文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
私たちは、経営理念である「世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ」を実現するため、「誠意と熱意を持つ者が事を成す」という創業の精神を胸に、衛生・人生・再生の「3つの生きる」を成し遂げていきます。この「3つの生きる」は経営理念の4つの柱「ものづくりへのこだわり」「地域社会とのきずな」「安全で働きがいのある企業風土」「地球環境への貢献」を通じて展開しています。
<大王グループのパーパス>
「誠意と熱意」をもって、「3つの生きる」を成し遂げ、「やさしい未来」を実現する。これが私たちの存在意義です。すなわち経営理念「世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ」そのものです。
<大王グループのビジョン:3つの生きる> 衛生:人々の健康を守る 人生:人生の質を向上させる 再生:地球を再生する |
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<経営理念4つの柱>
1.ものづくりへのこだわり(Dedicated)
現場・現物・現実に基づいた新たな商品と付加価値の創造・提供を通じて、国際社会から信頼される企業グループであり続けます。
2.地域社会とのきずな(Attentive)
各国・各地域の発展に寄与するために、「良き企業市民」として高い倫理観を持って地域社会との調和ある成長を目指します。
3.安全で働きがいのある企業風土(Integrated)
持続的な企業価値の向上を図るために、安全で働きがいのある企業風土づくりに取り組み、社員相互の信頼関係に基づいた一体運営を推進します。
4.地球環境への貢献(Organic)
地球環境と調和したグローバルな事業展開を通じて環境問題に積極的に取り組み、持続可能な社会の実現を目指します。
<大王グループのマテリアリティ>
大王グループでは、ステークホルダーの関心ごとと当社グループにおいて、今対応しなければ、近い将来企業価値に影響を与えるという視点から、リスクと機会(対応)を抽出するとともに、将来のありたい姿からやるべき事項を抽出し、現時点では何が重要かを取締役会などで議論し、10のマテリアリティ(重要課題)を特定しています。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループの長期ビジョンである2026年度達成目標「売上高8,000億円~1兆円、営業利益率10%」の実現に向けて、2021年度から2023年度までの3年間を対象期間とする第4次中期事業計画(以下、「第4次中計」という)は、さらなる成長を加速する重要な3年間と位置付けています。
第4次中計のスローガン『GEAR UP 次なる成長、新たな未来へ』を掲げ、構造改革・戦略投資の効果の最大化により、さらなる成長の実現を目指します。
第4次中計の基本方針は以下の通りです。
① 強靭な事業ポートフォリオの確立
(a)紙・板紙事業はこれまでの戦略投資の効果発現と構造改革の継続により競争優位性を構築
(b)ホーム&パーソナルケア事業は複合事業化の加速とさらなるM&Aも視野に、当社の成長・拡大を牽引
(c)セルロースナノファイバー(以下、「CNF」という)等の新規事業により、将来の成長機会を創出
② 財務体質の強化
(a)第4次中計の3ヶ年の設備投資は案件を厳選しながら、第5次中計でのさらなる成長を可能とするキャッシュ創出力の強化とキャッシュ・フロー改善を図り、第4次中計期間中の信用格付A格取得を目指す
(b)資本コスト・資本収益性を意識した経営の推進に向けて、事業別収益性評価・投資判断基準の社内管理指標の一つとしてROICを導入
③ 気候変動問題への対応(2050年カーボンニュートラルの実現)
(a)再生可能エネルギーの利用を促進し、2050年までに石炭ゼロ化を目指す
(b)植林の適正管理と植林面積の拡大に継続的に取り組む
(c)CNF・脱プラスチック製品の事業推進により、環境にやさしい素材転換を推進
1.スローガン 「GEAR UP 次なる成長、新たな未来へ」
2.数値計画
| 第4次中計 2023年度目標 | 2023年度計画 | 第5次中計 2026年度のイメージ |
売上高 | 7,200 | 億円 | 7,000 | 億円 | 8,000億 | ~1兆円 |
営業利益 | 510 | 億円 | 180 | 億円 | 800~1, | 000億円 |
(営業利益率) | (7.1 | %) | (2.6 | %) | (10.0 | %) |
ホーム&パーソナルケア事業 海外売上比率 | 18.8 | % | 14.3 | % | 30.0 | %以上 |
ROE | 10.0 | %以上 | 1.7 | %以上 | 12.0 | %以上 |
ネットD/Eレシオ | 1.0 | 倍 | 1.6 | 倍 | 1.0 | 倍以下 |
(参考)純有利子負債 | 2,700 | 億円 | 3,900 | 億円 | - |
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(事業別計画)
| 第4次中計 2023年度目標 | 2023年度計画 |
| 売上高 (億円) | 営業利益 (億円) | 売上比 | 売上高 (億円) | 営業利益 (億円) | 売上比 |
紙・板紙事業 | 3,300 | 180 | 5.5% | 3,700 | 115 | 3.1% |
