大日精化工業
【東証プライム:4116】「化学」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)企業理念、行動指針、必達
当社グループでは、創業者である高橋 義博が1968年に制定した社是<必達>を経営方針の中心に据えて経営に取り組んで参りました。職場の目に付くところに掲示し、社是<必達>に込められた精神、考え方を常に確認すると同時に、従業員への浸透を図ることを行ってきました。
社是<必達>の精神は、現在においても何らその価値を失っていないものと考えますが、既存の仕事、製品を軸に、役職員個々人の心構えや行動に重点を置いた内容としているため、近年の社会環境、経済環境が変化していく中で、社内外の人との関連性、新しい技術革新、製品開発への一層の目配り、社会の中における当社との連環という視点で、不十分さを感じるような状況になってきました。
そのため、2015年12月開催の当社取締役会において、社是<必達>の考え方に加える形で、新たに<企業理念>、<行動指針>を規定し、経営方針を一層充実したものといたしました。
これは、すべての経済原則や経営理論は「人」の行動原理に基づくものであるとの理解に立ち、まずは社内外を問わず全ての「人」に興味を持つべきであるとし、技術革新や商品開発など新しいことへの取り組みが、人や企業の活性化につながるという点を改めて確認し、一方、未来に目を向けると、人も企業も他者との連環(関連)の中で生き抜いていかざるをえないことを再認識した上で、社会に必要とされ、社会の発展に資する姿勢を打ち出していくべきとしたものであります。比較的平易な表現とすることで、若手従業員から経営トップに至るまで、<必達>と合わせて、浸透を図ることを企図したものであります。
これらを踏まえ、当社グループは以下の<企業理念>、<行動指針>、<必達>の社是の下、事業活動を行うに当たって人財の付加価値を一層高めることに努め、全てのステークホルダーを尊重し連携を図りながら、地球環境保全などサステナブル社会に対する企業責任を積極的に果たしてまいります。
<企業理念>
・人に興味を持とう
・新しいことに興味を持とう
・未来に興味を持とう
<行動指針>
人間は面白い。
その面白い人間が作っているのが企業であり、また顧客である。
全ての経済原則、経営理論は、人の行動原理に基本がある。
人に興味を持とう。
新しいことはワクワクする。
技術革新や商品開発は顧客や市場を開拓すると同時に、人間も活性化する。
新しいことに興味を持とう。
未来を考えることは楽しい。
未来は子供たちのものだ。
未来を考えれば、人も企業も自分だけでは生きて行けないことが分かる。
顧客の発展が無ければ、当社は富んでも長続きしない。
更に、社会に生かされなければ、人も企業も存続し得ない。
未来に興味を持とう。
一方、当社には1968年に制定した、社是「必達」が存在します。上記の企業理念と共に、歴史ある社是「必達」を、誇りを持って遵守しています。
<必達>
私たちはカラーエイジを担う大日精化の社員として<必達>の社是のもとに誇りを持って仕事をすすめよう
1.仕事は必ず目標を立てこれを必達しよう
1.正しい製品知識を身につけ製品普及のチャンスを積極的に求めよう
1.仕事を通じ製品を通じて会社の信用を更に高めよう
1.社会人として常に教養を高め反省を深める機会を持とう
1.仕事を通じて社会に貢献し大日精化を最高の企業体としよう
(2)経営理念
創業者 高橋 義博の「自分の生活が好きな色彩によって包まれたいと思うのが私たちの念願」との遺志を引き継ぎ、世界中の「もっと便利に、もっと安全に、もっと自由に彩りたい」という願いをかなえることを使命として、当社グループは企業理念や社是<必達>のもとに、企業としての持続的成長と価値向上を目指した「CSR・ESG基本方針」を、そしてこれを補完するために近年の社会的課題である地球環境、ガバナンス、人権尊重、情報管理、品質管理、安全衛生、人財育成、健康経営などに関する各種方針を制定し、役職員がこれらを徹底することで、全てのステークホルダーの課題に寄り添い、彩りと特性を持った素材をさまざまな分野に提供し、実現しております。
また、2023年10月には社内公募により、新ブランドメッセージ「彩りの、その先へ(今日の未知は未来への道)」を決定し、コア技術である①有機無機合成・顔料処理技術、②分散加工技術、③樹脂合成技術を更に深化させ、「色彩のその先の可能性」を追求して「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニー」を目指しております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2024年6月に公表した2025年3月期を初年度とする3か年中期経営計画「明日への変革 2027」(以下、「本中期経営計画」といいます。)において、前中期経営計画を引き継ぎ、ROE(自己資本利益率)9%、ROA(総資産経常利益率)5%とすることを長期の経営目標として、またその過程として本中期経営計画の最終年度である2027年3月期の目標として、ROE4.6%、ROA4.3%を掲げておりますが、初年度が経過した2025年3月期では、ROE8.4%、ROA4.0%の結果となりました。
