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【東証プライム:4813】「情報・通信業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。
(1) 当社の経営の基本方針
当社グループは、1984年の設立以来、独立系の研究開発型ソフトウェア企業として、「すべての機器をネットにつなぐ」を目標に掲げ、それを実現するためのコア技術を世界中の通信事業者や通信機器メーカー、家電メーカー等に提供し、急速に進展するICT化・スマート化を技術面から支えてまいりました。現時点においては既に携帯電話や情報家電をはじめとする様々な情報端末のネットワーク化による連携はもはや一般化しており、現在は遍在化したスマートセンサーとあらゆるモノがネットワーク化し、その基盤上に新たな製品やサービスが次々と創出され続けております。
そのような中、当社グループは「CONNECT YOUR DREAMS TO THE FUTURE.」をスローガンに掲げ、すべての機器をネットにつないできた先駆的存在として、これからも当社グループの「つなぐ」技術により新たな価値創造に資する技術・製品を開発・提供し続けあらゆるステークホルダーに貢献することが当社グループの使命であることを明示するとともに、それらの取り組みを通じて企業価値の向上に取り組んでおります。
また、意思決定の軸として、以下のとおり企業理念を定めております。
Vision Statement:『技術』『知恵』『創造性』と『勇気』で世界を革新し続ける独立系、企画・研究型企業
Core Value : Unique、Fair、Open-minded
(2) 目標とする経営指標
主な経営指標として、連結ベースでの売上高及び営業利益並びにそれらの成長性を重視し、当社グループ全体の収益性及び成長性の中長期的な向上を図ってまいります。
(3) 経営環境及び中長期的な会社の成長戦略
2024年は、中東情勢の緊迫化、欧米における高金利水準の継続、中国経済の先行き懸念も相まって、世界経済全体の不透明さが続き、IT情報サービス産業においても、引き続きDX化の推進とそれに伴うIT投資への意欲も旺盛ではあるものの、一部企業においては引き続き投資判断に慎重な姿勢も見受けられる状況でした。
このような環境下において、前連結会計年度において事業ごとに選択と集中を含む経営判断を実施したことを踏まえ、当連結会計年度においては、IoT事業及びWebプラットフォーム事業につきましては、両セグメントの黒字化を目標に取り組み、その結果、IoT事業においては一部事業の譲渡による売上減をカバーする事業成長により、Webプラットフォーム事業においては既存製品の堅調な売上推移に支えられ、ともにセグメント黒字化を実現いたしました。他方、ネットワーク事業においては想定より事業成長が遅れたことに加え、製品開発コストの上昇等もあり、前連結会計年度から赤字幅が拡大する結果となりました。
2026年1月期(2025年2月~2026年1月)においては、IoT事業については、ハードウェア提供も含む総合的な提案によりプロフェッショナルサービスをさらに拡大・深耕し、積極的な事業拡大を図ります。Webプラットフォーム事業については、グローバル体制を見直し、採算性の高い日本を中心とした地理的拡大を図るとともに、TV・車載の両事業がともに全体の収益安定化に貢献できるよう推進してまいります。ネットワーク事業につきましては、サービスプロバイダー向けのネットワークOS提供による事業拡大を継続するとともに、今後も大きな成長が予想されるAI関連のデータセンター向けの案件パイプラインの構築と拡大に努めてまいります。また、Tier1オペレーターに向けての取り組みも引き続き進めていく所存であります。
| 当連結会計年度 事業方針 | 当連結会計年度 ハイライト | 翌連結会計年度 事業方針 | |
IoT事業 |
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| IoT分野 | ・注力事業であるプロフェッショナルサービスに営業及び開発リソースを傾注してDX需要を取り込むことで、収益性を維持しつつ事業規模の拡大を図る | ・主力事業であるプロフェッショナルサービスの売上高は順調に拡大し、前期末に一部事業譲渡を行った電子出版事業の分をカバーし更に拡大成長 | ・前期までの事業成果を活用し、プロフェッショナルサービスに引き続き注力し、ディスプレイ等のハードウェアも含めた事業規模の拡大を図る |
