日本郵船
【東証プライム:9101】「海運業」
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企業概要
当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、存在意義、社会的使命として“Bringing value to life.”を企業理念に掲げています。
(2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、2023年3月に中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定し、2030年に向けた新たなビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を掲げ、その実現を目的とする2026年度までの4年間の行動計画にもとづき事業を進めています。ESGを中核に据えた成長戦略を推進し、経営戦略としては、各事業における機会とリスクを踏まえた事業戦略の方向性(両利きの経営:AX、及び事業変革:BX)を定めるとともに、人的資本の更なる充実・グループ経営の変革・ガバナンスの強化(CX)、デジタル基盤の整備推進(DX)等のコーポレート基盤の強化に加え、脱炭素に向けた取組みの加速(EX)を推進します。事業投資計画としては、中期経営計画策定時点において2026年度までに予定していた1.2兆円規模の事業投資を1.4兆円規模に増額して実施します。当連結会計年度末時点で中期経営計画期間中の投資が決定している案件は約9,500億円です。
(“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標)
| 2024年度実績 | 中期目標 (2026年目途) |
当期純利益 | 4,777億円 | 2,000~3,000億円 |
ROIC | 13.2% | 6.5%以上 |
ROE | 17.2% | 8.0~10.0% |
(株主還元策)
当社は、株主の皆様への安定的な利益還元を経営上の最重要課題の一つと位置付け、連結配当性向30%を目安に1株当たりの配当下限金額を年間100円として、業績の見通し等を総合的に勘案して利益配分を決定します。現在推進中の中期経営計画(対象期間:2024年3月期~2027年3月期)の公表から2年が経過し、公表時に前提としていた当社の財務・投資進捗状況、中長期的な利益水準の目安及び外部環境等にも変化が見られる中、中期経営計画で示す事業運営の大きな方向性は維持しつつ、足元の変化に機動的に対応し、株主・投資家の皆様の期待に応えるべく、2026年3月期以降の配当方針を以下の通り変更することといたしました。配当の詳細については「第4 提出会社の状況 3配当政策」をご参照ください。
| 変更前 | 変更後 |
連結配当性向 | 30% | 40% |
1株当たり配当下限金額 | 100円 | 200円 |
自己株式の取得については、2024年5月8日及び2024年11月6日の取締役会決議に基づき、2025年4月4日までに26,898,400株(取得価額の総額 約1,300億円)の取得を完了しました。なお、取得した自己株式は2025年5月30日に全株消却しました。翌連結会計年度(2026年3月期)においては、取得価額の総額(上限)を1,500億円、取得する株式の総数(上限)を48百万株、株式取得期間を2025年5月9日から2026年4月30日として自己株式の取得を決定しました。また、取得した自己株式は全株消却することを予定しています。
(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題
① 中期経営計画の遂行
地政学リスクの高まりを受け混迷を極める世界情勢の中、「物流を止めない」を合言葉に、エネルギー、医療物資や生活必需品を世界中に届け、人々のライフラインを守るべく、 “Bringing value to life.” を企業理念(ミッション)とし、新たに掲げたありたい姿(ビジョン)「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を目指して、中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” を進めています。
両利きの経営(AX)と事業変革(BX)から成る「基軸戦略」の下、既存中核事業を深化させると同時に新規成長事業を進化させ、これを「支えの戦略」となる人材・組織・グループ経営の変革(CX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)が支えます。
■中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” 完遂への取組み
経営戦略であるAX~EXの2024年度の主な進捗状況は以下の通りです。2025年度についても「既存中核事業の深化」と「新規成長事業の開拓」を加速していきます。
◆脱炭素社会実現に向けたアンモニアサプライチェーン構築
| アンモニア燃料タグボート「魁」 | AFMGC本船デザイン |
当社グループは2023年11月にNYK Group Decarbonization Storyを発表し、2030年までにScope1+2で2021年度比45%の温室効果ガス(GHG)排出量削減、2050年までにネットゼロ達成という野心的な目標を掲げ、その達成に向け取り組んでいます。目標達成に向けた船舶燃料転換シナリオに基づき、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からグリーンイノベーション基金事業として助成を受けて開発したアンモニア燃料タグボート「魁」が2024年8月23日に竣工しました。同船は、アンモニア燃料船として世界初となる実運航中の実証試験・解析を行い、重油使用時と比較して最大約95%の温室効果ガス(GHG)排出量削減を達成しました。
