企業兼大株主日鉄ソリューションズ東証プライム:2327】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 研究開発活動につきましては、技術進化・ビジネストレンド・社会環境・人々の価値観の変化等の不確実な状況を踏まえ、新技術の探索、評価・検証、顧客企業への新技術導入支援等において長年にわたって蓄積してきた経験とノウハウを基に、社会全体の「サステナビリティ」の実現に向けた将来像を3つの「未来目標」として設定しております。

 未来目標1「究極のデジタルツイン(注1)」 - すべてをデジタルな世界に転写して再現しよう

 未来目標2「業務を理解・実行できる人工知能」 - 機械の知的能力をとことん人間に近づけよう

 未来目標3「サステナブルな企業情報システム」 - 変化への対応力があり長持ちするシステムにしよう

 当連結会計年度においては、未来目標からバックキャストすることで解決すべき課題や必要となる技術を検討して、研究開発活動に取り組みました。当連結会計年度における研究開発費の総額は、2,320百万円であり、各未来目標に向けた主な研究開発成果は次のとおりであります。

(1)未来目標1:究極のデジタルツイン

 製造業のデジタルツインを実現するシステム「Geminant(ジェミナント)」(注2)は実フィールドでの検証を行いデータモデルやGIS(注3)の整備を進めております。同様にIoX(注4)関連技術・エッジ技術につきましても実フィールドへの適用からのフィードバックにより、技術知見の蓄積に加えて学習コンテンツ等の整備が進んでおります。

 アンビエント技術(注5)につきましては、HCMIコンソーシアム(注6)と共同で「溶接技能伝承」をテーマとしたVR(注7)溶接シミュレーターの研究開発を行っており、プレス向けに研究成果発表会を実施しました。国際ウェルディングショーへの出展や特許出願を行うと同時に、HCMIの枠組みを活かし日本溶接協会等とも連携しながら、日本のものづくりにおけるディープデータ(注8)の活用や競争力向上に取り組んでおります。

 最適化技術及びシミュレーション技術(注9)につきましては、日本製鉄等の実フィールドへの適用検討と検証を行いつつ、研修やワークショップを整備することで人材育成メニューを拡充しております。

 匿名加工技術を中心としたデータセキュリティにつきましては、秘匿性の確保とデータ活用の両立が必要な製薬業界の顧客企業と共同で統合データ利活用基盤を構築してプレスリリースを行い、コンサルティングのケイパビリティ強化と相まって、同業種からの引き合いが増加しております。

(2)未来目標2:業務を理解・実行できる人工知能

 大規模言語モデル/LLM(注10)は、ChatGPT(注11)にて利用される等、世の中で急速に活用と議論が進んでおります。当社では、これらを含めた自然言語処理に関する研究開発を、2014年頃から継続的に行っており、実フィールドにて業務の自動化、ナレッジ抽出、情報検索等への実案件適用を進めるとともに、世間での認知度の高まりに応じて教育コンテンツの拡充を進めております。

 そうした人工知能(AI)技術を、これまで注力してきたシステム開発高度化の研究開発に応用することを進めてきました。自然言語だけでなく、画像・ビッグコードを含むマルチモーダル(注12)なドキュメント処理モデルでは、オープンなモデルの検証と活用に加え、独自データセットと基盤モデル(注13)の開発を行っております。例えば、文章の意味を理解し、同時に画面レイアウトを理解するマルチモーダルなAI技術を用いて、Web画面テスト自動化AI「Curatis(キュラティス)」を開発し、実証実験と実用性向上を進めております。これにより、システムの素早い提供と工数の大幅な削減に貢献します。

AI開発プロセスの改善にも取り組んでおります。AI開発案件の振り返りを元に、ボトルネックとして認識された精度評価の時間短縮を図るツールを開発し、ある実証実験では1人月程度かかっていた作業を数人日に短縮する効果が得られております。

(2022年度の主なコンペティション成績)

