Faber Company
【東証:220A】「情報・通信業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「辺境の知から“マーケティングゼロ”を実現する」というパーパス(当社グループの存在意義)のもと、「マーケティングをやらないと、どんなにいいものでも届かない」から、「マーケティングをやらなくても、いいものは届く」といった、売り手と買い手の境界線が存在しない世界の実現を目指しております。
このような存在意義のもと、デジタルマーケティングを中核に据えた事業開発の連鎖を構築することにより、企業のマーケティング活動の変革を推進してまいります。
(2)経営環境
当社グループが事業展開を行う市場は、デジタルマーケティング市場と認識しております。株式会社矢野経済研究所の「デジタルマーケティング市場に関する調査(2024年)」(注1)によりますと、2024年の市場規模は3,442億5,000万円に成長すると見込まれており、2027年には5,016億円に拡大すると予測されております。当調査では、デジタルマーケティングと生成AIは非常に相性が良く、中期的な視点で重要になっていくとする一方で、実際のビジネスにおける活用イメージが湧きにくい点が、生成AIの活用における課題として指摘されております。当社グループは、生成AIを活用した「ミエルカSEO」を始め、デジタルマーケティング自動化ツールについて豊富なサービスラインナップを有しており、ツールの導入を検討している企業に対して、業種を問わず幅広いサービスの提案ができるという点で強みを持っております。
また、インターネット上のマーケティング活動という点において、広義にはインターネット広告市場も当社の事業展開に関連する市場と認識しております。2023年のインターネット広告費は3兆3,330億円(前年比107.8%)となり、進展する社会のデジタル化を背景に増加傾向が続いております(株式会社電通の調査レポート「2023年日本の広告費」)。デジタルマーケティングを取り巻く環境変化のスピードは早く、時代の変化に応じたトレンドが存在することから、対応する当社グループのサービスも変化に応じたアップデートを行っていく必要があることが、当社を取り巻く経営環境の中で課題として認識しております。
一方で、これら市場の拡大を支えるIT人材の将来的な需給ギャップも指摘されているところであり、2030年には最大79万人に及ぶ可能性を指摘した調査もございます(注2)。当社は企業にデジタルマーケティング人材の提供を行うサービスも運営しており、デジタル人材の需給に関わる市場も、関連市場と認識しております。デジタルマーケティングに取り組む企業におけるIT人材の需要の高まりに対して、高い専門性を持ったソリューションサービスを提供できる点でも、当社は強みを持っております。
(注1)「デジタルマーケティング市場規模推移・予測」
(単位:百万円)
※株式会社矢野経済研究所「デジタルマーケティング市場規模推移・予測」(2024年8月22日発表)をもとに当社作成。
(注2)IT人材需給に関する主な試算結果
IT人材は2030年には最大約79万人不足すると予測されております。
※みずほ情報総研株式会社「IT人材需給に関する調査 調査報告書 2019年3月」をもとに当社作成
(3)経営戦略
当社の競争優位性(コア・コンピタンス)は次の各項であると認識しており、この優位性を拡大していくことを経営の基本方針かつ、アクションプランの基軸を為すものと考えております。
①マーケティング力
当社は、低コストで大量の認知及び営業リードを形成するスキルを蓄積しており、優位性と認識しております。具体的には、当社サービスのファインダビリティ(注1)を最大化する情報発信スキル、顧客企業の成功事例(注2)を創出し発信するスキル、セミナー開発や展示会出展に関するスキルを指します。当社の情報発信活動は、デジタルマーケティングの基礎から応用、最新情報を学ぶことができる「ミエルカマーケティングジャーナル」、YouTubeチャンネル「ミエルカチャンネル」等の運営を通じて継続的に行っております。成功事例の創出については、当社ウェブサイトで公開しているもの、「Web担当者Forum」等デジタルマーケティングの専門媒体に記事提供を行っているものを併せ、149件(2024年9月末時点。同一の事例が複数の媒体で掲載されている場合も、1件としてカウントしております)に至っております。セミナー開発に関しては、生成AI等、デジタルマーケティングの最新トレンドをテーマとして当社の専門人材が講師を務めております。展示会出展に関しては、経験の蓄積によるオペレーショナルエクセレンスが、大量のリード獲得に結び付いております。この他、オンライン広告を活用する際の経験値、スキルも蓄積しており、良質な営業リード形成を行っております。今後におきましても、これらのスキルを蓄積し、マーケティング力の向上に努めてまいります。
②デジタルマーケティング人材のネットワークの構築力