これは、埼玉県川口市に所有していた当社旧川口製造事業所跡地の売却に伴う固定資産売却益として約77億円を特別利益に計上したことが主要因ですが、業績面において、継続的な原材料価格の上昇はあるものの、コロナ禍における巣ごもり需要後の長期にわたるサプライチェーン上の在庫調整がようやく終了したことにより、当社を取り巻く事業環境が好転してきていることも要因の一つであります。
また2025年5月には、本中期経営計画の最終年度である2027年3月期の目標ROEを5%以上とすることを公表しており、引き続き本中期経営計画の各施策を進めて参ります。
(4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等
当社グループの置かれている経営環境については、以下のとおりと認識しております。
①お客様の国内外の事業展開に寄り添い、収益性、効率性をご提案するために、当社では国内外の拠点の強みを活かし、国内、海外の一方に偏することなくバランスのよい業務展開をするべきであることが重要な課題であると認識しております。
②当社グループの持続的な成長のためには、ESGへの取組みがあらゆる事業活動の基本理念であり、E(環境配慮)、S(社会貢献)の実現のための研究・開発が果たす役割が、特に重要であると認識しております。このため社会全体の持続性、安全性、収益性、効率性、採算性などの側面から十分に検証の上で、前述の「(2)経営理念」に記載の「3つのコア技術」を更に深化させること、新たな技術を取り入れることに、人財と設備、資金を投入していく必要があるものと認識しております。
③ステークホルダーの皆様から信頼され常に選ばれる企業であり続けるためには、上記②で述べたように、長期的・持続的な成長とともに、製品や事業活動を通して地球規模の環境や社会問題へ取り組む企業姿勢と、意思決定の透明性、公正性を確保できるガバナンス体制の下で、従業員一人ひとりの思いが企業風土として醸成されることが企業価値の向上においても大きな影響を与えるものと再認識した上で、全社を挙げてE(環境配慮)、S(社会貢献)、G(企業統治)の側面から能動的に活動を促進することが必要と理解しております。
また、2025年6月27日に開催いたしました第122期定時株主総会において、株主の皆様のご承認を得て、「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」へ移行しております。これは、委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、取締役の業務執行の適法性、妥当性の監査・監督を担うことでより透明性の高い経営を実現し、国内外のステークホルダーの期待により的確に応えうる体制の構築を目指したものであります。
④今後さらに、デジタル技術及びデータ分析の活用が当社グループの競争力の源泉のひとつとして重要性を増し、経営目標を達成するための重要な手段になると認識しております。当社は基幹システムを2018年10月に刷新し、さらなる活用のための周辺システムの整備も着々と進めてきておりますが、より高度化していく外部環境からの要請事項に対し、これまで以上に、適時かつ的確に対応していくことが必要であると認識しております。また、データ駆動型ビジネスへ転換し、効率的で確実性の高い戦略、独創性のある製品開発を強力に推進することが不可欠であり、そのためにも有効なデータ、優秀な人財と、柔軟で素早い意思決定が重要であると認識しており、これらへの取り組みを加速させるため、2024年11月にはグループウエアの刷新を行うことで、AIを日々の業務において活用できるようにしております。社内情報の共有化や組織を超えた連携など、DXを支える基盤になることを確信しております。
⑤当社グループの掲げる長期目標の達成には、人的資本及び知的財産への投資と活用によるイノベーションの創出が不可欠であると認識し、企業にとって財産である「人財」の育成と活気溢れる企業風土の醸成は重要な経営課題のひとつと考え、従業員のモチベーションとエンゲージメント向上を目指したHR戦略を推し進めます。また別途定める「人財育成方針」「社内環境整備方針」に沿って、企業と人財が互いに高め合っていくビジョンを共有し、持続可能な成長に向けて地道にかつ着実に、相互に磨き上げていくことにより、当社グループの成長と人財の成長との間に好循環を生み出すことができるものと確信しております。本件については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」「(3)人的資本投資・人財育成及び人財の多様性の活用」にて詳細を記載しております。
