東和薬品
【東証プライム:4553】「医薬品」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、
「私達は 人々の健康に貢献します」
「私達は こころの笑顔を大切にします」
を理念に掲げております。そして、企業活動を通じて理念を実現するために、私達の誓い「T-SMILE」を掲げております。
私達の誓い「T-SMILE」
・Truthful:
誠実で、正直であり続けます。公正な心を持って適正を貫き、人々から喜ばれ、信頼される存在になります。
・Speed:
意思決定、実行、情報共有などを迅速に行います。先見性を持って、変化に俊敏に対応します。
・Mission:
世界中で地域社会の人々の健康に役立つという強い使命感と、その実現への情熱を持ち続けます。
・Idea:
発想力と想像力を駆使して、前例にとらわれない変革にチャレンジします。常に能動的に行動します。
・Linkage:
人や情報と幅広く結びつき、協力します。認め合える相手と切磋琢磨し、お互いを高めます。
・Excellence:
最善の品質を求め、サイエンスを大切にしながら、時代にあった最適の技術でそれをかなえます。
当社は、優れた製品とサービスを創造することによって、人々の健康に貢献します。そして私達の企業活動を通して、患者さん、医療関係者の皆様、地域社会をはじめとするすべての方々にこころから喜ばれ、求められる企業を目指していきます。ジェネリック医薬品事業をコア事業として、新たな健康関連事業へ展開していきます。
(2) 経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
国内ジェネリック医薬品業界では、2024年3月の社会保障審議会医療保険部会において、「医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までにすべての都道府県で80%以上」とする主目標とともに、新たに「後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」とするという副次目標が掲げられました。さらに、2024年10月からは後発医薬品のある先発医薬品の一部において追加で自己負担が発生する「長期収載品の選定療養」の導入が開始されました。その結果、2024年10-12月期の数量シェアは88.6%(日本ジェネリック製薬協会調べ)となりました。
一方、2021年度以降は薬価改定が毎年行われており、医薬品業界にとって極めて厳しい状況となっております。さらに、2020年に発覚した複数のジェネリック医薬品企業における品質問題を起因とした一連の供給不安によりジェネリック医薬品に対する信頼感は低下し、ジェネリック医薬品業界の置かれた環境は厳しさを増しております。
このような状況の中、2024年5月に厚生労働省から公表された「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会 報告書」において、「5年程度の集中改革期間を設定して、製造管理・品質管理体制の確保および安定供給能力の確保、持続可能な産業構造の実現を目指す」ことが示されました。また、2024年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)」では、「足下の医薬品の供給不安解消に取り組むとともに、医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品業界の理想的な姿を見据え、業界再編も視野に入れた構造改革を促進し、安定供給に係る法的枠組みを整備する」という記載がなされました。
これらの方針を踏まえ、2025年度薬価改定では、国民負担軽減の観点はもとより、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保の要請にきめ細かく対応する観点から、品目ごとの性格に応じて改定の対象範囲が設定され、後発品は平均乖離率(5.2%)の1.0倍を超える品目が対象になりました。また、2000年以降で初めてとなる最低薬価の引き上げが行われたほか、医療上の必要性が特に高い品目に対して臨時的に不採算品再算定も実施されました。さらに、企業の安定供給体制を評価する企業指標において、検討されていたすべての評価指標で企業評価が実施され、2026年度薬価改定以降には各企業の評価が公表される予定となっています。
以上のような状況の中、当社グループは、品質向上を最優先課題と位置付け、グループ役員及び社員が一丸となって、どの時代においても、どの地域においても、その地域に居住する人々に必要とされる企業であり続けることを目指しております。また、これまでに蓄積した知見や技術に加え、新技術の導入及び最新知見との融合を推進することで、技術革新と製品価値の向上を図り、人々の健康に貢献してまいります。
当社グループは2024年6月に、第6期中期経営計画2024-2026「PROACTIVE Ⅲ」を策定しました。この中期経営計画においては、以下の3つのグループ基本方針に基づき、各種施策を推進してまいります。
方針1. 国内ジェネリック医薬品事業の新たなステージに向けた進化
国内ジェネリック医薬品市場においては、複数企業における品質問題を背景に、医薬品全体で供給不安が続いております。このような市場環境の中、当社は「ジェネリック医薬品の供給は、人々の健康を支える社会基盤である」との認識のもと、以下の取り組みを実施しております。
1. 安定供給体制の整備
