味の素
【東証プライム:2802】「食品業」
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企業概要
当社グループは2030年に向け、「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」企業になることを目指します。ここでアミノサイエンス®とは、創業以来、アミノ酸のはたらきに徹底的にこだわった研究プロセスや実装化プロセスから得られる多様な素材・機能・技術・サービスを総称したものであり、また、それらを社会課題の解決やWell-beingの貢献につなげる、当社グループ独自の科学的アプローチであり、他企業が容易には真似できない当社グループの競争優位の源泉のひとつとなります。2030年に向け、フードシステムで繋がる健康栄養課題の解決と環境への貢献をセットで取り組み、「環境負荷を50%削減」と「10億人の健康寿命を延伸」の2つのアウトカムを実現していきます。また、当社グループの成長戦略では、中長期の成長が期待される市場において、当社グループならではの強みであるアミノサイエンス®を活かし、持続的に社会価値を提供できる、4つの成長領域(ヘルスケア、フード&ウェルネス、ICT、グリーン)にフォーカスし、既存事業の確実な成長と、事業モデル変革(BMX)による成長ドライブにより、2030年に向けて飛躍的な成長を目指します。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費は30,921百万円です。
また、当社グループが保有している特許は国内外合わせて約4,200件です。
当連結会計年度の各事業区分における研究開発活動の概要とその成果は次のとおりです。
(1) 調味料・食品セグメント
当社食品研究所が中心となり、味の素AGF㈱、味の素冷凍食品㈱、上海味の素食品研究開発センター社(中国)をはじめとする国内外のグループ会社の研究開発部門とも密接に連携し、味、香り・風味、食感など、「おいしさを構成するすべての要素」を俯瞰した技術開発、製品開発、及びそのアプリケーション開発を行っています。
また、日本国内の少子化・高齢化、世帯人数の減少、健康志向といった課題に対し、「おいしさ」、「食へのアクセス(あらゆる人に栄養を届ける)」、「地域や個人の食生活」の3つを妥協しない基本姿勢とし、課題解決先進国の日本で磨いたモデルをグローバルに展開しています。グローバルな製品開発体制のもと、マーケティング力、ブランド力を強みに、各国生活者の嗜好とニーズに適応した調味料、加工食品の開発に継続して取り組んでいます。
<調味料(日本)>
2024年度の調味料事業商品は、本格中華を家庭で楽しめる中華合わせ調味料「Cook Do®」シリーズでは、大人が楽しめる食体験を提供する「Cook Do®」極(プレミアム)シリーズから、販売が好調に推移している<極 麻辣麻婆豆腐用>に続き、新品種<極 麻辣回鍋肉用><極 香辣麻婆茄子用>を発売しました。生活者が韓国メニュー用調味料に求める特長を当社グループ独自の心理的価値設計技術である「AJI-EMap®」を用い改めて分析し、本格的でありながら日本の食卓に合う韓国メニューを簡単に作ることができる、韓国合わせ調味料「Cook Do® KOREA!」を全面リニューアルし、発売中の2品種<豆腐チゲ用><プルコギ用>に加え、新たに2品種<ヤンニョム炒め用><タッカルビ用>を発売しました。「Cook Do® 香味ペースト®」シリーズでは<やみつきにんにく醤油味>を発売し、「Cook Do® きょうの大皿®」シリーズでは<豚バラ豆腐用>と<豚バラじゃが用>を発売しました。
イタリアの基本だし「ブロード」が主役の、2種の特製パウダーでつくる新感覚のパスタ用調味料「Mio Brodo™」(ミオ ブロード)<トマト><チーズ><魚介>を通販サイトで発売しました。当社グループ独自の「おいしさ設計技術®」や「クノール® カップスープ」などに使われるパウダー化の技術を活用することで本場イタリアの味を再現しています。「BistroDo®」では、<濃厚デミグラスチキンソテー用>を発売しました。
「鍋キューブ®」では、ほのかに甘い焼きあごだしの味を楽しめる醤油ベースの鍋つゆ<焼きあごだし>を発売し、<鶏だし・うま塩><濃厚白湯><鶏だしコク醤油><うま辛キムチ><鯛と帆立の極みだし鍋>をリニューアルしました。「パスタキューブ®」では、<まろやか豆乳クリーム>を発売しました。
<調味料(海外)>
