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【東証グロース:7409】「輸送用機器」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「ゼロからイチを創る ~常識を疑い、組織力で難しい課題に挑戦する~」という経営方針のもと、日本のものづくり企業として、グローバルで成長することを目指しております。そのために、航空機エンジン部品に代表される難易度の高いものづくりに取り組むとともに、最先端技術の開発やイノベーションを推進しております。
(2) 経営環境
航空輸送業界は、新型コロナウイルス感染症による航空旅客需要の急激な減少に伴い甚大な影響を受けましたが、移動制限の緩和が進むにつれ航空旅客需要は急激に回復し、2024年には新型コロナウイルス感染症発生前の水準にまで回復するとともに、今後は長期にわたり成長することが見込まれております。
昨今多くの航空会社は大型機を活用し、主要空港などの大規模拠点(ハブ)に輸送を集中させ、そこから中小型機を活用して各拠点(スポーク)に輸送を行うハブアンドスポーク方式ではなく、中小型機等を活用し、出発地から目的地に直接輸送を行うポイントトゥポイント方式を採用する傾向があります。これは、エンジン性能の向上による規制緩和や、中小型機の燃費向上に伴う長距離飛行の実現に伴い、ポイントトゥポイント方式の方が、乗換等の手間が不要で柔軟なフライト設定が可能となるためであります。こういった背景により、中小型機である仏Airbus社製A320neoファミリー、並びに米Boeing社製737MAXについては、2024年の年間引渡機数がそれぞれ、602機、260機に対し、2025年6月末時点での受注残高機数は、それぞれ7,251機、5,415機となり(出所:一般社団法人日本航空機開発協会)、受注残高機数は年間引渡機数に対して10年を超えるほどの水準となり、今後も生産を拡大することが見込まれております。仏Airbus社、並びに米Boeing社は、これらの需要に対応するために増産に向けて取り組んでおり、両機種には当社製品が搭載されるLEAPエンジンが採用されていることから、当社のチタンアルミブレードの需要も増加することが見込まれます。
また、航空機業界は、新型コロナウイルス感染症による影響を発端としたサプライチェーンの毀損や人手不足等により、各種部品を供給できるサプライヤーが世界的に不足しています。こうした中、チタンアルミブレードの供給実績があり、地政学的に安定した日本にある当社にとっては、新たな量産案件を獲得できる機会が拡大しています。
その他にも、航空業界では2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、機体メーカー及びエンジンメーカーにおいてCO2削減に向けた取り組みが加速しております。今後、CO2削減に向けた取り組みが、当社を含めたサプライチェーン全体で更に求められることになると考えられます。
(3) 中期経営戦略
当社は、仏SAFRAN社との契約に基づき、LEAPエンジンに搭載されるチタンアルミブレードの量産加工・販売を主たる事業としております。仏SAFRAN社は、拡大する航空機需要に対応するため、LEAPエンジンの生産能力増強を進めております。他産業と比較して高い品質水準が求められる航空機関連部品の量産には、サプライヤーにも高い技術力や品質保証力が要求されることから、長期的に高品質な部品を安定供給できるサプライヤーを確保する動きが強まっております。特にチタンアルミブレードは、当社を含め、世界で2社のみが供給していることから、LEAPエンジンの生産拡大には、当社の生産能力の拡大が不可欠となります。そうした中、当社の量産実績、生産性向上への取組み、品質水準、技術開発に基づく提案、並びにこれらを支える組織体制等を評価頂き、2024年10月に仏SAFRAN社との間で供給期間の延長、マーケットシェアの拡大等に関する更新契約を締結しました。
一方で、チタンアルミブレードの材料は、欧州企業1社のみに生産を依存していることから、供給リスクを抱えておりました。このような状況を踏まえ、当社は、材料供給から加工までを担う垂直統合体制の構築と、収益拡大を目指し、数年にわたり新材料の開発に取り組んでまいりました。その結果、新材料の量産化に目途が立ち、2027年6月期から量産供給を徐々に開始するとともに、2028年1月からはマーケットシェアが更に拡大する予定です。
当社は、チタンアルミブレードの需要増加およびマーケットシェアの拡大により、チタンアルミブレード加工販売を拡大するとともに、チタンアルミブレードの新材料の販売を新たに加えることで、売上と利益の増加を目指します。あわせて、生産効率の向上と原価低減に取り組むことで、収益力強化を図っていきたいと考えております。
また、当社は、航空業界全体で求められるCO2排出量削減を重要なサステナビリティ課題と認識し、CO2削減に向けて継続的に取り組んでまいります。
一方で、当社はチタンアルミブレード販売への依存度が高いことから、チタンアルミブレード量産加工で得た技術・経験、並びに資金を活用し、新たな航空機部品の量産案件の獲得を進めてまいります。現在、2024年6月に竣工した新工場でLEAPエンジン以外の別の航空機エンジン部品の量産立上げを2件同時で進めております。航空機案件は初期投資が高く、量産立上までに時間はかかりますが、量産化が進むと、資金を長期に渡って獲得し続けることが可能となります。引き続き、当社の技術との適合性、収益性を考慮しながら、新たな量産案件の獲得を進めていく計画であります。