2026年度までに年間生産能力175億錠体制の構築を目指しております。新設した山形工場の第三固形製剤棟は2024年4月に稼働を開始しており、順次製造設備を導入することで、生産規模の拡大を図っております。また、設備の自動化及び省人化を推進し、効率的かつ安定的な供給体制の構築に取り組んでおります。
2. サプライチェーンマネジメントの高度化
2025年2月に医薬品供給プロセスの効率化に向けた取り組みを開始しました。この取り組みにより、製造・販売・在庫の状況、製造設備の稼動状況など、供給に関わる判断に必要な情報を可視化することで、供給に関する意思決定の迅速化及び省人化を実現し、安定供給の強化を図ります。
3. 信頼性保証の維持と強化
信頼性保証の強化の取り組みとして、2024年1月から既存のMES(製造実行管理システム)やLIMS(試験情報管理システム)に加えて、品質マネジメントシステム(以下「MCシステム」という。)を採用しました。2025年2月からは、MCシステムの「品質イベント管理」及び「文書管理」を開発段階まで拡大運用することで、製造管理・品質管理のさらなる向上を図っています。
4. 持続可能な産業構造への対応
当社は、政府の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の報告書を踏まえ、ジェネリック医薬品の品目統合や少量多品目生産の適正化など、持続可能な産業構造の実現に向けて、目的を共有できる企業との連携を模索し、社会の要請に応えるべく努力を続けています。
方針2. 新規市場・新規事業の基盤確立とグループシナジーの実現
1. 海外医薬品事業における基盤整備
海外医薬品事業においては、「世界中の人々の健康に貢献する」というミッションのもと、Towa Pharma International Holdings, S.L. (以下「Towa INT」という。)を中心に、日米欧3極体制を構築しております。第7期中期経営計画以降には、55か国以上への市場拡大を目指し、欧州及び米国市場での新製品投入を通じて収益基盤の強化を図ります。
2. ニトロソアミン類混入リスクへの対応
当社は、世界的に問題視されている医薬品中のニトロソアミン類混入リスクへの対応を進めております。2024年12月には「ニトロソアミン類混入リスク評価の新規アプローチ」に関する研究成果を米国化学会の学術誌に発表しております。この発表内容は、製造工程におけるリスク低減策の新たな手法として注目されています。今後も、これらの取り組みを通じて、安全で安心な医薬品の提供を目指してまいります。
3. 健康関連事業の推進
健康関連事業では、健康長寿社会の実現を見据えた医療・介護体制の構築や、未病ケア及び予防活動へのシフトを推進しております。
・スマートシティ構想への参画
2024年10月より、大阪府門真市と共同でスマートシティ推進事業を開始しました。このプロジェクトでは、市民の健康課題解決を目的として、医療情報データをクラウドに一元化し、スマートフォンアプリを通じて市民に提供する仕組みを構築しております。これにより、セルフメディケーションの促進及び健康寿命の延伸に貢献してまいります。
・三生医薬株式会社との連携強化
三生医薬株式会社(以下「三生医薬」という。)の健康食品CDMO(受託開発製造)事業における高い製剤技術力と、当社の製剤技術を融合することで、研究開発の促進及び新たなイノベーション創出を目指しております。
・新医薬品の承認取得
2025年3月には日本初の持続放出性アルツハイマー型認知症治療用貼付剤「リバルエン®LAパッチ25.92mg/51.84mg」の製造販売承認を取得しました。この製品は、従来の毎日投薬に比べて服薬頻度を週2回に低減することで、患者及び介護者の負担軽減が期待されております。これにより、認知症ケアの質の向上及び生活の質(QOL)の向上に寄与してまいります。
方針3. 持続的成長を支えるサステナビリティ経営の強化と基盤の整備
持続的な成長により社会に貢献することを目指し、以下の取り組みを推進しています。
1.環境負荷の低減(グリーンケミストリー)
原薬製造における環境負荷を最小化するため、次世代の製法として連続フロー精密合成技術の研究開発を進めております。この技術は、自然環境への負荷を低減するだけでなく、製造現場で働く人々にも配慮した安全性の高い製剤開発を可能にします。当社は、これらの取り組みを通じて、安全で安心な製品の提供に努めてまいります。
2.ドラッグ・リポジショニング
既存薬から新たな薬効を発見し、別の治療薬として開発する「ドラッグ・リポジショニング」に取り組んでいます。このアプローチにより、安全性が確立された既存薬を活用し、新たな製品価値の創出を目指しています。
3.働きがいのある職場環境の整備
当社は、事業の持続可能性を支える人材開発の基盤構築を、経営の重要課題と位置づけています。社員一人ひとりが自身の仕事の価値や会社への貢献を実感し、働きがいを感じられる職場環境を整えるため、各種人事制度の改革を進めるとともに、*人材研修センターを設立し社員のキャリア形成を支援しています。また、新たな付加価値を創造できる多様な人材の獲得にも注力しています。当社は、社員の価値創造を最大化するために、人と組織文化に対する取り組みを継続して進めてまいります。
*人材研修センター(2024年4月新設)組織横断的に支援する役割を担い、社員のスキル向上を支援する教育コンテンツやトレーニングプログラムを提供しています。
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