事業展開している各国・地域の健康志向やライフスタイルの変化に対応した高付加価値製品のラインアップ拡充、統計解析技術を活用した生活者意識・行動解析による商品開発の高度化を推進しています。都市化やライフスタイルの変化が進む中、簡便で加工度の高い製品や健康価値を有する製品への需要も増加しています。フィリピン味の素社では、栄養学や料理の専門家の協力を得て、うまみ調味料「味の素®」を使用し、現地の嗜好に合わせ、塩分を抑えた100種類以上のレシピの開発や料理のデモンストレーションを行い、おいしさを損なうことなく、毎日の食事で継続することが難しいとされる減塩を推奨する取組み「BawAsin®」を進めています。また、ブラジル味の素社で1988年に発売された「Sazon®」は、おいしさ・手軽さ・利便性が現地で広く受け入れられ、現在、約70%のシェアを有するブラジルのトップブランドとして広く各種家庭料理に利用されていますが、さらに、今後も増えていく在留外国人の食にまつわる課題を解決するため、日本国内においても日本居住のブラジル出身の方々向けに「Sazon®」(肉料理用、豆料理用、鶏肉料理用、野菜料理用)を発売しました。
今後も当社グループの独自素材の活用や独自技術に裏打ちされたおいしさの追求とともに健康価値領域での製品開発を継続強化し、現地の生活者の嗜好に合うおいしさや栄養改善に貢献していきます。
<栄養・加工食品(日本)>
2024年度の栄養・加工食品事業商品として、「クノール® カップスープ」<ポタージュ>では、香味野菜を丁寧にソテーしたミルポアパウダーを使用しコク深い味わいにリニューアルしました。「スープDELI®」では、当社独自の湯戻りしやすく食べ応えのあるもちもちパスタにとろりとしたスープがしっかり絡んだ濃厚な味わいの<クリーミーカルボナーラ>を発売し、「クノール®」ポタージュで食べる豆と野菜<オニオングラタン風>も発売しました。また、本場タイの本格感を再現するおいしさが詰まったスープとモチモチとした食べ応えのある麺が特長で、ゆでるだけで、家庭で簡単手軽に楽しめる、本格トムヤムクンヌードル「Yum Yum®」<トムヤムクンヌードル><トムヤムクンクリーミーヌードル>を発売しました。
さらに、お湯を注ぐだけで手軽においしくたんぱく質が摂取できる「味の素KK プロテインみそ汁」を通販サイトで発売しました。味噌汁1杯分でたんぱく質が20g摂れる、食事と合わせて飲むことができるプロテインで、配合されたソイプロテインはホエイプロテインよりも体内でゆっくり吸収されるため腹持ちが良く、美容や健康面でコラーゲンも配合しています。当社独自の「おいしさ設計技術®」を活用し、味噌汁のおいしさをしっかり感じられる味わいで、かつ溶解性技術によりお湯に溶けやすく仕上げています。
<栄養・加工食品(海外)>
加工食品では、事業を展開する各ローカル市場の慣習や食の嗜好、資源、原料、ステークホルダーを尊重し、アミノ酸のはたらきを活かして、おいしく減塩したり、たんぱく質等の栄養素を摂取したりできる製品を提供し、子供から大人まで、食とライフスタイルに起因する健康課題の解決に向けた取組みを進めています。今後も当社グループの独自素材の活用や独自技術に裏打ちされたおいしさの追求とともに健康価値領域での製品開発を継続強化し、現地の生活者の嗜好に合うおいしさや栄養改善に貢献していきます。
<コーヒー類>
スティックコーヒー市場では、「ちょっと贅沢な珈琲店®」ブランドから、珈琲店のマスターが淹れたような、コーヒーの風味や香りが引き立つ、程よい甘さとミルク仕立てのスティックコーヒー《「ちょっと贅沢な珈琲店®」スティックコーヒー スペシャル・ブレンド》を発売しました。また、「気分に合わせて選びたい」「いろいろな種類を味わいたい」といった生活者のニーズに合わせ、<スペシャル・ブレンド><モカ・ブレンド><キリマンジャロ・ブレンド>の3種類のフレーバーを飲み比べして愉しめるアソートタイプのパーソナルレギュラーコーヒー《「ちょっと贅沢な珈琲店®」レギュラー・コーヒー プレミアムドリップ 3種飲み比べアソート》を通信販売で発売しました。
“まるでスイーツを食べた時のような満足感ある味わい”をテーマに外食カフェでトレンドになっているスイーツメニューをラテで再現した《「ブレンディ®カフェラトリー®」スティック》“スイーツシリーズ”は2023年より展開しており、スティック商品の購入が無い方や若年層にも好評で、新たに3品種<濃厚ピスタチオホワイトショコララテ><濃厚メルティショコララテ><芳醇マンゴー&オレンジティー>を発売し、販売が好調な<濃厚ストロベリーホワイトショコララテ>をリニューアルしました。
《「ブレンディ®」スティック》シリーズから、やさしいはちみつの甘みと紅茶の香り、しっかりとしたミルクのコクが楽しめる《「ブレンディ®」スティック とろけるはちみつ紅茶オレ》を発売しました。また、ポーション市場では、家庭内でのアイス飲用増加を背景に、個食化や、気分・シーンに合わせた使い分け拡大による個包装タイプのニーズの高まりから新規ユーザーが増加しており、《「ブレンディ®」ポーション》新フレーバー<フルーツティー 3種の果物ミックス><抹茶オレベース>と東北産りんご果汁を使用した<アップルティー>を新発売しました。
