日東電工
【東証プライム:6988】「化学」
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企業概要
当社グループにおける研究開発は、「イノベーションによる社会課題の解決」を基本方針に掲げ、地球の環境保全・改善や、人々の生活の質の向上のための新製品や新サービス、新規事業を創造することを目指しています。「粘接着」「光学設計」「回路形成」「薄膜形成」「多孔」「分離」「核酸合成」「ドラッグデリバリーシステム」の8つの基幹技術をベースに様々な技術を組み合わせて新たな価値を提供しています。
全社技術部門は、研究開発本部、新規事業本部、核酸医薬開発統括部の3つの部署と技術知財戦略本部が密接に連携し、将来の事業とそれを支える技術を育成しています。研究開発拠点として、2016年3月に大阪府茨木市に開設した“inovas”(イノヴァス)を中核に、海外にNitto Denko Technical Corporation(U.S.A.-Oceanside)、Nitto BioPharma, Inc.(U.S.A.-San Diego)、Nitto Bend Technologies, Inc.(U.S.A.-Farmington)、Nitto Denko Asia Technical Centre Pte. Ltd.(Singapore)を配置しています。
当社グループでは地球環境の保全に大きく貢献する取組みとして、工場のボイラー排ガスに含まれるCO2を分離・回収する技術の開発を行っています。当連結会計年度、アゼルバイジャン共和国で開催された国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)の「ジャパン・パビリオン」で、初めてこの技術を展示し大きな反響を得ました。2025年度中の事業化に向けて開発を加速させていきます。
また、当社グループはオープンイノベーションにも積極的に取り組んでおり、様々なアカデミアや企業と連携をしながら新技術や新製品の開発を行っています。当連結会計年度、北海道大学と行っているドラッグデリバリー技術に関する共同研究で、核酸医薬の一つであるmRNAを選択的に脾臓に送り届ける技術を確立しました。今後も様々なアカデミアや企業と連携しながらドラッグデリバリー技術の開発を進め、核酸医薬品の実用化に貢献してまいります。
さらに、当社グループでは知財戦略を重視して研究開発を進めており、研究開発で確立した技術を戦略的な特許出願で支えながら着実に事業につなげています。この活動の結果として、当連結会計年度「クラリベイト Top 100 グローバル・イノベーター2025」に選出されました。これは、クラリベイト・アナリティクス社が「影響力」「成功率」「グローバル性」「希少性」の4つの基準から優れた研究開発活動、知的財産管理を行っている企業や研究機関100社を選出したもので、2012年の開始からNittoは12度目の受賞となります。
当連結会計年度の研究開発部門の人員は、当社単体で1,136名、グループ全体で1,785名です。また、当社グループの研究開発費の総額は46,771百万円です。このうち、各事業セグメントに直接関連しない全社技術部門の研究開発費は10,725百万円です。
セグメント別の研究開発活動成果は下記のとおりであります。
(1)インダストリアルテープ
当社グループの持続的成長と持続可能な環境・社会の実現にCO2排出削減は不可欠です。そのため、有機溶剤を使用しない新製品の開発を拡大し生産活動におけるCO2排出削減に取り組んでいます。また、サプライチェーン全体のCO2削減にもつながるバイオマス粘着剤、資源循環によるリサイクル材料の活用や当社グループの粘着技術を用いて「熱・光・電気等」をトリガーとした剥離技術を構築し、リワーク・リサイクルを実現可能にする製品開発に取り組んでいます。
新製品開発はデジタルデバイス、半導体、水素・電池の3つを重点分野と定め、お客様のご要望に応える新製品開発、そして製品ラインアップの拡充を進めています。
デジタルデバイス分野では従来テープに求められる接着性や衝撃吸収性だけでなく、循環社会を目指し、再剝離性の付与、リサイクル材使用によるサステナビリティ向上にも貢献してまいります。
半導体分野では半導体の製造工程、特に先端半導体向け製造工程などでご使用いただくプロセステープの開発を進め、高品質を追求し続けるお客様の製造工程において生産性向上に貢献してまいります。
また、水素・電池分野では新規用途のマーケティング・開発活動を進め、安心・クリーンな社会実現に向けて貢献してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は7,504百万円です。
(2)オプトロニクス
