企業兼大株主日立製作所東証プライム:6501】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1)研究の目的及び主要課題

 当グループ(当社及び連結子会社)は、「デジタル」「グリーン」「イノベーション」を成長ドライバーとして掲げ、社会イノベーション事業のさらなる進化をめざしています。この目標を実現するため、研究開発においては「グローバル事業成長に向けて、デジタル、グリーンによるイノベーション創生」をミッションとし、研究開発資源を、顧客体験を革新するイノベーションや社会の本質課題を捉えたイノベーションの創生に重点的に配分しています。

 また、事業活動の競争力強化及び将来の成長に向けた取組として、各地域における先進顧客の価値を起点としたDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)をOne Hitachiで推進し、Lumada事業を拡大しています。さらに、コーポレートR&Dでは、将来の成長を実現するためのイノベーションの先行投資として、2050年の社会課題からのバックキャストに基づく破壊的イノベーションを強化しています。

(2)研究開発体制

 当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、グローバルな視点で研究開発効率の向上に努めています。また、国内外の大学や研究機関との連携に加え、2019年4月には研究開発グループ国分寺サイトに研究開発拠点「協創の森」を開設し、顧客やパートナーとのオープンな協創を加速しています。さらにコーポレートベンチャリングを活用したオープンイノベーションを推進することで、社外パートナーとの技術基盤構築、事業創生につなげています。技術及び社会の転換点を先取りし、将来にわたって持続的な成長を実現していきます。

 社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、2022年4月に、研究開発グループの組織を再編しました。これまで、当グループのフロントとともに価値起点でのイノベーション創生を担ってきた「社会イノベーション協創センタ」と、価値創生を支える世界No.1技術の開発を担ってきた「テクノロジーイノベーションセンタ」を一体化して、「デジタルサービス研究統括本部」、「サステナビリティ研究統括本部」に再編し、DX及びGXによる価値創生を強化しました。さらに「基礎研究センタ」は、将来を見据えた基盤技術の創出を担い、北米、欧州、中国、アジア及びインドに展開する「海外研究開発拠点」では、地域特性や市場ニーズに応じた研究を推進しています。

(3)イノベーション投資

 当グループのさらなる成長に向けて、グループ全体のイノベーション投資を拡大します。

2025年4月に、コーポレートベンチャリング投資として最大規模となる400百万米ドルの第4号ファンドを組成し、当社のスタートアップへの投資資金残高は累計10億米ドルに達しました。グローバルトップクラスの運用規模によりオープンイノベーションをさらに加速させ、スタートアップのイノベーションエコシステムに貢献します。データセンター、分散型エネルギーシステム、未来の働き方、産業AI、バイオ、量子、核融合、宇宙等の先端技術や新領域を開拓するスタートアップとの協創を通じて、持続的成長を支える新たな事業機会の獲得とOne Hitachiの成長事業の創出をめざします。

(4)研究開発費

 当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の2.7%にあたる2,594億円であり、セグメントごとの研究開発費及び研究開発費の推移は次のとおりです。

 

セグメントの名称

研究開発費

(億円)

 デジタルシステム&サービス

516

 グリーンエナジー&モビリティ

855

 コネクティブインダストリーズ

961

 その他

16

 全社及び消去

245

  合  計

2,594

 

 

(注)1.赤色は当グループの研究開発費の合計です。オレンジ色はそのうち、デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ及びコネクティブインダストリーズの3セグメントにおける研究開発費の合計です。

   2.( )内の数値は、当グループの研究開発費の売上収益合計に占める割合です。

(5)研究成果

 当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。

①AI/生成AIを活用したデジタルイノベーションの取組(デジタルシステム&サービスセグメント、全社)