<ソリューション&イングリディエンツ>
当社が30年以上の酵素研究による知見を活用して開発した独自技術(特許申請中)により、お米と混ぜて炊くだけで、酵素の働きで白米のでんぷんをもち麦のような分解されにくい構造に変え、美味しさはそのままで糖が穏やかに吸収されるご飯が炊ける、日本初となる革新的な炊飯器専用調理料「白米どうぞ®」を全国発売しました。
業務用については、業務用「Cook Do®」シリーズで、食塩相当量が低く(1g/食)、またスチームコンベクション調理にも適した設計であり、高齢者施設給食や産業給食等の毎日の献立作りに役立つ「Cook Do®」<豆腐と豚肉の和風炒め用>と、500gの大容量でありながら片手で持ちやすく絞り出しやすいスパウトパウチに入った業務用「Cook Do®香味ペースト®」を発売しました。また、香味野菜をバターでじっくりとソテーして作った当社独自のミルポワパウダーを配合することで複雑で豊かな野菜の風味とコクを実現し、お湯に溶かすだけで素早くスープが出来上がる業務用「クノール®クイックサーブ®スープ」<ポタージュ>と業務用「クノール®ランチ用スープ」<ポタージュ>をリニューアルしました。
調味料・食品セグメントに係わる研究開発費は、8,032百万円です。
(2) 冷凍食品セグメント
味の素冷凍食品㈱研究開発センターと海外グループ会社の開発部門を中心に、現地の嗜好とニーズに適応した商品開発に取り組んでいます。さらに、当社食品研究所との連携により、減塩等の健康価値の向上に取り組んでいます。
<冷凍食品(日本)>
生活者のライフスタイルの多様化や喫食シーンの変化に応じて、食卓カテゴリーを中心としたラインアップを展開するとともに、メニュー提案や店頭訴求、体験型イベントの開催等の取組みを通じて、冷凍食品の提供価値向上に取り組んできました。
2024年の製品として、冷凍「ギョーザ」シリーズでは、大容量パック「ギョーザ 標準30個入り」を新発売し、「しょうがギョーザ」「黒胡椒にんにく餃子」をリニューアルし、いずれも味の素冷凍食品㈱の独自技術により改良した羽根の素を使用し、「ギョーザ」(12個入り)と同様にフライパンへの張りつきを改善して剥離性を向上させました。「ギョーザ 標準30個入り」はトレイ不使用のため冷凍庫のスペースを取らずに収納することができます。「しょうがギョーザ」は従来品よりしょうがの辛みを抑えており、にんにくを使用しないため食後のにおいが気になるときでも好きなだけ食べることができます。「黒胡椒にんにく餃子」は粗びき黒胡椒の刺激とにんにくの風味が口いっぱいに広がり、隠し味にはちみつを加えることで後味のコクを更に感じるようにしています。<ギョーザ>のブランドイメージの根幹となる「AJINOMOTO」ブランドの視認性を高めるため、<ギョーザ><レンジでギョーザ>の2品種から「AJINOMOTOギョーザ」のブランドロゴを採用したパッケージへリニューアルします。2025年を『「ギョーザ」元年』とし、すべての生活者の食シーンとニーズに応える製品ラインアップと生活者とのコミュニケーションを更に強化していきます。
おうちで外食品質を楽しめる「ザ★®」シリーズとして、「ザ★®シュウマイ」「ザ★®チャーハン」「ザ★®から揚げ」「ザ★®ハンバーグ」4品同時にリニューアルしました。「ザ★®シュウマイ」は風味と食感がアップされています。
「おべんと PON™」はトレイのないスティック型パッケージに入ったお弁当のおかずで、冷凍庫のスキマに「シュッ!」と入れられ、自然解凍なので冷凍庫から出してそのまま「ポンッ!」と盛りつけができ、捨てるときは小さく丸めて「ポイッ!」と捨てられる、お弁当づくりの新しいカタチとして注目を集めています。全5種類(「おべんと PON™ つくね」「おべんと PON™ からあげ」「おべんと PON™ とんかつ」「おべんと PON™ メンチカツ」「おべんと PON™ とり天」「おべんと PON™ 肉だんご」)を発売しました。
冷凍ハンバーグとしては、ブランドロゴを「洋食亭®」から「洋食亭®ハンバーグ」へ統一し、従来品の濃厚なビターな味わいはそのままに、マッシュルームブイヨンを加え、うま味、コク、苦味のバランスを向上させ、<自家製デミグラスソース>をリニューアルしました。また、備長炭で醤油味をしみこませた若鶏のもも肉をこんがりと焼き上げた「若鶏もも焼き」を発売しました。冷凍から揚げとして、さっぱりレモン風味の<レモンの塩だれから揚げ>を発売しました。
冷凍米飯としては、<麻辣マーラー飯>と<パクチー飯>を発売しました。さらに、冷凍丼の具としては、家ではなかなか作れない本格中華として食欲を刺激する<麻辣麻婆豆腐丼の具>を発売しました。
