小田急電鉄
【東証プライム:9007】「陸運業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社は、グループ経営の方向性を明確にするために、当社グループが事業を通じて果たすべき役割・責任や社会に存在する意義を示した「グループ経営理念」を掲げ、この理念を実現しグループ価値の最大化を図ることを経営の基本方針としています。
「グループ経営理念」の内容は以下のとおりです。
<グループ経営理念> |
1 経営理念 小田急グループは、お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献します。 2 行動指針 私たちは、経営理念の実現のため、3つの精神を忘れることなく、お客さまに「上質と感動」を提供します。 (真摯) 私たちは、安全・安心を基本にすべての事業を誠実に推進します。 (進取) 私たちは、前例や慣習にとらわれず、よりよいサービスの追求に挑戦します。 (融和) 私たちは、グループ内に留まらない外部との連携、社会・環境との共生に取り組みます。 |
当社グループでは、「グループ経営理念」を実現するため、経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業に向けて~」を策定し、企業価値・地域価値の向上に努めています。
経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業に向けて~」
① 全体方針
「地域価値創造型企業に向けて」 私たちは、小田急沿線や事業を展開する地域とともに成長するために、 既成概念に捉われず常に挑戦を続けることで、お客さまの体験や環境負荷の低減など 地域に新しい価値を創造していく企業に進化します。 |
グループ経営理念のもと、サステナビリティ経営を根幹に、地域経済圏発想での事業展開および事業ポートフォリオの最適化を図ることで、地域価値創造型企業としての持続的成長と企業価値向上を両立し、経営ビジョンの実現を目指してまいります。
(参考)経営計画体系
② 2030年度に向けた成長ストーリー
新たな連結財務目標を達成するため、成長領域への積極投資、株主還元の強化、人的資本の拡充の3つの柱に特に重点的に取り組むことで、資本コストや株価を意識した経営の実践を加速させてまいります。
③ 企業価値向上に向けた財務方針
エクイティ・スプレッドの拡大に向けたROE向上と株主資本コストのコントロールを課題とし、なかでもROE向上のため、「セグメント別営業利益ROAによる目標管理」「継続的な資産入替え」「株主還元の強化」に注力してまいります。
ア 連結財務目標
重要指標 | 2026年度計画 | 2030年度目標 | |
資本コストや株価 を意識した経営 | ROE※1 | 8.0% 前回目標※2 6.2%(+1.8P) | 10%以上 前回目標※2 7%以上(+3P) |
利益の成長 | 営業利益 | 540億円 前回目標※2 500億円(+40億円) | 800億円 前回目標※2 700億円(+100億円) |
財務健全性の 確保 | 有利子負債/ EBITDA倍率 | 7倍台でコントロール |
※1 親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(有価証券評価差額除く)
※2 2024年5月公表目標
イ 株主還元
2025~2030年度累計で2,000億円の株主還元を実施し、2030年度までに自己資本比率を30%に圧縮してまいります。
基本方針 (2023~2026年度) | 自己資本比率30%の確保を前提に、2023~2026年度の平均で、連結総還元性向40%以上※を目標とした安定的な配当および機動的な自己株式取得を実施 ※ 4ヵ年合計総還元額/4ヵ年合計親会社株主に帰属する当期純利益額≧40% |
配当 | 2024年度:1株当たり年間40円を予定(年間30円から配当予想を修正) 2025年度:1株当たり年間50円を予定 |
自己株式取得 | 経営環境の変化や業績等を総合的に勘案したうえで実施時期を検討 (取得実績)2023年度・2024年度合計:327億円 |
(2) 経営環境及び優先的に対処すべき課題
インバウンド需要の拡大等を事業機会と捉え、重点施策として定めた事業や経営基盤の強化を推進してまいります。各施策の概要は、以下のとおりです。
① 事業強化
ア 観光需要の取り込み
日本一のインバウンド観光ハブ化を目指す新宿と観光地の箱根・湘南を拠点に、沿線全体で国内外の観光客を誘引し、観光拠点での収益拡大や拠点間の移動需要最大化に努めるほか、沿線観光の多拠点化を図ることで、2030年度における観光収益1,200億円、営業利益150億円の達成を目指してまいります。
具体的には、プロモーション強化やデジタル施策連携の実施等を通じて、宿泊・買い物等の需要の取り込み、および箱根・湘南での閑散期における収益の底上げに努めてまいります。加えて、特急の魅力向上等による当社線利用者・顧客単価の増加や、新たな目的地およびコンテンツの育成・増加による当社線への観光客誘引を図ってまいります。
