川崎重工業
【東証プライム:7012】「輸送用機器」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
[経営の基本方針]
当社グループは、カワサキグループ・ミッションステートメントにおいて、「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する“Global Kawasaki”」をグループミッションとして掲げ、最先端の技術で新たな価値を創造し、顧客や社会の可能性を切り拓く企業グループを目指しています。
また、「選択と集中」「質主量従」「リスクマネジメント」を指針とし、資本コストを上回る利益を安定的に創出するとともに、社会課題に対するソリューションの提供を通じてSDGs達成に貢献すべく、経済的価値・社会的価値の2つの軸で企業価値を高める経営を推進していきます。
[中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題]
「グループビジョン2030」は今年で制定5年目となり、その実現に向けて各種施策を推進しています。既存事業の強化、事業間シナジー促進による将来の柱となる新事業育成、更に選択と集中を行って事業ポートフォリオの変革を実現し、持続的な成長を追求しています。
進捗状況の詳細は、当社Webサイト「グループビジョン2030進捗報告会」をご参照下さい。
https://www.khi.co.jp/groupvision2030/archive.html
《注力するフィールド》
新たな時代の社会課題を見据え、様々なソリューションをタイムリーに提供するために、以下の3つのフィールドに注力しています。地球環境問題や高齢化社会・労働力不足への対応等に加え、昨今では防衛・防災・資源・食料の観点から国家の安全保障に対する関心が高まっており、これらの重要課題に対しても当社のソリューションを最大限に活かす取組を加速しています。
取組の詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 戦略並びに指標及び目標 ① 事業を通じて創出する社会・環境価値~3つの注力フィールド~」をご参照下さい。
「安全安心リモート社会」-安全安心の新しい価値を創出
医療・ヘルスケア、介護、ものづくり、産業インフラなど様々な分野で、当社グループが持つ遠隔操作・情報技術、ロボティクス技術等を用いて、リモート社会の実現によりすべての人々が社会参加できる新しい働き方・暮らし方を提案しています。また防衛・防災分野においても、様々なリモート技術を開発する等、安全かつ安心して暮らせる社会の実現に積極的に取り組んでいます。
「近未来モビリティ」-新しい輸送システムで人とモノの移動を変革
物流量の増加や少子高齢化に伴う労働力不足の中で、新しい輸送・移動手段を提案し、豊かでスマートかつシームレスな移動が可能な社会を創造します。
「エネルギー・環境ソリューション」-クリーンエネルギーの安定供給に向けて
世界ではエネルギー源として、液化天然ガス(LNG)に回帰する動きも見られますが、将来的にはカーボンニュートラルの実現に向けて水素の導入が進むと考えており、またエネルギー安全保障の観点からも、2030年以降の液化水素サプライチェーンの商用化に向けて、日本政府の協力を得ながら全社一丸となって取り組んでいます。
《成長シナリオ》
「グループビジョン2030」の成長シナリオに沿って、初期段階は精密機械・ロボットやパワースポーツ&エンジン等の量産系事業が収益を支えてきました。現在は航空宇宙システムやエネルギーソリューション&マリンの需要回復により、受注系事業が中長期的な稼ぎ頭として軸となり、車両事業も安定して黒字を出せる体質となった結果、昨年度は受注・売上・利益・配当、すべてにおいて過去最高を更新しました。グループビジョン2030の目標として掲げる事業利益率10%超の達成に向け、順調に伸長しています。
