双葉電子工業
【東証プライム:6986】「電気機器」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、全社員が共有する理念・行動体系である「Futaba Way」の下、Futaba哲学の「本質之直視」に基づき、事業戦略の策定から業務執行全般・モノづくりの現場に至るまで、常に本質を見失うことなく事業を推進しています。これにより、「なくてはならない器材・サービスを創出し世界の発展に貢献する」ことを企業理念としています。
この理念を実現するために、AIやIoTなどの技術を取り込んだ「モノづくりの進化」や、Futabaテクノロジーを進化・融合させた「新製品開発」に注力しています。これに加え、「モノづくりを基軸としたソリューション」による事業領域の拡大や、「市場ニーズ」をダイレクトに商品企画や製造に反映させる取り組みも推進しています。また、「選択と集中」により成長市場に向けた差別化と効率化を進め、収益性の拡大および継続的な企業価値の向上を図ります。さらに、コンプライアンスの徹底による公正で透明性の高い経営を実践するとともに、持続可能な社会の実現を目指し、事業活動に取り組んでいます。
(2)経営環境
当社グループを取り巻く経営環境は、雇用情勢・所得環境の改善を背景に緩やかに回復してきましたが、中東やウクライナにおける戦争の長期化、エネルギー・原材料価格の高止まり、中国経済の先行き懸念等、世界経済は依然として先行きが不透明な状況が続いています。
このような経営環境の変化が事業に及ぼす影響を取締役会、経営会議等の場で検討し、適時適切に対応してきました。
今後の状況については、世界的な地政学的リスクの高まりや経済の先行き懸念などを背景に、各国間の貿易や投資が縮小するなど不安定な国際情勢の中、エネルギー・原材料価格・運送費などの上昇、さらには米国の関税政策影響が想定され、引き続き厳しい経営環境が継続するものと予想されます。
当社を取り巻く市場環境は、依然不透明な状況が予想されますが、中長期的な市場ニーズでは、コネクテッド化や自動化等の高付加価値化ならびにEV化の進展、またサービス、エネルギー、デジタル、インフラ等の領域においてソフトウエア・システム化を駆使した多様なモビリティ製品や耐環境製品に加え、検査・監視、生産合理化支援等のニーズが継続することが見込まれます。
このような状況から、電子機器事業および生産器材事業では、センサーや無線技術を活用した融合商品、IoT機器やサーボ関連機器、UAV関連機器、成形・生産合理化機器等への継続的な需要が見込まれると捉え、タイムリーな市場投入を進めるとともに、持続的な利益創出と成長軌道への変革を進めていきます。
(3)中期経営計画と目標とする経営指標および優先的に対処すべき課題
当社グループは、企業ビジョン「Futabaテクノロジーを進化させ、世界で躍進するリーディングカンパニーを目指します」の実現に向けて、中期的な戦略、方針を示すために、3カ年の中期経営計画を策定しています。
「2024-2026年度 中期経営計画」に基づき、事業体制の再編・強化および経営基盤の強化に取り組み、持続的な利益創出と成長軌道への変革を進めています。
中期経営計画の初年度である2024年度では、4つの基本方針に基づき各施策に取り組みました。
① 構造改革の完遂
電子機器事業では、アウトセルタッチセンサー事業の事業終息および有機ELディスプレイ事業の自社生産終了を計画通りに実施し、事業基盤の効率化と新たな価値創造に向けた体制整備に取り組みました。また、コア技術開発センターに事業化推進部門を設置し、事業部門と関連した高付加価値製品の開発を推進する体制を構築しました。
② ソリューション事業領域への展開
イ.電子機器事業
システムソリューション事業は、顧客提供価値を「無線・IoT・システム技術を用いて、お客様の時間を創出」と定義し、産業用ラジコン機器は、成長が著しい建設機械および農業機械市場に向けて、遠隔操作に対応し、作業環境改善に貢献する無線リモコンを提案しています。
2024年度は、ウエストタイプおよびピストルグリップタイプの新型産業用無線リモコンを開発し、国内外のお客様による評価が進んでいます。2025年度は新型産業用無線リモコンの量産立ち上げを確実に実施し、国内外市場への拡販を推進します。
ロボティクスソリューション事業は、顧客提供価値を「無線・制御技術を基盤にホビーからビジネスまでの幅広いシーンに対応した製品とサービスの提供」と定義し、ロボティクス製品は、ドローンおよび産業用サーボFA(ファクトリーオートメーション)市場に、各種製品・サービスを展開しています。