<冷凍食品(海外)>
北米や欧州では、日本食人気の高まり等により、特にリテール製品におけるアジアン冷凍食品市場が成長しています。今後も日本で培われた生産技術で簡便な調理、かつおいしさを提供していくとともに、健康機能を付与した製品を市場投入する等、製品の付加価値を常に向上させながら、更なる事業拡大に貢献していきます。
また、中国冷凍食品事業の構造強化により採算性と資産効率を向上するため、味の素冷凍食品㈱、味の素(中国)社(上海市)及びライフフーズ㈱(東京都中央区)は、日本向けの鶏肉加工品や野菜加工品及び調理済み冷凍食品の生産を行う目的で、上記3社合弁で1995年に設立した連雲港味の素如意食品有限公司(江蘇省LAN社)での生産活動を建屋設備老朽化のため2024年4月末に停止し、主に欧米向け炒麺、日本・中国向けスイーツの生産が順調に推移している連雲港味の素冷凍食品有限公司(江蘇省、AFL社)に2024年6月に吸収合併し、AFL社に生産を集約すべく生産体制の再編を行いました。
さらに、味の素冷凍食品㈱及びライフフーズ㈱は、味の素冷凍食品㈱の連結子会社である厦門味之素来福如意食品有限公司(福建省アモイ市、ALI社)の株式全てを合弁パートナーである如意情集団股份有限公司(中国福建省アモイ市)へ2024年10月に譲渡を完了させ、ALI社との間で製造委託契約を締結し、これまで同様、日本国内向け冷凍野菜及び味の素冷凍食品グループ工場(日本・中国)にて使用する野菜原料の供給を継続することで、生産体制の再編を行いました。
冷凍食品セグメントに係わる研究開発費は、1,855百万円です。
(3) ヘルスケア等セグメント
当社バイオ・ファイン研究所、食品研究所、味の素バイオファーマサービス事業(ベルギー、米国、日本、インド)、味の素-ジェネチカ・リサーチ・インスティチュート社(ロシア)、味の素ファインテクノ㈱等の国内外の各グループ会社及びその技術開発部門とも連携し、世界中の人々の健康や生活に貢献するための商品及びソリューションを提供しております。
<医薬用・食品用アミノ酸>
医薬用・食品用アミノ酸市場の伸びに対応するために、生産性の向上とコスト競争力の強化を目的とした発酵・精製プロセス開発と導入を継続して進めています。また、動物細胞培養用の培地事業は味の素CELLiST Korea社をプラットフォームとし、国内外のバイオ医薬品メーカーとの開発を継続、拡大しています。
<バイオファーマサービス(CDMO)>
製薬メーカーからの原薬受託製造について、低分子医薬品原薬、高活性原薬(HAPI)、ペプチド/オリゴ核酸、タンパク医薬、抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)などの幅広い開発・供給体制の充実を図り、継続的な案件の受注に繋げています。
低分子医薬品原薬製造においては、バイオ技術との融合による効率的かつ環境配慮型のプロセスの研究を進めています。オリゴ核酸の受託製造においては、㈱ジーンデザインと連携して固相合成を活用した少量多品種製造から「AJIPHASE®」の液相合成技術による大量製造までの開発体制を構築し、味の素オムニケム社との連携も深めながら、味の素バイオファーマサービス(CDMO)事業全体としてオリゴ核酸製造受託事業を推進しています。
さらに、2023年度子会社化した米国の遺伝子治療薬CDMOのForge社は、遺伝子治療薬製造バリューチェーン上の2つの要所であるAAV製造とプラスミドDNAの製造能力を有する遺伝子治療薬CDMOであり、また、高純度・高収率のAAVベクター生産技術を有しています。これにより、多数のバイオテック企業の初期臨床向けにGMP生産を行い、製造実績を確実に積み上げることで、ここ数年で急成長・急拡大を遂げており、今後も継続的に成長する見込みです。
<ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)>
電子材料につきましては、味の素ファインテクノ㈱と共同で、次世代PC、データセンター向けサーバー、5G通信ネットワーク用途向けに「味の素ビルドアップフィルム®(ABF)」の開発を推進しています。
<その他>
-機能性栄養食品-