AI/生成AIを活用して次世代技術を創生するとともに、これらの技術を事業に応用することで、社会課題の解決に取り組みました。

(イ)生成AIを活用し、システム開発のトランスフォーメーションを加速

 ミッションクリティカルなシステムの開発領域に生成AIを適用するための新たな開発フレームワークを整備しました。本フレームワークは、当グループがこれまで培ってきた基幹システムや社会インフラシステムのナレッジと生成AIを組み合わせた開発環境であり、プロジェクトのニーズ・要件に応じた柔軟なカスタイマイズが可能です。自動修正・コメント生成機能等が搭載されており、生成AIが生成したソースコードの70~90%が適切であることを社内検証で確認しました。高い品質を確保しながら、システム開発の効率を大幅に向上することで、ソフトウェアエンジニア不足の解消といった社会課題の解決をめざします。

(ロ)カスタマーサポート業務を支える生成AIエージェント技術を開発

 カスタマーサポート(以下、「CS」といいます。)業務特有の問題解法や要件に基づき強化した「ReAct for CS(リアクト・フォー・シーエス)」を開発し、当グループのサポートサービス「日立サポート360」の社内実証により、その有用性を確認しました。汎用LLM(大規模言語モデル)にない専門知識を持つ「ReAct」と呼ばれるより強力なLLMエージェント技法の活用により、複雑な問合せに対応します。CS業務の効率化や担当者の負担軽減が期待されるだけでなく、迅速かつ正確な対応を通じて顧客満足度の向上にも寄与します。今後は、さらに高度な問合せ対応や業務全般への適用を進め、活用範囲を拡大していきます。

(ハ)異常時の機械から発生する稼働音の変化を説明するテキスト生成技術を開発

 製造ラインでの品質検査やインフラ設備の点検を効率化するため、生成AIを活用した異音検知技術を開発しました。本技術は、機械の稼働音データを解析し、異常検知の根拠を具体的なテキストとして生成することで、異常の内容や対応策を明確化します。従来は熟練者の主観に依存していた聴音点検を客観的に可視化することで、熟練者不足の課題を解決するとともに、点検作業の精度向上を実現します。また、保守作業の迅速化や適切な対応を支援することで、製造業やインフラ分野全体の効率化に貢献します。

故障の予防策や修復作業まで提案可能なAIアシスタント(イメージ)

(ニ)現場作業の自律動作能力を拡張するAIロボット技術を開発

 インフラ、交通、製造分野におけるDX推進とフロントラインワーカーのウェルビーイング向上をめざし、視覚や力覚等のマルチモーダル情報とロボット動作情報を統合的に学習するAI技術を開発しました。本技術を活用し、人の動作を模倣学習させる「ロボット教示」が可能な双腕ロボットを開発することで、作業負荷の軽減や時間・場所の制約緩和、新たな働き方を提案します。また、これらの研究成果に関連し、当社の研究者がMITテクノロジーレビュー[日本版]主催「Innovators Under 35 Japan 2024」に選出されました。

(注)深層学習を用いたロボットの動作学習・動作生成技術に関する成果の一部は、学校法人早稲田大学の尾形哲也教授との共同研究の結果得られたものです。

人の動作を模倣学習させるロボット教示が可能な双腕ロボット

(ホ)生成AIの論理的思考能力を強化する学習データ自動生成技術を開発

 自然言語での思考能力を高め、高度な意思決定を支援可能な生成AIの実現をめざし、生成AIの論理的な思考能力を高めるための学習データを自動的に生成する技術を開発しました。本技術は、例えば、「○○○地域での×××事業への投資は適切か?」といった問いに対応するため、多段階の思考ステップや数理論理学に基づく幅広い学習データを自動生成します。オープン方式を採用していることから任意の生成AIに適用することが可能であり、追加学習を通じた論理的思考の強化が可能です。最先端の生成AIで検証した結果、論理推論能力が平均約9%、最大で30%向上(注)しました。今後、顧客と連携することで本技術を進化させ、社会全般の複雑な課題解決を支援する生成AIの実現をめざします。

(注)2024年11月時点の当社調査によります。検証では、一例として、「LLaMa-3.1-70B」を使用しています。

(ヘ)製造業サプライチェーンを強靭化するディープインサイト推定技術を開発

 自然災害やパンデミック等のリスクに対し、製造業のサプライチェーンを強靭化するために、「ディープインサイト推定技術」を開発しました。本技術は、部品供給情報と企業情報等を生成AIに入力し、従来は明らかにすることが困難だった製造拠点の情報を高精度に推定するものです。当グループ内での検証により、85%を超える精度でサプライヤーの製造拠点情報を推定できることを実証しました。