次にマーケット需要を見据えながらも、先端研究開発を積極的に進めていくことにより、製造業として長期的な収益力の基盤を構築したいと考えております。新たに供給開始予定のチタンアルミブレードの新材料の量産開発に加え、AM(Additive Manufacturing、積層造形、いわゆる3Dプリンタ)技術、並びにAM技術を活用した航空機エンジン部品のMRO(整備・補修・オーバーホール)についても技術・事業開発を進めております。AM技術は製造業の考え方を大きく転換させる可能性があり、将来の製造業のあるべき姿を常に検討しながら、研究開発を推進してまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社では、売上高、営業利益、EBITDAを重要な経営指標として管理しております。
当社は、企業として、一定程度の売上高規模を確立し、事業基盤の安定性を確保するとともに、安定した利益成長を継続することが、重要であると考えております。
一方で、当社は、チタンアルミブレード販売への依存度が高く、事業ポートフォリオ及び収益源の多様化を図り、特定製品への依存度を下げることが、永続的な成長のためには不可欠であると考えております。そのためには、チタンアルミブレード以外にも売上拡大を図ることが必要となりますが、新規量産案件拡大のためには、設備投資等の初期投資が発生し、一時的な利益率の低下を招くことが想定されます。そのため、現時点においては、営業利益に加えて、売上高も重要な指標であると考えております。加えて、新規量産案件拡大のための設備投資が今後も継続すると考えられることから、収益性や現金創出力をより適切に把握するために、減価償却費の影響を排除した指標であるEBITDAも重要な指標と位置付けております。
(5) 優先的に対処すべき事業上の課題
① 原価低減と生産効率の向上による利益及びキャッシュ・フローの創出
新型コロナウイルス禍からの航空機需要回復によるチタンアルミブレードの需要拡大に伴い、当社の売上高は増加するとともに、新型コロナウイルス禍において積極的に取り組んだ工程の自動化、内製化、その他原価低減活動やトヨタ生産方式の実践により、当社の損益分岐点は新型コロナウイルス発生前から大きく低減しました。
一方で、需要の増加、マーケットシェアの拡大に対応しながら、チタンアルミブレード新材料の量産化を実現するためには、大型の設備投資や人員拡充が必要となり、固定費が増加することが想定されます。こうした状況下で利益やキャッシュ・フローを拡大するためには、原価低減や生産効率の向上が不可欠となります。当社は、この課題に取り組むため、より一層の生産性の向上及び生産体制の構築に努め、中長期での利益及びキャッシュ・フローの最大化を推進してまいります。
② 収益の多様化
現在、当社の収益の大半が仏SAFRAN社に対するLEAPエンジン向けチタンアルミブレードの生産・販売から成り立っております。収益の多様化を図るためにも、チタンアルミブレードの加工で培った技術・経験、並びにAM(Additive Manufacturing、積層造形、いわゆる3Dプリンタ)技術等を活用し、新たな量産案件の獲得に積極的に努めてまいります。
③ 環境問題への取組
当社は、環境問題に積極的に対応するため環境マネジメントシステムの国際規格「JISQ14001」の認証を取得しております。また、製品の品質保証、顧客満足度や情報セキュリティの向上等を目的に、航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステムの国際規格「JISQ9100」や、情報セキュリティマネジメントシステム「JISQ27001」認証を取得しております。
一方で、航空産業においては、機体メーカーやエンジンメーカーが、カーボンニュートラル実現に向けたCO2削減への取り組みを強化しており、サプライヤー全体でCO2削減を実現することが求められております。当社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、環境問題に向けた取り組みを加速してまいります。
④ 技術の開発
当社が、加工技術で今後も競争優位を発揮し、収益性を維持するためには、新たな技術を取り入れることが不可欠であります。また、収益の多様化を図るために、新材料やAM等、新たな技術の開発を取り入れていくことも必要であります。当社は、積極的に新たな技術の開発を行い、技術的優位性及び収益の多様化を図ってまいります。
⑤ 人財の採用育成
当社が、新たな技術開発や新たな案件に取り組むためには、優秀な人財の確保と育成が不可欠であります。当社は、新規採用を強化するとともに、育成とフォローアップ体制の整備を充実させることにより人財のスキルアップと組織の活性化を図ってまいります。
⑥ 資金調達と財務基盤の安定性の確保
当社が、LEAPエンジン向けチタンアルミブレード需要拡大、新材料の量産、並びに収益の多様化実現に向けた新規案件を拡大するためには、新たな設備投資が不可欠となります。
当社は、収益多様化に向けた新たな設備投資を実行できるように、内部留保の確保と株主還元の適切なバランスを検討し、財務内容の最適化に努めてまいります。また、金利上昇下でも資金調達に支障をきたさぬように、金融機関との連携を密にしてまいります。
⑦ 内部管理体制の強化とコーポレート・ガバナンスの充実
当社は、持続的な成長と企業価値の向上のため、内部管理体制の充実が不可欠であると認識しており、役職員のコンプライアンス意識の向上、当社の取引態様に即した内部管理体制の構築など、コーポレート・ガバナンス体制の強化に取り組んでまいります。
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