これらを踏まえ、昨年公表しております本中期経営計画を引き続き重点的に進めております。
ア、技術主導による競争優位性の確保
当社グループでは、保有する技術を、技術マネジメント手法を用いて再評価し、社会的なニーズ(ESG)への貢献を最優先課題として、オープンイノベーション、セグメント間のシナジー、知財戦略などを組み合わせ、3つのコア技術(1 有機無機合成・顔料処理技術、2 分散加工技術、3 樹脂合成技術)を深化させた技術開発に取り組んでおります。
本中期経営計画においても、これらコア技術は重要な基盤として、市場規模・収益性・成長性を評価し、新規発展分野として①IT・エレクトロニクス 機能性材料、②ライフサイエンス・パーソナルケアの2つを、継続発展分野において環境配慮型製品へのより一層のシフトをテーマとする③モビリティ、④環境配慮型パッケージングを開発の中心に据え、人財と設備と資金とを積極的に投入することを行い、技術主導による競争優位の確保を目的とした体制の構築を進めております。具体的には、2025年2月14日に開催した当社取締役会において、2025年4月1日より保有技術ごとの縦割り体制であった技術機構組織から、開発ステージごとの組織体制に刷新することを決議し、実行しております。併せて、お客様と対面で開発を進めている事業機構の技術部門との融合と、オープンイノベーションなどから技術開発・製品開発力を強化することで、技術主導で事業創出できる体制を作ってまいります。これらの取り組みにより、10年後のありたい姿である「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニー」を目指し、製品の差別化、品質向上により社会貢献度を高め、同時に収益性の確保を図ることとしております。
本中期経営計画では、技術主導による新規開発製品の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比26億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。初年度を終了した2025年3月末時点では、個々の開発テーマの進捗は概ね順調に進んでおり、売上高は7億円の増加となりました。新規開発製品が売上に寄与するまでには一定程度の時間が必要となることによりますが、引き続き、新規開発製品の早期売上寄与を目指してまいります。
本中期経営計画の初年度を終了した2025年3月末時点における各セグメント毎の状況は、以下のとおりと認識しております。
①IT・エレクトロニクス 機能性材料
二次電池用部材、導電性部材、熱マネジメント部材、機能性ポリマー、高付加価値顔料・分散体などにおいて、電池部材や半導体周辺部材、精密電子機器部材などで多数の新規案件が獲得できました。新たに複数の大学やメーカーとオープンイノベーションを開始することで、新たな技術シーズ創出を進めるとともに、既にある技術シーズを積極的に発信し、社会ニーズに対応すべく応用開発を進め、遅延なく生産設備も導入し、売上高への早期寄与を図ってまいります。
②ライフサイエンス・パーソナルケア
天然物由来化粧品原料においては、大学発の技術を導入し、キノコ石突などのキノコ廃材や端材を原料とした菌糸パルプ分散液の開発に取り組みました。アップサイクル素材の化粧品原料として製品化を進めております。
生分解性微粒子においては、量産化ラインの検討を開始し、さらなる高機能製品の開発も着実に進めてまいります。
③モビリティ
軽量・高強度樹脂コンパウンドにおいては、リサイクル素材の使いこなしに加え、天然物フィラーの微分散技術を向上させました。今後は積極的に市場開拓を進めてまいります。ウレタン ・アクリル・シリコーンポリマーでは海外の厳しい法規制に対応する環境配慮を更に強化した製品設計に目途がたちました。今後は海外での量産体制構築も見据え、拡販に繋げてまいります。加飾フィルムでは、高分子合成技術と分散加工技術を駆使し、新たな提案ができるような開発を進めてまいります。
④環境配慮型パッケージング
水性フレキソインキでは完全水性品の特徴を活かし、海外の市場ニーズにも対応しつつ、新たに水性フレキソラミネート剤の開発に注力しています。今後は市場ニーズを探りつつ、開発、販売の鋭意強化に努めてまいります。ガスバリアコート材・環境配慮型接着剤では、ユーザー評価を進めながらキーマテリアルのパイロットプラント導入に着手しました。来期中に稼働し、市場への本格投入に繋げていきます。また、消耗品パッケージングではない高耐久インキの開発にも着手し着実な一歩を踏み出すことができました。
イ、事業基盤の強化のための海外事業の拡大
