企業兼大株主日本製紙東証プライム:3863】「パルプ・紙 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループでは、「総合バイオマス企業」への事業構造転換と基盤事業の競争力強化のため、新規事業の早期創出、パッケージ事業、家庭紙・ヘルスケア事業、ケミカル・新素材事業やエネルギー・木材事業等の成長分野の拡大、紙・板紙事業の収益力向上に貢献する研究開発を進めています。今後、グループ内の研究資源を最大限に活用し、社内外との連携を密にすることでオープンイノベーション等を推進し、更なる研究開発を進めていきます。

 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、5,760百万円(人件費を含む)であり、各事業部門別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は以下のとおりです。

(1) 紙・板紙事業

 国内市場の成熟化と海外市場の成長、深刻化する地球環境問題等の様々な課題に対峙するため、基盤技術研究所、富士革新素材研究所及びパッケージング研究所が中心となり、以下のような取り組みを行っています。当事業に係る研究開発費は3,573百万円です。

① 植林事業に関する技術開発

 事業活動の基幹となる原材料確保のため、自社植林木の生産性向上を目指し、技術開発を積極的に進めています。特にブラジルにおいては、ユーカリの育種と植林地の管理技術向上により、単位面積当たりの収穫量は年々増加しています。更なる生産性向上を目指し、DNAマーカー選抜を始めとする最新技術の導入も推進しています。また、こうした当社の独自技術を活用し、他社と戦略的パートナーシップ契約を締結し、インドネシアの植林事業会社の植林木の生産性向上に取組んでいます。一方、国内においては、CO₂吸収能力が高く成長に優れ、花粉量が少ない等の特徴を持つエリートツリーの苗木生産事業を全国で展開しています。2016年の熊本県に続き、2022年に静岡県、広島県、鳥取県、大分県の4県において「特定増殖事業者」の認定を受け、エリートツリーの苗生産に必要な種子や穂木を生産するため、採種園・採穂園の造成を行いました。今後は2024年から各地で苗木生産を開始し、同年秋以降の苗木出荷を予定しています。

② 品質とコストの更なる改善

 洋紙及び板紙の競争力強化のため、新製品開発や需要家のニーズに応えた品質改善を継続します。また、製造工程の操業性改善をより効率的に行うために、生産現場とより密接に連携を図りながら品質向上とコストダウンの技術開発を迅速に進めています。収益改善に資する技術開発として、安価材料の利用技術の開発、自製填料の高度利用技術の開発等の独自技術開発も推進しています。

③ 将来に資する技術開発等

 「総合バイオマス企業」としての新規事業創出については、木材をベースとした新素材、パッケージ等のプラスチック代替新規紙材料の開発やセルロースナノファイバー、バイオリファイナリー等に関する研究開発に取り組んでいます。

 新素材としては、無機物の特徴・特性を備えた機能性材料ミネラルハイブリッドファイバー(ミネルパ®)の事業化に向けた本格的なサンプル供給を行い、更なる用途開発を推進し、商品化を進めています。2022年度は「消臭抗菌」、「難燃」、「X線遮蔽(造影)」等の各機能を持つミネルパの採用拡大を目指して、事業分野の探索とサンプルワークを進めており、システムトイレ用猫砂と高機能吸湿剤で「消臭抗菌」の機能を持つミネルパが採用となりました。

 木材を原料とする養牛用飼料の元気森森®、にんじん森森®(高消化性セルロース)については、民間の牧場で乳牛の乳量増加効果、繁殖成績の向上に加え、和牛の繁殖用母牛でも健康増進効果が確認され始めました。2021年度からは、パルプを牧草と同様に「ロールベール形態」へ加工する装置を岩沼工場に設置し、牧場側で扱いやすい形態でのサンプル提供体制を整え、有償サンプルワークの展開を加速しています。

 パッケージ等のプラスチック代替新規紙材料については、当社の塗工技術を活用し、紙にバリア性を付与した紙製バリア素材「シールドプラス®」、プラスチックフィルムを貼合することなく “紙だけでパッケージができる”ヒートシール紙「ラミナ®」の開発を推進しています。「シールドプラス®」は2020年度に耐屈曲性を向上したリニューアル品を上市、これに伴いスタンドパウチなど新たな形態での採用も増えています。「ラミナ®」についても2020年の販売開始以降、脱プラスチックを可能とする素材としてバリア性を必要としない食品、化粧品、日用雑貨等の二次包装材として採用が進んでいます。また、更なる環境配慮型素材として、他社と共同開発した生分解性に優れるヒートシール紙が2022年11月に菓子製品の外装に採用されました。当社グループの拠点があるフィンランドにおいても同様の開発、生産を行っており、環境対応が求められる包装市場における新たな環境配慮型包材として、国内外への提案を進めています。また、防水性、防湿性、耐油性を有し、かつリサイクルが可能な多機能段ボール原紙「防水ライナ」を開発しました。「防水ライナ」を用いて製造した段ボールケースは防水性等を活かし、箱の形状を工夫することで、発泡スチロールと同様に氷詰めした水産・青果物の輸送や、耐油性を活かした機械部品などの輸送を可能にしました。現在、各段ボールメーカー、代理店と協力し、魚箱用途をはじめとしたユーザーへの展開を図るとともに、ユーザーでの加工効率向上に向けた生産体制拡充を進めています。

