GVA TECH
【東証:298A】「情報・通信業」
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企業概要
(1) 経営方針
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社は、「法とすべての活動の垣根をなくす」をパーパスとし、テクノロジーを活用した法務業務を支援するITプロダクトを提供しております。
私たちの社会では、企業活動や個人の行動はすべて法に支えられています。しかし、法の複雑さが垣根となり、多くの活動に制約を与えています。この垣根をなくすため、まずは大企業の法務部門や弁護士といった専門家向けに、業務効率化のプロダクトを提供し、市場に参入しました。
その後、技術を進化させ、法務部門だけでなく、事業部門を含む全社対応のソリューションを展開しています。
さらに、中小企業向けの支援も進めながら、今後は個人ユーザーにまで広げ、最終的にはすべての活動から法の垣根を取り除くことを目指します。
(2) 経営環境
LegalTech SaaS事業において、株式会社富士キメラ総研が2023年7月に発表した「ソフトウェアビジネス新市場2023年版」によると、当社が属する国内SaaS市場は2023年には1.41兆円に達し、2027年には2.09兆円に達する見込みです。この増加の背景には、リモートワークの普及によりSaaSの需要が増加し、SaaSがビジネスに浸透したことが挙げられます。
また、株式会社アイ・ティ・アールが2022年10月に発表した「リーガルテック市場2022」によると、リーガルテックの国内市場(電子契約、CLM/契約管理、AI契約書レビュー支援、特許リサーチ検索、リーガルリサーチ検索の各サービスの市場規模を合算)は2021年で244億円であり、2026年に731億円に達する見込みです。この市場規模は、各ベンダーの売上を集計及び推定した規模であり、法務部門や法律事務所を中心とした法務リテラシーの高い方向けのサービスが主体です。当社が次に取り組む市場として、事業部門等の法務リテラシーが相対的に低い方への価値を発揮できるサービスや機能を展開し、全社展開をターゲットとした市場に拡大してまいります。この市場規模は、上記の731億円の市場に加え、全労働力人口6925万人(注1)を対象として、当社のOLGAの全社向けの機能の単価を掛け合わせて、4,886億円と当社独自に算定しております。
また、登記事業においては、登記申請の支援を行っている司法書士及び司法書士事務所の売上規模から市場規模を推定しております。その規模は、総務省の「サービス産業動向調査」によると2018年の市場規模は2,855億円と推定されます。なお、法務省の「登記統計 統計表」によると、2018年より商業・法人の登記申請の件数は約150万件からおおむね横ばいで推移しているため、同水準の市場規模で推移していると推測されます。
(注)1.政府統計ポータルサイト「e-Stat」2023年度労働力調査より算定
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社は、企業における契約書業務や法務手続き業務におけるペーパーレス化や業務効率化等を背景に、テクノロジーを活用して課題解決をするリーガルテック事業を主要な事業としており、LegalTech SaaS事業の「OLGA」を、登記事業の「GVA 法人登記」を主軸に、プロダクト開発やサービスの拡充・拡販を進めております。
今後の具体的な取り組みは以下のとおりです。
①OLGAの各モジュールの連携強化
現状の製品戦略では、ユーザーが機能ごとに導入しやすいよう、「AI法務アシスタント」「法務データ基盤」「AI契約レビュー」「契約管理」の各モジュールは、それぞれに機能開発を進めておりました。前期の1年間で基本的な機能の開発が整ったことから、それぞれの機能連携を強化し、法務案件の受付・管理から契約審査業務までの業務をシームレスに実現し、よりユーザーの体験を向上させていきます。
これにより、競合企業との差別化による新規顧客獲得の推進に加えて、顧客単価の向上および既存ユーザーの解約率低下に寄与するものと考えております。なお、2024年12月末時点において、複数のモジュールを導入している企業のみで集計した顧客平均単価は198千円であり、全体の顧客平均単価の向上に寄与しております。
②OLGAの全社導入に向けた取り組み
当社がLegalTech SaaS事業で取り組んでいる契約業務のDXは、法務部門だけでなく全社にかかる契約業務の全体の最適化です。実際の契約条件の交渉や、事業部内での契約内容の確認、個別取引に応じた契約条件の整理、契約締結に係る社内手続き等、契約業務の多くにおいて、事業部門が担っております。一方で、法務部門と事業部門において、取引に関する内容理解や法務リテラシー等の差が生じていたり、契約業務において様々なツールが駆使されることにより、情報の分担が発生し、不要な対応工数の発生や、取引や意思決定スピードの遅延、取引リスクが共有されないといった全社的な課題が生じております。
