企業兼大株主神戸製鋼所東証プライム:5406】「鉄鋼 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を源泉として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販のための技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげています。

 技術開発本部では、①既存事業と新規事業創出に資する課題形成と解決、②足元/将来にわたり競争力の源泉となる技術の強化、③技術資産の掛け合わせによる総合力の発揮、の3点に注力します。技術力を軸に、2030年代以降の挑戦に資する技術分野の取組みを強化し、技術起点での新たなアイデアやビジネス機会を持続的に創出していきます。

 また、清水建設(株)及びシーカ・ジャパン(株)と共同で、構成材料における産業副産物の活用率を最大96%(重量比)まで高められる資源循環促進型のジオポリマーコンクリートの配合技術を開発しました。本技術では、ジオポリマーの活性フィラー(粉体)に利用する高炉スラグ微粉末やフライアッシュのみならず、コンクリートの骨材と練混ぜ水にも産業副産物を有効活用することで、産業副産物の活用率を最大化しています。同時に、ジオポリマーの課題とされてきた施工性や硬化後の強度発現についても、一般的なコンクリートと同等の性能を確保することに成功しました。

 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は435億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行っている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用66億円が含まれています。主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。

[鉄鋼アルミ]

 鉄鋼アルミでは、特殊鋼線材、自動車用高強度鋼、ディスク用アルミ板などの戦略製品の差別化による拡販と生産性・歩留まり向上による収益改善のための技術開発に注力しています。また、CO₂排出量削減に直接貢献できる技術開発にも引き続き取り組んでいます。

 なお、当連結会計年度における研究開発費は72億円であります。

[素形材]

 素形材では、輸送機や半導体分野を中心に、特徴ある製品開発や生産技術開発に取り組んでいます。あわせてカーボンニュートラルや革新的ものづくりなど、将来の価値創造に向けた研究開発も推進しています。

 なお、当連結会計年度における研究開発費は22億円であります。

[溶接]

 溶接では、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」の実現を目指し、お客様の溶接に関する課題解決を図ります。溶接材料と溶接プロセス・溶接機器・ロボットによる「溶接ソリューション」を提供する溶接総合メーカとして、特徴ある製品の開発に注力しています。

 溶接システムでは、2018年にコベルコROBOTiX(株)よりREGARCTM搭載石松TMを建築鉄骨市場に投入し、その低スパッタ性と能率向上効果に対して高い評価を頂いてきました。この度、タッチパネルを採用した新型コントローラに、New REGARCTMを搭載したデジタル溶接電源SENSARCTMRA500と本プロセス専用ワイヤであるFAMILIARC™ MG-56R(A)を組み合わせたNew REGARCTM搭載石松TMを新たに商品化し、初号機をお客様に納入しました。更なる低スパッタ化と高能率化を実現するとともに、操作性も大きく向上しており、溶接技能者不足を課題としている建築鉄骨市場に対して、今後、技量レスや生産性向上、品質安定化を果たす溶接ソリューションとして提案していきます。

 また、大型仕口部材の溶接工程を自動化する「反転仕口・コア兼用溶接ロボットシステム」を新たに開発しました。近年、首都圏や都市部の再開発物件、データセンターや大規模倉庫などでは、構造部材の大型化が進み、柱-梁の交差部である仕口部材も大型化しています。一方、鉄骨ファブリケータでは、溶接技能者不足の中、ロボット溶接の適用拡大が望まれており、仕口部もその対象となっていました。当社は既に広く導入頂いている鉄骨溶接向けロボットシステムや溶接総合メーカとしてのノウハウを活かし、大型サイズにも適用可能な仕口溶接ロボットシステムを開発しました。本システムは、ウェブのすみ肉溶接にも当社独自のREGARCTMプロセスを適用し高品質で高能率な溶接を実現しています。本システムの初号機を2025年初めに納入しお客様の生産に寄与しています。今後も、お客様の溶接工程の自動化ニーズ・社会課題の解決に貢献すべく活動していきます。

 なお、当連結会計年度における研究開発費は42億円であります。

[機械]

 機械では、2030年に向けコアビジネスをより強化するとともに、カーボンニュートラル社会の実現に向けた新規事業を創出・育成し、機械事業部門として取り組むべき社会課題に挑戦することで、全社の安定収益の最大の柱となることを目指します。