ディスプレイ業界では、スマートフォンを中心に有機ELディスプレイ(OLED)の普及が進んでおり、今後はタブレットPC、ノートPC、家電製品、車載ディスプレイへの採用拡大が期待されています。ディスプレイとしての表示品位などの基本特性の向上に加え、デバイス特有の屈曲性、高信頼性、曲面追従性など、多様なご要望に対応しています。偏光フィルム、位相差フィルム、粘着剤に機能を付与し、各フィルム、粘着剤トータルでの設計を最適化することで、お客様のニーズに応えています。また、お客様の生産工程の生産性向上に貢献できる製品開発にも注力しています。
新規デバイスとして仮想現実(VR)デバイス向けの製品開発に加え、2024年度に出資したTruLife Optics社との協業による拡張現実(AR)グラスに関わる光学フィルムの開発にも着手いたしました。
ディスプレイ以外では、ITOフィルム製膜に用いているスパッタ技術を活用し、タッチセンサ用途だけでなく、自動車の調光ルーフ用など、様々なセンサ向けの電極フィルムの製品開発も行っています。
これらの開発活動において、リサイクル材料やバイオベース材料の採用、粘着剤の無溶剤化など、環境技術と融合することで、お客様、社会及び地球環境への価値提供を加速させています。
回路材料関連では、データセンターで使用されるハードディスク(HDD)向け回路基板を提供しています。データセンター市場は、昨今のAI技術の進化・普及に伴い大きく成長しております。HDDの記録密度の技術開発も進むなど、期待の高まる同市場の継続成長に引き続き貢献してまいります。また、HDD向け回路基板を応用したスマートフォン向け「高精度基板」を展開しており、プリント回路基板における生産能力拡大を進めています。
新しい市場への挑戦では、当社グループ独自の多孔化技術を用いた低誘電材料でフレキシブル回路基板の量産を開始しました。高速信号伝送用途での拡販を進めてまいります。
環境配慮に対する取組みでは、フッ素規制(PFAS)に対応した絶縁材料を開発し、自社製品への適用を推進してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は17,249百万円です。
(3)ヒューマンライフ
ライフサイエンス関連では、核酸プロセス材料の新工場での2025年度本格生産に向け、製造能力増強のためのプロセス開発を実施できました。また、核酸合成での新製法や新技術に対応し、核酸合成での高収量や純度向上につながる核酸プロセス材料の開発にも着手いたしました。さらには、核酸合成事業においてもお客様のコスト削減や新合成法に対応した技術開発を行っており、お客様のイノベーションに貢献できることを目指します。
一方、医療材事業では環境負荷を低減した製品開発に取り組み、製品化を完了しました。溶剤を使わない粘着剤開発、環境負荷を低減したパッケージなど工夫を行っています。
将来動向を見据えながら社会や顧客ニーズに基づく製品開発及びプロセス開発を行うとともに、引き続きCO2負荷削減に取り組んでいきます。
分離膜・メンブレン関連では、処理される原水の多様化の中で、省エネ、長期安定性、廃棄物の削減といった、新たなニーズに合わせた製品開発に取り組んでおります。そのような市場ニーズに合わせ、2024年度は省エネに特化し、従来品よりも運転時のエネルギーを約30%削減できる省エネに優れた新製品を開発しました。また、メンブレンの製品の中から新たに「省エネ排水処理RO膜」と「長寿命NF膜」の2製品が、環境貢献に優れた製品に授与されるPlanetFlagsTMに社内認定されました。今後も、社会的ニーズにあわせた製品開発を進めるとともに、サステナブルな原材料を使用するなど、省エネと長寿命に加えてさらにCO2排出量削減や循環型社会へ貢献できる製品開発へ取り組んでまいります。
パーソナルケア材料関連では、フィルム技術と不織布技術をコア技術とし、おむつ部材などの衛生材料製品の開発を行っています。地球環境に貢献できる無溶剤の接着・ラミネーションや加工技術・バイオマスや生分解性材料を用いた製品創出で、消費者様がより快適に、より安全にお使いいただける衛生材料のイノベーションに寄与できるよう、市場の最先端分野に注力してまいります。
また、機能性フィルム・不織布の製造技術を社内外へ用途展開することで、衛生材料関連以外の「半導体関連」「モバイル関連」「自動車関連」などの事業展開を積極的に促進いたします。製品設計活動を社内で密接かつ迅速に行えることから、新事業の開拓並びに事業成長のシナジー活動に注力してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は5,962百万円です。
(4)その他
新規事業関連では、デジタルヘルス領域や次世代半導体領域など新しい領域に向けて様々な製品を開発しています。当連結会計年度、米国メンタルヘルス市場に向けて、生体情報をリアルタイムに解析・可視化する心理カウンセラー向けサービスを米国カリフォルニア州で開始しました。
当連結会計年度における研究開発費の金額は5,329百万円です。
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