| その他 | ・台湾事業における収益性確保に重点を置き、事業の安定化に努める | ・台湾事業において、事業効率化による収益性向上を図ることに注力 | ・台湾事業における安定的な売上成長及び収益向上に努める |
Webプラットフォーム事業 | ・TV、車載向けブラウザにおける売上の安定性を高め、次世代のコンテンツ配信システム等を含む、事業領域拡大の足掛かりを構築 | ・車載インフォテインメント向け分野は、徐々に受注が増加傾向 ・欧州拠点において、効率的な運営のため再編 | ・適正化された海外拠点ではより収益性の意識した事業運営を実行 ・採算性の高い日本を中心にした地理的拡大 ・TV、車載向けブラウザにおける売上の安定性を高め、技術を活用し、多様なデバイスで最適なコンテンツ視聴体験の提供を目指す | |
ネットワーク事業 | ・ネットワーク機器分野における投資抑制の市場動向はあるものの、引き続きTier2/3通信事業者を中心に、事業規模を拡大する ・Tier1通信事業者や大手サービス事業者に対しては、受注まで相応の期間を要することを前提に継続的に取り組む | ・新規顧客数及び売上について想定より成長が遅れ、コスト面においても開発コストの上昇等の影響を受ける形となった | ・サービスプロバイダー向けのネットワークOS提供による事業拡大に加え、AI関連データセンタービジネス需要にも注力 ・Tier1通信事業者や大手サービス事業者に対しては、受注まで相応の期間を要することを前提に継続的に取り組む |
なお、セグメント別の事業環境については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(4) 会社の対処すべき課題
前述の中長期的な会社の成長戦略を実現するにあたり、以下を当社グループの優先的に対処すべき課題と認識し、その遂行に向けて取り組んでおります。
① 内部統制及びガバナンスの改善
当社のネットワーク事業を主に担う連結子会社であるIP Infusion Inc.(以下、「当該米国子会社」という。)において、2025年1月期第2四半期末(2024年7月31日)時点で特定顧客向けの多額の売掛金が長期間にわたり滞留していたことから、当社の会計監査人から当該売掛金の回収可能性に懸念がある旨の指摘がありました。これを受け、当該売掛金の回収期間の長期化の原因等を調査するため、当社は2024年10月15日に社内調査委員会を設置し社内調査を開始しました。その後、当該売掛金の発生原因となった取引や別の顧客との取引について不適切な売上計上の疑義が生じたことに伴い、調査の専門性及び客観性をより高めるため、当社は2024年11月29日に当社と利害関係を有さない外部専門家を中心とした特別調査委員会を設置し特別調査を開始しました。また、特別調査の過程において本件売上計上の疑義に類似する事案やソフトウェア資産に係る会計処理の適否に関する疑義が検出されたため、調査対象事項を拡大して特別調査を継続してまいりました。
当社は2025年6月30日に特別調査委員会から調査報告書を受領し、これを受け当社は過年度より当該米国子会社において売上の過大計上や売上の早期計上、ソフトウェア資産の過大計上=研究開発費等の過少計上があったこと等の複数の不適切な会計処理があったことが判明いたしました。
その主な原因は、同社において事業規模が拡大する反面、それに対応できるだけのとりわけ財務報告に関連する内部牽制の仕組みが十分に構築できていなかったこと、さらにその礎となる信頼性ある財務報告に対する一部のマネジメントの姿勢や規範意識が不十分であったことにあると認識しております。これらの改善にあたっては、事業規模や重要性に見合った管理体制を構築し、さらに当社グループ全体において日本の上場企業グループであることを自覚し、その規範意識を強化・向上させていくことがとりわけ重要な課題であると認識しております。
当社は特別調査委員会の調査報告書における指摘・提言を真摯に受けとめ、実効性のある再発防止策を策定の上、経営トップ自らの強いコミットメントのもと、内部統制及びガバナンスの改善を図ってまいります。
② 多様性のある優秀な人材の確保・育成と生産性向上のための環境整備
