日本郵政
【東証プライム:6178】「サービス業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 当社グループの経営理念及び経営方針
① グループ経営理念
郵政ネットワークの安心、信頼を礎として、民間企業としての創造性、効率性を最大限発揮しつつ、お客さま本位のサービスを提供し、地域のお客さまの生活を支援し、お客さまと社員の幸せを目指します。また、経営の透明性を自ら求め、規律を守り、社会と地域の発展に貢献します。
② グループ経営方針
・ お客さまの生活を最優先し、創造性を発揮しお客さまの人生のあらゆるステージで必要とされる商品・サービスを全国ネットワークで提供します。
・ 企業としてのガバナンス、監査・内部統制を確立しコンプライアンスを徹底します。
・ 適切な情報開示、グループ内取引の適正な推進などグループとしての経営の透明性を実現します。
・ グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。
・ 働く人、事業を支えるパートナー、社会と地域の人々、みんながお互い協力し、社員一人ひとりが成長できる機会を創出します。
(2) 経営環境
当連結会計年度の経済情勢を顧みますと、世界経済は、地域によりばらつきがみられました。米国では、経済がプラス成長を維持するなか、インフレ率の低下に伴い、連邦準備制度理事会は2024年9月、11月及び12月に利下げを実施しました。一方、ユーロ圏経済は、欧州中央銀行が2024年6月以降6回の利下げを行いましたが、大きな回復は見られず、低調に推移しました。日本経済は、賃金が上昇し、内需の持ち直しもあり、底堅く推移しました。円安トレンドが継続し、物価上昇が続くなか、日本銀行は2024年7月及び2025年1月に利上げを行いました。
金融資本市場では、米国の長期市場金利は、インフレ率低下の傾向を受け、低下基調で推移しておりました。大統領選挙の結果などを受け、いったん上昇する局面もあったものの、米国の関税政策による景気悪化への懸念等から期末にかけて大きく低下しました。また、日本の長期市場金利は、インフレ見通しもあり上昇基調で推移し、一時1.6%近傍まで上昇しました。
ドル円相場は、2024年4月初めの151円台後半から、期末時点で149円台と大きく水準は変わらなかったものの、同年7月上旬には161円台後半まで円安が進行し、その後の為替介入を契機に140円台まで円高進行するなど、当年度を通しては大きな変動が見られました。
日経平均株価は、日本企業の好調な決算発表から2024年7月には42,000円台まで上昇し、史上最高値を更新しましたが、米国株式と同様に、一時31,000円台まで急落しました。その後は40,000円程度まで持ち直したものの、米国の関税政策等を巡る不透明感が強まるなか、軟調な米国株式とともに下落に転じました。
物流業界・郵便事業においては、デジタル化の進展等に伴う郵便物の減少や荷物分野における競合他社との激しい競争に加え、諸物価や人件費の上昇に伴うコストの増加等により、厳しい環境が続いています。また、働き方改革関連法等によるドライバーの拘束時間の減少などから生じる、いわゆる物流の「2024年問題」への対策として、政府により公表された「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づき業界・分野別に作成された自主行動計画に掲げられた取組みの実行が求められているほか、改正物流総合効率化法及び改正貨物自動車運送事業法の施行への対応が求められております。郵便事業においては、ユニバーサルサービスである郵便サービスの安定的な提供を維持していくため、物価問題に関する関係閣僚会議の了承を経て、2024年6月に「郵便法施行規則の一部を改正する省令」が公布され、第一種郵便物のうち25グラム以下の定形郵便物の上限料金の額が「84円」から「110円」に改正されました。
銀行業界においては、当年度の全国銀行における預金は26年連続で増加し、貸出金も14年連続で増加しました。金融システムは、2025年4月以降、内外の金融市場が大きく変動するなど、各国の通商政策をはじめとする経済政策運営や地政学的リスク、国際金融市場の動向を巡る不確実性が高まっているものの、全体として安定性を維持しています。