OLGAは、事業部門等の依頼部門がアカウントを持たなくても、法務部門とのコミュニケーションの円滑化や過去の案件に関するナレッジの利活用が可能ですが、さらに、法務部門以外での効果を高めるための機能を拡充し、より全社的に効果の高いツールとして進化させてまいります。
すでに事業部門でも使える依頼者アカウント機能やAIチャットボット機能をリリースしており、全社的な利便性が向上しており、法務関連の案件に関する対応工数が大きく削減することが可能です。これによる、新規顧客獲得の促進と、法務部門だけではなく事業部門での効果を促進し顧客単価の向上を進めてまいります。
③登記事業における既存プロダクトの機能拡充と新プロダクトの開発
既存のプロダクトで購入数増加のためには、現在対応していない登記事項の追加をすることで、当該登記事項での利用を期待する潜在的なユーザーを獲得することが可能です。各登記事項のニーズを分析しながら機能拡充に努めてまいります。
また、登記事業の主なターゲットとしているスタートアップ企業や中小企業のように、社内の法務機能が充実していない企業においては、登記手続きだけでなく、会社運営において様々な法的手続きに対応する負担が非常に大きいです。中長期的な成長のために、登記申請手続き以外のこれらの法務手続きに対応したプロダクトの開発を検討しております。具体的には、弁理士や行政書士、社会保険労務士等の様々な士業が対応している各種申請を視野に入れており、市場規模やユーザーのニーズを考慮しながら、プロダクトの領域を検討し、開発を進めてまいります。
これらの新しい領域のプロダクトを、登記事業で獲得した顧客基盤に横展開することにより、1顧客当たりの利用数とともに売上を拡大してまいります。
なお、総務省の「令和3年経済センサス活動調査」によると、各士業における事業所の売上金額の合計から推定された市場規模は、それぞれ弁理士が属する特許事務所で1,806億円、行政書士事務所で622億円、社会保険労務士事務所で1,714億円とされております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1)及び(3)に記載の、経営方針及び経営戦略を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
①技術革新への対応
当社が属するリーガルテック業界の発展には、AI技術をはじめとした、ITの技術開発が根幹にあると考え、OLGAにおける継続的な機能開発・機能改善に取り組んでおります。そのためには、最先端の技術の研究のための優秀な人材の確保は重要な課題と考えております。しかし、優秀な技能を持つ人材の安定的な確保は、同業他社とも競合することから困難な状況となっております。当社としては、リーガルテック業界における知名度向上を図り、魅力的で存在感のある企業であることを継続的に訴えかけるとともに労働環境や福利厚生の充実にも取り組んでまいります。
②システムの安定稼働およびセキュリティの強化
当社は、顧客の取引先における契約情報等、重要な情報資産を取り扱うサービスを展開しているため、サービス提供に係るシステムの安定稼働及びセキュリティ管理が重要な課題であると認識しております。
この課題に対応するため、今後の事業拡大においてサービス利用者数が増加した場合も、環境の変化に対応したシステム保守管理体制を構築するとともに、「ISO/IEC 27001:2022」に基づいた情報セキュリティの体制を構築することで、システムの安定稼働及び高度なセキュリティが維持された体制が可能となるように努めてまいります。
③財務体質の強化及び業績の黒字化
当社は、過年度において継続的な事業成長を図るため、サービスに関する開発や体制強化に伴う人員増強への投資を行った結果として、当事業年度まで営業赤字かつ営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスが継続しております。特に、投資を進めているOLGAは、ユーザーに継続して利用されることで収益が積み上がるストック型の収益モデルになります。一方で、開発費用やユーザーの獲得費用が先行して計上される特徴があり、短期的には赤字が先行することが一般的です。
当社では、事業の拡大に伴い、OLGAの顧客拡大や単価拡大に伴いストック収益が順調に積み上がることで、先行投資として計上される開発費用やユーザーの獲得費用が売上高に占める割合は低下傾向にあり、営業損失率は改善しております。今後は、売上高と利益の成長を両立させたバランス型の成長を志向しつつ、早期の当期純損失の解消及び営業キャッシュ・フローの黒字化を目指します。