「アミノバイタル®」は、当社が100年以上にわたり培ってきたアミノサイエンス®の知見をスポーツ分野に展開し、1995年に発売したスポーツサプリメントブランドです。トップアスリートやハードに運動する人を中心に支持されていますが、より多くの生活者の、運動を通じたこころとからだの健康に貢献したいと考え、発売30周年にあたり朝食のプラス1品や間食など普段の生活の中で手軽に飲むことができるゼリードリンク「アミノバイタル®ami活」を発売しました。エネルギー源となるアラニン・プロリン、BCAAやアルギニンなどのアミノ酸(3,000mg)を配合し、ビタミンや食物繊維などの不足しがちな栄養素も摂ることができることに加え、開発にあたり当社グループ独自の目標品質設計技術である「AJI-PMap®」を活用し、ゼリーが最も飲用される朝に好ましい官能特性を選定、果物を食べているかのような独特な食感と味わいも実現しています。また、「アミノバイタル®CONNECT関節サポート」を発売しました。コラーゲンに多く含まれ、ひざ関節に違和感を持つ人においてひざ関節の違和感を改善する機能があることが報告されている、セリン、アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸、グリシン、アラニン、プロリンの6種のアミノ酸(4,000mg)が主成分となるサプリメントです。
さらに、「アクアソリタ®」シリーズが消費者庁より特別用途食品 個別評価型病者用食品の表示許可を取得したことを受け、表示をリニューアルした「アクアソリタ®」、「アクアソリタ®」ゼリーの販売を開始しました。熱中症・過度の発汗による軽度の脱水時の水・電解質補給に適しており、当社独自の「おいしさ設計技術®」を活用した原材料の配合技術により、飲みやすい経口補水液となっています。
-健康基盤食品-
睡眠ケアに役立つグリシンとストレスケアに役立つGABAというWのアミノ酸を配合した機能性表示食品「グリナ®」睡眠ケア&ストレスケアを発売しました。飲料タイプの睡眠サポート食品市場も伸長しているため、飲料で手軽
に睡眠ケアをしたいという生活者の声に応え、<ドリンクタイプ>も発売しました。開発にあたり、当社グループ独自の目標品質設計技術である「AJI-PMap®」を用い、寝る前に飲む睡眠ケア飲料として最適な味と風味を選定しました。
-パーソナルケア素材-
当社グループは1972年にグルタミン酸を原料としたアミノ酸系洗浄剤「アミソフト®」を発売し、以来、半世紀以上にわたり、世界55カ国、5,000社以上の化粧品メーカー等に、アミノ酸由来の化粧品やトイレタリー製品向け原料として多様な製品を提供しています。アミノサイエンス®を活かした当社グループのパーソナルケア素材製品は、肌にも環境にもやさしく保湿性等にも優れた素材として、スキンケアやヘアケア、メークアップ製品などに幅広く使用されています。素材メーカーとしての強みを活かし、自社のアミノ酸系化粧品素材に特化したスキンケアブランド「JINO(ジーノ)」も展開しています。
アミノ酸スキンケアブランド「ジーノ」のアミノモイストシリーズをリニューアルし、新たにジーノモイストアミノエンリッチドシリーズとして化粧水2品種、美容乳液2品種(計4品種)を通販サイト限定で販売しました。当社バイオ・ファイン研究所の長年の皮膚科学研究による独自の「アミノ美肌理論®」に基づいた徹底保湿アプローチとエイジングケアをサポートするアミノ酸独自処方を採用しています。また、スキンケア化粧品向け原料ELDEW®シリーズの新品種として「ELDEW®(エルデュウ®)FE-01」を発売しました。アミノ酸系エモリエント成分ELDEW®PSシリーズを独自配合(特許申請中)により実現したナノエマルション技術によりナノサイズの油滴として水中へ分散させることで、より一層肌になじみやすく設計しています。
-飼料用アミノ酸-
牛用アミノ酸リジン製剤「AjiPro®-L」は、牛の飼料に混ぜることで牛に不足しがちな必須アミノ酸「リジン」を補い、飼料中のアミノ酸バランスを整えることができる製剤であり、2011年に北米における製造・販売を開始し、2015年には日本でも販売を開始した本製品は、現在牛用アミノ酸リジン製剤のトップブランドであり、世界中で使用されています。牛の糞尿やげっぷに含まれるメタン・一酸化二窒素など、牛の生育に関わる温室効果ガス(以下GHG)排出量は全世界の排出量の約9.5%を占め、地球温暖化の原因の一つとして喫緊の課題になっています。当社は、Danone社(フランス)と、同社の生乳サプライチェーンから排出されるGHGを削減するためのグローバルでの戦略的パートナーシップを開始しました。この取組みは、当社「AjiPro®-L」を活用し、飼料中のアミノ酸を乳牛が効率的に吸収することで、飼料コストを大幅に削減しながら、乳牛の生育に関わる幅広いGHGの排出量削減を実現します。また、当社は鹿児島県及び県内の畜産関係団体等と、肉用牛・乳用牛飼養におけるGHG削減と産業振興を図るため連携協定を締結し、地方自治体のGX(グリーントランスフォーメーション)戦略を推進していきます。当社のソリューションの核となるアミノ酸を活用したGHGの削減は、J-クレジット制度の方法論として登録済で、GHG削減量をクレジットに転換可能であり、その中でも、アミノ酸を活用した肉用牛の生産性向上によるGHGの削減は、糞尿中のGHGに加えて、げっぷ中のメタンを削減できる唯一の方法論となります。消費者庁が主催する「令和6年度消費者志向経営 優良事例表彰」において鹿児島県とともに消費者庁長官表彰を受賞しています。