生命保険業界においては、超高齢社会の進展や人口減少等の大きな構造変化とともに、先端技術の進歩・普及や、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機としたライフスタイル多様化の急速な進展等がみられ、多様なお客さまニーズへの対応が求められております。
当社グループは、「郵便・物流」「貯金」「保険」の生活に必要な基礎的サービスや物販、提携金融サービス等を全国約2万4,000か所の郵便局ネットワークを通じて提供するほか、不動産事業など多数のサービスを展開しております。郵便・物流事業においては1日に約3,000万か所への郵便配達箇所数、銀行業においては約1億2,000万口座の通常貯金口座数、生命保険業においては約1,692万人のお客さま数(契約者さま及び被保険者さまを合わせた人数(個人保険及び個人年金保険を含み、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みます。))など、毎日の生活の中で多くのお客さまにご利用いただいており、お客さまとの接点の多さは当社グループの強みとなっております。
(3) 当社グループの経営戦略等
① 中期経営計画等について
当社グループは、2021年5月に策定した中期経営計画「JP ビジョン2025」について、当社グループを取り巻く環境の変化を踏まえて見直しを行い、「JP ビジョン2025+(プラス)」(2024年度~2025年度)を2024年5月に発表しました。
(a) JP ビジョン2025+の基本方針
お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を目指す姿とすることは変えず、グループ全体で直面する課題を克服し、成長ステージへの「転換」を実現するためのドライバーとして、「資源配分」、「郵便局」及び「人材・システム」という3点を変えていきます。
「資源配分」については、当社グループが成長分野と考える物流分野や不動産事業へ、資金や人材をより積極的に配分できるよう、仕組みを変えていきます。
「郵便局」については、より地域の実情に応じた個性ある郵便局へと進化することを目指し、郵便局ネットワークの価値・魅力を向上させるサービスの充実や、柔軟な営業体制の構築を行うとともに、お客さまの利便性を踏まえた店舗の最適配置、窓口営業時間の弾力化などにより、生産性の向上を図ります。
「人材・システム」については、当社グループの事業活動を行う上で最も重要な人的資本への投資を成長に向けた投資の1つと位置づけ、社員体験価値向上に取り組むとともに、DXの推進などにより、人口減少、ライフスタイルや働き方の変化、デジタル化の急速な進展といった環境変化に適応可能な、柔軟で強靭な組織へと変革します。
(b) 成長ステージへの転換に向けた取組の3本柱
「JP ビジョン2025+」のもと、「収益力の強化」、「人材への投資によるEX※1の向上」、「DXの推進等によるUX※2の向上」という3本柱を掲げて取り組みます。
「収益力の強化」については、グループの収益を強化するため、物流分野と不動産事業を成長分野として捉え、経営資源を積極的に投入していくことで、成長の加速を図ります。
「人材への投資によるEXの向上」については、労働人口の減少に伴う人手不足や価値観・ライフスタイルの多様化など、外部環境の変化に対応して、優秀な人材を確保し育成していかなければならないことから、社員エンゲージメント、「誇りとやりがい」の向上や、柔軟で多様性のある組織への転換に取り組みます。
「DXの推進等によるUXの向上」については、デジタルへの移行が急速に進む中、お客さまサービスや社員の働き方を、DXにより利便性を高め、効率化していくことが必須となっています。グループDXの推進により、お客さま、社員双方の視点から、UXの向上に取り組んでいきます。
※1 EXとは、社員が会社で働くことを通じて得られる体験価値のことです。
※2 UXとは、システムやサービスを利用するユーザー(お客さまや社員)が、その利用を通じて得られる体験価値のことです。
(c) 当社グループにおけるサステナビリティ経営の推進
当社グループは、グループのサステナビリティの観点から重要と考えている「地域生活・地域経済」「高齢社会への対応」等のサステナビリティ重要課題に対して、「地域のハブとしての役割発揮」「サプライチェーン全体での対応」等のグループの強みを活かして取り組むことにより、各事業戦略の展開を通じたグループの成長と、Well-being※の向上及び低環境負荷社会への貢献といった価値創造を通じた、社会とグループの持続性ある成長を目指していきます。