2024年度は、ドローンにおいては、和歌山県すさみ町での南海トラフ地震向けを始め、防災用途での実証実験を実施しました。また、産業用サーボにおいては、ベクトル制御による発熱低減および長寿命化などの高機能化を推進しました。2025年度は、ドローンにおいては純国産・カスタム対応を強みにサービスを拡充し、点検・防災用途での導入を推進します。また、産業用サーボにおいては、FA市場での認知度向上と、設備メーカーとの連携強化を通じて拡販を推進します。
なお、電子機器事業では災害時の状況確認のための製品やデジタル関連など、新たな事業領域への拡大を進めます。
ロ.生産器材事業
生産器材事業は、顧客提供価値を「金型用器材加工を基礎としたソリューション」と定義し、成形・生産合理化機器は、射出成形機市場向けに成形に関わる工程を合理化し生産性を向上する、金型内計測システムやホットランナシステム等の製品を提供しています。
2024年度は、新たに「射出成形AIシステム」をリリースしました。本システムは、金型内計測システムで取得したデータとAI技術を活用し、お客様の成形条件最適化および生産性向上に大きく貢献する画期的なシステムです。また、今後さらなる市場成長が見込まれるアジア地域のお客様向けに、金型内計測システムのセンシングスクールを中国に2拠点、タイに1拠点開講しました。2025年度は、さらなるシステム開発の強化および海外拠点のサポート体制拡充にも注力していきます。
なお、生産器材事業では部品供給体制についてBCP観点でのサプライチェーンの再検討、人手不足に対応するための自動化投資、遠隔操作やデータ取得による生産性の向上への寄与など、ハードウエアのみならずソフトウエア・サービスへ事業領域を拡大していきます。
③ コーポレート機能の強靭化
2024年度は人財強化施策として、マネジメント力、個のスキル強化のための研修プログラムの拡充、後継者育成計画の策定・推進、チャレンジ精神と成果の適正評価を目的とした人事制度の改定を実施しました。また、経営層と従業員の双方向対話会を継続し、現場の意見を施策に反映する活動も併せて実施しています。
DX推進においては、全社基幹システムの刷新プロジェクトを始動しました。また、社内情報の学習を通じたAIによる業務効率化を実施しました。
リスクマネジメントにおいては、全社リスク・セキュリティ教育を継続し、情報セキュリティ基本方針の策定を実施することにより、インシデントを未然に防ぐなど有効に機能しました。これらの取り組みを通じて、当社グループ全体の競争力と持続可能性を高める基盤を構築していきます。
④ ステークホルダーとの信頼関係構築
2024年度は、SDGs活動においては計画通りの活動を実施しました。また、収益体質構築においては、在庫削減と生産終了拠点の清算を実施しました。
企業価値向上においては、コミットメントライン契約の延長と、機関投資家との対話を推進しました。
これらの活動を通じて、ステークホルダーとの信頼関係を深め、持続的な成長を支える体制を強化していきます。
これらの施策では計画通りに進捗したものがある一方、市場環境や顧客ニーズへの対応など、成長軌道への変革に向けた課題も明らかになりました。2025年度以降は、経営資源の配分や具体的戦略の見直しを進め、計画の実行力をさらに高めていきます。中期経営計画の経営目標である2027年3月期売上高575億円、営業利益15億円を達成し、企業ビジョンである「私たちFutabaグループはなくてはならない器材・サービスを創出し世界の発展に貢献します」を実現するため、各施策を着実に進めていきます。
今後とも需要変動や部材高騰、為替レート変動、地政学上のリスクの影響を注視することにより、リスクや不測の事態を想定し、経営環境の変化に臨機応変に対応できる体制の構築や柔軟な働き方への取り組みを実施し、迅速かつ的確な研究・製品開発と生産体制の構築を推進していきます。なお、米国における関税政策については、当社においても、複数のケースの想定に基づき需要減退や関税そのものによる業績への影響度合を検証しているものの、今後実施・継続される関税政策の内容および期間が流動的であり、現時点では影響額自体を合理的に見積もることが困難であるため、2025年度の業績見通しの前提には含めていません。当社としましては、関税政策に関する政府間協議を含む動向を注視しながら、価格転嫁やサプライチェーン最適化に加え、一部製品について中国から台湾等への生産移管の実施、さらには米国への生産回帰に併せて米国子会社でのEMS生産を拡大するなど、各種対応策を果断に実行し、関税政策の影響緩和に努めていきます。
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