当社グループの収益、成長の源泉は、国内・海外双方に存在し、GDP高伸長国での事業展開などバランスよく事業育成をしていく必要があるとの認識の基に事業を展開してまいりました。本中期経営計画では、海外事業の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比36億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。初年度を終了した2025年3月末時点では、売上高は20億円の増加(為替影響除く)となりました。中国では家電やOA機器、輸送業界向けを中心に生産数量の低調が続きましたが、中国以外では、市況の回復や価格修正の効果により好調に推移しました。引き続き、「地産地消」の推進と海外拠点の拡充及び新規ビジネスの創出を軸に、積極的な業務の展開に注力してまいります。
本中期経営計画の初年度を終了した2025年3月末時点における状況は、以下のとおりと認識しております。
(ア) カラー&ファンクショナル プロダクト
高機能着色剤、機能製品の拡販に注力いたしましたが、中国では家電OA機器向けのコンパウンド・着色剤が低調に推移しました。また、情報電子分野のIJ分散液・顔料も欧州向けの輸出が減少しました。一方、タイ・ベトナムについてはEV化/電装部品用樹脂コンパウンドなどが順調に拡大、タイでは増設設備の稼働が販売に寄与しており、更なるラインの増設を進めています。今後は、情報電子分野で欧州を中心に新規顧客の開拓を行うと同時に、インド・東南アジアを中心として電線用などの高機能着色剤の拡販を目指します。
(イ) ポリマー&コーティング マテリアル
北米でサステナビリティ貢献製品の水性表面処理剤の展開を図り、販売を拡大させることができました。今後も地産地消をより一層推進するため、北米企業向けや日系車両メーカーの海外拠点向けに国内生産していた水性表面処理剤の米国拠点への生産移管を引き続き進めて参ります。
また、中国ではスポーツアパレル向けの透湿ウレタン樹脂が昨年度に続き好調に推移しました。今後は、欧州の業界自主規制によって透湿ウレタン樹脂は減少する見通しも、水性表面処理剤の伸長を見込んでいます。インドにおいても接着剤事業の進展を図ることができました。
(ウ) グラフィック&プリンティング マテリアル
インドネシアにおいては、グラビアインキの拡販と適切な価格修正により販売計画を達成しており、旺盛な現地の需要に対応するために増能力投資を計画しています。一方、価格競争も激化しており、高品質製品を維持しながら事業拡大に向けた取り組みを推進してまいります。
ウ、サステナブル社会の実現に向けたESG重視の経営推進
当社グループでは、サステナブルな社会を実現するために、ESG経営を本中期経営計画の戦略のひとつに掲げ、お客様とのあらたな価値の共創を目指して原材料調達段階から当社製品を使用した製品が廃棄されるまでを含めたライフサイクル全体において、「(ア)サステナビリティ貢献製品開発・拡販」、「(イ)気候変動への取り組み」、「(ウ)資源循環促進」、「(エ)生物多様性への取り組み」、「(オ)社会貢献の一層の促進」、「(カ)コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組み」を推進しています。
同時にこれら重要な経営課題における様々な外部要因、内部要因の変化に対して、リスクと機会に効率よく対処できるように統合型リスクマネジメント(ERM)を活用しています。
本中期経営計画では、「エ.DX推進」と「オ.HR戦略」を戦略に追加し、10年後のありたい姿である「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニーになる」の実現に向けて、ステークホルダーの皆様と価値共創に努めてまいります。
(ア) サステナビリティ貢献製品開発・拡販
当社グループでは、環境負荷低減に貢献できる環境配慮型製品に加え、人々の暮らしを豊かにする製品を含めたサステナビリティ貢献製品の拡販により、サステナブル社会の実現を推進しております。
本中期経営計画では、サステナビリティ貢献製品の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比30億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。
初年度を終了した2025年3月末時点では、この目標を達成するために、顧客ニーズ、市場ニーズを的確に技術開発テーマにつなげスピーディに事業化していく事を目指した社内体制の整備を行いましたが、サステナビリティ貢献製品の多くを占める情報電子材関連、自動車関連向けの製品群が、中国をはじめとする主力市場の景気後退の影響を受け、サステナビリティ貢献製品の売上高は、2024年3月期比で5億円増に留まりました。
(イ) 気候変動への取り組み