※ 「肉体的にも、精神的にも、社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」(WHO憲章前文) であり、当社グループでは、多様な個人やコミュニティのあり方を包括する概念として使用しております。
② 経営者の問題意識と今後の方針
2025年度は中期経営計画「JP ビジョン2025+」(2024年度~2025年度)の最終年度であり、当社グループは、「JP ビジョン2025+」に掲げた主要目標の達成に向けて取り組み、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」の実現・成長ステージへの転換を目指すとともに、今後のグループ経営戦略については、次期グループ中期経営計画の策定に向けて検討してまいります。
「JP ビジョン2025+」では、引き続き、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を目指し、コアビジネスの充実・強化に向けて、成長分野へのリソースシフトを強力に推進してまいります。また、人口減少、ライフスタイルや働き方の変化、デジタル化の急速な進展等経済社会の大きな変化に対応するため、お客さま体験価値や社員の利便性向上につながるDXの取組みを強力に推進するとともに、当社グループの人材・組織を多様性あるものに変革する取組みに着手してまいります。財務面では、ROE(株主資本ベース)について、早期に株主資本コストを上回るROEを達成し、中長期的にさらなる向上を目指します。
また、業務の適正を確保するため、コーポレートガバナンスのさらなる強化に向け、引き続き、グループ全体の内部統制の強化を推進し、コンプライアンス水準の向上を重点課題として、グループ各社に必要となる支援・指導を行います。特に、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題を受け、同様の問題を二度と繰り返さないために講じてきた業務改善計画の施策の浸透・定着に引き続き取り組みつつ、取組みの実施状況や課題等を把握し、グループ全体としてさらなる改善を推進してまいります。
さらに、非公開金融情報の不適切利用事案※1については、法令等の趣旨に立ち返ったルールの整備、当社グループの幅広い顧客接点でお客さまの非公開金融情報等の利用に係る同意をいただく取組みの促進と同意を得た非公開金融情報等を活用するシステム環境整備、お客さま本位の活動を実践する人材育成、リスク認識力の強化及びガバナンス強化を内容とする再発防止策を徹底してまいります。加えて、認可取得前勧誘事案※2については、実態を把握するための調査を実施し、再発防止策を策定いたしました。再発防止策として、法令等遵守の徹底及び業務品質の確保に向けた取組みを行うほか、それらの再発防止策の実効性確保のため、モニタリング・フォローアップの強化や2線による1線へのけん制機能の発揮など、リスク認識力の強化に向けた取組みやガバナンス強化に向けた取組みを行ってまいります。今後、法令違反を再発させない態勢を構築してまいります。
点呼業務未実施事案※3については、国土交通省から、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)に基づく特別監査を受け、2025年6月5日、一般貨物自動車運送事業の許可取消処分の聴聞の通知を受領しました。その後、同6月17日に行政処分を受け入れる旨国土交通省に報告しました。有価証券報告書提出日時点において、行政処分執行後は、一般貨物自動車運送事業の許可が取り消されることにより、使用している1t以上の車両の使用ができなくなる見込みとなっております。今後は、他の運送会社へ委託を行うことを基本に、確実な点呼の実施を大前提として、日本郵便が保有する軽四車両等を使用することにより、行政処分執行後においても、郵便物及び荷物(ゆうパックなど)のサービスについては、ご利用いただいているお客さまにご迷惑をおかけすることのないよう、引き続き確実かつ適切に対応してまいります。また、今回の事態に至った責任を重く受け止め、責任の所在及び度合いを勘案して責任を明確化しました。
