伯東
【東証プライム:7433】「卸売業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針・経営戦略等
近年の世界情勢は、トランプ政権が掲げる「米国第一」の各政策や、世界的な物価・資源高、半導体の戦略物資化など、不透明性は高まっております。このような状況のもと、当社グループは中長期的な成長拡大と新たな価値創出を目指すため、2029年3月期を最終年度とする中期経営計画「Hakuto 2028」を2025年4月に策定いたしました。エレクトロニクスとケミカルの2つの事業領域、そして商社とメーカー機能を併せ持つハイブリッド企業として、顧客優位で価値の向上に取り組み、中長期的な成長拡大を目指してまいります。
(事業環境)
当社グループが主力事業を展開しているエレクトロニクス業界は、AI関連投資を中心に引き続き高い成長率が見込まれております。また、環境への更なる意識の高まりにより、代替エネルギー及び水や空気などの環境対策領域で新たなビジネスの機会が生まれております。一方では車載関連や産業機器向けを中心に需要の低迷が継続し、AI関連の好調さとそれ以外の低調さの二極化が明確になるにつれ、既存技術や価値の陳腐化が進行しており、当業界で求められる商社の役割・機能が変化し、その存在意義が改めて問われております。
(当社グループのビジョン)
当社グループのビジョンは、「顧客の進化を加速させるイネーブラーとしてかけがえのない存在になる」です。当社グループは、下記3つの「H」を念頭に、これまで培ってきた技術力という強みに加え、問題解決に向けた共創をリードすることで、顧客の事業成功・事業成長の遂行に必要な価値を提供する企業=イネーブラーとしての役割を拡大し、ビジョンの実現を目指してまいります。
〔High-Value〕
顧客を進化させる価値提供
〔High-Technology〕
最先端技術を追求し、技術、情報を知見として提供する構想力・発想力
〔Humanity〕
人のこころを熱量で動かす
(当社グループの役割)
当社グループはエレクトロニクスとケミカルの2つの領域それぞれに商社機能とメーカー機能を有し、多様な顧客ニーズに対応してまいりました。また、独立系専門商社として仕入先ごとに選任を置き、仕入先、顧客いずれにも自由度の高い強固な関係性を構築してまいりました。顧客を取り巻く環境は選択と集中による事業ポートフォリオの変革や新たな競合の出現、レベルアップしていく環境基準への適用など、より複雑化した課題に直面しております。当社グループはモノ、サービス、最先端テクノロジーを組み合わせ、複合的かつ最適な価値を提供してまいります。
(事業戦略)
顧客課題に応じた提供価値の複合化と新規創出が重要な事業戦略であると認識しております。そのため、M&Aや資本提携による新たな価値の獲得を通じて、注力事業及び周辺領域をさらに深掘りし、現有資産の活用やシナジー効果を創出します。また、新規事業開発に特化した「ビジネスインキュベーションセンター」を新設し、全社視点での事業・ソリューション開発を推進してまいります。これらの事業戦略で、顧客の商品開発やバリューチェーン強化に貢献してまいります。
(経営目標)
本計画の最終年度となる2029年3月期における定量目標は以下の通りです。
経営目標 2029年3月期 | |
連結売上高 | 2,500億円以上 |
連結営業利益率 | 4.0%以上 |
ROE | 10%以上 |
(人材に関する取り組み)
ビジョン実現のために必要となる人材を再定義し、それに基づく採用と育成の強化に取り組むことによって、イネーブラーを体現する多様な人材の確保を目指します。一例としてエンジニア人材の採用強化や女性管理職の計画的育成、オンライン教育システムの充実による自律的な学びの支援、DX戦略の一つである「全員参加型伯東デジタル改革」を加速するDX人材の育成などに取り組んでまいります。
(株主還元方針)
当社グループでは、資本収益性の向上を経営上及び財務上の重要課題と位置付けております。本計画期間中は安定的な株主還元を目指しながらも、成長投資とのバランスを鑑みた方針としてまいります。具体的には、配当性向70%(±5%)に加え、資本配当率(DOE)5%の配当下限値を設定いたします。
本計画の着実な遂行により、当社グループならではの提供価値を追求し、顧客からかけがえのない存在として揺るぎない信頼を確立してまいります。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、各事業における技術の進化による新たな競合の出現、既存技術や価値の陳腐化の進行、専門商社としての存在意義の低下を優先的に対処すべき事業上の課題と認識しております。2024年度は生成AI関連の好調さや、車載関連分野での主要顧客への一時的な販売増加もあり、前年度業績を上回ることができました。エレクトロニクス業界は引き続き高い成長率が見込まれている一方で、EVの成長鈍化やAI関連以外の分野での最終需要の低迷など、先行きの不透明感が残っております。中期経営計画「Hakuto 2028」における目標は、顧客課題に応じて商品・製品とソリューションを組み合わせた複合的な価値提供と、それを支える事業ポートフォリオの拡充であると考えております。中期経営計画の初年度となる2025年度は、諸施策を着実に実行することにより、各事業セグメントの価値向上に取り組むことが重要と考えております。
