大気社
【東証プライム:1979】「建設業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業理念(社是)「顧客第一」と社名「大気社」が示す「エネルギー・空気・水」の環境対応技術を核として、グローバルに事業領域を拡大し、安定的かつ持続的な成長を目指します。そして全てのステークホルダーにとって魅力ある会社づくりをすすめ、社会に貢献してまいります。
(2) 長期ビジョン
当社グループは、「エネルギー・空気・水の創造的なエンジニアリングにより、持続可能な社会へ貢献する」、「多様な人材・知見を融合し、一人一人がお互いを尊重し合うグローバル企業となる」ことを長期ビジョンとして掲げております。これらの長期ビジョンの実現により、当社グループの経済的価値と社会的価値の長期的・持続的な増大を目指してまいります。
① エネルギー・空気・水の創造的なエンジニアリングにより、持続可能な社会へ貢献する
Innovative Engineering for a Sustainable Society - with energy, air and water -
社会的課題の解決へのチャレンジを通じて、エネルギー・空気・水に関わる、ハード面の技術革新、ソフト面の経験知の蓄積、新たな領域への知的探索により、総合エンジニアリング力の強化を図ります。それが新規事業・新規顧客の開拓や既存顧客への「専門性の高い顧客ニーズへの処方箋」の提供に繋がり、当社の差別化戦略となると考えております。そして差別化によって、企業成長を実現すると同時に、社会的課題の解決、すなわち持続的な社会への貢献を目指します。その1つとして、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでまいります。
② 多様な人材・知見を融合し、一人一人がお互いを尊重し合うグローバル企業となる
Diversity, Equity & Inclusion as a Global Company
当社にもともとあった多様性を受容する企業風土をベースに、社員一人一人の価値観を大切にし、より各人が能力を発揮でき、相乗効果を生む仕組みづくりを進め、世界で働く多様な視点や知見を持った人材が交わる真のグローバル企業として、国を問わず活躍できる企業となることを目指します。さらに当社においては、技術開発を含む事業活動において社内外の多様な人材・技術を結合・融合させて新たな価値を生み出すこともインクルージョンの1つと捉え、2つの意味でインクルーシブな企業を目指します。
(3) 10年プラン2035(2026年3月期-2035年3月期)
当社グループは、2025年5月15日に開示しました10年プランにおいて、2035年のありたい姿として、「Be Engineering for a Sustainable Society」(「持続可能な社会の構築」に貢献するグローバルエンジニアリング企業)を掲げております。広範な産業領域での生産革新の進展と脱炭素などのサステナビリティが問われる中で、さまざまな工学分野の要素技術の組み合わせで、最適なシステムを構築することで、社会課題を解決することが当社グループの使命と考えております。2035年のありたい姿の実現に向けて、「Innovative Engineering」、「Global Inclusion」の2つの指針を掲げました。また、それら2つの指針の下に当社にとっての「8つの戦略的焦点」を定めました。
① 2つの指針
(ア) 「Innovative Engineering」
「さまざまな工学分野の要素技術」を複合化することで求められる機能を発揮するシステム・仕組みを構築し、スマートでカーボンニュートラルな産業発展に貢献する企業を目指します。
・産業領域への注力
エレクトロニクス、自動車、医薬品、データセンターなどの先端産業領域に対するエンジニアリングを強化し、大気社の「原点」である独自性を発揮します。
・「Design, Build & Care」の追求
デザインの提案から施工、アフターケアまで一貫したサービスを提供することで、高付加価値を創造するエンジニアリングを目指します。
・GXとDXの最適化
カーボンニュートラルとデジタル化に挑む企業の生産環境の脱炭素化やスマート化を推進し、最先端技術を駆使したソリューションを提供します。
(イ) 「Global Inclusion」
地球規模(グローバル)の環境・社会課題の解決をめざして世界各地(ローカル)に根差したビジネスを展開し、世界各地の産業・社会・人々と共に繁栄できる企業を目指します。
・グローバルネットワーク
50年をかけて構築した20カ国・30拠点に及ぶグローバルネットワークを活用し、国内外の産業界との信頼関係を強化します。
・グローバル研究開発体制