なお、軽貨物営業所となる郵便局に対する特別監査は、現時点においても継続しており、今後、監査結果を受けて、軽四輪自動車の使用停止処分が下される可能性があります。かかる行政処分を受け入れる場合においても、再発防止策の実行、適正な点呼業務の徹底に取り組んでまいります。
また、協力会社との集配関係委託契約に関して、一部の郵便局で価格協議や違約金に係る不適切な交渉が認められたことを受け、集配関係委託契約における更なる価格転嫁・取引適正化に向けては、本社に設置した「パートナーシップ強化推進本部」の下で、価格交渉のプロセスの改善、協力会社の皆さまとのコミュニケーションの深化、違約金の仕組みの運用見直し等に取り組んでまいります。
あわせて、部内犯罪及び社員の不正の防止、個人情報保護並びにマネー・ローンダリング、テロ資金供与及び拡散金融対策等の取組みを継続・強化してまいります。
そして、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保については、交付金・拠出金制度も活用しつつ、その責務を果たし、地域社会に貢献するとともに、郵便局ネットワークの一層の活用・維持による安定的なサービスの提供等を図るため、グループ各社の経営の基本方針を策定し、その実施に努めてまいります。
ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の株式については、2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとするという郵政民営化法の趣旨に沿って、所要の準備を行ってまいります。
なお、2025年5月15日に公表したとおり、当社は、株式処分信託設定により、保有するゆうちょ銀行株式のうち17,993,700株を処分することといたしました。かかる株式処分により、当社のゆうちょ銀行に対する議決権保有割合は49.9%程度となる予定です(処分前50.40%)。また、当社は、ゆうちょ銀行株式の2分の1以上を処分した旨を総務大臣に届出予定です。これにより、郵政民営化法によりゆうちょ銀行に課せられている新規業務に係る規制が認可制から届出制へと緩和されることになる予定です。
サステナビリティ経営の推進に関する取組みとして、環境問題への取組みについては、2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、輸送・集配車両や郵便局の電力使用からの排出量削減に重点を置き、取り組んでまいります。当社グループにおける人的資本経営の実践に向けては、「異なる互いを認め合う」環境を基盤として整備すること、個々の社員の「能力を高める」こと、そして、個々の社員が「強みを発揮する」ことが必要と考え、その実現に努めてまいります。
加えて、サイバーテロリスクに備えたサイバーセキュリティの強化、自然災害の発生及び感染症の大流行等の危機へ備えた危機管理態勢の整備に取り組みます。
当社は、資本効率の向上、株主還元の強化を目的として、自己株式の取得を実施しており、2023年5月15日及び2023年8月14日付の取締役会決議に基づき、2023年8月15日から2024年3月22日の間、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT‑3)及び立会市場における取引により当社普通株式254,809,200株を取得し、2024年3月27日付の取締役会決議に基づき、2024年4月12日付で保有自己株式のうち254,809,200株を消却いたしました。
また、2024年5月15日付の取締役会決議に基づき、2024年5月16日から2025年3月31日の間、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT‑3)及び立会市場における取引により当社普通株式233,305,400株を取得し、2025年3月28日付の取締役会決議に基づき、2025年4月11日付で保有自己株式のうち233,305,400株を消却いたしました。
その結果、2025年4月11日時点における発行済株式総数は2,972,934,900株となりました。
さらに、2025年5月15日付の取締役会において、2025年8月1日から2026年3月31日までを取得期間とし、当社普通株式250,000,000株、取得価額の総額2,500億円をそれぞれ上限として、株式会社東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT‑3)及び立会市場における取引による当社自己株式の取得について決議いたしました。