当社グループでは、気候変動は地球規模で取組むべき喫緊の課題と捉えており、リスクと機会の両面から積極的に課題解決に取り組んでおります。日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルに貢献するために、温室効果ガスの主たる要因であるエネルギー消費に伴い発生する当社グループ全体のCO2排出量の削減について、最新の国際的な目標(※)に沿って2020年3月期を基準年度とし、2027年3月期までに31%削減、2031年3月期までに48%削減する中長期目標を立て、継続的な省エネルギー対策と再生可能エネルギーの導入を進めております。
※Intergovernmental Panel on Climate Change(IPCC)の第6次報告の1.5℃シナリオ
本中期経営計画の初年度を終了した2025年3月末時点では、国内生産拠点を中心に、太陽光発電設備の設置、ボイラーの運用改善、生産設備の高効率化、照明器具のLED化などの省エネルギー対策を実施すると同時に、買電を再生可能エネルギー由来の電力に切り換えることを進めました。その結果、当社グループ全体のCO2排出量(Scope1&2)は、2025年3月期に2020年3月期比で49%削減となり、中長期目標達成に向けて順調に推移しています(Scope2はGHGプロトコル・マーケット基準にて算定)。
また当社製品を通じて世の中のCO2排出量(Scope3)も削減できるようにTCFDの枠組みに沿って当社グループの気候変動に関するリスクと収益機会を管理し、企業価値向上に貢献してまいります。
詳細は「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への取り組み TCFD提言に沿った情報開示」を参照ください。
(ウ) 資源循環促進(サーキュラーエコノミー)
当社グループでは、資源循環型社会の実現に向けて、特に世界的に関心の高まっているプラスチック資源の循環に関して化石由来資源の枯渇防止と廃棄の際の環境負荷低減といった環境リスクの低減と収益機会の創出を目指し、当社グループでは、原材料のバイオマス化及び廃プラスチックの排出量抑制・リサイクル促進を進めております。
当社グループでは、使用済みプラスチックは廃棄物ではなく資源であるという考え方に基づき、廃プラスチックのリサイクル率を毎年対前年度比で1ポイント向上させることを本中期経営計画の目標に掲げて全社的に取り組んでいます。本中期経営計画の初年度を終了した2025年3月末時点では、7ポイント改善を達成しており、引き続き原材料のバイオマス化及び廃プラスチックの排出量抑制・リサイクル促進を目指し、生産工程から生じるロスを削減するための工程管理の強化と廃プラスチックの分別強化をグローバルに展開してまいります。
(エ) 生物多様性への取り組み
化学物質を扱う当社グループは、事業活動のみならず製品のライフサイクル全般において生態系に与える様々な影響をリスクと機会の両面から把握し、生態系への負荷を最小限に抑える義務があると認識しています。2024年3月期にはこの考え方に加え、当社技術を活かして「生物多様性の保全と持続可能な利用」に貢献する価値の創出に努める事が重要であると認識し、それまでの「環境負荷低減」というマテリアリティを「生物多様性の保全」に改訂いたしました。
この課題解決に向けて、有機溶剤などの使用時に生じる大気汚染や水質汚染等の環境負荷軽減に向けた自らの管理活動と当社グループの製品使用段階で生じる環境負荷軽減に貢献する製品開発の両輪でTNFDの枠組みに沿って推進してまいります。
また、当社グループが現在加盟しているCLOMAをはじめとするイニシアティブへの参加や事業所の近隣地域コミュニティーとの協働作業にも積極的に参加し、生物多様性の保全に努めてまいります。
詳細は「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)生物多様性の保全に関する取り組み」を参照ください。
(オ) 社会貢献の一層の促進
お客様とのかかわりにおいては、お客様の信頼と期待に応えられるように適切な化学物質管理(新管理システムの導入、リスクアセスメントなど)、品質保証(ISO9001による全社的なQMS活動実施、内部監査実施)、責任ある原材料調達(CSR調達基準によるサプライヤー調査)、サステナブルな物流業務の展開(輸送ロットアップ、在庫拠点集約など)に取り組んでおります。
またお客様から積極的に選ばれるサプライヤーになるために、お客様からいただくサプライヤー調査には誠実に回答すると同時に自らの取り組みを反省する機会と捉え、お客様との対話の機会には積極的に参加し、当社グループにとって参考になる意見交換をさせていただいております。
このお客様との対話を通じて、当社グループの取り組みを見直す動きが盛んになり、当社内の制度の認識が深まり、見直しにもつながっております。
従業員とのかかわりにおいては、ワークライフバランスの充実、女性、外国人、中途採用者の一層の活躍などの点から、人事制度の充実を図っております。