また、2025年2月にはアンモニア燃料アンモニア輸送船(AFMGC)として世界初の定期傭船契約を世界最大級のアンモニアプレーヤー、Yara International ASAのグループ会社であるYara Clean Ammonia Switzerland SAと締結しました。当社は今後もアンモニアの海上輸送に留まらず、多様な側面からアンモニアサプライチェーンの構築に取り組んでいきます。
◆成長分野と位置付ける物流分野への投資拡大
| Parts Express B.V.社 |
当社グループは中期経営計画において物流事業を中核事業と位置付けており、成長エンジンである物流事業への積極投資を続けています。
特に今後も成長が見込まれる自動車やヘルスケア、リテールなどのサービスを強化しており、2024年4月には当社グループの郵船ロジスティクス株式会社のオランダ法人が自動車部品の配送に強みを持つオランダの物流会社Parts Express B.V.を買収しました。郵船ロジスティクス株式会社オランダ法人はベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)のお客様を中心に、さまざまなサプライチェーン・ロジスティクスサービスを展開しており、この買収により自動車産業に特化した配送、クロスドックサービスをより深化させます。
また、2024年7月にはベルギーで医薬品倉庫の稼働を開始しました。同倉庫は、自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robots)や無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)、自動仕分けシステムなどを導入したことで、効率的な保管と省人化を実現しました。欧州における医薬品輸送のハブでもあるベルギーで新たに医薬品倉庫を稼働することで、最先端の医療・医薬品物流をリードし、お客様のニーズに応える高付加価値サービスの提供を目指します。
◆脱炭素社会に向けた洋上風力関連事業での貢献
| 作業員運搬船「Transporter」 |
当社では、洋上風力発電事業を、脱炭素化だけでなく「エネルギーの安定確保」、「地方創生と国際競争力の復活」という、日本が直面する課題の解決に取り組む重要事業と位置付けています。当社は洋上風力発電も含めた再生可能エネルギー事業の推進と関連人材の育成をはじめ、港湾活用、船舶関連人材の育成、観光振興、環境保全などの地方創生に取り組んでおり、2024年12月には秋田曳船株式会社と洋上風力事業に必要な船舶保守管理サービスを提供する合弁事業会社としてジャパンオフショアサポート株式会社を設立しました。
海外市場においては2025年1月に、洋上風力発電での作業員輸送船(Crew Transfer Vessel、以下「CTV」)運航の先駆企業であり、スウェーデンに本社を置くNorthern Offshore Group ABの過半数株式を取得し、連結子会社化しました。
これに加えて、2025年3月に台湾の洋上風力発電関連企業である國際海洋股份有限公司(IOVTEC Co.,Ltd.)が新規に発行する普通株式を引き受けました。台湾の洋上風力発電市場はアジアにおいて先行しており、同社はこれまでこの市場における数多くのプロジェクトに携わり豊富な実績を積み上げてきました。
当社は、外航海運で得た知見や海外パートナーとの提携を活用するとともに、CTVやトレーニングセンター等の事業を通じ、地域密着の強みを生かした洋上風力発電関連事業を進めています。
◆循環型社会の実現に向けた取り組み
| 洋上回収イメージ図 | オオノ開發 知多解体事業所イメージ |
当社は、循環型社会の実現に向けて本業である海運業で培った技術や知見を新しい分野で生かす取り組みを続けています。
宇宙関連事業においては(1)洋上でのロケット打ち上げ、(2)打ち上げたロケット1段目の洋上回収、(3)衛星データの利活用、の3つの領域で事業化を目指しています。再使用型ロケットの洋上での回収プロジェクトについては、2024年12月に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金事業の1つとして採択されており、今後本格的に研究開発を進めていきます。
また循環型社会の実現を目指し、2024年9月にオオノ開發株式会社と国内で船舶や大型海洋建造物を解体し、鉄スクラップ等のリサイクルを行う船舶リサイクルの事業化を目指して共同検討していくことに合意しました。
今後も当社のコアコンピテンシーを生かし、様々なパートナーと協力し合いながら循環型社会の実現を目指します。
◆2025年7月から客船2隻運航体制へ、またオリエンタルランドとクルーズ事業における業務提携に向けた基本合意書を締結
| 「飛鳥Ⅲ」提供:郵船クルーズ株式会社 |
客船事業では、34年ぶりの新造客船「飛鳥Ⅲ」が2025年7月20日に就航を予定しており、「飛鳥Ⅱ」との2隻体制による運航に向けた準備を着実に進めています。
LNGを含む3種類の燃料に対応したエンジン及び陸上電力受電装置を採用し、環境に配慮した飛鳥Ⅲは、飛鳥クルーズが日本において培ってきたクルーズ文化、和のおもてなしを継承しながらも、多彩なダイニング、エンターテイメント、ウェルネスなど心身を満たすプログラムを備え、より自由により豊かに、新たなる時代のクルーズ価値を創造します。
また、当社、郵船クルーズ株式会社、株式会社オリエンタルランドの3社は、株式会社オリエンタルランドが日本を拠点として2028年度の就航を目指すクルーズ事業において、業務提携に向けた基本合意書を締結しました。
当社グループは、貨物輸送や飛鳥クルーズなどを通じて長年にわたって積み重ねてきた運航実績や高い安全技術を様々な形で活用し、中核事業としての持続的な成長を目指します。