なお、当該株式取得の取得開始は、2025年5月15日付の取締役会において決議した資本金3,500,000,000,000円のうち1,750,000,000,000円の減少が、2025年6月25日開催予定の第20回定時株主総会により承認可決され、その効力が発生することを条件としています。
※1 非公開金融情報の不適切利用事案とは、郵便局において、お客さまから事前に同意をいただかないまま非公開金融情報を保険募集や投資信託等の販売を目的とした来局のご案内に不適切に利用した事案のことです。非公開金融情報とは、お客さま対応等の中で知った、お客さまの金融取引や資産に関する、通常、本人しか知りえない情報(口座残高や引落情報、保有ファンドの状況等)のことです。
※2 認可取得前勧誘事案とは、2024年1月に販売を開始した一時払終身保険に関して、販売に係る保険業法上の認可を取得する前にお客さまへ勧誘を行っていた事案のことです。
※3 点呼業務未実施事案とは、近畿支社管内の点呼業務未実施事案の発生を受け、全国の集配郵便局における点呼業務執行状況の調査を行った結果、全国の集配郵便局の約7割で、点呼未実施等の貨物自動車運送事業法に違反する不適切な実態が判明した事案のことです。
(4) 対処すべき課題
① 非公開金融情報の適切な取り扱いの確保に向けた取組等について
郵便局において、お客さまから事前に同意をいただかないまま、お客さまの貯金の非公開金融情報を、保険募集や投資信託等の販売を目的とした来局ご案内に利用した事例が2024年度に確認されたことを受け、発生原因を分析し再発防止策を策定するとともに、関係者の責任を明確化いたしました。当社グループは、総力をあげて再発防止策の実効性を不断に検証しながら改革を継続し、お客さま本位のサービス提供が図られるよう、全力で取り組んでまいります。また、同年度に受領したグループ主要4社に対する金融庁の報告徴求命令並びに当社及び日本郵便に対する総務省の報告徴求命令に基づき、再発防止策及びその実施状況等について定期的に報告を行ってまいります。
② 商品認可前の勧誘行為の再発防止について
2024年1月4日に販売を開始した一時払終身保険に関し、販売に係る保険業法上の認可を取得する前に日本郵便及びかんぽ生命の社員である生命保険募集人が勧誘行為を行った事案を受け、当社、日本郵便及びかんぽ生命は、実態を把握するための調査を実施し、調査結果等を踏まえた再発防止策を策定いたしました。再発防止策に掲げた各種施策等について、進捗管理を着実に実施しながらPDCAを回し、法令違反を再発させない態勢構築とお客さま本位のサービス提供に向けて、当社グループの全役職員が一丸となって取り組んでまいります。
各事業セグメント別の対処すべき課題は、以下のとおりであります。
③ 郵便・物流事業
日本郵便の郵便・物流事業において、郵便物の減少や荷物需要の増加に対応するため、以下の取組を行います。
(a) 荷物分野の営業収益の拡大、強靭な輸配送ネットワークの構築に向けた取組み
差出・受取利便性の向上や商品・サービスの改善等に取り組むほか、営業体制・営業力の強化を図ってまいります。同時に、2024年10月に実施した郵便料金の見直しで増加する収益も活用しながら、賃上げ等の取組みを継続しつつ、利用ニーズの喚起や利便性向上により、郵便物の利用促進に向けて取り組むとともに、強靭な輸配送ネットワークの構築に向けた拠点の整備・機械化等を推進し、業務効率化等を進めてまいります。
なお、過去5事業年度の郵便、ゆうメール、ゆうパック及びゆうパケットの取扱物数の推移は以下のとおりとなります。
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| (単位:百万通・百万個) | |
| 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
郵便 | 15,244 | 14,858 | 14,445 | 13,578 | 12,566 |
ゆうメール | 3,299 | 3,346 | 3,113 | 2,873 | 3,241 |
ゆうパック | 594 | 568 | 554 | 547 | 558 |
ゆうパケット | 497 | 420 | 426 | 463 | 537 |
(b) 「2024年問題」への対応
