特種東海製紙
【東証プライム:3708】「パルプ・紙」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、従来から一貫して経営理念を「ユニークで存在感のある企業集団として、社会と環境に貢献する」と定め、「技術と信頼で顧客と共に未来をひらく オンリーワンビジネス企業」を目指すべき企業像としております。株主を中心とし、従業員、取引先、地域社会、環境面での様々なステークホルダーからの信頼を得ると共に、持続可能な社会実現への貢献を通じて当社グループの企業価値の向上を追求することをもって経営方針としております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社が経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標としては、収益稼得水準の観点から営業利益を最も重視しており、これに持分法による投資損益等を反映した経常利益や、株主に対する還元の基準となる親会社株主に帰属する当期純利益についても重要視しております。加えて、中長期目標達成、及びPBRの改善に向けては、今まで以上に資本コスト・資本収益性を意識した経営を実践するため、事業別ROA・ROI(投資利益率)を管理項目として設定しております。具体的には、事業本部総資産利益率(=税引後貢献利益÷事業本部総資産)で事業効率を測るとともに、ROI(投資利益率)が総資産利益率(目標ROA)を上回っていることをもって投資判断の基準としております。
(3)中長期的な経営戦略
当社グループは、長期目標として、2034年度での経常利益130億円、ROE9.0%以上の達成を掲げております。この目標達成に向けては、セクターに捉われず、成長が見込まれる環境関連事業をもう一つの主軸とした事業ポートフォリオへの変革を推進し、自己資本の最適化による資本収益性の改善とともに、資本市場との対話を通じた株主資本コストの低減と株式売買取引高の改善に取り組んでまいります。
2023年4月~2026年3月を対象期間とする第6次中期経営計画においては、製紙事業と環境関連事業の両輪での成長を実現するべく、「環境関連事業への資源投入」と「製紙事業における製品ポートフォリオの入替」 および「経営基盤の強化」に取り組んでおります。「環境関連事業への資源投入」では、産業素材事業の新ボイラー稼働に向けて、シナジーを発揮できるサーマルリサイクル事業の拡大を図るとともに、リサイクルの高度化を図るべく、特にマテリアルリサイクルの技術開発とリサイクル事業の拡大を目指します。「製紙事業におけるポートフォリオの入替」では、成長領域への製品投入とともに、既存の紙に捉われない新たな紙需要を開拓し、製紙事業の更なる推進につなげます。「経営基盤の強化」では人的資本の価値向上策をはじめ、ガバナンスの強化、社有林の有効活用と生物多様性の保全・保護に努めます。これらを推進することで、第6次中期経営計画の全社KGIとした営業利益50億円、経常利益80億円、ROE7.0%の達成を目指しております。
| 営業利益 | 経常利益 | ROE |
2025年3月期実績 | 39億円 | 62億円 | 4.6% |
第6次中期経営計画目標値 | 50億円 | 80億円 | 7.0% |
(4)経営環境
①企業構造
当社は、2010年、特種製紙株式会社と東海パルプ株式会社を吸収合併することで設立され、製紙業においては「産業素材事業」「特殊素材事業」「生活商品事業」、製紙業以外においては成長が見込まれる「環境関連事業」によって構成されております。また、横の連携も円滑に行うことを目的とした“事業本部制”を採用することにより、各セグメントが持つ技術や生産力をより相乗的に発揮できるように運営を行っております。
「産業素材事業」は、段ボール原紙やクラフト紙等の産業用紙事業において日本製紙株式会社と合弁事業を行っており、当事業の売上については、その大半が持分法適用会社である日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社向けのものです。したがって、当事業の業績は主に持分法利益の取り込みにより経常利益に反映されることになります。
「特殊素材事業」は、ファンシーペーパー等の特殊印刷用紙及び特殊機能紙など高付加価値製品の製造・販売を行っており、事業の主体は特種東海製紙本体となります。
「生活商品事業」は、子会社2社により構成されており、業務用ペーパータオルや食材紙、トイレットペーパーといった衛生用紙、ラミネート紙及びコート紙の製造・販売を行っております。
「環境関連事業」は、当社保有の南アルプス社有林の有効活用を目的とした自然環境活用事業、当社サプライチェーンを起点としたリサイクルビジネスの拡大を目的とした資源再活用事業によって構成され、当社グループ成長の要として更なる拡大を進めてまいりたい事業分野であります。
以上のように、規模の経済が働く事業分野においては他企業との合弁事業にて、独自の強みを活かすことのできる「多品種・小ロット・高付加価値」事業である特殊素材事業については、特種東海製紙本体により事業を推進、他のセグメントについては基本的に子会社による事業展開を行う体制を採っており、この事業本部制は適切に機能していると判断しております。
②市場環境・顧客動向
a.産業素材事業
当事業においては、段ボール等包装材に用いられる段ボール原紙、クラフト紙の製造を行っております。産業用包装素材の需要については国内の物価高による買い控え等の影響はあるものの堅調な通販需要等により今後も底堅いものと認識しております。
b.特殊素材事業
当事業においては、出版向けやハイエンドパッケージ向け特殊印刷用紙、製品ごとに異なるユーザー・用途が存在する特殊機能紙等、小ロット多品種・高付加価値を特徴とする製品の製造・販売を行っております。従来からのデジタル化の影響により、出版や商業印刷物向け等情報伝達媒体として使用される紙については市場が縮小傾向にありますが、脱・減プラスチックの流れによりパッケージ用途の需要は底堅い他、特殊機能紙における海外向け一部製品についても引き続き堅調な需要を見込んでおります。
c.生活商品事業
