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【東証グロース:218A】「精密機器」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「誰もが安全な社会を作る」をミッションとし、「見えないリスクを可視化する」とのビジョンのもと、ハードウェアとソフトウェアを融合させたソリューションを展開しております。特に、製鉄業を中心とした重厚長大系の産業や、鉄道などのインフラ産業への、ドローンとデジタル技術を組み合わせた、革新的なソリューションの提供を進める方針です。また、将来的には当社の得意とする屋内の閉鎖空間(狭く・暗く・危険な空間が多い)を自由に飛行する、自律型ドローンの開発と、日本国内におけるユーザーと同じ課題を抱える海外企業への展開も視野に、事業活動を進めてまいります。
(2)経営環境
当社グループがソリューションを提供している産業インフラの保守・点検領域では、施設・設備の老朽化の進行、技能者の高齢化・人手不足、現場安全の高度化、データ利活用・トレーサビリティの要求が同時進行しております。特に、屋内の狭小・閉鎖・危険環境など、従来の人手中心では困難な箇所に対して、人が入らずにデータを取得することや、3次元化・AI解析などのデータ処理、クラウドでの一元管理といったデジタル化のニーズが年々高まっております。
民間領域においては、製造・エネルギー・鉄道・建設等のアセットを中心に、安全確保、品質の標準化、稼働率向上(停止時間短縮)、保全計画の高度化が導入判断の主因となっており、デジタルツイン/点検DXの導入は、リスク低減と経済合理性(コスト・工期・再現性)の両立手段として位置づけられております。
公共領域では、制度面の整備が進展しております。具体的には、2020年3月のBIM/CIM活用ガイドラインに基づく原則適用の拡大、2023年6月14日のデジタル社会形成基本法等の改正による点検のデジタル化推進、2024年4月1日からの労働時間規制強化(働き方改革関連法)による省人化・省力化ニーズの顕在化などが挙げられます。加えて、2020年9月の内閣府による関係省庁申合せにより、発電施設・ダム・鉄道施設等の生活関連施設においてセキュリティが担保されたドローンの調達方針が確認され、同趣旨の要請は民間調達にも波及する傾向にあります。
海外においては、重要インフラ領域を中心に、安全保障・データ主権・サプライチェーン多様化を意識した調達・運用要件の厳格化が進んでおります。これにより、信頼性やデータガバナンスに配慮した機体・ソフトウェア・運用体制への選好が強まり、インフラ点検のデジタル化は国際的にも拡大基調であります。
こうした産業構造・制度動向を背景に、ドローン市場は2030年に1兆195億円(出典:インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2025」)、DX市場は2030年に2.9兆円(出典:株式会社富士キメラ総研「2025 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」(製造業市場))への拡大が見込まれております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、持続的な利益成長を目指すことが非常に重要だと考えており、特に、経営指標としては、売上高・粗利益率・研究開発費を重視しております。また、経営指標の成果を図るKPIとしては、コアクライアント数(※)及びコアクライアント売上高を挙げております。
※当社は、売上高1,000億円以上の鉄道業、製鉄業、電力・ガス業、建設業、石油化学業、道路業、プラント業に従事している企業、及び自治体・官公庁を重点顧客と考えていることから、そのうち、エンドユーザーベース(エンドユーザーが企業グループを構成している場合にはグループ会社含む)で直近2年間の当社との取引金額が合計50百万円以上の企業をコアクライアント(エンドユーザーが企業グループを構成している場合にはコアクライアントグループ)と定義しています。
(4)経営戦略
当社グループの戦略は、コアクライアント数を増やすことにより、ドローンとデジタル技術を組み合わせたソリューションを浸透させていくことであり、現在、主要取引先となっている製鉄業・鉄道業・電力業等の各企業以外にも、コアクライアント数を増やし、また、各業種の実業務への定着化・標準化によるコアクライアントと当社の取引量の拡大、コアクライアントをエンドユーザーとする中間の事業者への当社サービスの浸透などにより、売上規模を拡大することを企図しております。
そのためには、国内外での様々な設備・施設での有効な事例を増やすことが重要であり、網羅的に市場ニーズを探求するための組織体制整備・マーケティング戦略の策定・実行と、案件実行に係る事業推進が必要となります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。