いわゆる物流の「2024年問題」は、年々深刻化していく構造的な問題であり、日本郵便では、引き続き、「物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画」で掲げた諸事項について、荷主・運送事業者双方の立場から確実に対応してまいります。
(c) 適正な点呼業務の徹底
点呼業務未実施事案について、国土交通省から、貨物自動車運送事業法に基づく特別監査を受け、2025年6月5日、一般貨物自動車運送事業の許可取消処分の聴聞の通知を受領しました。その後、同6月17日に行政処分を受け入れる旨国土交通省に報告しました。有価証券報告書提出日時点において、行政処分執行後は、一般貨物自動車運送事業の許可が取り消されることにより、使用している1t以上の車両の使用ができなくなる見込みとなっております。今後は、他の運送会社へ委託を行うことを基本に、確実な点呼の実施を大前提として、日本郵便が保有する軽四車両等を使用することにより、行政処分執行後においても、郵便物及び荷物(ゆうパックなど)のサービスについては、ご利用いただいているお客さまにご迷惑をおかけすることのないよう、引き続き確実かつ適切に対応してまいります。また、今回の事態に至った責任を重く受け止め、責任の所在及び度合いを勘案して責任を明確化しました。
なお、軽貨物営業所となる郵便局に対する特別監査は、現時点においても継続しており、今後、監査結果を受けて、軽四輪自動車の使用停止処分が下される可能性があります。かかる行政処分を受け入れる場合においても、再発防止策の実行、適正な点呼業務の徹底に取り組んでまいります。
(d) 協力会社の皆さまとのパートナーシップ強化に向けた取組み
集配関係委託契約における更なる価格転嫁・取引適正化に向けて、本社に設置した「パートナーシップ強化推進本部」の下で、価格交渉のプロセスの改善、協力会社の皆さまとのコミュニケーションの深化、違約金の仕組みの運用見直し等に取り組んでまいります。
④ 郵便局窓口事業
日本郵便の郵便局窓口事業において、以下の取組を行います。
(a) お客さまに選んでいただける事業への成長に向けた取組み
郵便局窓口事業については、「お客さまに選んでいただける事業への成長」のため、「収益力の向上」「郵便局の価値・魅力の向上」「サービス品質の向上」を郵便局窓口事業の目指す姿とし、「窓口社員の柔軟配置」「全社員の知識・スキル強化」「お客さまとの良好な信頼関係構築に向けた人材育成」により、窓口の業務運行体制を確保しつつ、人材育成を強化するほか、「価値・魅力向上施策の実施」に取り組み、地域やお客さまに寄り添った郵便局らしい温かみのある商品・サービスを展開し、郵便局の価値・魅力向上を図るとともに、「窓口オペレーション改革」を進めることで、対面サービスとデジタル技術を融合した高品質なサービス提供に取り組んでまいります。
(b) 非公開金融情報の不適切利用事案を再発させないための取組み
非公開金融情報の不適切利用事案については、法令等の趣旨に立ち返ったルールの整備、当社グループの幅広い顧客接点でお客さまの非公開金融情報等の利用に係る同意をいただく取組みの促進と同意を得た非公開金融情報等を活用するシステム環境整備、お客さま本位の活動を実践する人材育成、リスク認識力の強化及びガバナンス強化を内容とする再発防止策を徹底してまいります。
(c) 認可前の勧誘を再発させない態勢の構築
認可取得前勧誘事案に関して、実態を把握するための調査を実施しました。再発防止策として、法令等遵守の徹底及び業務品質の確保に向けた取組みを行うほか、それらの再発防止策の実効性確保のため、モニタリング・フォローアップの強化や2線による1線へのけん制機能の発揮など、リスク認識力の強化に向けた取組みやガバナンス強化に向けた取組みを行ってまいります。
⑤ 国際物流事業
トール社を通じて、倉庫面積の拡大等によるアジアを中心としたロジスティクス事業の成長、新規案件の獲得等を通じた取扱量の増加等によるフォワーディング事業の収益性の改善に取り組むとともに、調達コストやITコストの削減等による全社的なコスト削減にも、引き続き取り組んでまいります。
⑥ 不動産事業
日本郵便及び日本郵政不動産株式会社において、不動産事業が収益の柱の一つとなるよう、引き続き、JPタワー等のオフィス、商業施設をはじめ、住宅、保育所及び高齢者施設の賃貸事業を、住宅については分譲事業も行ってまいります。