当社は、当社の事業領域における高度専門人材が取締役や顧問、従業員等に複数名在籍しております。これら専門人材を発掘し、プロデュースし、マネジメント(収益化)を行うことは当社が得意とするところであり、優位性と認識しております。これら専門人材の情報発信活動(注3)は、当社の人材採用及び販売活動に有効に作用していると考えており、「職人会議(注4)」の実施等を通じて後進の育成にも努めております。今後におきましても、高度専門人材の発掘及び育成を通じ、デジタルマーケティング人材のネットワーク構築力の強化に努めてまいります。
<成功事例の形成(当社Webサイトより)> | <展示会出展のオペレーショナルエクセレンスを構築> |
③既存顧客への豊富なクロスセル機会
当社サービスの有料既存顧客は1,713社(2024年9月末時点)であり、既存顧客に対する豊富なクロスセル(注5)機会を有すると認識しております。当社はデジタルマーケティングに関して豊富なサービスラインナップ及び課題解決の手法を持つことから、有料既存顧客のうち、特に大手・中堅企業への組織的な販売活動を行うことができる体制を構築し、顧客単価の上昇に努めてまいります。新規顧客に対しては、最初に顕在化した課題を解決するサービスを提供し、深い商談を経て顧客に潜在的なニーズや課題が存在する場合は、それらを解決するサービスを併せて提供することで、顧客単価の上昇に努めてまいります。
④技術解決力
当社は、時代の変化に沿ったサービスと機能を、スピード感をもって開発することができる体制を有していることが自社の優位性の一つになっていると認識しております。当社は、豊富なサービスラインナップを持ち、多数の顧客接点を有しております。顧客接点は、顧客の潜在的なニーズを引き出すことができる機会でもあり、この機会をサービスや機能の開発に活用した場合、先んじたサービスや機能の開発を行うことが可能となります。また、当社は2014年8月より継続して、自然言語処理・人工知能技術に精通した筑波大学准教授の吉田光男氏の研究室と産学共同研究を行っております。今後も、これらの活動を通じて技術解決力の向上に努めてまいります。
⑤継続的な企業文化の醸成
当社は、当社が有している価値観・強み・行動を「DNAマップ(注6)」として整理しており、「DNAマップ」を利用した採用・育成活動を行うことで継続的に企業文化を醸成しております。採用候補者及び各従業員が持つ才能・潜在能力の見極め及び最大化に努めており、具体的には、全社合宿や昇格時の研修による価値観の共有等を継続的に行っております。今後も、「DNAマップ」を効果的に利用し、時代の変化や当社の成長フェーズに応じたアップデートを継続してまいります。
(注1)インターネット上の見つけやすさ。
(注2)当社サービスの利用から成果創出に至るプロセスを記事化したもの。
(注3)Webサイトやブログ、動画、SNS、セミナー登壇等、社外に対する情報発信活動全般を指す。
(注4)当社はデジタルマーケティングの高度専門人材を独自に「職人」と呼称しており、後進を育成する当社独自の仕組みを指す。
(注5)顧客が既に契約しているサービスに加え、他サービスを提案することにより顧客単価を上げる営業手法。
(注6)当社独自の「DNAマップ」
(4)事業展開方針
当社グループは、デジタルマーケティングを通じた企業目標の達成、事業成長、ビジネス変革の支援をすることを目的とし、「ミエルカSEO」等、デジタルマーケティングの生産性を向上させる自動化ツール群、及びデジタルマーケティングに関する多様で複雑な課題を解決するリソース群(人材・教育・コンサルティング)の提供を行っております。
消費者の情報探索プラットフォームの多様化に伴い、企業は各プラットフォームの特性に合わせたデジタルマーケティングの施策展開が必要となっております。当社グループはこの変化を機会と捉え、自動化ツール群及びリソース群の提供を通じ、競争優位性を活用することで解決可能な課題の幅と深度の拡充を可能にするサービスを創出していく方針であります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は持続的な成長と企業価値の向上を実現していくうえで、1社あたりから発生する月額粗利益を重視しております。デジタルマーケティングに関する豊富なサービスラインナップを持つことから、単一のサービスで取引を開始した顧客に対してクロスセルを行い(注1)、顧客単価を上昇させていく方針であり、実現するための重要なKPI(Key Performance Indicator)として管理しております(注2)。
(注1)当社サービスのクロスセル展開イメージ
(注2)契約社数(四半期平均)と1社あたりの月額粗利益(単位:社数)
| 2023年 10-12月 | 2024年 1-3月 | 2024年 4-6月 | 2024年 7-9月 |
合計 | 1,762 | 1,732 | 1,704 | 1,713 |
30万円以上 | 59 | 61 | 59 | 65 |
3万円以上 30万円未満 | 749 | 757 | 763 | 781 |