ヘルスケア等セグメントに係わる研究開発費は、11,212百万円です。
(4) その他
その他セグメントに係わる研究開発費は、258百万円です。
(5) 全社
当社が想定する2030~50年の未来図からバックキャストし、グループの将来を担うと期待される領域での事業展開を見据え、関係する研究テーマを全社研究とし、資源を集中的に投資し、開発を進めています。全社研究では、当社の食品研究所、バイオ・ファイン研究所が中心となり、国内外の研究機関と連携して進めている先端研究・技術を活用し、グループ内の各研究所とともに様々な事業に向けた新技術・独自素材の開発や、各事業分野に共通した基盤技術の強化に取り組んでいます。
無形資産への投資も増強していきます。まず技術資産には、「おいしさ設計技術®」や先端バイオ・ファイン技術に代表されるアミノサイエンス®が挙げられます。今後、より一層顧客に寄り添うためにはデジタルのケイパビリティが欠かせないと考えています。顧客と技術をマッチングさせイノベーションを生み出す人財資産、顧客資産、それらの基盤となる組織資産への投資も増強していきます。
<オープンイノベーション>
当社は、オープンイノベーションを積極的に推進しており、国内外の企業や研究機関等とリンクし、これまでにない新しい価値を創造することを重要と位置付けています。イノベーション戦略チームは、当社グループにおける成長領域のイノベーションをグローバルに加速するための一員として、社内の様々な組織(コーポレートベンチャーキャピタル、R&D、事業部門など)や世界中の外部パートナーと連携し、オーガニック、インオーガニックな成長戦略の立案・実行を担っています。本チームは、日本、北米、ラテンアメリカ、ASEANを拠点に活動を開始しており、北米ではイノベーション・エコシステムの中心地であるBostonエリアに拠点を構えています。さらに、スタートアップとのパートナリング戦略構築や先端イノベーション情報収集をグローバルに推進するため、2024年1月に米国・シリコンバレー(カリフォルニア州パロアルト市)に拠点を新設しました。米国拠点設立は、次世代事業創出を通じた成長戦略の実現に向け、世界の先端イノベーション情報・活動に直接アクセスし、出資・協業・M&Aなどをスピーディに検討・判断するインテリジェンス機能(Search, Access&Partnering)を集中化させたイノベーション戦略チームのグローバル展開の一環となります。
2024年度の主なオープンイノベーションは下記のとおりとなります。
-ヘルスケア領域-
2023年度に米国遺伝子治療薬CDMOのForge社を完全子会社化し、次世代の事業領域に進出することで付加価値の高い事業モデルへの転換を進め、ヘルスケア領域の成長加速と高収益化を推進します。また、カナダの外科栄養スタートアップ企業Enhanced Medical Nutrition社(オンタリオ州)への出資を完了し、当社は今回の出資を通じて、当社の連結子会社である、米国に拠点を持つ味の素キャンブルック社、及び、英国とアイルランドを拠点に展開するニュアルトラ社による既存のメディカルフード事業に加えて、患者の栄養課題のさらなる改善に向けた取組みを強化していきます。
-フード&ウェルネス領域-
当社は、東京大学大学院情報学環、暦本純一研究室・中村裕美特任准教授(現東京都市大学准教授)、お茶の水女子大学SDGs推進研究所・笠松千夏特任教授(現東京家政学院大学特任教授)との共同研究により、経皮電気刺激を活用して食品の味を調整する新しい概念の「電気調味料」の技術を世界で初めて開発しました。「電気調味料」とは下顎前部及び首後部への微弱な電気の刺激で味覚をコントロールする当社が開発した技術そのものを指します。今回、経皮電気刺激によって複数の食品の味がより強まることを実証した一連の研究成果がHypertension Research誌に掲載されました。当社は「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」という志(パーパス)の実現に向けて2030年までに10億人の健康寿命を延伸することを目指しています。今後は新概念の「電気調味料」を活用し、減塩を必要とする人をはじめとした生活者の食をより豊かにすることで健康で快適な生活の実現に貢献します。