具体的には、グループ保有不動産の有効活用や新たな収益機会の拡大の観点から、建築費や収益物件価格が高騰している状況下、適切なタイミングで開発や取得の計画を策定・実行してまいります。
また、稼働中の物件については、収益及び資産価値の維持向上に向けて、共同事業者等との連携や外部委託を適切に活用しながら、良質かつ効率的な運営に取り組んでまいります。
※当連結会計年度より報告セグメントとして「不動産事業」を新設しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」のとおりであります。
⑦ 銀行業
ゆうちょ銀行をとりまく経営環境は、各国中央銀行の金融政策転換、人口動態の変化、生成AIの浸透をはじめとする社会のデジタル化進展等、大きく変化しております。特に、米新政権による関税政策等により、金融市場の混乱や世界的な景気後退リスクへの懸念が高まっています。
中期経営計画(2021年度~2025年度)の最終年度にあたる2025年度は、こうした環境変化に機動的に対応しつつ、「リテールビジネス」、「マーケットビジネス」及び「Σ(シグマ)ビジネス(投資を通じて社会と地域の未来を創る法人ビジネス)」というゆうちょ銀行独自の強みを活かした3つのビジネス戦略の推進及びそれらを支える経営基盤の強化を一層加速させ、企業価値向上を追求するとともに、次期中期経営計画に向けた道筋を描く年度といたします。
(a) リテールビジネス
お客さま本位の営業活動の徹底を前提に、お客さま基盤の維持・深耕を最重要課題と捉え、リアルチャネルとデジタルチャネルの相互補完戦略の加速を通じ、お客さまとの繋がりを長く継続させるための各種取組みを推進します。具体的には、「ゆうちょ通帳アプリ(以下、「通帳アプリ」)」を中核とした次期中期経営計画以降のデジタルサービス展開を見据え、郵便局ネットワークも活用しつつ、通帳アプリの更なる利用拡大を追求します。更に、デジタル技術を活用した業務改革を進め、資産運用商品販売体制や各種事務手続きの一層の高度化を図ることで、利便性を向上しつつ、お客さまの資産形成サポートの推進や、業務量の削減による生産性向上に努めます。
(b) マーケットビジネス
国内金利の上昇トレンドを捉え、預け金等から日本国債への投資シフトを引き続き推進します。また、リスク性資産については、円金利資産の収益見通しやリスクアセットへの影響等に配意した投資を行い、リスク管理を深化しつつ、円金利資産とリスク性資産を組み合わせた最適な運用ポートフォリオを追求します。
(c) Σビジネス
ゆうちょ銀行の子会社のゆうちょキャピタルパートナーズ株式会社に加え、その他の共同事業者と立ち上げる投資ビークルを通じた投資業務に関し、より一層投資の質を重視した取組みを推進するほか、地域特性等を踏まえたソーシング手法の確立や、マーケティング支援業務の改善・見直し等に取り組みます。地域企業の成長支援、地域社会の課題解決を通じて、より一層、地域経済の発展と地方創生の実現に貢献するとともに、将来的にサステナブルな収益基盤の構築を目指してまいります。
(d) 経営基盤の強化
3つのビジネス戦略を推進するため、引き続き経営基盤の強化に努めてまいります。
競争力・価値創造の源泉である人財を最重要資本の1つと捉え、戦略的人財配置やエンゲージメント向上に資する施策等、「成長を促す」、「能力を引き出す」、「多様性を活かす」という3つの柱を軸とした人事戦略を遂行することで、変化を捉え自ら志高く学びながら金融革新に挑戦する人財を育成してまいります。
また、郵便局において発生した、お客さまの事前同意を取得しないまま貯金等における非公開金融情報を用いて保険募集や投資信託・国債の募集を目的とした来局誘致等を行った事案を受けて、ゆうちょ銀行の銀行業務委託先である日本郵便株式会社への管理・監督体制強化を含め、当社グループの総力をあげて、個人情報管理体制の強化を含む再発防止策に取り組むとともに、部内犯罪の防止等、内部管理態勢の更なる強化を図ってまいります。
加えて、お客さまや社員の声を新規サービスの検討や業務改善等に活かすスキームを通じて、お客さま本位の業務運営及び組織風土改革を推進してまいります。
⑧ 生命保険業
かんぽ生命保険は、生命保険会社としての社会的使命に応えるために、以下の取組を実施してまいります。
(a) ライフステージ/世代を超えたつながりによるお客さまの維持・拡大