 国際的画像認識コンペ「Google Universal Image Embedding」で1022チーム中第5位に入賞

 データ分析世界大会“Kaggle”でGold Medal獲得

~「G2Net Detecting Continuous Gravitational Waves」で936チーム中第10位に入賞~

~「1st and Future - Player Contact Detection」で939チーム中第9位に入賞~

(3)未来目標3:サステナブルな企業情報システム

 この目標は、環境変化に対して柔軟に対応できるように最新技術の活用によって、システム自体のサステナビリティを担保しながら、サステナブルな社会やビジネスを支えるシステムの実現を目指すものであります。

 開発プロセスにつきましては、データドリブン(注14)なプロジェクト管理をプロアクティブに行うために「プロジェクト状況可視化ダッシュボード」を開発し、機能の充実を進めております。また、開発効率化やレビューの高度化のための「レビュー支援Bot」を開発し、実案件に適用して効果を検証しております。

 システムの設計ノウハウの展開に対しては、クラウドネイティブ技術(注15)の研修コンテンツとして「クラウドネイティブ設計標準」及び「コンテナセキュリティ及びマイクロサービス(注16)認証認可に関する設計標準」を作成して、ゼロトラスト(注17)セキュリティにおけるID管理/認証認可の検討ポイントを整備しております。また、「クラウドネイティブ可用性設計ガイド」を策定して実案件に適用し、レジリエンシー設計に活用しております。

 今後の企業情報システムでは、アジリティを重視するDXと、品質や安定性が重視される基幹系を含む既存の情報システムにおいて、一見相反する要求を両立しなければなりません。それらのエンタープライズレベルでの統合を実現する組織分担・開発プロセス・システムアーキテクチャの研究開発を進めております。

(注1) デジタルツイン:工場の設備・製品等の実世界のオブジェクトをデータとしてデジタルな空間に転写・再現することで、リモートからの監視・制御や、過去の状況の再現・未来の予測シミュレーション等を可能にすること。

(注2) Geminant(ジェミナント):当社が開発したデジタルツイン可視化のためのプラットフォーム及び部品群。

(注3) GIS:地理情報システム(Geographic Information System)。

(注4) IoX:機械・部品が互いにつながる「IoT(モノのインターネット)」と、ヒトがIT武装によって互いにつながる「IoH(ヒトのインターネット)」が、高度に連携・協調することにより大きな成果を出すコンセプト。

(注5) アンビエント技術:環境に溶け込み、ユーザーが促さなくてもいつでも支援を提供できる技術。

(注6) HCMIコンソーシアム:産業技術総合研究所の産学官連携プラットフォーム。

(注7) VR:仮想現実(Virtual Reality)。

(注8) ディープデータ:特定の対象について長期的あるいは様々な観点から詳細に収集したデータ。

(注9) シミュレーション技術:合理的に最適条件を導出する技術をコンピュータ上でシミュレーションすること、実験や試験と比較して、時間やコストを抑えられる場合が多く、有用な技術。

(注10) 大規模言語モデル/LLM:従来のモデルに比べて1,000倍ほど巨大な自然言語処理のモデル。少量の学習データでも高い精度で問題を解くことを実現した技術。

(注11) ChatGPT:OpenAIが2022年11月に公開した人工知能チャットボット。

(注12) マルチモーダル:複数状態、複数形式等を意味し、例えばマルチモーダルAIでは数値、画像、テキスト、音声等複数種類のデータの組み合わせを処理できる単一のAIを意味する。

(注13) 基盤モデル:大量で多様なデータを用いて訓練され、様々なタスクに適応(ファインチューニング等)できる深層学習モデル。

(注14) データドリブン :収集した様々なデータをもとに意思決定を行う手法。

(注15) クラウドネイティブ技術:クラウドの提供する機能を徹底的に活用して、スケーラブルで信頼性・回復性のある疎結合なシステムを開発する設計技術。

(注16) マイクロサービス:アプリケーションを機能ごとのサービスに分割して、それらが連携して動作するアーキテクチャ。開発のアジリティ、スケーラビリティ、可用性の向上等が期待される。

(注17) ゼロトラスト:社内外のネットワーク環境の「境界」という概念を取り去り、情報資産にアクセスするものはすべて信用せずに、安全性を検証することで情報資産の脅威を防ぐとするセキュリティの考え方。

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