イ ホテル業の拡大
新宿や箱根周辺地域を中心に、既存ホテルのリニューアルや新規ホテルの開発等を進め、旺盛なインバウンド需要を取り込むことで、2030年度における営業利益50億円の達成を目指してまいります。
具体的には、2030年度までに、「旧箱根レイクホテル※」、「箱根ハイランドホテル」、「小田急ホテルセンチュリーサザンタワー」のリニューアルをはじめ、高付加価値ホテルの新規開発やホテルの運営受託を推進するとともに、M&Aの活用を図ってまいります。
※ 旧箱根レイクホテルは、「RETONA HAKONE」としてリニューアル開業予定(2025年12月)です。
ウ 不動産業の強化
従来から取り組む長期保有型の開発・リニューアルや既存物件の収益性向上施策のみならず、短期回収型の投資手法(国内SPC・海外不動産・回転型投資・住宅分譲)を強化し、不動産業の2030年度における営業利益300億円の達成およびROA向上を目指してまいります。
具体的には、新宿駅西口地区開発計画において、新たな体験を実現する商業機能や最新かつハイグレードなオフィス機能、顧客起点のビジネス創発機能の提供等により、新宿エリアの価値向上・収益最大化に取り組むとともに、引き続き海老名駅間地区の開発計画を推進するなど、沿線での不動産開発に努めてまいります。加えて、短期回収型の手法については、外部環境や取り組み実績のほか、リスク分散等を考慮しながら投資を配分し、短期収益の獲得とROA向上を図ってまいります。
エ 交通業の進化
安全・防災対策の強化とサービスの向上や持続可能な運営体制の構築に取り組むほか、観光体験の付加価値向上を図ることで、収益拡大を目指してまいります。
具体的には、当社鉄道事業において、鉄道駅バリアフリー料金制度を活用したホームドア整備や耐震補強工事、大野総合車両所の移転をはじめとした大規模設備更新を実施するほか、労働人口の減少を見据え、ワンマン運転の導入や駅業務の省力化等により、2035年度における要員30%削減(2020年度比)を図ってまいります。加えて、これらの取り組みを着実に推進するため、適切な時期での運賃改定を目指してまいります。また、大涌谷駅における新展望エリア「ちきゅうの谷」のオープン等を通じた箱根の各施設の魅力向上を図るとともに、新型特急ロマンスカーの導入に向けた検討を進めてまいります。
オ ストア・小売業の強化/デジタルによる事業創造
積極的な新規出店による事業規模の拡大を図るとともに、店舗運営力の強化やDX施策の実施等を通じた生産性向上に取り組むことで、2030年度におけるストア業の営業利益率3%超を目指してまいります。また、ソリューション開発・提供を強みとしたデジタルによる新規事業の創造に努めてまいります。
具体的には、ストア・小売業において、既存店舗の改装による少人数運営体制の構築および売場面積の最大化、ならびにセルフレジやAIを活用した提案発注システムによる運営効率化等に努めるとともに、MD戦略やオペレーション改革等を実行してまいります。また、デジタル領域では、沿線起点で新規事業を検討するほか、「WOOMS」をはじめとした新規事業の早期黒字化を図ってまいります。
② 経営基盤の強化
| 概要と取り組みの例 |
人的資本の拡充 | 構造改革の推進や人財確保をはじめとした重点課題を踏まえた人的資本の投下により、従業員エンゲージメントと労働生産性の向上を図ることで、事業成長を目指してまいります。 ●私鉄業界トップを目指した労働生産性の向上および人財投資の推進 ●エンゲージメントサーベイを活用した福利厚生施策等の実施 ●不動産業等の成長領域における有資格者の育成や専門人財・即戦力の採用 ●経営管理能力や専門スキルの獲得を可能とするモデルキャリアパスの策定・運用 |
環境 | 再エネ活用、バスのEV化等による脱炭素化およびTNFD提言に基づく情報開示を推進してまいります。 ●EVバス(電動バス)を2030年度までに約500台導入※ ※ 神奈川中央交通㈱での導入台数を含みます。 ●不動産(新規・既存物件)の環境性能評価の取得推進 |
DX | 情報システム環境の最適化、情報セキュリティの確保および人財育成に向けた各種施策を推進してまいります。 ●クラウド環境の活用推進による最新技術への対応力強化 ●DX施策が企画・実行可能な高度スキルを有する人財の育成(2026年度末までに約520名育成) |
ガバナンス | 人権尊重への取り組み、リスクマネジメント方針に基づくコンプライアンス意識の醸成および取締役会の監督機能強化を通じてガバナンスの向上を目指してまいります。 ●サステナビリティアンケートの実施を通じた取引先との連携拡充 ●外部機関による取締役会の評価を活用した実効性向上 |
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