当事業においては、ペーパータオルやトイレットペーパー等の衛生用紙、及びラミネート紙等加工品の製造・販売を行っております。衛生用紙につきましては生活必需品であることから堅調な需要を見込んでおりますが、紙加工品は一般消費の減退により減少傾向にあります。
d.環境関連事業
当事業においては、南アルプス社有林の自然価値を活かす取り組みの一環としてウイスキー製造を行うと共に、廃プラスチックを主たる材料とする固形燃料(RPF)の製造販売や産業廃棄物の中間処理、廃家電の再資源化(都市鉱山事業)、廃プラスチックの再生原料化等、幅広いリサイクルビジネスを展開しております。リサイクルビジネスにつきましては、中長期的には国内外の社会課題解決に向けた動きとともに、環境負荷低減を目指した資源リサイクルの活動は重要性を増し、関連する事業のニーズは今まで以上に伸びるものと認識しております。
③競合他社の状況
当社グループは事業セグメントごとに異なった競合他社が多数存在します。
製紙3事業においては、総需要に対して生産能力が超過気味であり、業界全体での競争は厳しさを増しているということが共通認識となっております。その中で、比較優位にある分野を強化しつつ如何に差別化できる業務を行っていくかが極めて重要であると認識しております。
環境関連事業のうち資源再活用事業においては化石燃料価格の高騰及び脱炭素化の社会的背景に伴い廃棄物燃料のニーズが高まりつつあることから、固形燃料の主材料である廃プラスチック等の集荷面で競合が強まりつつあります。こうした中、物流を考慮した同業との連携を図ると共に、M&A等による集荷エリア拡大に取り組んでいくことが重要であると認識しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
a.現状分析・評価
当社グループは、2018年3月期~2025年3月期の直近8年間において業績を堅調に推移させてきた一方で、PBRは定常的に1.0倍を下回る状況が続いております。この度、残余利益モデルを用いた推計や株主・投資家との対話を通し現状分析・評価について改めて検討を行った結果、当社の指標とすべき株主資本コストはCAPM算定値の4.6%ではなく9.0%程度であると分析いたしました。PBR=ROE×PERを前提とした場合、現状のROEは推計株主資本コストを下回って推移しているとともにPERも低水準であることから、より資本収益性の高い事業領域へ進出するとともに、成長性の訴求と将来リスクを低減することで市場評価を獲得していくことが必要であると認識しております。
b.資本収益性改善への取組み
c.市場評価向上への取組み
②製紙以外の新たな事業領域の拡大
当社グループは、環境関連事業を製紙3事業に次ぐ新たなコア事業と位置づけ、将来の収益基盤を強化するべく、当事業領域の拡大を対処すべき課題として認識しております。
なかでも、資源再活用ビジネスは高度循環型社会を目指す機運の高まり等を背景に今後も持続的な成長が期待される分野であり、2020年1月にグループ入りした株式会社駿河サービス工業を端緒に、第4次中期経営計画以降当該分野へ経営資源を傾注してまいりました。マテリアルリサイクルへの展開も視野に2023年4月資本参加したトーエイホールディングス株式会社に続き、2024年4月には東京都の西部を基盤とする産業廃棄物処理業者である株式会社貴藤の持株会社、株式会社貴藤ホールディングスをグループ会社といたしました。㈱貴藤ホールディングス及び㈱貴藤は、2024年8月1日を効力発生日として㈱貴藤を吸収合併存続会社、㈱貴藤ホールディングスを吸収合併消滅会社とする吸収合併を行いました。またトーエイホールディングス㈱及びトーエイ㈱は、2024年11月1日を効力発生日としてトーエイ㈱を吸収合併存続会社、トーエイホールディングス㈱を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行いました。当社グループは、引き続き環境関連事業へ積極的な投資を行い、循環型社会の実現に貢献するとともに企業価値の向上に努めてまいります。
③製品ポートフォリオの変革
デジタル化の進展により情報伝達媒体としての紙需要は減退する一方、循環型社会への移行に伴って脱・減プラスチックへの需要は増進しつつある等、紙製品に対する需要構造は大幅に変化しており、当社グループはこれを対処すべき課題として認識しております。
当社グループはこの課題に対応するため、既存事業の体質強化による収益基盤の安定化を図るとともに、プラスチック容器に代替するウエットモウルドや、幅広い機能性を活用したTT-PACKAGE等環境配慮型製品の開発に注力してまいります。
④原燃料価格の高騰
急速に変化する地政学的リスクと昨今の為替相場の動向から、日本企業の原燃料調達に係る不確実性が高まっております。その結果、パルプをはじめとする各種原燃料価格の高騰が進んでおり、当社グループの製紙業全般にとって利益圧迫要因及びリスクとなっていることから、当社グループはこれを対処すべき課題として認識しております。
当社グループはこの課題に対応するため、燃料調達構造の見直しや分散化等業務プロセスを全社的に見直すとともに、徹底した経費削減及び原価低減努力、製品価格の適正化等既存事業の体質強化を実施し、不確定性が高い事業環境において収益の改善・安定化を図ってまいります。
⑤持続可能な社会に向けた対応
当社グループは、カーボンニュートラルをはじめとした持続可能な社会に向けた取り組み、及びそれに関わる情報開示の充実を対処すべき課題として認識しております。低炭素社会実現に向けては、使用エネルギーの効率化や化石燃料からの転換(島田工場での新廃棄物ボイラー設置計画:2027年10月完工予定)といった生産活動における従来からの取り組みに加え、2024年3月に認証を受けた森林由来のJ‐クレジットの活用についても検討してまいります。また、生物多様性保全の面では、2023年10月「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域(自然共生サイト)」に当社グループ社有林が認定されました。今後も地球環境との共生を図っていくとともに、こうした取り組みを通じて当社グループへの理解を深めていただけるよう、統合報告書を主な媒体として更なる情報開示の充実に努めてまいります。
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