そして、新しい社会の創出に向けて、水素事業では政府の支援(Green Innovation基金)による液化水素サプライチェーンプロジェクトを皮切りにマーケットを順調に成長させ、医療・介護・ソーシャルロボット事業、近未来モビリティ等をはじめとする新規事業についてもマーケットの拡大と安定した成長軌道を描くことを目指します。そのためにも政府や自治体、他企業、研究機関との連携を進めるべく、2024年11月に東京-羽田にソーシャルイノベーション共創拠点「CO-CREATION PARK – KAWARUBA」を開設しました。約半年で2,000名超の来場者があり、多様なパートナーとともに、社会課題起点で新たなソリューション開発を進めています。
成長シナリオを支える仕組みとしては、デジタル・トランスフォーメーション(DX)と人財育成を重視しています。DXにおいてはAI活用等を推進し、業務プロセスの見える化・効率化により、新たなソリューションの創出と経営の意思決定のスピードアップ、更には“やりがい”“成長”を実感できる働き方を実現していきます。人財育成においては多様性を尊重し、従業員が個性と能力を発揮する環境整備に取り組み、挑戦し続ける人と組織の実現を目指します。
《コンプライアンス強化に向けて》
昨年、潜水艦修繕事業及び舶用エンジン事業における不正事案が相次いで判明しました。当社グループは、度重なるコンプライアンス違反が判明したことを深刻に受け止め、2024年4月16日に社長を委員長とするコンプライアンス特別推進委員会を立ち上げ、主体的に当社グループの組織風土・ガバナンスにおける課題に向き合い、再発防止策を検討してまいりました。改革の方向性として、「不正ができない仕組みの構築」「不正発見の強化」「組織風土・意識改革」の3つの柱を掲げ、川崎重工グループ一体となって改革に取り組んでいます。
取組の詳細は、第202期事業報告における内部統制システムの運用状況の概要をご参照下さい。
https://www.khi.co.jp/ir/pdf/kaiji_jikou_202.pdf
また、両事案ともに外部有識者からなる特別調査委員会を設置し、コンプライアンス特別推進委員会とも連携しつつ、中立性を担保した上で、事実関係の調査と原因分析、再発防止策の提言を目的とし、類似案件の洗い出し等も含めて、客観的かつ専門的観点から調査を実施しています。
当社グループは、この機会にすべての膿を出し切り、これまでの体制を見直すだけでなく、風土・文化を抜本的に変える覚悟を持ってコンプライアンス・ガバナンス体制を再構築し、再発防止策を徹底していきます。一部の社外取締役をコンプライアンス特別推進委員会のオブザーバーに配置するなどしてその取組を一層強化し、再び皆様からの信頼を得られるよう、全社一丸となって改革に全力で取り組んでまいります。
[経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題]
世界経済は、米国では堅調な雇用・所得環境を背景に底堅く推移しているものの、新たな関税政策による各国の景気減速や経済成長の鈍化への警戒感が強まっています。加えて、長期化する中国経済の停滞や米中関係の緊張といった地政学的リスクの懸念など、先行きは依然として不透明な状況です。
国内においては、好調な雇用・所得環境や設備投資の拡大、インバウンド需要の増加等、内需主導で緩やかな景気回復が見られるものの、米国関税政策及びそれに伴う産業構造の変化や金融資本市場の急激な変動など、先行きの不透明感が高まっています。
このような状況の下、当社グループは収益性の向上に向け、適正な販売価格の実現やコスト競争力の強化、サプライチェーンの多様化に継続的に取り組んでいきます。また、経営資源の投入については、案件の厳選に努めつつも、注力する3つのフィールドについては、スピード感をもって積極的な投資を実行するなど、メリハリのある意思決定を行っていきます。資金面に関しても、前述の収益性向上や投資選別のほか、適正在庫の実現、資産圧縮などの対応策を進めることで、キャッシュ・フロー創出力の強化及び有利子負債の削減に努めていきます。
[経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等]
