大日本塗料
【東証プライム:4611】「化学」
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企業概要
当社グループの研究開発活動は、コアビジネスである塗料事業をはじめ、照明機器、蛍光色材、ジェットインク及び、機能性材料などの塗料事業以外の製品開発にも取り組んでおります。
塗料事業においてはSDGsの達成に向け地球環境に優しい製品、省エネルギー・省力化に対応した製品、高機能・高付加価値製品の開発に注力するとともに、2020年に開所した防食技術センター、コーティング技術センターの両センターを活用しつつ、新製品開発の基礎となる機能性を有する塗料用樹脂や新規材料の調査・研究開発を始め、防食理論、分析・評価技術、顔料分散技術、塗膜形成技術及び、塗装技術等の基盤技術を拡充し、新しい価値を継続的に市場へ提供できる取組みを進めております。また、CO2削減の提案に向けた取組みとして、省工程化を目的とした簡易的なインフラ点検方法や効率的な補修方法に関する基盤技術の構築、更にバイオマス原料を活用した塗料の脱炭素化、カーボンニュートラルに貢献できる技術の調査を進めております。例えば、新たな工法によるカーボンニュートラルへの貢献が期待できる加飾フィルム向けコーティング材の検討を行っており、顧客との検討も進めております。当連結会計年度における研究開発費の総額は2,165百万円となりました。
当連結会計年度の主な研究開発活動は次のとおりであります。
(1)国内塗料事業
① 構造物塗料分野
橋梁や各種プラント施設に代表される大型の鋼構造物や土木コンクリート構造物などにおいて「LCC(ライフサイクルコスト)の低減」、「環境負荷低減」、「省力化」、「点検・診断」、「安全・安心」をキーワードに、公共性の高い社会インフラを長期間護るための材料開発と塗装システム開発及び、メンテナンス市場をターゲットとした補修・補強材料や塗膜診断技術を活用した塗膜の寿命予測などに注力しております。LCCの低減では、塩害環境向け高遮断塗装システム「タイエンダーシステム」や新設コンクリート向け養生被覆工法「シールドベトン工法」、環境負荷低減では、「塗る」作業を「貼る」作業に変える画期的製品である重防食シート「メタモルシート#1」やVOC(揮発性有機化合物)を大幅に削減した「DNT水性重防食システム」「水性グリーンボーセイ速乾」、点検・診断では、鋼構造物点検時の簡易補修材料「サビシャットスプレー」、カレントインタラプタ(CI)法により理想的な構造物維持管理サイクルを実現した「DNT塗膜診断システム」、安全・安心では、橋脚や標識ポール、照明等の地際・基部腐食対策塗装システム「ポールダンサーシステム」等の開発を行い、市場展開に取り組んでおります。
また、防食技術センターを活用して、顧客と協業での現場施工性に関する検証試験や企業間コラボレーションによる新規材料・工法の研究開発を進めております。
② 建築塗料分野
近年、建築分野においては、カーボンニュートラル、サーキューラーエコノミー、ネイチャーポジティブといった課題の対策技術に焦点をあて様々な材料開発が行われております。
当社においても、オフィスビルや戸建・集合住宅の新築・改修工事に対して「高耐久性・省工程・安全・快適・省エネ」をキーワードに環境に優しい独創的な製品の開発に取り組んでおります。特に2003年発売開始の遮熱塗料「エコクールシリーズ」は、塗装することで被塗物の温度を下げられ、CO2削減効果が期待できる材料として販売数量を伸ばしております。今後も新たな遮熱機能開発を行い、差別化に繋げてまいります。その他、ビル外壁・エントランス等でも実績が増えつつある高意匠メタリック仕上げをローラー塗装できる弱溶剤形ふっ素樹脂塗料「Vフロン#200スマイルRBメタリック」、工場や商業施設等の扉や手摺りなどの、人の手が多く触れる箇所での皮脂による汚れ・はがれの問題を解決し、かつ臭気を抑えた「アクアマリンタックレス 凛」などの機能性製品の市場展開に取り組んでおります。