当社グループの事業推進を下支えする基盤となる人材の確保と組織力強化、企業風土の醸成・ダイバーシティの推進に取り組んでまいります。人材確保においては、個々のスキルの卓越性に加えて、高い当事者意識・目的意識・職業倫理を持ち、部署等の垣根を越えた適切なリーダーシップやチームワークを発揮できる優秀な人材の採用・育成に努めてまいります。環境整備の面では、働き方、業務内容やキャリアプランの多様性を考慮した人事施策の導入や労働環境の整備を推進し、生産性の向上に取り組んでまいります。
③ 成長分野への積極投資とグローバルで通用する製品力・技術力及びサービス創出機能の強化並びに注力事業分野の売上拡大
当社グループが事業成長を実現するにあたっては、技術力を継続的に強化するとともに、絶え間ない技術革新から生み出される先進的な技術をいち早く獲得・事業化し、また、社会動向の変化に適応した顧客価値を創出していくことが重要課題であると認識しております。具体的な取り組みとして、当社グループ内での製品開発投資を拡大し製品力・技術力及びサービス創出機能の強化を図るとともに、M&Aを積極活用し当社技術・事業を補完できるパートナー企業の開拓に取り組んでまいります。また投資継続している注力事業分野につきましては、販売チャネルの拡充や顧客サポート体制の強化を通じて売上拡大を図るとともに、市場動向及び事業状況を注視しながら投資規模を都度見直し、収益性の維持・改善に努めてまいります。
(5) その他、会社の経営上重要な事項
当社は、当社グループのネットワーク事業を主に担う連結子会社であるIP Infusion Inc.(以下、「当該米国子会社」といいます。)における一部取引について、不適切な売上計上の疑義が生じたため、2024年11月29日に特別調査委員会を設置し、調査を進めてまいりました。当社は、2025年6月30日に特別調査委員会から調査報告書を受領し、その結果、当該米国子会社において、以下の事実が判明しました。
(a) ソフトウェアのライセンスの販売取引に関し、本体契約と同時期に顧客をリスクフリーにするサイドレターを別途締結し、当該米国子会社が実質的にリスクを継続的に保持する条件となっていたにもかかわらず、本体契約のみに基づき売上を計上していたこと(売上高の過大計上)。
(b) ソフトウェアのライセンスの販売取引に関し、収益認識の条件が充足されていない状況であるにもかかわらず、虚偽の取引証憑や資料を作成して売上を計上していたこと(売上高の早期計上)。
また、特別調査委員会の調査に並行して、当社側で当該米国子会社のソフトウェア資産計上額の点検を行った結果、ソフトウェア開発費の資産計上範囲について、同社の規定方針からの逸脱が判明したため、あるべきソフトウェア資産計上額の再算定を行った結果、以下の事実が判明しました(以下、これらの事案を合わせて「本件事案」といいます。)。
(c) ソフトウェアの資産計上額の算定根拠となる集計データの内容区分に関する不適切な操作や、ソフトウェアの計上タイミングの根拠となる取引証憑の不適切な改変が行われており、その結果、過去に遡って当該米国子会社におけるソフトウェア資産計上額が過大計上であったこと(ソフトウェアの過大計上=研究開発費等の過少計上)。
これらは、いずれも当該米国子会社の一部のマネジメント(内、1名は当社の取締役も兼務。以下同じ。)が関与する形で進められたものでしたが、当社は、これら売上高の過大計上及び早期計上、並びにソフトウェアの過大計上について関連する会計処理を過年度に遡って訂正する必要があると判断し、2021年1月期から2024年1月期の有価証券報告書、2023年1月期第2四半期から2025年1月期第1四半期までの四半期報告書及び2025年1月期半期報告書について、訂正報告書を提出いたしました。なお、当社財務諸表におけるこれらの訂正による影響を勘案すると、2019年4月17日開催の第35回定時株主総会において決議された総額117,875千円の配当及び2020年4月22日開催の第36回定時株主総会において決議された総額118,123千円の配当は、いずれもその全額が会社法及び会社計算規則により算定される分配可能額を超過していたことが判明しました。今後、当該配当に関する事実関係等の確認、社内関係者の責任の検討及び超過の原因となった本件事案に対する再発防止も含めた取り組みを進めてまいります。
当社は、本件事案に関し調査報告書で判明した事実と原因分析に関する報告を踏まえ、改めて財務報告に係る内部統制の再評価を行った結果、当社及び当該米国子会社の全社的な内部統制、並びに当該米国子会社の決算・財務報告プロセス、収益認識プロセス及び原価計算プロセス(ソフトウェア資産計上プロセスを含む)の一部に不備があったことを識別いたしました。当社は、これらの不備は財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高いため、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。
