島津製作所
【東証プライム:7701】「精密機器」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、社是「科学技術で社会に貢献する」、経営理念「『人と地球の健康』への願いを実現する」のもと、永年の事業で培った技術、ノウハウを活かし、複雑化・多様化する社会の課題や要請に応える製品・サービスの提供、それを基にした社会課題解決の仕組み作りを行い、ステークホルダーからの信頼の獲得と、企業価値の向上に努めています。
また、社是・経営理念に基づく事業活動を通してサステナブルな社会を実現するために、「島津グループサステナビリティ憲章」を制定しました。グループ全体で、「地球環境とグローバル社会の持続可能性」、「島津グループの事業活動の持続と成長」、「従業員の健康とエンゲージメントの向上」を目指して、サステナビリティ経営を実践していきます。
これからも、地球・社会・人との調和を図りながら、“事業を通じた社会課題の解決”と“社会の一員としての責任ある活動”の両輪で企業活動を行い、明るい未来を創造します。
(2) 中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき課題
1) 4つの社会価値創生領域における各事業の取り組み
世界のパートナーとの関係を強化し、共に社会課題を解決するイノベーティブカンパニーとして、サステナブルな社会の共創を引き続き目指します。
①ヘルスケア領域
ライフサイエンス分野では製薬、食品市場を中心に、計測機器事業における液体クロマト分析システムと質量分析システムを重点機種と位置付け、お客様の業務の効率化・省力化に向けたAIによる分析プロセスの革新(AX:アナリティカルトランスフォーメーション)の実現を追求します。また、医薬品精製装置への参入などソリューション提供の拡大を進めます。
メドテック分野では、計測機器事業と医用機器事業を中心に据え、臨床検体検査ソリューションの提供・実装強化と、画像診断にAIやIoT技術を活用した「イメージングトランスフォーメーション (IMX)」を引き続き展開し事業拡大を進めます。また、健康長寿の実現、シニアヘルスケアへの貢献に向け、パートナーとの共創によるアルツハイマー型認知症や感染症に関連した研究開発と、当社独自の音声認識機能を搭載する血管撮影システムや高齢者の嚥下(えんげ)検査用X線TV装置のグローバル展開を進めます。
②グリーン領域
カーボンニュートラル社会の実現に向けて、水素エネルギーの社会実装をはじめとする新エネルギー開発、バイオ燃料分析手法の開発や温室効果ガス(GHG)測定分野において、ガスクロマト分析システムなど、計測機器の展開を進めます。また、環境分野では、世界中で規制強化が進む有機フッ素化合物(PFAS)に対し、分析手法の普及に向けた取り組みを強化するとともに、バイオものづくり事業でのソリューション開発に注力します。
③マテリアル領域
計測製品のラインアップ強化、自動化促進とインフォマティクスを用いた複合計測・解析の強化に取り組み、セラミックス複合材料などの革新素材の開発・製造への貢献、サーキュラーエコノミーの実現に向けた計測機器開発を促進します。また、新たに販売を開始した走査電子顕微鏡による事業展開を通じて、ナノ領域の表面観察分野で付加価値の高いソリューションを提供してまいります。
④インダストリー領域
産業機械事業を中心に据え、生成AIの需要拡大など活況が続く半導体市場や、気候変動対策に関わる電気自動車などの産業機械市場で「世界で評価されるソリューションプロバイダー」を目指します。半導体製造に欠かせないターボ分子ポンプの製造・サービス体制を強化するとともに、分析計測装置や太陽光パネル製造装置、ガラスコーティング装置向けに用途を拡大し、新たな価値提供に取り組みます。また、自動車等の電動化で用いられるセラミック製品製造向けに工業炉の拡販を図ります。
航空機器事業においては、安全なモビリティ社会の実現に貢献するとともに、中長期的に成長と収益を確保できる事業体制の確立を目指しています。「選択と集中」および「収益性改革」の基本方針のもと、事業を継続してまいります。
2)リカーリングビジネスの拡大
試薬等の消耗品とサービスの両輪でリカーリングビジネスの拡大に取り組んでいます。フランスの子会社2社を統合して2025年4月1日に設立したShimadzu Chemistry and Diagnostics SAS、島津ダイアグノスティクス株式会社などグループ全体で試薬と消耗品のラインアップ拡充を進め、ビジネスを拡大します。
また、計測機器事業でのマルチベンダーサービスの拡大、および北米医用事業のサービス体制強化を進め、広くお客様に密着したサービスの提供を進めます。
3)新事業の創出と開発力強化
スタートアップや大学などとの共創を目的とした研究公募プログラム「SHIMADZUみらい共創チャレンジ」の活動と、スタートアップへの投資から新規事業の創出を目指すCVC「Shimadzu Future Innovation Fund」の活動を継続します。
また、開発力の強化では、アジャイル開発の適用拡大とグローバル開発拠点を活用したコンカレント(同時並行型)開発の導入、およびAIやDXの活用に向けたデジタル人財の育成に引き続き取り組みます。
4)経営基盤の強化と“顧客中心”志向への体制変革
①北米では昨年度開設したR&Dセンターボストンラボで最先端ニーズを捉え、現地開発によるソリューション提供を拡大します。
②中国では、拡張した蘇州工場で分析計測システムなどを生産し、国産優遇策への対応力を強化します。
③インドでは、分析と医用製品を扱う統合会社を立上げ、顧客中心の販売活動を展開します。また、2027年の稼働予定での工場建設を進めます。
④4つの社会価値創生領域に向けたソリューションの開発・提案力の持続的強化のため、戦略的な成長投資を続けます。併せて、AIを活用した業務効率化を進め、ROICを指標とした資本効率の向上を図ります。
⑤多様な視点を持つグローバルで活躍する人財の育成に向け、次世代リーダー育成プログラムを拡充します。
5)環境経営と健康経営
環境経営では、脱炭素社会の構築やサーキュラーエコノミーへの移行を見据え、事業を通じた環境貢献の観点から、製品設計に遡ったCO2排出量の削減、梱包材の見直し等を進めているほか、企業価値貢献の観点で情報開示を進め、外部評価の向上に取り組んでいます。
健康経営では、自社技術を活用した社員およびその家族の健康増進とともに、労働安全衛生マネジメントシステムの活用を進めます。また、健康経営アライアンスの一員として、当社の技術や知見の社会還元に取り組みます。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
上記の通り事業活動を進めていく一方で、円高および米国の関税政策の影響により、当社をとりまく事業環境には不透明感が増しています。米国における関税の影響については、マクロ経済の減速に伴う需要減少と関税コストの増加を想定しており、つぎに示す2026年3月期の連結業績予想は、この関税政策の影響が年間を通して継続することを前提として策定しています。関税引き上げによる業績への影響は重大なものになると想定していますが、インドなどの成長市場での需要獲得に加え、価格転嫁やサプライチェーンの見直しなどの対応を通じて、影響の軽減に取り組んでまいります。なお、今後の動向も予測困難な状況にあるため、継続して注視していきます。
(単位:百万円)
| 2026年3月期 連結業績予想 | 対前期増減率 |
売上高 | 515,000 | △4.5% |
営業利益 | 58,000 | △19.1% |
経常利益 | 58,000 | △19.5% |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 45,000 | △16.3% |
※上記の業績予想は、2025年3月期決算短信公表時点(2025年5月12日)において入手可能な情報に基づき算出したものであり、実際の業績は、今後様々な要因によって予想値と異なる可能性があります。なお、本連結業績予想は、4月中旬時点での米国関税政策によるマクロ経済への影響と関税によるコスト増を見込んだものです。
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