 回転機・機器関連分野では、高砂製作所において、液化水素用オープンラック式気化器(Open Rack Vaporizer、以下、ORV)※1を新たに設置し、気化性能の実証試験(以下、本実証)を2025年3月に開始することを決定しました。大規模液化水素気化器の候補であるORVで実際の液化水素を使用しての実証は、世界的にも先進的な取組みとなります。本実証では、当社グループが提案する「ハイブリッド型水素ガス供給システム」の実証試験を発展させる位置付けとして、液化水素気化器の製品ラインナップを以下3つのタイプへと拡充し、水素エネルギーの社会実装に向け、様々なニーズや陸上での使用から船舶への搭載といった使用環境での液化水素利用への対応を目指します。

①中間媒体式気化器(Intermediate Fluid Vaporizer、以下、IFV):液化水素による気化実証試験は2023年3月に完了。

②マイクロチャネル熱交換器(Diffusion-bonded Compact Heat Exchanger、以下、DCHE):液化水素による気化実証試験は2024年3月に完了。

③オープンラック式気化器(ORV):2025年3月から液化水素による気化実証を開始(本実証)。

 なお、本実証では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業において、2023年3月末に完了した「液化水素冷熱の利用を可能とする中間媒体式液体水素気化器の開発」の液化水素供給設備を利用することにより、短い準備期間で液化水素用ORVの伝熱挙動や気化性能の確認を実現します。

 産業機械関連分野では、燃料電池用セパレータを代表とする燃料電池や水電解装置の構成部品に特化したPVD

※2コーティングの受託事業に参入します。1986年からPVD事業を展開してきた当社は、600台以上の装置をグローバルに供給してPVD技術の普及に貢献して参りましたが、今後はこれまで培った技術を燃料電池や水電解装置という新たな分野に応用し、水素利活用の発展に貢献します。燃料電池や水電解装置は、セルを数十~数百枚積み重ねて構成されます。セルを構成する各部品の耐久性や電気的特性向上のためにPVDコーティングが近年注目されており、生産性の高いインライン型PVD装置※3が求められています。当社は本装置を導入し受託事業に参入することで、付加価値の高いPVDコーティングを低コストでお客様に提供することを目指しています。

 また、次世代の電池として期待される全固体電池※4の開発を手掛けるLASAGNA.ONE INC※5(所在地 : 米国カリフォルニア州・サンノゼ、以下、LO社)に資本参加しました。LO社の全固体電池は、シンプルな構造による電池セルの高電圧化、急速充電、広い温度範囲での安定作動などの特徴を有し、2023年には単セル構造での400Vの電池実証に成功しました。これを足掛かりに新たな資金調達のもと、将来の量産を見据えた新規設備投資により革新的な全固体電池の開発を加速させる計画です。

 また、分析・試験技術分野では、水素環境下の材料評価、新型二次電池の試作・評価、材料リサイクル等、グリーントランスフォーメーションに寄与する技術開発を進めています。また、ターゲット材料・半導体ウェハ検査装置分野に関しては、高移動度酸化物ターゲット材料の用途拡大や、半導体ウェハ向け検査・測定装置の高精度、高機能化のための開発にも取り組んでいます。

 なお、当連結会計年度における研究開発費は62億円であります。

※1 ORVは、世界中のLNG受入基地において、海水を熱源とした主力のLNG気化器として使用されており、当社ORVは40年以上の実績と高い信頼性を有しています。

※2 PVD(Physical Vapor Deposition)は、物理蒸着と呼ばれる薄膜コーティング技術の総称です。固体材料を真空中で気化もしくはプラズマ化して対象物にコーティングするプロセスで、形成される薄膜は密着性が高く緻密であることが特徴です。

※3 PVDコーティング装置の形態の一つで、真空引き、エッチング、コーティング、大気解放の役割を持つ複数の炉を直列に繋げた構成になっており、装置に投入された対象物は、一つの処理が終わると次の炉に自動搬送されます。生産性の高さが特徴で、サイクルタイムは数分程度です。

※4 従来型の液系電池は正極、負極、これらを隔てるセパレータと電解液(電解液+電解質塩)で構成されていますが、電解液を固体材料に置き換え、構成材の全てを固体とした電池が「全固体電池」です。出力(電気自動車では走行距離)、寿命、安全性等の点で、電解液を使用する電池を超える特性を持つことが期待されていますが、実用化に向けては克服すべき様々な課題が存在しています。

※5 同社は、シリコンバレーに本社を構え、全固体電池の開発・製造を行うスタートアップです。全固体電池の強みを最大限に活かし、従来のリチウムイオン電池では実現が難しい電池構造や特性の追求に取り組んでいます。固体内におけるイオンの動きを活用することで、数分レベルの急速充電や広範な温度範囲における性能の安定性が期待されます。

[エンジニアリング]