世界各地域の産業界のニーズに応え、課題を解決するエンジニアリングとバリエーションのある高度技術を提供するため、5つのグローバル研究開発拠点を設置し技術革新に挑みます。
・グローバル&ローカルコミットメント
世界各地の市場ニーズを熟知した人材による事業展開を通じ、地球規模の環境・社会課題の解決に貢献します。
② 8つの戦略的焦点
(ア) 「成長産業」への積極展開
半導体・電子部品、モビリティ、バッテリー、バイオ、医薬品、データセンターなどの成長産業市場に注力し、技術革新と市場ニーズに応えることで事業拡大を図ります。これにより、持続可能な社会を支えるエンジニアリングサービスを提供します。
(イ) グローバルな「地域戦略」
北米、インド、欧州、ASEANなどの海外市場において、求められる技術と製品を提供し、地域特性に合わせた戦略を展開することでグローバルな競争力を強化します。
(ウ) 「非日系企業」の開拓
当社グループの「技術ケイパビリティ」の「見える化」、独自の技術・ノウハウの「標準化」を通してグローバルに成長を遂げる非日系企業の開拓を進めます。それにより日系企業中心の顧客ポートフォリオの変革を目指します。
(エ) 「知的資本」の増強
産業・社会のCO2削減に貢献する新技術を駆使した新しい事業の開発による「GXエンジニアリング技術」の高度化と、自動車向け塗装システム事業で培った先進的なファクトリーオートメーション技術による「DX・オートメーション技術」の高度化を通して、広範な産業領域における「グリーン化」と「スマート化」に貢献します。
(オ) 「人的資本」の増強
「急増するビジネス機会」への対応力を強化するため、「人的資本の拡充(数的・質的)」と「ビジネスプロセスの合理・効率化」を図ります。
(カ) 「事業推進・モニタリング体制」の強化
成長戦略会議やデジタルイノベーション委員会の新設、デジタル戦略委員会の機能強化、ROIC経営のグループ全体への浸透等により、事業推進とモニタリング体制を強化します。
(キ) 「グループグローバル経営基盤」の強化
「グローバル共通システム基盤」の導入や、「ITガバナンス体制」の強化、「アセアン地域管理部」の新設などの取り組みにより、グローバルにガバナンスの強化を図ります。
(ク) DX戦略
データ分析とシミュレーションを活用した新しい価値の提供、海外拠点間の連携・共創による活性化、業務プロセス改善による業務効率化と高収益化を推進します。
(4) 目標とする経営指標
10年プラン2035及び中期経営計画の財務・非財務目標は、以下のとおりであります。
項目 | 中期経営計画 (2028年3月期) | 中期経営計画 (2031年3月期) | 中期経営計画 (2035年3月期) |
受注工事高 | 2,960億円 | ― | ― |
完成工事高 | 3,365億円 | 4,000億円 | 5,000億円超 |
経常利益 | 227億円 | ― | ― |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 158億円 | ― | ― |
自己資本利益率(ROE) | 10.3% | 11.0% | 12.0%以上 |
自己資本比率 | 40%以上 | ― | ― |
配当政策(DOE) | 4.0% | 4.5% | 5.0%以上 |
自己株式取得 | 50億円 | ― | ― |
政策保有株式の対純資産比率 | 15%以下 | ― | ― |
CO2排出量(スコープ1・2)(2022年度比) | 26%削減 | 42%削減 | 53%削減 |
CO2排出量(スコープ3)(2022年度比) | 15%削減 | 25%削減 | 35%削減 |
従業員数 | ― | ― | 7,200名 |
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、長期ビジョン・2035年のありたい姿の実現に向け、2026年3月期から始まる中期経営計画を「変革に向けた再構築」の3年間と位置づけ、財務戦略の実行、成長戦略の実行、成長戦略を支える制度・体制の整備を経営課題と定めております。
① 財務戦略の実行
最適な資本バランスを考慮しつつ、政策保有株式の売却、投資前営業キャッシュフロー、分配可能資金、借入金による資金を活用し、将来のキャッシュ創出力を強化するための成長投資、基盤インフラ投資、また、株主還元として配当、自己株式取得を着実に実施してまいります。
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| (単位:億円) |
区分 | 項目 | 金額 | ||
キャッシュ イン | 政策保有株式の売却 | 50 | ||
基礎キャッシュフロー(投資前営業キャッシュフロー) | 515 | |||