本件事案における売上の過大計上及び早期計上、並びにソフトウェアの過大計上の不適切な会計処理が長期間にわたり行われてきた原因及び内部統制上の不備として、以下を認識しております。
(1) 米国子会社における不備について
① 全社統制(統制環境)の不備
本件事案では、予算対実績やネットワーク事業に対する期待を意識した当社の米国子会社の一部のマネジメントが、売上取引に関する取引条件の交渉(サイドレター含む)や売上計上の根拠証憑や資料の不適切な改変、並びにソフトウェア資産計上のための根拠データの操作や取引証憑の不適切な改変に関与する形で進めており、概して当該米国子会社の一部のマネジメントがその立場を利用し、同社の内部統制を無効化することにより、不適切な売上計上やソフトウェア資産計上を行っていた、というものでした。従って、当該米国子会社の一部のマネジメントにおいて、信頼性ある財務報告に対する姿勢や規範意識が不十分であったものと認識しております。
また、事業規模が拡大する当該米国子会社において、特に会計処理に関して、当該米国子会社のCFOに管理機能が集中し続けていた結果、財務報告に関連する内部牽制の仕組みが十分に構築できておりませんでした。加えて、当該米国子会社全体において、日本の上場企業である当社グループの一員としての意識が必ずしも十分に醸成できていなかった点も認識しております。
② 収益認識プロセスに係る内部統制の不備
本件事案における売上の過大計上や早期計上は、当該米国子会社のマネジメントが関与する形で進めており(売上計上の根拠証憑の不適切な改変等も含む)、当該米国子会社内での自立的な内部統制が機能しづらい状況における処理でした。
このような状況に至った背景として、当該米国子会社において、収益認識に関する一連の社内ルールが十分詳細に設定がなされていない中、新規取引先に対する十分な調査(代表者や会社実態の把握も含む)や、契約書等についても系統立った網羅的な保管が十分になされておらず、また、ライセンス売上に対して、ライセンス管理システム上の各種情報(顧客側におけるダウンロードの実績や、バージョン情報等)との整合性を別途確認するような手続までは求められていなかったことが、本件事案のような不適切な売上計上の温床となった可能性がある点、すなわち、収益認識プロセスに係る内部統制上の不備を認識しております。
③ 原価計算プロセス(ソフトウェア資産計上プロセスを含む)に係る内部統制の不備
本件事案におけるソフトウェアの過大計上は、当該米国子会社の他のマネジメントの意を汲んだCFOが指示する形で進められており、特に開発費のソフトウェア計上(資産計上)に関しては、会計処理の承認も含め当該CFOが広く権限を有していたため、当該米国子会社内での自立的な内部統制が実質的には機能しない状況における処理でした。
このような状況に至った背景として、当該米国子会社では、開発費のソフトウェア計上(資産計上)の要件やその集計プロセスに関する社内ルールが、同社におけるソフトウェアの開発実態を十分反映した形で設定されておらず、そのことが本件事案のような不適切なソフトウェアの過大計上の温床となった可能性がある点、すなわち、ソフトウェア資産計上プロセスに係る内部統制上の不備を認識しております。
④ 決算・財務報告プロセスに係る内部統制の不備
当該米国子会社のCFOが本件事案における各種不適切な会計処理を承認していたため、同社における決算・財務報告プロセスの会計仕訳入力時のCFOレビュー・承認プロセスには不備があったものと認識しております。
(2) 当社における全社的な内部統制の不備について
① 全社統制(統制環境、情報と伝達)の不備
当社業務執行取締役(海外担当)が、米国子会社の取締役を兼務しており、当社取締役でありながら当該米国子会社側における不適切な会計処理に関与していたことから、当社側においても信頼性ある財務報告に対する姿勢や規範意識が必ずしも十分ではなかったものと認識しております。
また、当社取締役会における業務執行取締役と社外役員(特に社外取締役)との関係性において、率直な議論ができない状況があり、業務執行取締役にはネガティブ情報の取締役会への上程に対する消極的な姿勢がありました。その結果、本件事案に関する重要な情報も、当社取締役会及び監査役に適切に伝達・共有されず、取締役会による業務執行取締役の監督が必ずしも十分にできていなかったと認識しております。
