石原産業
【東証プライム:4028】「化学」
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企業概要
当社グループは「「社会」、「生命」、「環境」に貢献する。」という基本理念に基づき、有機化学、無機化学の各分野における新製品の開発や生産技術の向上に取り組むとともに、世界的な関心が高まる環境、エネルギー、バイオ、IT、食料等の各領域において、有機、無機の垣根にこだわることなく、新規事業の探索にも取り組んでおります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、10,736百万円となりました。
セグメントごとの研究開発は、次のとおりであります。
(有機化学事業)
農薬については、自社開発原体を中心に新規製剤や新規混合剤の開発の他、農薬登録国や適用作物の拡大などに向けた研究開発に注力して取り組んでおります。
成長戦略剤のひとつである殺虫剤シクラニリプロール(チョウ目・カメムシ目を始め広いスペクトラムを持つ)は、米国、カナダ、ブラジル、メキシコ等の米州諸国、インド、オーストラリア、韓国や日本で販売しております。2025年にはフィリピン、ベトナム、マレーシア、イスラエルなどでの販売開始を目指しております。人畜・作物安全性に優れるトウモロコシ用除草剤トルピラレートは、2017年に米国で単剤の販売を開始して以降、販売地域をアルゼンチン、メキシコ、チリ、フィリピン、カナダ、韓国、米国、ブラジル及び日本に拡大しました。ウクライナでは2024年から混合剤の販売を開始しました。引き続き、中南米、アジア、大洋州で開発を進めており、順次販売を開始します。当初はトウモロコシ専用除草剤として開発してきましたが、2019年より麦類での商業化を進め、麦類を対象とした製品向けのトルピラレート原体販売をカナダでは2023年に、米国では2024年から開始しました。
当社の農薬事業は、自社創生・開発の新農薬をベースとしておりますが、環境変化の激しい昨今、他社開発剤の導入や他社との共同開発にも積極的に取り組んでおります。なかでも、非選択性除草剤チアフェナシルは韓国FarmHannong社と世界的に共同開発を行っております。当社は成長戦略剤のひとつに位置づけ開発、販売に注力しております。
国内の食の安全・安心志向の高まりや抵抗性発達あるいは耐性菌発生を防ぐために有効な既存化学農薬が不足しているなどの市場ニーズに対応するため、微生物殺菌剤、接触型忌避剤、天敵昆虫及びバイオスティミュラントなどのバイオロジカル製品群も開発、販売しております。2023年よりイネの高温ストレス耐性を促すバイオスティミュラント製品「ライスフル」の販売も開始しました。当社は、近未来の植物防疫の姿を見据え、これら一連の安全性が高く環境負荷に配慮した当社創製化学農薬群とバイオロジカル製品とを組み合わせて、独自のIPMやICMプログラムを確立していきます。
また、従来の化学農薬のコンセプトである農薬用途以外に、生活環境での防疫や環境保全においても当社製品を含む有機化学技術の普及拡大を目指しております。
農薬以外では、ヘルスケア事業(動物用医薬品、人体用医薬品・医療機器関連)についても、特色ある商品開発を進めております。動物用医薬品では、フザプラジブナトリウム(一水和物)がイヌ膵炎急性期用抗炎症剤として、日本国内では『パノクエル』及び『ブレンダ』、米国では『PANOQUELL』のブランド名で販売されております。適応疾患の拡大や他の炎症性疾患向け、さらにフザプラジブナトリウム(一水和物)以外の治療薬など、後続するパイプラインの整備を推進中であります。
人体用医薬品・医療機器分野では、口腔乾燥症状改善薬であるセビメリン塩酸塩の原薬を1999年より製造し、国内外の製薬会社へ販売しております。その他に、当社の要素技術や独自開発した物質を応用することで生まれた、効能・効果の高い人体用医薬品や医療機器の商品開発を進めております。
当事業における研究開発費は、9,802百万円となりました。
(無機化学事業)
長年に亘る酸化チタン事業で蓄積されてきた技術をベースに、既存製品の収益拡大、新規製品・新規事業の開発に力を入れて取り組んでおります。
機能性色材事業に関し、収益拡大の取り組みとして、化粧品用酸化チタンは水中油滴型日焼け止めに使用し易い微粒子酸化チタンの設計が完了し、省エネに寄与する遮熱顔料は市場要望に応じた品質改良に取り組み、どちらも量産化の準備段階に進みました。新規製品の取り組みとして、LUSHDE BLACKブランドで展開している硫化ビスマス黒色顔料は特異な反射特性(可視光吸収、赤外線反射)と漆黒度が高いことから引き合いが多く、顧客との遣り取りを行いながら、工業化も含めて商品化検討を進めております。また、SILKIAブランドとして展開している“シルクのような質感”と“光輝感”を両立した色彩顔料は、技術難度が高く世界唯一の色彩顔料であり、引き続き、安定製造方法の確立と表面改質に取り組んでおります。
電子材料事業に関し、収益拡大の取り組みとしては、電気自動車、第5世代通信(5G)、及びデータセンターなどで需要拡大が期待される次世代の積層セラミックコンデンサー(MLCC)用の高純度酸化チタンの開発に注力しております。微粒子で分散性に優れた開発品を含め種々の粒子径サイズ品をラインナップすることで、顧客の汎用から最先端用途までの要求に応えるべく改良を進めており、工業化検討の段階に進んでいます。新規製品の開発に関しては、有機/無機の材料合成技術を活用し“酸化チタンの特徴である高屈折率”と“微粒子化による透明性”を両立した酸化チタンの溶剤分散体を開発し、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)用デバイスセンサーなどの次世代光学材料用途向けに顧客が要望する改良に取り組んでおります。また、既存品より低温で成膜することを特徴とする銅ナノ粒子は需要家への紹介を進めるとともに市場投入に向けて工業化などの検討を進めております。
ファインケミカル事業に関し、収益拡大の取り組みとしては、既存の主力製品である「高耐候性酸化チタン」について、さらなる成長に向けた改良に取り組んでおります。また、新規事業の創出を目的として、蓄熱材料(ハスクレイ)の市場投入に向け、用途開拓とともに生産体制の確立を進めております。
当事業における研究開発費は、787百万円となりました。
なお、当連結会計年度におけるセグメントに帰属しない全社共通の研究開発費の金額は147百万円となりました。
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