④ 資金繰りの安定化
当社は、今後の成長戦略の展開に伴い、財務の充実と安定化を進めていくことが重要と考えております。これまで第三者割当増資及び借入による資金調達を実施しておりますが、今後も多様な資金調達手法を検討しながら、長期的な当社の成長を実現することに努めてまいります。
(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、売上高の最大化が営業キャッシュ・フローの最大化ひいては企業価値向上につながると考えております。そのため、売上高を重要な経営指標と位置付け、高い成長率の維持を図ってまいります。また、各事業の継続的な成長を実現するため、LegalTech SaaS事業は、サブスクリプション売上(注1)、ARR(Annual Recurring Revenue)(注2)、顧客数(注3)、顧客平均単価(注4)、Net Revenue Churn Rate(注5)を、登記事業は、登記事業における売上、サービス利用数(注6)、リピート利用数(注7)、累計利用社数(注8)をKPIとしております。
各指標の推移は以下のとおりであります。
(注)1.LegalTech SaaS事業の売上のうちサービスの月額利用料といった継続性のある収益による売上を指します。
2.毎期決まって発生する売上(経常収益)の1年分を指します。対象月末時点における継続課金となる契約に基づく当月分の料金の合計額の12ヶ月分によって算出します。
3.OLGAの顧客社数のことを指します。
4.1顧客当たりの継続課金分の平均売上金額のことをいい、各四半期決算月の実績を四半期末時点の顧客数で割って算出した金額を記載しております。
5.サービスの解約率の指標であり、既存顧客のアップセル/ダウンセルを考慮した指標です。四半期決算月ごとに次の算式により算出しております。「(当月解約のあった顧客及び減額された顧客のMRR-既存顧客の追加のMRR)/前月のMRR」の12か月平均」なお、MRRとは、Monthly Recurring Revenueの省略表記であり、経常収益のうちの1か月分を指します。対象月末時点における継続課金となる契約に基づく当月分の料金の合計額によって算出します。
6.GVA法人登記及びそのOEMサービスを利用された回数を指し各四半期の合計で算出しております。
7.サービス利用数のうち、過去にGVA法人登記を利用した顧客が利用した件数を指します。
8.GVA法人登記を1度でも利用したことのある顧客の総数のことを指します。
(LegalTech SaaS事業)
| 2023年12月期 | 2024年12月期 | ||||||
第1 四半期 | 第2 四半期 | 第3 四半期 | 第4 四半期 | 第1 四半期 | 第2 四半期 | 第3 四半期 | 第4 四半期 | |
サブスクリプション 売上(百万円) | 71 | 79 | 87 | 96 | 104 | 117 | 143 | 168 |
ARR(百万円) | 294 | 328 | 361 | 391 | 434 | 493 | 618 | 696 |
顧客数(社) | 392 | 427 | 444 | 454 | 483 | 540 | 598 | 620 |
顧客平均単価(千円) | 62 | 64 | 67 | 71 | 75 | 76 | 86 | 93 |
Net Revenue Churn Rate(%) | 0.72 | 0.73 | 0.76 | 0.70 | 0.80 | 0.93 | 0.74 | 0.59 |
(登記事業)
| 2023年12月期 | 2024年12月期 | ||||||
第1 四半期 | 第2 四半期 | 第3 四半期 | 第4 四半期 | 第1 四半期 | 第2 四半期 | 第3 四半期 | 第4 四半期 | |
売上(百万円) | 85 | 102 | 94 | 105 | 117 | 133 | 148 | 168 |
サービス利用数(件) | 2,665 | 3,324 | 3,181 | 3,447 | 3,928 | 4,273 | 4,100 | 4,176 |
リピート利用数(件) | 778 | 934 | 944 | 932 | 1,143 | 1,285 | 1,264 | 1,253 |
累計利用社数(社) | 11,176 | 12,721 | 14,291 | 15,965 | 17,898 | 19,955 | 21,943 | 23,910 |
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