② 全社統制(リスクの評価と対応)の不備
本件事案は当社の米国子会社における事案であり、当該米国子会社は当社によるグループ会社化後、ネットワーク事業において中心的な役割を果たし、ネットワーク事業の拡大に伴い当社グループ全体における重要性も高まってきておりました。一方、当社側において、本件事案のような子会社のマネジメントが関与した不適切な会計処理に関するリスク認識が必ずしも十分にできておらず、その結果、後述する統制活動やモニタリング体制の強化、当該米国子会社における取引実態についての情報収集等が十分になされず、当該米国子会社での特定の取引先との取引の急速な拡大、代金回収の大幅な遅延、直接の取引先ではない第三者からの入金といった状況についても、適切なリスク対応ができておりませんでした。
③ 全社統制(統制活動、モニタリング)の不備
前述のとおり、本件事案のような子会社のマネジメントが関与した不適切な会計処理に関するリスク認識が十分ではなかった結果、当該米国子会社の企業規模等の拡大に対し、当社の管理部門や内部監査部門による統制活動やモニタリングの強化が十分には行えておりませんでした。当該米国子会社のCFOのレポーティングライン(報告経路)が当該子会社のCEOのみとなっており、当社側からの統制が効きづらい状況が続く中、現地側からの情報収集も含め、海外拠点に対する第2線・第3線としての統制活動やモニタリングについて、十分な体制構築ができておりませんでした。
これらの全社的な内部統制、決算・財務報告プロセス、収益認識プロセス及び原価計算プロセスにおける不備は財務報告に重要な影響を及ぼしており、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。
なお、上記事実は当事業年度末日後に発覚したため、当該不備を当事業年度末日までに是正することができませんでした。
当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、これらの開示すべき重要な不備を是正するために、特別調査委員会からの指摘・提言も踏まえ、以下の改善策を講じて適正な内部統制の整備及び運用を図ってまいります。
(米国子会社における改善策)
(1) 米国子会社におけるマネジメント体制の刷新
当該米国子会社において本件事案への関与が認められた同社取締役及びCFOについては、本件事案に関する経営責任を明確化の上、体制の刷新を進めます。具体的には、同社のCEO及びCFOを変更し、関与者の財務報告への影響力を早急に排除するとともに、当面は当社からの人員による、もしくは当社への報告義務を持たせた外部専門家を活用した監視監督を行います。
(2) 米国子会社における管理体制の強化
当該米国子会社の現在の規模に見合った管理体制を構築するため、新たに法務・コンプライアンス担当人材も採用の上、管理部門の人員を増強します(必要に応じ外部専門家の支援も受ける体制を構築いたします)。その上で、同社CFOに集中していた権限を、経理・財務と法務・コンプライアンスの第2線の両機能に分化し、相互に牽制を働かせる管理体制を構築いたします。
また、同社のCFOには当社CFOへの直接報告義務を課し、当社からのモニタリングの実効性を高めます。
(3) 海外拠点における意識改革
当該米国子会社を含む当社の海外拠点において、当社グループの一員としての意識の醸成を行うため、特に財務報告の重要性等についての継続的な教育を実施いたします。
(4) 収益認識に関する社内規程等の再整備
当該米国子会社における多様な取引形態や取引の実情を踏まえ、改めて収益認識に関する社内規程の見直しを行い、取引類型に応じた会計処理方針の規程の詳細化・具体化を行います。またこれらの規程や設定趣旨については、同社の経理部門のみならず、営業部門等関連部門へも周知徹底するとともに、継続的な意識づけを行います。
(5) 本件事案を踏まえた収益認識に係る業務フローの再構築
本件事案を踏まえて、収益認識に関する各種業務プロセスの見直しと再構築を進めます。具体的には、取引先管理の強化(取引開始時の審査項目の見直しを含む)や、各種契約書の事前チェックの強化(会計的なリスクの事前評価や、契約が複数のものからなる場合の各契約間の相互関連の評価、契約への署名や決裁の権限・職務分掌の明確化等)、出荷(Shipment)管理の強化(エンジニア部門内における独立したチェック体制の構築、出荷の成立要件の明確化、出荷証憑における例外の明確化等)等について改めて商流ごとに各種プロセスと手続の改善及び周知徹底を進めます。