③ 車輌産機・自動車補修塗料・プラスチック塗料分野
車輌産機・自動車補修分野ともに環境対応型塗料として水性塗料、カーボンニュートラルへ貢献できる塗料として省工程化によるCO2削減塗料の市場展開を進めております。
車輌産機分野の水性塗料は、高外観、速乾性の特徴を有する工業用向け水性上塗塗料「AQウレタン」、自動車補修分野は、自動車シャーシ用塗料「Auto ハイドロシャーシ」を市場展開し、車輌産機分野の省工程化塗料は、溶剤系下塗、上塗兼用「オールイン1ウレタン」「プライムトップ」、自動車補修分野は、特定化学物質障害予防規則対応の溶剤系下塗塗料「AutoラピッドドライシャーシNexT」を市場展開しております。
自動車プラスチック分野においては、インモールドコーティング(IMC)塗料の新規開発における、具体的なラインを想定したトライの実施で、市場での採用活動をしております。
意匠性・工程短縮として、工程短縮での金属調塗料の検討、メッキに代わる、更なる金属調塗料の開発に取り組んでおります。さらに高塗着効率対応の塗料開発及び、ハイソリッド塗料の開発に取り組んでおります。
④ 建材塗料分野
新設住宅市場向けの外装建材用塗料、屋根建材用塗料、内装建材用塗料での高意匠、高機能、高耐久化などの顧客ニーズに応える環境に配慮した高付加価値塗料と塗装システムの開発に取り組んでおります。特にインクジェット加飾システムによる高意匠化と高耐久・高付加価値塗料とを組み合わせた積層塗膜での提案を進めております。
また、戸建を含む住宅分野だけでなく、店舗や非住宅分野へも展開できる意匠性や塗装システムの開発にも取り組んでおります。
⑤ 金属焼付塗料・粉体塗料分野
溶剤塗料においては、垂直面への作業性に優れており、垂れ難い設計である厚膜塗装作業性に優れたアミノアルキド樹脂系塗料「NEWデリコンHB」を発売しました。既に発売中の低温焼付形ポリウレタン樹脂系塗料「Vクロマ#100ECO-LB」、アクリル樹脂系塗料「NEWアクローゼ」と同様、塗装作業者の健康への影響に配慮した特定化学物質障害予防規則に対応した組成となっております。
粉体塗料においては、モーターやブスバーなどの電器部品に塗装される絶縁粉体塗料を製品化しました。次世代の主力製品とすることを目標に市場での評価を実施、順次発売開始予定です。
⑥ インクジェット・新事業分野
当社の塗料の分散技術をインクジェットインク開発に応用し、UV硬化インクや水性インク等の環境対応製品の開発を進めております。新事業としては、無機酸化物をナノレベルまで分散した反射防止用などのナノコーティング材、合成技術と表面処理技術を活用した貴金属ナノ粒子などの機能材開発に取り組んでおります。
開発した貴金属ナノ粒子を活用した展開先として、当社で世界初の細胞外小胞用イムノクロマトキット「Exorapid-qIC®」を発売し、新たにライフサイエンス分野への参入にも取り組んでおります。
また、コーティング技術センターで当社の強みであるインクジェットインクによる加飾技術と塗料の積層技術を組み合わせた高意匠性で高付加価値な製品の提案も行っております。住宅建材・内装材関係の検討とインクジェットインク・塗料の積層コーティングを請負う加飾プロバイダーに対するインク販売を開始して更なる市場展開を進めております。
⑦ 防食技術センター(那須事業所)
2020年7月に開所して以来、延べ850社を超える企業、研究機関の方々に施設の見学及び様々な塗料、塗装工法の検証にご活用いただいております。
塗料中の揮発性有機溶剤(VOC)を削減し、塗装環境を改善できる水性塗料及び次の塗り替え工事までの期間を延長することができる高耐久性塗料、従来の塗装と比較して施工時間・工程を短縮し、工事を効率的に実施できる省工程化塗料・防食シート工法、構造物において腐食しやすい箇所を部分的に補強する工法などの検証を行っており、ユーザーとの共同開発製品も誕生しております。
⑧ コーティング技術センター(小牧事業所)