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を、利益(事業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益)及び税後ROIC※とし、グループ全体として事業利益率を2027年度までに8%、2030年度までに10%超、税後ROICは資本コスト(WACC)+3%以上を目標としています。
これらの経営指標の改善の結果として自己資本利益率(ROE = 親会社の所有者に帰属する当期利益 ÷ 自己資本の期首・期末平均)の向上も図っていきます。
※税後ROIC = (親会社の所有者に帰属する当期利益 + 支払利息 × (1 - 実効税率)) ÷ 投下資本(純有利子負債の期首・期末平均 + 自己資本の期首・期末平均)
[セグメントごとの戦略及び課題]
① 航空宇宙システム事業
・事業拡大に向けた体制整備:旺盛な需要に対応するサプライチェーン及び増産体制の再整備。新たな事業機会獲得に向け業務効率化・生産性の向上を推進。防衛航空機・ヘリコプタの既受注開発案件・量産契約の着実な推進。
・防衛事業に係る活動強化:防衛省が掲げる、防衛力強化に向けた7つの重視分野への取り組み推進。
・市場動向を踏まえた技術戦略の推進:防衛力強化の実現に向けた民生技術の活用を含む技術開発の促進。NEDOグリーンイノベーション基金活用による脱炭素社会に向けた環境技術開発の推進。
② 車両事業
・海外案件の納入スケジュール遵守:ダッカ6号線 2024年度 最終車両引き渡し完了、2025年度 基地設備引き渡し。米国R211 2024年度 最終車両の出車完了(Base契約)、量産車引き渡し開始(Option1契約)、2025年度 最終車両の引き渡し(Base契約)。
・顧客に信頼される品質レベルの達成:仕損じ、手直し費用の削減。国内外拠点でのKPS(Kawasaki Production System)による生産管理の維持。
・部品・サービスの拡販、保守分野の事業拡大:北米向け軌道遠隔監視装置の拡販とサービス提供プラットフォームの構築。国内鉄道事業者向け車両状態監視事業の推進。
③ エネルギーソリューション&マリン事業
・低炭素・脱炭素社会実現に向け貢献する製品の提供:LPG/アンモニア運搬船、高効率ガスタービン/ガスエンジン、ごみ処理施設(省エネ)、舶用ハイブリッド推進システム。
・脱炭素エネルギーへのトランジション製品の展開:液化水素運搬船、水素出荷・受入基地の商用化、舶用水素ボイラ・舶用水素エンジンの開発、低炭素(天然ガス炊き、水素混焼)から脱炭素(水素専焼)に対応できるガスタービン/ガスエンジンを活用した省エネシステムの導入推進、CO2分離回収技術の開発。
④ 精密機械・ロボット事業
油圧事業の発展に向けた施策
・建機向け新製品開発/市場開拓:電動化・自動化に向け、高い制御技術・開発力を活用し市場を開拓。
・アフターセールス事業の強化:過去の販売実績を活かしたアフターセールスの拡大と販売ネットワーク構築・拡大。
・水素関連事業/防衛事業の強化:水素圧縮機、燃料電池システムなどの開発や、当社グループ内向け防衛関連製品の拡充。
ロボット事業の戦略性のある挑戦
・高付加価値領域への集中投資:半導体市場の本格的回復に向けた供給体制整備、及び新分野への事業拡大。
・医療向け事業の強化:「hinotori™」の普及、及び遠隔操作技術等による差別化。
・ブランド力の強化:オープン戦略の推進と協業・共創の拡大、及びソーシャルロボット分野の事業化推進。
⑤ パワースポーツ&エンジン事業
・市場動向に応じた製品の供給:継続的な新機種の投入。機動的な生産・販売計画の変更により製品供給を確保。
・四輪ビジネスの拡大、脱炭素・電動化対応:製品競争力強化に向けた開発投資、外部環境の変化に柔軟に対応するため北米二工場(アメリカ、メキシコ)をフレキシブルに活用。電動・ハイブリッドモデル等あらゆる選択肢を通じてカーボンニュートラル社会の実現に貢献。
・DXを通じた業務改革の推進:デジタル化によるグローバルオペレーションの効率化。デジタル技術活用による開発期間の短縮と効率化。
・キャッシュ・フローの改善:収益力の強化、適正な在庫水準の維持。
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