(6) ソフトウェアの資産計上に関する社内規程等の再整備
当該米国子会社におけるソフトウェア開発の実情を踏まえ、改めてソフトウェアの資産計上に関する社内規程の見直しを行い、資産計上を行う費用の範囲(計上開始と計上終了のタイミングも含む)について社内規程の詳細化・具体化を行います。またこれらの規程や設定趣旨については、同社の経理部門のみならず、エンジニア部門等関連部門(ソフトウェア開発を行う当社の他の子会社も含む)へも周知徹底するとともに、継続的な意識づけを行います。
(7) 本件事案を踏まえたソフトウェア資産計上に係る業務フローの再構築
本件事案を踏まえて、ソフトウェア資産計上に関する各種業務プロセスの見直しと再構築を進めます。具体的には、ソフトウェア開発に関わるエンジニアによる工数入力の正確性の向上のための仕組みの構築、経理部門における手作業による工数データの修正作業についてのチェック等の改善を進めます。加えて、特にソフトウェア計上時期に関しては、エンジニア部門から報告された情報を経理部門が承認することで相互牽制が働く体制を構築いたします。
(当社における改善策)
(1) 当社における意識改革と経営トップのコミットメント
財務報告に関する当社全体の意識向上のため、継続的な教育を実施いたします。全社的な教育においては、財務報告やコンプライアンス等の内容を織り込むとともに、特に経営幹部向けの教育においては、財務報告、ビジネスエシックス、経営者のインテグリティ等に関する体系的・継続的な研修を行います。
また、それらに先立ち、当社経営トップが再発防止に向けた強いリーダーシップを発揮すべく、本件事案の総括を行い、反省し、どうあるべきかを考えたうえで、当社の全役職員に対し、自らを含め全社的に意識改革をしていく必要がある点、経営トップ自らが責任をもって主導していくという点を、トップメッセージとして発信いたします。
(2) 当社におけるガバナンスの改善
取締役会における業務執行側と社外取締役との間に健全な緊張関係を維持しながら、率直かつ建設的な議論ができるような環境を整えるため、特に取締役会における情報伝達の観点から、経営会議において共有・議論された内容のうち、重要なものが過不足なく取締役会に共有される仕組みと、後述する第2線・第3線における内部統制において検出された重要なリスク情報が漏れなく取締役会に報告される仕組みを構築いたします。
(3) 当社から米国子会社へのコントロールの強化
当該米国子会社CFOのレポーティングライン(報告経路)を当社に設定したうえで、同社のCFOの採用・評価・解雇に関する人事についても、当社CFOが権限を持つ体制整備を進めます。また当該米国子会社において一定の統制体制の運用が整うまでの当面の間は、外部専門家の協力も得ながら、当社CFOが当該米国子会社に各四半期決算の都度、現地に赴き、重要な取引や契約、会計処理等について直接確認を実施するようにいたします。
(4) 当社の管理部門(第2線)の強化
当社の管理体制の全般的なリソースについて拡充を図るとともに、特に海外拠点の管理とコントロールを強化いたします。具体的には、海外拠点の事業部門・経理・法務から当社への報告体制を整備し第2線同士での連携を強化いたします。
また、四半期毎に金額的に特に重要性の高い取引については、従前より当社の経理が行っていた取引証憑の確認に加え、当社法務も連携したうえで、関連契約書のレビューや取引担当者への質問を実施することで、会計・法務面から財務報告観点からのリスクを意識したレビューを実施するようにいたします。なお、海外拠点の販売管理システム等の重要性の高い業務システムについては、当社の管理部門に閲覧権限を付与し、必要に応じて現地の各種データを直接確認できるような体制も構築いたします。
(5) 当社の内部監査部門(第3線)の強化
当社の内部監査部門についても、体制の増強を進め、特に海外拠点に対する内部監査の強化を行います。定期的に当社の経理部門等の第2線の問題意識や懸念事項を吸い上げ、財務報告観点からのリスク分析を行ったうえで、内部監査の計画や手続の立案を行うとともに、当面は外部専門家の支援も受けながら海外拠点の現地監査をより深度あるものにいたします。
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