3万円未満 | 954 | 914 | 882 | 867 |
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①プラットフォームへの対応
当社の事業においては正確性のあるサービスの提供を行うため、グローバルに事業展開する巨大企業が提供する検索エンジン等のプラットフォームが不定期に行うアップデートの情報を適時に取得し、サービスに反映する必要があります。迅速かつ確実に情報を取得できる体制を整備し、適時サービスに反映させることで正確性のあるサービスの提供に努めております。
②サービス競争力の向上
当社の成長には、提供価値の中核をなすデジタルマーケティングの課題解決を行うサービス群の競争力向上が欠かせません。顧客接点を重んじ、定期的な開発プロセスの見直しや、子会社・業務委託先等の有効活用を通じ、品質及び開発スピードの向上を図っております。新しい情報及び技術の取得に対しては継続的に人的資本投資を行い、サービス競争力の向上を行うことによる収益機会の拡大に努めてまいります。また、企業の多様なニーズに対応するためには、サービスラインナップの充実強化を図っていく必要があると認識しており、規律を持った戦略的な事業提携やM&Aを有効に活用していく方針であります。
③新規事業の展開
当社は、「辺境の知から“マーケティングゼロ”を実現する」というパーパス(当社グループの存在意義)のもと、「マーケティングをやらないと、どんなにいいものでも届かない」から、「マーケティングをやらなくても、いいものは届く」といった、売り手と買い手の境界線が存在しない世界の実現のために、継続的な新規事業の開拓と育成に取り組み、当社の強みを生かすことができる周辺領域への進出・拡大を図ってまいります。
④認知度及びブランド力の向上
当社はこれまで、当社及び当社サービスの優位性に拠る形での販売活動に専念してまいりました。その結果として、現在、幅広い業種、企業に当社サービスを導入いただき、継続的な取引による確固たる顧客基盤の形成に至っていると認識しております。一方で、さらなる成長を続けていく上では、当社及び当社サービスの認知度やブランド力を向上させていくことが重要であると考えております。今後は広告宣伝活動による積極的な販売促進活動に取り組み、認知度及びブランド力のさらなる向上に努める方針であります。
⑤システム開発
当社の展開する事業は、自動化ツール群の運用に関わるシステムの安定稼働及びセキュリティ管理体制の構築が重要であると認識しております。当社事業の成長スピードや市場環境の変化に対応し安定した事業運営を行うために、中長期的視野に立った設備投資を行い、システムの安定稼働及びセキュリティ管理体制の維持構築に取り組んでいく方針であります。
⑥人材の確保と育成の強化
当社が今後も事業を拡大していくためには、優秀な人材の確保と育成が必要不可欠であると考えております。この課題に対処するために、当社は、知名度の向上、教育の充実を図り、優秀な人材が長期にわたってやりがいを感じて働くことができる職場環境の整備を進めるとともに、新卒採用も含めた積極的な採用活動を継続的に進めてまいります。
⑦内部管理体制の強化
当社は、継続的な成長を維持していくために、内部管理体制の強化が重要であると認識しております。このため、事業規模や成長ステージに合わせコーポレート機能を拡充していくとともに、経営の公正性・透明性を確保するための内部管理体制強化に取り組んでおります。具体的には、事業運営上のリスク管理や定期的な内部監査の実施によるコンプライアンス体制の強化、監査等委員監査の実施によるコーポレート・ガバナンス機能の充実等を行ってまいります。
⑧情報セキュリティ体制の更なる整備
当社はサービス展開において、顧客企業・パートナー企業・仕入先・外注先・マーケター等との取引に関連して、個人情報及び営業機密等の機密情報を取り扱うことがあります。現在も、情報セキュリティマネジメントの国際規格であるISO/IEC27001:2022の認証を取得し、秩序ある情報管理・運用に努めておりますが、情報セキュリティ体制の整備を引き続き推進していくとともに、情報の取り扱いに関する社内規程の適切な運用、役職員の機密情報管理に関するリテラシーの向上、役職員による機密情報の取り扱いに関する内部監査等を通じ、情報セキュリティ体制の強化を図ってまいります。
⑨財務上の課題
現状においては、安定的に利益を計上のもとキャッシュ・フローを創出しており、事業継続に支障を来すような財務上の課題は認識しておりません。今後、資金需要が生じた場合は自己資金を充当する方針でおりますが、金融機関からの借入やエクイティファイナンスも選択肢として対応してまいります。また、収益基盤の維持・拡大を図るためには、手許資金の流動性確保や自己資本の充実が重要であると考えております。各種費用対効果の検討を継続的に実施することで、財務健全性の確保に努めてまいります。
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