①既存サービスの強化との事業連携
当社グループにおける各種サービスの継続的な成長のためには、既存顧客のニーズを的確に把握すること等による更なる関係強化に加え、より幅広い業種・業態の顧客企業に選ばれる必要があります。そのためには今まで以上に多くのニーズや環境に対応できるよう既存サービスの質的向上や機能拡充を進め、引き続き顧客満足度の向上やそれに伴う販売の拡大に努めます。
また、今後も市場拡大が見込まれる中で、当社グループが更なる成長を実現していくためには、様々な事業との連携やパートナーシップの拡充による既存サービスの利用機会の増大や利用範囲の拡大を進めることが重要と考えており、そのためには事業連携企業やパートナー企業の新規開拓及び既存企業との関係強化を図ってまいります。
②認知拡大
今後、市場拡大と共にドローン等による業務の代替やアナログ手法のデジタル化がより一層進むことが予測されます。
当社グループは展示会出展やWEBマーケティングを通じて、IBISをはじめ各種サービスの認知度向上に努めてきました。その成果もあり、下水道業界では屋内狭小空間におけるドローン活用が徐々に広まりつつありますが、依然として業界全体での認知拡大と実運用の裾野拡大が必要です。事業拡大と競争優位性の強化のためには、これら屋内ドローンやデジタルツインサービスの更なる認知度向上が重要と考えます。
屋内ドローンの認知が高まり、利活用の機会やユースケースが増えることで、従来のアナログ手法による点検業務の効率化や、人が入ると危険な箇所の代替手段としての活用が期待されます。加えて、本来点検すべきであるが多額のコストや手間から実施を断念していた箇所の点検や、事故・災害など有事の際の探索の一つとして想起されることが社会的な必要性も満たすこととなります。
今後も、当社グループ及びサービスの認知度向上を図るため、広報やマーケティング活動を推進するとともに、ユースケースの創出とサービスチャネルの拡充を進め、新規顧客獲得や新たな領域での利活用につなげてまいります。
③開発体制の強化及び優秀な人材の確保
当社グループでは、ハードウェアとソフトウェアの両技術の向上を推進しており、当該技術が当社の競争力の源泉の1つであることから、継続的な強化が重要であると認識しております。そのためにも、今後も収益基盤の安定化を前提として研究開発への投資を継続しつつ、卓越した能力を持つエンジニアの採用及び育成に注力していきます。また、必要に応じて大学等との産学連携や新技術を持つ企業との業務提携、共同研究等を進め、更なる技術の向上に努めてまいります。
④海外での事業展開
当社グループは韓国を中心に海外での事業展開を進めております。今後も、特に東南アジア各国の規制や現地ニーズ等に合わせ、効率的かつ効果的な進出方法を検討し、推進していきたいと考えております。
⑤情報管理体制の強化
当社グループは、サービス提供やシステム開発・運用の遂行過程において、顧客の機密情報や個人情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。当社ではISMSの認証を2022年9月に取得し、当該情報セキュリティ等の社内規程に基づいた情報管理を徹底しておりますが、今後も、社内での継続的な研修や情報管理体制強化のためのシステム整備等を継続して実施してまいります。
⑥内部管理体制の強化
当社グループは、より一層の事業拡大を見込む成長段階にあり、事業拡大・成長に応じた内部管理体制の強化が重要な課題であるものと認識しております。このため、コーポレート機能を充実させ、経営の公正性・透明性確保のためにコーポレート・ガバナンスを強化し、適切な内部統制システムの構築を図ってまいります。
⑦財務上の課題
当社グループは過年度において、継続的な事業成長を図るため、新製品・新技術の開発に係る研究開発費や人材採用などへの投資、ならびに顧客基盤拡大を目的とした積極的な広告宣伝活動を実施してきました。その結果、利益面で損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる状況が継続しておりましたが、その後の業績拡大により経常利益ベースにて黒字を計上するに至りました。しかしながら、当社グループは更なる企業価値向上のために成長投資を優先する方針を維持しており、得られた利益は引き続き研究開発や人材投資、サービスチャネルの拡充などに充当していきたいと考えております。
一方で、今後の計画が達成できない場合には、赤字及び営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスが継続する可能性があります。こうした事態に備え、一定水準の手元流動性を確保するとともに、借入や増資など多様な資金調達手段を検討し、財務体質の一層の強化を図ってまいります。また、必要に応じてコスト管理の徹底や投資の優先順位の見直しも行い、事業継続性と中長期的な成長の両立を目指してまいります。
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