各事業セグメントにおける優先的に対処すべき事業上の課題、並びに財務上の課題は以下の通りであります。
(電子部品事業)
電子部品事業は、2025年3月期は産業機器分野では顧客の在庫調整が続き低調だったものの、車載関連分野で主要顧客への一時的な販売増加もあり、当社グループにおいて最大の売上規模があります。また、セグメント利益も前期に引き続き外貨建て輸出取引の為替影響等の外的要因により高水準を維持しております。同事業の売上高の8割弱を占める半導体デバイス部門は近年車載分野や5G通信分野などにおいて積極的に商権を拡大してきたものの、車載はEVの低迷が継続したことにより、投資停滞の影響も受けております。市場低迷に加え、他メーカーへの置き換えの加速などもあり、需要の回復には不透明感があると認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、モノを提供しながら顧客の課題をとらえ、コト・情報を複合的に提供するソリューションプロバイダーを目指すことにより、存在価値を高めていくことと考えております。また、エンジニアの増員や外部との業務・資本提携を通して、バリューチェーンの強化と領域拡大を目指すことにより、当社グループの役割拡大を図ることと考えております。
(電子・電気機器事業)
電子・電気機器事業は、当社グループにおいては電子部品事業に次ぐセグメント利益を生み出している比較的高収益な事業と位置付けており、2025年3月期は真空・理化学関連機器は堅調を維持し、パワーデバイス向けは前年度受注分の出荷などにより販売が増加しました。しかし、EVの成長鈍化やPC、モバイルなどの低調にともなう顧客の設備投資計画の延期及び縮小に加え、貿易規制等による海外販路開拓の遅れなども成長性鈍化の要因になるものと認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、検査や加工など各種工程を網羅する新規商材開発を通してポートフォリオの拡充を図り、顧客のあらゆる課題に対応できる体制を整えることと考えております。それと同時に、IT及びデジタル技術を駆使した当社グループ独自のエンジニアリングサービスを高度化させ、商社機能とメーカー機能を強化することで、最先端の技術サービスを提供することと考えております。
(ケミカル事業) 注:2026年3月期より、工業薬品事業からケミカル事業へセグメント名称を変更いたします。
ケミカル事業は、当社グループにおいては特色あるメーカー部門と位置付けておりますが、他のセグメントと比較すると成長性、規模ともに劣後しております。これは、同事業の既存マーケットが主に国内の石油・石油化学関連、紙・パルプ関連という需要が減少しつつある産業であるという外的要因に加えて、環境ビジネスを中心とする新事業展開や海外展開が計画通り進まなかったことなども要因になっていたものと認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、水処理を中心とする環境領域や新規化粧品基材などのライフサイエンス領域で新事業を創出し、薬品プラスアルファの価値を提供していくことと考えております。また、自社製品の開発に加え分析メニューなどとの組み合わせによる複合的な提案を行うことで、既存事業のソリューションの強化・拡充を推進していくことと考えております。
〔参考〕:過去5期のセグメントごとの売上高、及びセグメント利益(金額単位:百万円)
決算期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | |
電子部品事業 | 売上高 セグメント利益 | 134,949 919 | 157,119 3,682 | 197,818 10,462 | 144,287 5,929 | 142,961 5,239 |
電子・電気 機器事業 | 売上高 セグメント利益 | 19,029 1,770 | 21,609 2,104 | 22,717 1,665 | 26,547 1,777 | 27,241 2,498 |
工業薬品事業 | 売上高 セグメント利益 | 10,962 890 | 12,300 1,337 | 12,615 849 | 10,788 35 | 10,789 △9 |
海外事業においては中華圏・ASEANのエリア統括機能を強化し、人的リソースを共有できる組織を編成することで、新規事業及び地域の開拓に注力してまいります。また、各国の環境意識の高まりや製造現場における効率化の需要の高まりに応じて、モノだけでなくソリューションを提供することで顧客の課題解決に取り組んでまいります。
(財務上の課題)
前中期経営計画期間中のROEは自社の株主資本コストを上回る水準で推移したものと認識しておりますが、引き続き資本効率を高めていくことが優先的に対処すべき課題と考えております。具体的な施策として、運転資本の効率化や政策保有株式の縮減によって創出されたキャッシュを新規事業やM&Aを含む成長投資に振り分けるとともに、安定的な株主還元を実現することで、キャピタルアロケーションの最適化を図り、資本収益性を向上させることで企業価値を高めてまいります。
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