また、当社が開発した日本の食文化に適した栄養素プロファイリングシステム「JANPS®:Japan Nutrient Profiling System」を活用し、好きなメニューを楽しみながら栄養バランスの整った献立を提案することが可能となるWEBでの献立提案サービス「未来献立®」を2024年3月にサービスを提供しており、8日分の栄養バランスの取れた「ゴールデン献立」や、バランスの崩れた食事をした翌日のための「ツジツマ献立」作成などが可能となっている中、「未来献立®」を一新し、さらに、ユーザーにとってよりわかりやすく使いやすい内容にリニューアルしました。また、当社をはじめ他食品メーカーやレシピ動画メディア運営会社など計11社が参画し、栄養バランスのよい食生活を実践する新しい手法「ツジツマシアワセ®」を提案するプロジェクトも全国展開を開始しました。本プロジェクトは、栄養バランスを考えて食べること自体の重荷を軽減し、「栄養バランスよく食べなければ」などの義務感や「今日は好きなものばかり食べたので栄養バランスが偏ってしまった」などの罪悪感を持つことなく、楽しくおいしい食生活を実現できる「ツジツマシアワセ®」という具体的な手法の提案と啓発を行い、真にこころとからだが満たされた健康的な人生の実現をサポートしていきます。
また、当社は、従業員の健康増進支援の一環として、栄養バランスのよい食事の提供や有識者からのアドバイス、及び当社独自の食事改善ツールによる食事・運動のセルフモニタリングを通じて、生活習慣の改善をサポートする「しっかり食べチェック®プログラム」を開発し、3カ月間にわたり同プログラムを社内で試験的に導入した結果、有意な結果が得られました。当社は社員食堂を利用できない様々な勤務形態の従業員への健康増進に向けた行動変容プログラムとして検討し、健康経営の取組みサポートを図ります。本研究成果の詳細は、2025年1月17日~19日に国立京都国際会館で行われる第28回日本病態栄養学会年次学術集会において発表されました。
さらに、当社はJOC・JPCオフィシャルスポンサー(契約カテゴリー:調味料、乾燥スープ、栄養補助食品、冷凍食品、コーヒー豆)として、パリ2024オリンピック・パラリンピック(以下パリ2024大会)日本代表選手団「TEAM JAPAN」に当社製品や当社開発メニューを提供し、アミノサイエンス®を通じてこころとからだを元気にすることで、選手のトータルコンディショニングをサポートしました。パリ2024大会期間中は、公益財団法人日本オリンピック委員会(以下JOC)、公益財団法人日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会(以下JPC)それぞれに協力し、「TEAM JAPAN」のベストコンディション維持に貢献しました。パリ2024パラリンピックでは、JPCと共同で日本代表選手団のための拠点「Café Du Dashi」(カフェ・ドゥ・ダシ)を開設しました。当社グループは今後もアスリートの“なりたい姿”や“多様な個性”を尊重し、アミノサイエンス®でこころとからだの健康を支え、Well-being実現に寄り添い、さらに、その取組みで得られた知見を活かし、生活者のWell-beingにも貢献します。
-グリーン領域-
地球環境に配慮した食材(プラント・細胞・微生物ベースなど)を積極的に採用しながら自然の恵みや美しさを日常の食シーンに取り入れた「新しい食のライフスタイル」を提案する新ブランド「Atlr.72™(アトリエ・セブンツー)」をローンチし、シンガポールを起点に事業展開をスタートしました。第1弾として、エアベースプロテイン「Solein®」を使用したスイーツをシンガポール高島屋などにて期間限定で販売開始しました。
また、日本政府とブラジル政府が推進する日伯グリーン・パートナーシップ・イニシアティブ以下「日伯GPI」の取組みの一つである「ブラジル劣化農地回復モデルに向けた実証調査」プロジェクトにパートナーとして、バイオスティミュラントの開発・生産技術を活用した製品を提供し、ブラジル国内のモデル農場で土壌の劣化した農地を畑地に回復するための本プロジェクトに参画することを決定しました。
さらに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO)が公募した「バイオものづくり革命推進事業」に対して、当社は「環境保護と食品供給の安定化を実現する精密発酵技術の開発」を提案、NEDOによって採択されました。当社はアミノ酸をはじめとする有用物質の発酵生産における知見と技術の優位性を活かし、目的のたんぱく質を効率的に発酵生産する技術の開発に取り組みます。具体的には目的のたんぱく質を生産する微生物の開発、AIやシミュレーションを活用した安定的な商業生産プロセスの迅速な開発、製品開発段階でのライフサイクルアセスメントの実施を含み、社会実装を見据えて取り組んでいきます。
<サステナビリティ>
