともに国内初となる合成燃料を使用した駅シャトルバスを運行しております。
人流・物流に関する社会課題の解決に向けては、CASE技術を活用し、業界を越えた様々なパートナーとの実証プログラムを推進しています。2023年7月に提供を開始した公共ライドシェアの運行管理受託サービスは、国土交通省が主導する「『交通空白』解消・官民連携プラットフォーム」に参画したことで自治体への導入やサービス拡充が順調に進んでいます。2024年11月には、国内商用車メーカー3社様ほか官民一体となって、新東名高速道路で自動運転技術を用いた大型トラックによる走行実証を開始しました。2025年1月より、苫小牧港にてコンテナ運搬を行うトレーラーの運行を高度化する実証実験を苫小牧栗林運輸株式会社様、株式会社三井E&S様とともに実施するほか、同2月からは、次世代道路技術の早期実装を目指して、新たに建設された舗装評価走路での自動運転レベル4相当の車両を用いた無人走行試験を大成ロテック株式会社様と開始しました。
また、ステークホルダーの皆さまに持続的に価値を提供していくため、「経営基盤の強化」にも継続して取り組んでおります。身の丈を越えて事業拡大を優先した経営から脱却し、財務基盤と競争力を強化するため、2024年は米国部品事業の撤退や中国事業の縮小等、事業の「選択と集中」を図ってまいりました。あわせて、需給の改善による車両在庫の適正化、車両型式の見直しや部品種類の削減等の取り組みも進めております。
また、経営基盤を強化する上で「人材」を重要な資産と考えており、企業理念の浸透や社内コミュニケーションの活性化、人材育成、職場環境の整備など、従業員が自社に誇りを持ちいきいきと働くための取り組みにも尽力しております。2024年度は、「人の成長」に注力する人事中期計画(2024年度~2026年度)の初年度として、評価・賃金制度の見直しや学びの支援に向けた様々な施策を実施しました。また、毎年実施している従業員意識調査において、2024年度は全ての指標でスコアの改善が見られ、結果を職場にフィードバックし、各組織の対話や改善に活用しています。
<対処すべき課題>
1)収益力回復と営業利益率8%の達成
当社は、2025年1月、北米向けエンジンの認証問題について米国当局と和解し、一連の認証問題に区切りをつけることができました。今後は「日野の目指す姿」実現に向けてスピード感を持って事業を再建し、お客様・社会からの信頼回復に努めるとともに、企業価値の向上と株主還元を実現させていきます。そのためには、「商品・サービスを軸にした経営」への変革が不可欠であり、良品廉価なクルマと高品質な「製品・サービス」でお客様・社会に価値提供し持続的な成長を目指します。
また、当社の持続的成長を実現させるための戦略資産である人的資本の強化についても、「人の成長」を主眼に一層取り組んでいきます。そして、これらの活動の基盤となる、コンプライアンス・ガバナンスの強化については、「「正しい仕事」を仕組み化するための規則・体制整備」と「ルールを守り、主体的に『考動』する行動様式の徹底」を両輪にして、引き続き推進してまいります。
上記を踏まえ、当社グループは、中長期的な成長に向けた方針として、順次利益水準の回復を図り、2030年度には営業利益率8%の実現を目指しています。そのために、事業ポートフォリオ見直し(選択と集中)を念頭に、お客様に貢献できていない事業および商品の再検討、「選択と集中」によって創出したリソースをお客様から高く評価いただいている商品の改良・拡販や、日本、アセアン、オーストラリアなど優位性のある市場での事業拡大に投下し、新たな付加価値の高い商品・サービスの提供につなげて競争力強化を図っていきます。
2)4社協業、2社経営統合について
2023年5月にトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)、ダイムラートラック社(以下「ダイムラートラック」という。)、三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下「三菱ふそう」という。)および当社が基本合意書を締結して以降、当社及び三菱ふそうの統合(以下「本経営統合」という。)に関する協議を進めてまいりましたが、2025年6月10日に経営統合契約を4社で締結いたしました。本経営統合の詳細については、「第2 事業の状況 5.重要な契約等 (4)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合に係る経営統合契約の締結」をご参照ください。
なお同日、本経営統合を契機に、羽村工場の競争力の更なる強化を図るべく、当社の羽村工場のトヨタへの移管(以下「本移管」という。)に関する契約を締結しました。本移管の詳細については、「第2 事業の状況 5.重要な契約等 (5)羽村工場のトヨタ株式会社への移管に関する契約締結」をご参照ください。
これら本経営統合と本移管はいずれも2026年4月の新体制発足を目標に準備を進めてまいりますが、その推進にあたっては、あらゆるコンプライアンス面での要求を満たすことを前提に、全てのステークホルダーの皆様への影響を考慮しつつご期待にお応えするべく、誠実にコミュニケーションを図りながら進めてまいります。
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