 エンジニアリングでは、循環型社会、脱炭素社会の実現に向け、将来の成長が見込まれる分野における独自プロセス・技術の開発、更なる差別化、競争力強化に向けた開発を推進しています。

 還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とするMIDREX NG™に加え、天然ガスを最大100%まで柔軟に水素に置き換えることが出来るMIDREX Flex™や、水素を100%還元剤として用いるMIDREX H2™の競争力維持・強化に向けた開発を継続しています。

 水処理関連分野では、下水汚泥を固形燃料化する「湿式炭化」の実証実験を富士市西部浄化センターで行い、日本下水道事業団が定める新技術Ⅰ類に選定されました。湿式炭化では、汚泥を低温かつ湿式状態で炭化することで固形燃料化に要するエネルギーの大幅削減が可能となります。今後は下水汚泥のメタン発酵と本技術を組み合わせて導入することにより、下水処理におけるカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。

 廃棄物処理関連分野では、廃プラスチックのガス化及びメタノール化に関する開発を継続しています。これまで廃棄されていたプラスチックについて、ケミカルリサイクルによる資源循環システムの構築を目指します。

 水素事業では、グリーン水素需要の高まりを見据え、水電解式水素発生装置の大型化や次世代技術の開発を推進しています。水素の普及拡大及び低炭素化社会の実現に向け、水電解式水素発生装置の新商品開発に取り組んでいきます。

 なお、当連結会計年度における研究開発費は38億円であります。

[建設機械]

 建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。クラウドやAI、IoT等の先進テクノロジーの活用により「建設現場のテレワーク化」を実現し、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保などを目指しています。また、カーボンニュートラルに向けた取組みの一環としてゼロエミッション建機の開発に取り組んでいます。

 ショベルでは、コベルコ建機(株)(以下、コベルコ建機)は、燃料電池ショベルのプロトタイプ機を開発中であり、実用化に向けた取組みを進めています。2024年5月22日には幕張メッセで開催された「第6回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO)」にプロトタイプ機を展示、水素を燃料に稼働するデモを初めて社外公開しました。

 また、コベルコ建機が、(株)冨島建設、鹿島建設(株)と取り組んだ、土砂災害対策工事現場での「K-DIVE®」を活用した重機遠隔操作の実用化検証が、一般社団法人日本建設機械施工協会が主催する「日本建設機械施工大賞部門 優秀賞」を受賞しました。

 また、コベルコ建機は、燃料電池ショベルの開発を加速するため、2025年2月に当社の高砂製作所に水素燃料電池ショベルの高圧水素充填設備の整備を完了し、水素燃料電池ショベル・プロトタイプ機に水素充填できることを確認しました。コベルコ建機の水素燃料電池ショベル・プロトタイプ機は、すでに広島事業所にて基礎評価を完了しています。今後は、2026年度に国内で行われる実証実験での活用に向けて、2025年3月以降、高砂製作所にて連続掘削作業など本格稼働評価を行い、水素燃料電池ショベルの現場導入に向けた取組みを推進していきます。

 クレーンでは、コベルコ建機は、Autodesk社製3D-CADのアドインソフトとして開発した、クレーン施工計画策定支援ソフト「K-D2 PLANNER®」に、コベルコ建機と(株)タダノのクレーンに加えて、新たに(株)加藤製作所と住友重機械建機クレーン(株)のクレーンを標準搭載しました。2社モデルを追加搭載したことにより、同社製クレーンを利用する現場において「K-D2 PLANNER®」を利用出来るようになりました。これにより、国が推進する働き方改革や現場の安全性・生産性向上へ貢献します。

 また、コベルコ建機は、ドローンを活用した移動式クレーンの点検ソリューション「K-AIR REAL」(ケイ・エア・リアル)を開発し、2024年5月末より提供を開始しました。クローラクレーンはブームを立ち上げると数十メートル以上になり、通常は地上にブームを伏せて点検を実施します。またブームを地上に伏せるスペースのない狭隘な現場では、双眼鏡で確認する手法が一般的ですが、見えない部分が多いという課題があり、本課題を解決するため、「K-AIR REAL」を開発しました。ドローンの自動飛行機能を活用し、確実に狙った場所を撮影でき、撮影予定の画角やアングルを3Dシミュレーションシステム上で事前に確認できるため、高所の点検作業を短時間で行うことができます。

 なお、当連結会計年度における研究開発費は129億円であります。

[電力]

 電力では、発電所設備の予防保全および低炭素化等に関する研究開発を行っています。

 なお、当連結会計年度における研究開発費は1億円であります。

[その他]

 上記外の事業セグメントに係る当連結会計年度における研究開発費は0億円であります。

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