お客さま本位の業務運営をさらに発展させるため、「保険のプロ」としての使命感のもと、お客さまへの商品提案からアフターフォロー、請求手続き等のあらゆる場面で、お客さまに安心をお届けし続ける活動を一体的に展開してまいります。
まず、お客さまとの長期安定的な関係を築きながら、様々な世代のお客さまの課題を把握し、解決策としての保障をご提案できるよう、教育体制を強化しながら営業社員のスキル向上に取り組むほか、あらゆる世代のお客さまの多様なニーズにお応えすべく、金利上昇等の外部環境の変化を捉えた既存商品の魅力向上と、お客さまのライフサイクル全体で安心を提供できるような商品領域の拡充に取り組んでまいります。
次に、お客さまのご自宅への訪問等による対面のサポートに加え、デジタル技術を活用した非対面のサポートを組み合わせながら、全てのお客さまとの信頼関係を一層構築してまいります。特に、保障の見直しや継続の必要性が高いお客さまには優先的に対面でサポートすることで、お客さまにとって必要となる保障を継続いただきながら、確実に保険金をお支払いしてまいります。
さらに、各種手続きにおけるお客さまの負担軽減や利便性向上を果たすべく、デジタルを活かした手続きを一層拡充し、お客さまサービスのさらなる向上に取り組んでまいります。
これらの取組みに加え、かんぽ生命保険の各拠点の活動全般と成長度合いも定量的に見える化・評価することで、社員と組織双方の成長を一層促進し、お客さまに安心をお届けし続ける活動を一層推進してまいります。
(b) 持続的な「強い会社」へ
引き続き、統合的リスク管理(ERM)※1の枠組みの下、ALM※2運用を基本として運用収益の向上を目指し、市場環境の変化を捉えた追加収益の獲得や、他社との連携等を通じた運用態勢や人材ポートフォリオの高度化に取り組んでまいります。
また、大和証券グループ、KKR & Co.Inc(以下「KKR」といいます。)及びその子会社のGlobal Atlantic Financial Group(以下「Global Atlantic」といいます。)との提携等、国内外の提携関係を発展させるとともに、中長期的な成長に資する新たな領域を広く探索することで、さらなる収益獲得に取り組んでまいります。
加えて、引き続きデジタル技術を活用することで、お客さまサービスを向上させるとともに、生産性向上を実現し、これにより生じた経営資源を強化領域にシフトすることで、ビジネスモデルの変革等のDXを推進していくほか、これまでの企画業務における生成AIの活用に加え、営業社員によるお客さまサポート業務においても活用する等、全社的なAIやデータ活用にも取り組んでまいります。
※1 ERMとは、Enterprise Risk Managementの略語で、会社が直面するリスクに関して、潜在的に重要なリスクを含めて総体的に捉え、会社全体の自己資本などと比較・対照することによって、事業全体として行うリスク管理のことです。
※2 ALMとは、Asset Liability Managementの略語で、資産負債の総合管理のことです。
(c) コーポレートガバナンスの強化
自らの社会的使命を果たす事業活動を通じて社会課題の解決に貢献するサステナビリティ経営に取り組むことで、当社の持続的な成長とSDGsの実現を目指してまいります。こうした目的を果たすためには、健全な経営基盤が欠かせないものと認識しております。特に、コーポレートガバナンスの強化について、非公開金融情報の不適切利用事案及び認可取得前勧誘事案を踏まえ、法令遵守等の課題を克服すべく、再発防止策をグループ一体で徹底し、ガバナンス態勢の強化に取り組んでまいります。
(参考)
過去の新契約、保有契約の件数の推移は下記のようになります。
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| (単位:万件) |
契約の種類 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
新契約(個人保険) | 12 | 17 | 31 | 62 | 79 |
簡易生命保険 | 894 | 806 | 726 | 660 | 602 |
かんぽ生命保険 | 1,589 | 1,474 | 1,372 | 1,309 | 1,278 |
(注) 2007年10月1日の民営化時の簡易生命保険契約は5,517万件でした。
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