◆NYK Energy Ocean株式会社発足
| NEO社ロゴ | LPG船「SUNNY VISTA」 |
当社は2025年4月1日、ENEOSオーシャン株式会社の原油タンカー以外の海運事業を承継する新会社NYK Energy Ocean株式会社(以下「NEO社」)株式の80%を取得し、NEO社が発足しました。
NEO社はENEOSオーシャン株式会社から承継したLPG船、ケミカルタンカー・プロダクトタンカー、貨物船の計47隻を運航します。
LPG船は当社で現在運航している15隻と合わせて33隻になり、当社グループは世界最大規模のLPG船運航事業者になります。
当社グループは、エネルギー輸送事業において成長事業と位置付けるLNG及びLPG船事業を中心に取り組みを強化するとともに、安定的なエネルギー輸送の責務を果たすことを目標としており、今回のNEO社の子会社化はこの戦略に沿ったものです。ENEOSオーシャン株式会社から承継した100名以上の優秀な人材と47隻の良質な船隊、そしてエネルギー事業を幅広く手掛けるENEOSグループとの連携強化によってシナジーを創出し、エネルギー輸送事業のさらなる成長を目指します。
◆電気推進タグボートの運航開始に向けて
| モータードライブシステム |
当社グループはリチウムイオンバッテリー搭載の電気推進タグボートを建造し、2026年末に運航を開始します。電気推進船で中核となるモータードライブシステム(※)は、これまで舶用向けでの国産化が進んでいませんでしたが、パワーエレクトロニクス分野で業界トップクラスの技術力を持つ株式会社TMEICと協議を重ね、本船向けに新たに開発される技術を採用します。これにより、本船は国内メーカー製モータードライブシステムを搭載する日本初の電気推進タグボートとなります。さらに、本船には国内のタグボートとしては初めて船舶定点保持システム(DPS)を導入し、船体を自動的に一定エリアに留められるようにすることで、乗組員の心理的負担を軽減します。この取り組みは、国土交通省の内航変革促進技術開発支援事業の対象事業に採択されています。また、設計・建造・運航までの船舶バリューチェーンを当社グループ内で一貫して担い、電気推進船に必要な幅広い知見を集積していきます。将来的には、こうして培った知見を広く海事産業へ還元し、人手不足や脱炭素といった日本が抱える社会課題の解決に貢献していきます。
※ パワーエレクトロニクス技術を利用したドライブ装置とモーターによる駆動方式
◆「35,000人のグループ全社員の能力を挑戦に活かす日本郵船グループ」の実現
当社グループは2023年に、CX2030ビジョンを実現するための「CX Story」を発表し、「35,000人のグループ全社員の能力を挑戦に活かす日本郵船グループ」を実現するために、Diversity & Inclusion(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン、以下「D&I」)を経営戦略の重要な柱と位置付けています。
まず、2024年9月にはD&Iについて、当社グループの姿勢を明確にするため、「D&I Promise」を策定しました。また、特に、「Gender」「Marine」「Global」の観点からインクルージョンを進めています。「Gender」については、女性の活躍の場を広げ、より多様な観点を意思決定の過程に取り込むことをトップコミットメントとして発信し、組織として最大限の能力を発揮できる環境を整えていきます。「Marine」については、海技者の活躍促進プロジェクト「CX NEO(NYK Empowering Oceans)」を立ち上げ、海技者が情熱とプライドを持って、長く働きたいと思える会社を実現していきます。「Global」については、引き続き海外人材の本社での活躍促進や、グローバルでの人材公募を進め、適所適材の人材戦略を実行します。
当社グループは今後も人材の多様性と、それを尊重し歓迎するインクルーシブな組織風土の醸成に努め、企業の持続的成長を目指します。
◆「DX銘柄2025」に3年連続選定
当社は2025年4月に経済産業省、東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構が主催する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2025」において「DX銘柄」に選ばれました。当社がDX銘柄に選定されるのは3年連続となります。今後もデジタルの力を活用して当社グループの中期経営計画を推進し、グループミッション“Bringing value to life.”を追求していきます。
② 遵法の徹底
当社グループは、遵法の徹底を最重要事項と位置付け、当社と国内外にある様々な事業を展開するグループ会社を対象にグローバルなガバナンス体制の構築を目指しており、以下の対策を着実に実行し、法令に則った公正な事業の遂行を徹底することに全力を尽くしていきます。
・米州・欧州・東アジア・南アジアの各拠点にRegional Management Officeを設置
・ベストプラクティスの共有や課題の速やかな解決を図るため、Regional Governance Officerの下に法務担当や内部監査人を配置
・国内外グループ会社が制定している行動規準に対する誓約書の取得等の活動を継続
・独占禁止法の遵守を徹底すべく、社内各部門・グループ会社にヒアリングを実施し、これらを踏まえた独占禁止法に関する行動指針の作成、研修の実施
・コンプライアンス委員会や遵法活動徹底委員会の開催を通じ、独占禁止法対応に加え贈収賄・ハラスメント防止等、包括的な法令遵守体制の整備・強化
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