企業兼大株主JX金属東証プライム:5016】「非鉄金属 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

(1) 経営の基本方針

 当社グループは、2019年6月にJX金属グループ2040年長期ビジョンを策定し(2023年5月に一部改定)、「装置産業型企業」から「技術立脚型企業」への転身により、激化する国際競争の中にあっても高収益体質を実現し、半導体材料・情報通信材料のグローバルリーダーとして持続可能な社会の実現に貢献することを基本方針といたしました。この方針のもと、半導体材料セグメントと情報通信材料セグメントからなるフォーカス事業を成長戦略のコアとして位置づけ、先端素材分野での技術の差別化や市場創造を通じて、市場成長以上の利益成長を目指しています。基礎材料セグメントからなるベース事業は、最適な規模の事業体制のもとで、銅やレアメタルの安定供給を通じてフォーカス事業を支えるとともに、ESG課題の解決に貢献してまいります。

(2) 経営環境

 近年、デジタルトランスフォーメーションの進展、脱炭素社会形成に向けた動きの加速、資源不足・枯渇懸念の深刻化、企業に求められる社会的責任の高まりなど、当社グループを取り巻く社会環境、事業環境は大きな変化に直面しています。

 当社グループを取り巻く経営環境について、報告セグメント別の状況は以下のとおりです。

① フォーカス事業:半導体材料セグメント

 半導体ロジック・メモリ市場は、2023年は市況の調整が続いたものの、今後は生成AIの伸長による市場牽引が本格化するとともに、電気自動車等の普及拡大により、2023年から2027年にかけて年率7.1%(出所:TechInsights Inc. “Worldwide Silicon Demand History and Forecast” (2025年3月時点、シリコンウエハ出荷面積ベース))の成長が予想されています。特に半導体製造技術の世代における最先端ロジックについて、5nm世代以降は2023年から2027年にかけて年率36.9%(出所:同上)の高い成長が見込まれており、多層化・微細化の進展は継続するものと思われます。

 半導体の成膜方法であるPVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長法)に用いられる当社の主力製品である半導体用スパッタリングターゲットはロジック・メモリをはじめとした各種の半導体デバイスの製造に用いられていますが、最先端ロジックほど配線層数が多くなり、半導体用スパッタリングターゲットの使用量が増加する傾向にあることから、その販売量は半導体ロジック・メモリ市場の成長を上回ることが期待されます。また、最先端ロジックほど配線が細かくなり、PVDが適さない微細な配線に対するCVD/ALDによる薄膜形成ニーズも高まることが見込まれます。

 さらに、データ演算需要の飛躍的な増加及び生成AIの伸長を背景に、生成AIを搭載したサーバを大量に運用できるAIデータセンターの建設も進んでいます。これに伴いAIサーバの出荷台数の増加も見込まれており、2023年から2028年にかけて年率30.2%(出所:Prismark Partners LLC 「2025 Prismark Workshop, February2025」、出荷台数ベース)の成長が予想されています。AIサーバにはチップ内の配線材料としての半導体用スパッタリングターゲットをはじめとして、光通信向け材料としてのInP基板、タンタルキャパシタ向けの高純度タンタル粉、大容量HDD向けの磁性材用ターゲットなど、半導体材料セグメントの当社製品が多く用いられていることから、このような傾向は本セグメントの収益拡大の追い風になることが見込まれます。

 加えて、AIサーバには高速の並列演算を担うために多数のGPUが搭載されており、データセンター向けGPUの出荷数量も2023年から2027年にかけて年率42.4%(出所:富士キメラ総研「2024 データセンター・AI/キーデバイス市場総調査」、出荷数量ベース)の成長が予想されています。GPUに対して高機能を付与するためには多層化・微細化に加えてパッケージング分野における技術革新が必要であり、パッケージングにおいてはチップ間の配線材(TSV・RDL)やチップレット間をつなぐ配線等の用途における成膜機会の拡大からも、当社の半導体用スパッタリングターゲットの需要の増加を見込んでいます。

② フォーカス事業:情報通信材料セグメント

2025年3月期においては、エレクトロニクス製品のサプライチェーンにおける在庫調整が一巡し、当社主力製品であるFPC向け圧延銅箔の販売は、再び成長軌道に回帰しています。電子機器製品等に搭載されるFPCの面積は、2024年から2029年にかけて年率7.8%(出所:Prismark Partners LLC “The Printed Circuit Report Fourth Quarter / March 2025”)の成長が予想されています。今後は、AI搭載等によるスマートフォンやパソコン向け部材の更なる小型化・高機能化に加え、スマートウォッチやスマートグラスといったウェアラブル等の周辺機器の市場成長により圧延銅箔の使用拡大が見込まれます。また、世界的なEV販売台数の増加に伴い、配線用や誤作動防止のために用いられるシールド材用の圧延銅箔の採用・使用量の拡大が期待されるとともに、中長期的には産業機械、ロボット等の分野において小型化、軽量化が進み、複雑な動きに対して疲労耐性の強い圧延銅箔の使用量拡大が見込まれています。

 積層セラミックコンデンサの内部電極に使用される超微粉ニッケルについては、AIを搭載する高機能通信機器の普及や、EVや自動運転の普及に伴う電装化の進展、データサーバやAIサーバ等の成長が需要を牽引し、市場は次第に成長軌道に回帰していくものと想定しています。

 また、半導体材料セグメントが属する市場環境において記載しているAIサーバの導入拡大は本セグメントの収益拡大の追い風になることも見込まれており、特にAIサーバ向けのコネクタにおいては高耐熱・高強度などの特性が求められ、要求ニーズに応えるチタン銅の採用が急速に拡大しているほか、高温となるAIサーバ内における冷却液の漏液を検知するための漏液センサーの需要拡大も見込まれます。