2020年6月に開所して以来、延べ700社を超える企業、商社が来所して施設の見学や新規採用の塗装仕様検討などを実施して有効活用いただいております。来客数だけでなく実績に繋がったテーマも2021年度11件、2022年度16件、2023年度23件、2024年度30件と順調に増加しております。
来所されるお客様は環境対応と高意匠に対する関心が高く、理論上の塗着効率が100%であるオールインクジェット仕様(プライマー、ベース、加飾、トップクリヤーの全工程)の新塗装システム提案、また、これまでの塗装というウェット工法に替わる環境対応技術として、ドライ工法である加飾フィルム成形工法について、お客様との共同開発を開始いたしました。
(2)海外塗料事業
自動車プラスチック塗料分野においては、タイでのバンパー用水系塗料の検討及び、低温化の検討に取り組んでおります。
(3)照明機器事業
照明機器事業を展開するDNライティンググループでは、新たな価値を生み出す拠点としての技術開発センター機能を有する、伊勢原新本社を2024年10月に新築稼働し、開発・評価設備を大幅に刷新しました。これらの最新鋭のインフラを最大限に有効活用し高品質、高機能で市場に求められる製品をタイムリーに提供してまいります。
今年度も照明器具の存在感を誇張せず、美しく心地よい空間を演出するキーワード「納まる溶け込む」をコンセプトに、新たに「進化したライン照明 もっと遠くまで届く・もっと曲がる」をコンセプトに加え、照明器具の開発に注力し、多くの新製品を発売いたしました。
高天井や大きな空間にも光を届けられ、天井や壁面素材の質感を演出可能にした「ライナーウオッシュシリーズ」、粒感のあるテープライトに光を拡散するハウジングをセットして、手軽にまぶしさがない照明にすることができる「マルチカバーシステム」、半径50㎜の小さな半円にも設置でき空間演出の新たな可能性を提起するフレキシブルLED「FXCシリーズ」、昨年発売し好評の曲面も均一に美しく演出することができるチェーンタイプのLED、「CHCシリーズ」には防滴性能を加え軒下用途などを拡大しました。
また、既存のLED照明器具をより一層効率化して省エネやCO₂排出削減に寄与する、高効率LED搭載の器具開発や、より快適さを追求した自然光LED搭載の器具開発を進め、日本照明工業会が新しい照明の概念として提唱する「lighting5.0」で規定された「健康」「安全」「快適」「便利」という4つの価値を持つ照明の普及を通して新しいあかり文化の創生と、サステナビリティ戦略の実行を通して脱炭素社会への貢献を目指し、持続可能な社会に向けた取組みを拡大・加速してまいります。
(4)蛍光色材事業
蛍光色材事業では蛍光色の特徴を生かした、社会に貢献できる製品及び人や環境に優しい製品の開発や販売にいっそう注力し、多くのお客様からご好評をいただいております。
蛍光顔料事業においては、生物由来や生分解性原料を用いた顔料開発を行うとともに、それらの顔料を用いた新規蛍光塗料を開発しご採用いただきました。また含有化学物質や工場廃棄物などを管理した、人や環境に優しい製品としてエコパスポートおよびZDHC Level 3を取得した水分散顔料「SW-100シリーズ」は、アパレル業界でご賞賛いただいております。
蛍光塗料事業では昨今の自然災害の頻発や来るべき巨大災害に対し防災、減災や避難誘導用途として、蛍光・蓄光・反射塗料が多くの自治体にご採用いただいております。特に近年激甚化する豪雨に伴う河川の氾濫に対し、水位状況を知らせる量水標に視認性が高い蛍光塗料の「スーパールミノVトップ」が多く採用され、防災・減災活動に大きく貢献しております。
今後も人や環境に優しく社会貢献できる製品を開発、提案しながらESG活動に取り組んでまいります。
なお、セグメントごとの研究開発費は、「国内塗料事業」1,610百万円、「照明機器事業」467百万円、「蛍光色材事業」87百万円であります。
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