ホーム&パーソナルケア事業 | 3,600 | 300 | 8.3% | 3,000 | 40 | 1.3% |
(内訳) 国内事業 | 2,250 | 230 | 10.2% | 2,000 | 40 | 2.0% |
海外事業 | 1,350 | 70 | 5.2% | 1,000 | 0 | - |
その他事業 (調整額を含む) | 300 | 30 | 10.0% | 300 | 25 | 8.3% |
合 計 | 7,200 | 510 | 7.1% | 7,000 | 180 | 2.6% |
第4次中計は、2021年5月27日に公表し、2023年度計画は足元の事業環境等を考慮し2023年5月26日に公表したものです。
(3) 会社の対処すべき課題
2022年度は原燃料価格の高騰、急激な為替変動に加え、いわき大王製紙のバイオマスボイラートラブルが発生し、連結営業赤字の決算となりました。2024年度より始まる第5次中期事業計画の土台を再構築すべく、第4次中期事業計画の基本方針の実現に向けた課題を抽出し、対処してまいります。
基本方針1.強靭な事業ポートフォリオの確立の実現に向けた課題と対処
第4次中期事業計画ではホーム&パーソナルケア事業を成長エンジンと位置づけ、同事業が紙・板紙事業の売上を超えるエポックメイキングな中期事業計画とすることを想定していました。しかし2022年度はホーム&パーソナルケア事業が当初計画通りにトップライン伸長を実現できず、また海外事業の黒字化も遅れています。加えて原燃料価格の急激な高騰によって、既存事業全体の採算が悪化しました。
この課題に対して、段階的な価格改定の実施、石炭の調達先と品種の見直しによるコストダウン、さらには生産体制変更を含む構造改革の推進に着手しました。価格改定は2022年度中にほぼ全てのユーザーと交渉を妥結しています。コストダウン、構造改革の計画通りの進行、並びに改定後の価格を維持するための追加施策の立案・実行を行い、改めて強靭な事業ポートフォリオの確立を目指します。
基本方針2.財務体質の強化の実現に向けた課題と対処
2021年度に信用格付評価でA格を取得したものの、2022年度の業績悪化により、純有利子負債が3,877億円となり、前年度比で903億円増加しました。
この課題に対して、第4次中期事業計画3ヵ年の投資方針を当初計画枠内に抑えつつ、エネルギー転換投資を優先するものに変更しました。具体的には現中計期間中は設備投資枠を1,250億円、M&A投資枠を300億円としていましたが、M&Aの検討を凍結し、エネルギー転換投資に回します。こうすることで当初総投資枠1,550億円の水準を維持し、財務規律を守りながら営業キャッシュ・フローの改善、ひいては財務体質の強化に取り組みます。
基本方針3.気候変動問題への対応の実現に向けた課題と対処
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、当社では植林面積の拡大、CNFや脱プラスチック製品の事業推進、そして2030年度までに化石由来のCO2排出量を2013年度比で46%削減することを目指しています。このマイルストーンに対して南米チリにおける植林面積の拡大、脱プラスチックを目指したエリプラシリーズの拡充が進んでいます。2022年度は、いわき大王製紙のバイオマスボイラートラブルによりバックアップ用重油ボイラーを稼働させましたが、三島工場や大日製紙での石炭使用量削減の取り組みを実施したことにより、2021年度に対してGHG排出量は削減できる見込みです。
更に2023年3月には、三島工場にあるFIT用バイオマス発電所での売電を止め、自社使用に切り替えました。また2023年4月には三島工場新聞用紙製造設備であるN3号抄紙機を休機し、エネルギー総使用量を削減しました。加えて、中期的には三島工場に新たにリサイクルボイラーを建設(現在環境アセスメントを実施中)し、石炭からの燃料転換を進めることで化石燃料由来のCO2排出量を減らす対策を進める予定です。
その他、サステナブルな企業体であるために新規事業展開やグローバル化に向けた体制の構築が課題となりますが、それぞれの課題には以下取り組み・対策を進めていきます。
・新規事業展開(セルロースナノファイバー(CNF))
CNFは、研究開発の段階を経て、この数年の間に自社商品「キレキラ!トイレクリーナー」へのCNF配合、卓球ラケット用部材への活用、レースカーの車体外装全体・内装へのCNF実装といった商業化・用途展開を進めてきました。第4次中計では、2022年3月に稼働したパイロットプラントで一貫製造工程の技術確立に向けた実証を進め、自動車部材・家電製品など幅広い用途展開が期待できるCNF複合樹脂の生産性向上とコストの大幅低減を実現し、商業化プロセスに向けて、用途展開を加速させ、CNF配合による軽量化やプラスチック使用量削減等により、CO2削減にも貢献していきます。
・コーポレート部門のグローバル対応
当社グループ発展のためには、海外事業の拡大が不可欠であり、海外の成長市場への投資とともに、適切なリスクマネジメントが重要な要素であると考えています。そのため、人事・法務・経理・財務部等のコーポレート部門では、「事業の成長・拡大に必要な経営資源の安定調達と最適配分」、「グループガバナンス体制の一層の強化とリスクマネジメントの充実」に重点を置いて、事業部門との一体運営で海外事業の拡大に取り組んでいきます。
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