世界のビジネスにおいて最も信頼されるサステナビリティ評価の提供をミッションとするEcoVadis社(フランス)による2024年のサステナビリティ調査において、当社グループ全体の取組みに対する評価を受け、世界中の評価対象企業のうち上位5%の企業が授与される「ゴールド」評価を獲得しました。前回の「ゴールド」評価獲得は2019年で5年ぶりとなります。EcoVadis社は、180カ国以上、220を超える業種の企業を対象に、「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な調達」の4つの側面から企業のサステナビリティを評価しており、評価対象となって以来過去最高となり、当社グループのサステナビリティに関する先駆的な取組みや開示の包括性が評価されたものと考えています。
また、当社は、世界的なESG株価指数である「Dow Jones Sustainability Indices」の「World Index」の構成銘柄に11年連続で選定されました。世界の主要企業をガバナンス・経済、環境、社会の3つの側面から分析・評価し、サステナビリティ(持続可能性)に優れた企業を選定するもので、2024年は、グローバル主要企業3,500社を対象に調査が実施され、321社(うち「Food Products」産業ではグローバル7社、日本3社)がDJSI Worldに選定されています。環境側面での「エネルギー」、「廃棄物と汚染物質」、「気候戦略」、社会側面での「人的資本マネジメント」、「労働安全衛生」、「健康と栄養」などの評価項目において高い評価を獲得しました。
当社は、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD:World Business Council for Sustainable Development、スイス)に加盟しました。持続可能な開発を目指して1995年に設立され、世界で225以上の企業が参画している国際経済団体です。本加盟を通じて、当社グループは「Agriculture&Food Pathway」及び「Climate Imperative」の活動に参画します。
さらに、当社は経済産業省と㈱東京証券取引所が共同で選定する「サステナビリティ・トランスフォーメーション銘柄(SX銘柄)2024」にも選定されました。SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同期化させ、そのために必要な経営・事業変革を行い、長期的かつ持続的な企業価値向上を図っていくための取組みです。「SX銘柄」は、SXを通じて持続的に成長原資を生み出す力を高め、企業価値向上を実現する先進的企業群を選定・表彰するもので、今回が第1回目の選定となります。選定にあたり、アミノサイエンス®という独自の競争優位性を活かしたビジネスモデルを確立し、ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)実現に向け、2050年を見据えた長期視点・マルチステークホルダー視点でマテリアリティを特定していること、環境負荷の削減と健康寿命の延伸という2つのアウトカムを通して、志(パーパス)である「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」ことを実現するというストーリーを構築していること、等が高く評価されました。
また、当社は、環境省と消費者庁が主催し、食品ロスの削減に効果的かつ波及効果が期待できる優良な取組みを実施した企業などを表彰する令和6年度「食品ロス削減推進表彰」において「環境大臣賞」を受賞しました。2022年に立ち上げた当社のフードロス削減プロジェクト「TOO GOOD TO WASTE ~捨てたもんじゃない!~™」を通じた、生活者の行動変容の促進と社内外との協業によるエコシステム構築への貢献が評価されました。
さらに、当社は、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、キユーピー㈱と官民連携で取り組む、業種を越えたプラットフォーム「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス」の活動として、マヨネーズボトルの資源循環に向けた協働を開始しました。国内のポリエチレン(PE)マヨネーズボトルの水平リサイクルにおける技術検証は、先行事例に乏しく、社会実装に向けては多くのデータを収集し、技術的な知見を集め、評価の仕組みを構築する必要性があります。マヨネーズを長く扱ってきた両社の知見を組み合わせることでこの難題を解決し、水平リサイクルを社会実装するために必要な技術を確立していきます。
全社に係わる研究開発費は、9,562百万円です。
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