 また、本研究の詳細について、2025年3月に、共同研究先である国立大学法人東京大学(以下、「東京大学」といいます。)「デジタルオブザーバトリ研究推進機構」が主催した第2回フォーラムで発表しました。本フォーラムでは、有識者によるパネル討論やポスターセッションを通して課題やユースケースの抽出、社会実装に向けた議論を行うとともに、連携企業・機関の探索を目的としたネットワーキングの強化にも取り組みました。

製造業サプライチェーン強靭化技術によるグローバル事象におけるリスク予兆把握(イメージ)

②将来の社会課題解決に向けた取組の深化(全社)

 先端技術の研究開発や持続可能な社会の構築をめざし、技術基盤の強化を通じて、将来の社会課題解決や新たな価値創造に取り組みました。

(イ)量子コンピュータの実用化に向けて量子ビットの寿命を100倍以上長く安定化させる操作技術を開発

 当社は、日立ケンブリッジラボでの30年以上に渡る量子物理基礎研究に加え、2020年からは国立研究開発法人科学技術振興機構のムーンショット型研究開発事業(グラント番号JPMJMS2065)を通してアカデミアと連携し、大規模化に優位なシリコン量子コンピュータの研究を推進しています。これまで、効率的な制御方式や大規模化を可能にするアレイ構成を提案しました。2024年6月には、半導体中のノイズを一部無効化することにより量子ビットの寿命を100倍以上延伸する操作技術を開発しました。今後も本研究を加速させ、量子コンピュータの誤り訂正技術の実現や大規模な量子計算の精度向上を通じて、量子コンピュータの早期実用化をめざします。

(注)本結果の一部は、国立大学法人東京科学大学、東京大学、国立研究開発法人理化学研究所、日立ケンブリッジラボとの共同研究の結果得られたものです。

(ロ)脱炭素社会実現に貢献する水素製造システムの開発

 再生可能エネルギーを活用した水素製造とそれに伴う電力運用の両方を最適に計画制御する新たな水素製造システムを開発しました。水電解装置の物理特性に基づいた運用計画とリアルタイム制御により、実際の運用との誤差を減らし、製造コストを削減することができます。また、本技術は、水素製造以外にも、蓄電池や燃料電池を含め、複数の場所で同時に最適運用することにも適用が可能です。本技術が、持続可能な社会のさらなる実現に貢献することをめざしています。

③オープンイノベーションによる価値協創 (全社)

 国内外の大学・研究機関との協創を強化し、エコシステムの構築を推進しました。

(イ)東京大学との共同研究活動

2023年11月のエネルギーシステムの将来及び国際的協力の在り方に関する議論に続き、2024年10月には東京大学、インペリアルカレッジロンドン及び日立の三者により、グリーン経済におけるイノベーションと機会に関する共同イベントが開催されました。本イベントでは、脱炭素化、炭素循環、気候変動対策技術の社会的受容性等の幅広いテーマが議論され、特にカーボンニュートラルへの移行における挑戦的課題として、サプライチェーン全体のカーボンフットプリント削減、AIを活用したエネルギー効率化、生物多様性保護を含む統合的トランジションの実現等が挙げられました。

 また、日立東大ラボでは、日本政府が提唱する「超スマート社会」の実現(Society 5.0)に向け、ビジョンの創生と実現に向けた研究開発を推進しています。これまでに、「Society 5.0を支えるエネルギーシステムの実現に向けて」と題した提言を第6版まで発刊し、カーボンニュートラル実現に向けた具体的な道筋を示してきました。2025年1月に開催した第7回産学協創フォーラムでは、電力システムをはじめとする社会システムへの推進に向け、「統合的トランジション」の具体的事例や配慮を紹介しました。さらに、パネルディスカッションを通じてエネルギー協調や国際連携の重要性を議論することで、持続可能な社会の実現に向けた取組を深めました。