分配可能資金(現預金)または借入金の活用 | 165 | |||
キャッシュイン 合計 | 730 | |||
キャッシュ アウト | 成長投資 | 事業成長投資(R&D、新規事業関連投資等) | 65 | |
キャピタルアロケーション(M&A等) ※ | 220 | |||
デジタル成長投資 | 70 | |||
成長のための人的投資 | 25 | |||
成長投資 合計 | 380 | |||
基盤インフラ投資 | 35 | |||
配当 | 165 | |||
自社株買い | 150 | |||
キャッシュアウト 合計 | 730 |
※キャピタルアロケーションの地域別内訳
日本 | 70億円 |
北米 | 70億円 |
インド | 50億円 |
欧州 | 20億円 |
ASEAN | 10億円 |
合計 | 220億円 |
② 成長戦略の実行
(ア) 環境システム事業
市場戦略としては、半導体・電子部品市場におけるプレゼンスの維持と向上を目指しています。半導体分野では、九州や東アジアでのプロジェクト体制強化、精密温調機器ソリューションの提供を進めます。電子部品分野では、水再利用事業への参入、エネルギーマネジメント事業の強化、海外電気事業の強化を図ります。それらを支える取り組みとしては、日本では人的リソースの増強と最適化、生産性向上、協力会社との関係強化を推進し、ASEANでは組織体制の強化としてシンガポールに統括部を設置し、情報共有や人的リソースの強化、技術イノベーション拠点の設立を進めます。さらに、カーボンニュートラルに向けたGXエンジニアリング技術開発を推進し、エネルギーソリューションの高度化、資源循環対応の強化、環境規制対応の強化を図ります。
(イ) 塗装システム事業
四輪および非四輪市場におけるプレゼンス維持・向上を目指しています。四輪市場では、グリーンファクトリー化によるドライ加飾技術の実用化、四輪車OEMへの積極展開、スマートファクトリー化によるオートメーション技術の高度化、欧州顧客ポートフォリオの拡大を推進します。非四輪市場では、四輪市場で磨いてきた塗装技術、カーボンニュートラル技術の他産業への展開として、環境システム事業との営業シナジーで産業空調領域のスマート化に貢献していきます。多品種少量生産のスマートファクトリー化、ドライ加飾適応市場の探索、デジタルツイン技術によるコンサルティングからアフターメンテナンスまでの一貫したサービス提供、GHG排出量の削減提案による工場運営コンサルティングの実現を図ります。中でもバッテリー産業においては、環境システム事業と塗装システム事業の技術シナジーを活用し、増加するバッテリー工場建設需要に応える新しい製造ライン構築方法を提案し、新たな価値を創造します。
(ウ) 新規事業
事業開発本部のもと、調査~研究開発~営業~事業開発まで一貫して担う切れ目のない体制を確立し、中長期的な事業化実現に向け、各プロセスの連動を強化してまいります。事業開発基盤の強化を図るとともに、社内外ネットワークによる多様な技術の融合を通して、技術、産業分野、地域の3つの側面から「未知・未開拓領域」の探索を進めます。具体的には、熱エネルギー・排気処理、サーキュラーエコノミー(循環経済)への貢献、CO2回収などの環境・社会課題を解決する「新しい事業」を推進します。
③ 成長戦略を支える制度・体制の整備
・「事業推進・モニタリング体制」の整備
成長戦略会議やデジタルイノベーション委員会の新設により経営資源配分戦略とデジタル戦略の監督・執行を強化するとともに、デジタル戦略委員会に①全社BIM戦略、②グローバルコミュニケーション、③ITガバナンス・情報セキュリティ、④AI積極的活用、⑤電子購買の「5つの専門部会」を設け、デジタル戦略を推進してまいります。
・グローバルガバナンスの強化
海外関係会社のナショナルスタッフのトップ(CEO)をグループ経営に参画させる「グループ執行役員制度」、成長投資などの投資インセンティブを高め長期的な投資を継続推進するための「新管理会計制度」、「グローバル共通システム基盤」の導入などによりグローバルガバナンスの強化を図ります。
・グローバル人材ポートフォリオマネジメントの構築
グローバル人材ポートフォリオマネジメントの構築に向け、まずASEAN地域から海外拠点の人材データベースを構築・運用します。技術カルテによる可視化とマネジメントを実現し、効率的な運用を目指します。新卒およびキャリア採用では、奨学金制度や大学連携、スカウティングを活用し、専門人材を獲得します。さらに、海外向け人材育成体制の強化、魅力ある評価・報酬制度の整備、ロイヤリティ・エンゲージメント向上のための施策を推進し、グローバルな人材基盤を強化します。
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