 プラスチック使用量削減については、耐熱性・粉砕性・疎水性に優れた木質バイオマス材料を樹脂に高配合したトレファイドバイオコンポジットを開発しました。トレファイドバイオコンポジットはプラスチック使用量を5割以上削減できるとともに、GHG削減にも寄与します。また、セルロースパウダーと樹脂を複合化したセルロースバイオコンポジットも開発しました。当社が培ってきたセルロースパウダー技術を活用し、従来の製品よりも強度や成形性に優れています。今後は、他社と開発を連携することで日用品、容器、建材、家電製品、自動車部材など、幅広い分野への展開を目指し、製品開発と早期の市場投入を計画しています。

 セルロースナノファイバー(セレンピア®)については、2017年度に設置した量産設備(石巻、江津)及び実証生産設備(富士)の稼働により、用途に応じたCNF製造技術と本格的な供給体制を確立し、CNFの市場創出を推進しています。化粧品や食品用途分野で採用が大幅に増えており、2021年度に立ち上げた他社とのコラボレーションによる「セレンピア®」配合のエシカルスキンケアブランド「BIOFEAT.」は、順調に発売1周年を迎えました。また、金属イオンを担持させた変性セルロースを用いて抗ウイルス性を有した不織布や印刷用紙、段原紙等の製品開発を行っています。2021年度に銅イオンをプラスした変性セルロースを使用した機能性シート(抗ウイルス・抗菌・消臭・抗アレルゲン)を用いた医療用マスク 「Cu-TOP(シー・ユー・トップ)サージカルマスク」の販売を開始しました。Cu-TOPについてはその後、大学との共同研究で新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果が高いことを見出しました。

 熱可塑性樹脂中にCNFを強化剤として均一分散・配合するCNF強化樹脂(セレンピアプラス®)は、実証生産設備(富士)によるサンプルワークを進め、自動車部品や住設機器の部材用への採用を目指し、研究開発を進めており、2022年11月に共同検討中のモビリティメーカーの水上オートバイの部品への採用が決まりました。

 NEDOプロジェクトへの参画も積極的に展開しています。CNF強化樹脂開発の案件で2020年度から実施している助成事業を2024年度まで継続することが採択されました。また、2021年度に採択された環境省補助金事業「革新的な省CO₂実現のための部材や素材の社会実装・普及展開加速事業」については、3Dプリンターを導入して成型樹脂材料の開発を進めています。

 バイオリファイナリーについては、引き続きセルロース、リグニン等の木材成分の高度利用技術の開発を推進しており、共同開発を進めている「クラフトリグニンのアスファルト利用に関する研究」がNEDO戦略的省エネルギー革新プロジェクトに採択されています。

(2) 生活関連事業

 液体用紙容器については当社が、各種化成品については当社及び株式会社フローリックが中心となって研究開発を行っています。当事業に係る研究開発費は2,041百万円です。

 液体用紙容器の分野については2020年末に採用されたストローレス対応学校給食用紙パック「School POP®」の全国展開を推進しています。固形物入り飲料が充填可能な新アセプティック充填システム「NSATOM®(えぬえすアトム)」はグループ会社内にある試験用の飲料殺菌ラインを更新して、実際に客先向け実液充填を行い、採用に向けて保存テストを実施中です。また、大型レンガ型紙容器としては国内最速となる無菌充填機(UP-FUJI-LA82)が完成しており、初号機は既に客先に設置し、生産を開始しています。2号機については新たに開発した高性能、高速口栓装着機と合わせてグループ会社内に設置済で、今後拡販向けにデモンストレーションを実施していきます。非飲料分野向けについては差し替え式紙容器「SPOPS®」及び消毒剤用特別仕様「SPOPS® Hygiene」に対応する高速充填機(UP-MX20)を委託充填メーカーに設置済で、既にブランドオーナー数社の製品を充填、販売開始しており、更なる拡販を推進しています。引き続き環境と衛生性、ユニバーサルデザインに配慮した製品及びシステム(充填機等)の開発を推進していきます。

 化成品の分野につきましては、自動車プラスチック部材用プライマー、接着剤等の機能性コーティング樹脂の新製品開発・製品化を進めています。また、合成系水溶性高分子の用途拡大やリグニン製品の農業分野への拡販支援、飼料用酵母の免疫機能向上データ拡充等を行っています。機能性フィルムではスマートフォン、タブレット端末等の中小型ディスプレー用途や車載ディスプレー用途のハードコートフィルムを開発し、製品化しました。さらに、クリーン精密塗工及びハードコート技術を応用した新製品開発に取り組んでいます。

(3) エネルギー事業

 エネルギー事業に係る技術開発として、木質バイオマスを半炭化(トレファクション)して得られる新規固形燃料について事業化を検討しています。また、紙の製造工程で発生する廃棄物を使用した燃料の利用及び当事業のGHG削減についても検討しています。当事業に係る研究開発費は120百万円です。

(4) 木材・建材・土木建設関連事業

該当事項はありません。

(5) その他

金額が僅少であるため、記載を省略しています。

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