③ ベース事業:基礎材料セグメント

 脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入が拡大するとともに、様々な産業や領域において電化が進行しており、中長期的に銅素材の需要拡大が見込まれます。例えば、電気自動車では、モーターコイルやバッテリーなどにガソリン車の約4倍の銅が使用されています。銅需要拡大の一方で、既存鉱山からの銅鉱石の供給量には限界があり、銅の需給はひっ迫することが見込まれており、銅価は堅調に推移していくものと考えられます。技術革新、製品寿命の短期化、人口増加等の要因により電気・電子機器の廃棄物であるE-Wasteの発生量が増加傾向にあり、2022年に62百万トンであったものが2030年には82百万トンに達する見通しです(出所:UNITAR “The Global E-waste Monitor 2024”)。一方で、脱炭素に向けた世界的な環境意識の高まりにより、リサイクル原料確保への動きが加速していることに加えて、環境規制強化の流れもあり、リサイクル原料の調達コストは上昇することが予想されます。また、アジア域内での製錬所建設が進むことにより、銅地金のサプライヤーが増加し、銅地金の販売環境の悪化が見込まれています。

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 経営の基本方針-長期ビジョン

 当社グループは、長期ビジョンに基づき、「装置産業型企業」から「技術立脚型企業」への転身により、激化する国際競争の中にあっても高収益体質を実現し、半導体材料・情報通信材料のグローバルリーダーとして持続可能な社会の実現に貢献することを基本方針としています。

 フォーカス事業を成長戦略のコアとして位置づけ、先端材料分野での技術の差別化や市場創造を通じて、市場成長以上の利益成長を目指します。また、ベース事業は、最適な規模の事業体制のもとで、銅やレアメタルの安定供給を通じてフォーカス事業を支えるとともに、サステナブルな社会の実現に向けて貢献していきます。


② 半導体の市場成長を捕捉するグローバルな生産体制の構築

 半導体の多層化・微細化の進展及び生成AIの普及に伴うデータ転送の高速・大容量化を背景に、半導体ロジック・メモリ市場は引き続き拡大することが見込まれています。このような市場成長を捕捉すべく、半導体用スパッタリングターゲットの生産設備への積極的な拡張投資を推進しており、2028年3月期には2024年3月期対比で約1.6倍の生産能力とすることを目指しています。

 上工程(注1)については、既存の磯原工場に加えて、茨城県ひたちなか市において新工場の建設を進めています。下工程(注2)については、日本に加えて台湾、韓国及び米国に生産拠点を構え、主要顧客である半導体メーカーに近接して製造を行っています。特に米国においては、複数の先端半導体メーカーが拠点の新設・拡張を進めていることから、アリゾナ州メサにおいて新工場の建設を進め、2024年11月にこれを竣工しました。この工場では生産能力を拡張するとともに、最新鋭設備の導入による工程の自動化を実現することにより、生産性の向上を見込んでいます。

 当社グループは、グローバルで多様な顧客基盤に対応するため、今後も市場の成長を捕捉する強力なグローバル生産体制の構築を目指します。


(注) 1.上工程とは、半導体用スパッタリングターゲット製造プロセスにおける溶解~熱処理工程を指します。

2.下工程とは、半導体用スパッタリングターゲット製造プロセスにおける加工・ボンディング工程を指します。

3.生産拠点は、2025年3月時点における状況を反映しています。

③ 次世代のグローバルトップシェア製品の開発

 次世代半導体材料として期待されているCVD・ALD材料の本格供給に向け、東邦チタニウム株式会社茅ケ崎工場の敷地内及び当社日立事業所への生産設備及び開発設備投資を決定しています。さらに、TANIOBIS GmbHにおいては近年の市場環境の変化を捉えた生産拠点の再編に取り組んでいますが、当該再編の一環として、ドイツの拠点にCVD・ALD材料の開発・生産が可能な設備を導入し、稼働を開始しています。

 また、当社は、長年培った高純度化、表面制御、組成、分析評価等の技術を活かした次世代の収益の柱の確立に取り組んでいます。具体的には、データセンターやモバイル通信量の増加により成長が予想されているInP(インジウムリン)や防衛・メディカルなどの分野での成長が期待されるCdZnTe(カドミウムジンクテルル)といった結晶材料の事業規模拡大を目指しています。今後も、次世代のグローバルトップシェア製品を創出する取組みを継続していきます。




CVD・ALD材料

InP基板

CdZnTe基板

④ サーキュラーエコノミー実現に向けた取組み

 脱炭素化社会の進展に伴い、再生可能エネルギー導入の拡大や、様々な産業・領域における電化が進行しており、銅やレアメタルなどの金属資源の需要は今後さらに拡大していくことが見込まれています。こうした中、自動車業界や家電・電子機器業界を中心に、使用済み製品を回収・再資源化し、同一素材として再利用するクローズドループ・リサイクルへの関心が高まっていますが、その処理は必ずしも容易ではなく、実現にあたっては、製品ライフサイクルに関わるサプライチェーン全体が連携して資源効率性を高める仕組みを整備することが不可欠です。

 当社は、台湾、米国、カナダ、ドイツ、シンガポールに集荷拠点・営業拠点を有し、世界規模のリサイクル原料集荷体制を整えています。さらに、2024年7月に事業を開始した三菱商事との合弁会社であるJXサーキュ―ラーソリューションズ株式会社(以下、JXCS)を通じ、三菱商事の有する産業横断型のグローバルなネットワーク・知見を活用することで、リサイクル原料の集荷強化や、国内外リサイクラーと協働したリサイクルプロセス変革・デジタル化等を推進し、サーキュラーエコノミーの実現を目指します。

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