パネルディスカッションの様子

(ロ)日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ 第2回オープンフォーラムを開催

 当社と国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、「産総研」といいます。)は、2022年10月、産総研内に「日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」を設立して以来、「循環経済社会のグランドデザインの策定」をはじめとした3つのテーマで研究を推進してきました。2024年2月の第1回オープンフォーラムでは、従来の「線形経済」から「循環経済」への移行に向けた国内外の情勢を踏まえ、サーキュラーエコノミー社会(以下、「CE社会」といいます。)の将来像や技術的・制度的課題を抽出し、関係者と問題意識を共有しました。2025年2月の第2回オープンフォーラムでは、CE社会における「ありたき将来」実現に向けた具体的な技術やルール、行動変容を促す仕組みに関する検討結果を紹介し、外部有識者とのパネルディスカッションを通じて議論を深めました。

④著名な社外表彰やデザイン賞の獲得

 当社の製品や技術、デザインが社外で高く評価され、著名な表彰を受賞しました。

(イ)熟練者ノウハウを反映可能な生産計画最適化技術の開発と実用化で「大河内記念生産賞」を受賞(コネクティブインダストリーズセグメント)

 公益財団法人大河内記念会が主催する「第71回(令和6年度)大河内賞」において、熟練者ノウハウを反映可能な生産計画最適化技術の開発と実用化で「大河内記念生産賞」を受賞しました。本技術は、過去に熟練者が立案した計画履歴データの分析により熟練者のノウハウをデジタル化し、機械学習技術を組み込むことで熟練者の計画を再現できる計画最適化技術です。当グループのLumadaソリューションである「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」に本技術が活用されています。今回、高齢化が進む熟練者からのノウハウの伝承や、働き方改革に向けた労働時間低減等の社会課題の解決に大きく寄与する取組が評価され、受賞に至りました。

(ロ)LABOSPECT® 006 α 自動分析装置が「十大新製品賞 日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞(コネクティブインダストリーズセグメント)

㈱日刊工業新聞社が主催する第67回「十大新製品賞」において、㈱日立ハイテクが販売する「LABOSPECT® 006 α 自動分析装置」が「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞しました。本装置は、特定機能病院をはじめ、衛生検査所やクリニック等の臨床検査の現場で活用されている血液の生化学分析を自動で行う装置です。今回、測定前の作業やメンテナンスの大幅な省力化により検査技師の負担を軽減し、検査室での新しい働き方を支える製品として評価され、受賞に至りました(㈱日立ハイテクとの共同受賞)。

LABOSPECT 006® α 自動分析装置

(ハ)阪急電鉄2300系座席指定サービス『PRiVACE』用車両及び仙台市営地下鉄南北線の新型車両3000系が公益財団法人日本デザイン振興会主催の「2024年度グッドデザイン賞」を受賞(グリーンエナジー&モビリティセグメント)

 阪急電鉄㈱と当社が共同で製造した「阪急電鉄2300系座席指定サービス『PRiVACE』用車両」は「日常の“移動時間”を、プライベートな空間で過ごす“自分時間”へ」をコンセプトとしています。今回、上質感を高めながら快適性とプライベート感の両立を実現したことが評価され、受賞に至りました(阪急電鉄㈱との共同受賞)。

 また、当社が製造し、仙台市交通局が運行する地下鉄南北線の新型車両3000系は、「杜の都」仙台のケヤキ並木をイメージしたシート・ファブリックと爽やかな木目調の仕切り板により、明るさの中にも静謐さが漂う内装デザインとなっていることや、ホームと車両の段差が小さくなったこと、ペアガラスの採用による静音性の向上によって、乗客の安全性と快適性の向上にも寄与していることが評価され、受賞に至りました(仙台市交通局との共同受賞)。

阪急電鉄2300系座席指定サービス『PRiVACE』用車両の外観(左)及び内観(右)

仙台市営地下鉄南北線の新型車両3000系の外観(左)及び内観(右)

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