またサステナブルな成長を実現させるためには従業員の心身の健康維持・増進と多様な人財が働きやすい職場環境・企業風土づくりが重要であるという考えから、 2023年に健康経営宣言を行い、2025年3月に健康経営優良法人2025(大規模法人部門)に認定されました。健康経営を積極的に推進し、従業員がポテンシャルを最大限発揮することで事業活動を通じて社会に貢献してまいります。
地域社会とのかかわりにおいては、生産拠点の近隣に対する安全・安心を最優先に防災活動に加え、生物多様性の保全の一環として近隣の生態系に一層の配慮を行い、環境負荷の低減と自然環境の保全に努めてまいります。これらの諸施策は着実に、継続的に実施することにより効果を得られるものであるため、今後も注力して対応してまいります。
(カ) コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組み
単に法令遵守、ルール遵守に留まるだけでは実質的なガバナンスの向上につながらないとの認識から、コンプライアンスの徹底のために経営層からのメッセージの発信・従業員からのフィードバックを継続的に実施しております。今期は経営層からのトップダウンと実行部門からのボトムアップを活性化させた双方向コミュニケーションを充実させ経営戦略を社員一人ひとりが「自分ゴト」として捉えて行動できるように社内環境を整備してまいりました。
また、2025年6月27日に開催いたしました第122期定時株主総会において、株主の皆様のご承認を得て、「監査等委員会設置会社」へ移行しており、これにより委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、取締役の業務執行の適法性、妥当性の監査・監督を担うことでより透明性の高い経営を実現し、国内外のステークホルダーの期待により的確に応えうる体制の構築を目指しております。
(キ) 人的資本投資・人財育成
当社グループでは、新たな価値の創出には、新たな発想が必要であり、それには“人の力”が不可欠と考えています。“人の力”を引き出し、“人を育成する”ことで、人は価値を生み出す企業の財産であるとの認識から、当社グループでは「人材」ではなく「人財」と表現しております。
本中期経営計画では、最優先に取り組む施策として、モノづくりメーカーの従業員としての“働き甲斐”、“誇り”、“仲間への貢献意欲”といったエンゲージメント向上を目指した「人事制度改革」を重点戦略のひとつに掲げ、ステークホルダーの皆様と価値共創に努めてまいります。
詳細は「オ、HR戦略」をご参照ください。
エ、DX推進
上記のア~ウの戦略を推し進めるために、業務のデジタル化による効率化、データ蓄積・共有の基盤構築を進め、データ駆動型ビジネスへの転換を目指し、効率的で確実性の高い戦略、独創性のある製品開発を重点的に推進します。
本中期経営計画初年度を終えた現在の状況としては、オフィスワークにおけるITツールの強化や生成AIの活用を開始しており、業務の効率化を図りました。
今後の施策として、具体的には①マーケティングにおいては、担当する部門に関わりなく市場ニーズをデータベースとして蓄積し、市場ニーズと当社技術を結び付け新規案件を開拓する、②技術開発においては、使用する原材料や開発情報を横断的にデータベースとして蓄積し、これらを組み合わせ、MIにより開発期間を短縮する、③生産部門においては、生産現場の負荷を軽減しながらデータの蓄積・見える化を進め、早期異常発見率を高めることにより生産効率を上げる、などを実施していきます。このために、デジタルリテラシー向上やAI活用の研修、データ分析のOJTなども効率的に行うことにより、一層のデジタル人財の基盤強化を図ることといたします。
オ、HR戦略
上記エと合わせて、上記のア~ウの戦略を推し進めるために、従業員の将来のありたい姿の実現に向けて「イノベーションが湧き上がる活力に満ちた企業風土」を醸成させていくことが不可欠であるとの認識を前提に、モノ作り企業の従業員としてのエンゲージメント向上を目指したHR戦略を推し進めていくことといたします。
具体的には、当社内のエンゲージメント調査結果から、経営方針や戦略を最前線の社員の目標まで落とし込む事が必要と認識しており、その対応として経営層と従業員との対話を深めお互いの期待感を共有し、具体化させていく機会を増やしてまいります。
2025年4月より、新人事制度を導入いたしました。評価の仕組みについては、ジョブディスクリプション(JD)を策定し、明確性や公平性の確保、納得感の得られる評価、成長につながる評価、心理的安全性の高い評価などにつなげ、魅力ある会社になることで、エンゲージメントの向上と人財の育成を図ることができ、イノベーションの創出が達成できるものと期待しております。
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