三越伊勢丹ホールディングス
【東証プライム:3099】「小売業」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、創業以来一貫して“お客さま第一”の精神を持ち、常に時代の変化や価値観の多様化に合わせ、生活に豊かさを提供することに邁進してまいりました。長期に目指す姿を「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」と定め、その実現に向けた道のりを3つのフェーズ(再生~まち化準備~結実)に区分し取り組みの進化を図っております。「再生フェーズ」にあたる前中期経営計画(2022~2024年度)においては百貨店を中心にグループの再生を大幅に進展させるとともに、「個客業」への変革の足場を固めてまいりました。2025年4月に始動させた新中期経営計画(2025~2030年度)では、「まち化準備フェーズ」としてこれまでの百貨店の枠を超えた個客視点での多様な価値を提供するために「館業」から「個客業」への変革を図り、企業価値の向上を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、営業利益とともに株主資本コストを意識し、ROE等の複数の経営指標を掲げ、将来にわたる企業の持続的成長と企業価値の向上に取り組んでおります。6ヶ年の新中期経営計画(2025~2030年度)のフェーズⅠ(2025~2027年度)の最終年度となる2027年度には営業利益850億円、ROE9.8%の実現を目指し、フェーズⅡ(2028~2030年度)終了時点では営業利益水準を1,000~1,100億円規模、ROE10~11%水準で計画しております。また、「個客業」を目指す当社グループ独自の経営指標として、カードやアプリ等でつながったお客さまによる売上高(識別顧客売上高)等の「顧客KPI」を掲げております。2027年度には識別顧客売上高6,870億円、2030年度には同7,140~7,310億円規模を計画しております。
(3)経営環境及び対処すべき課題
①外部環境
マクロ環境においては、国内人口の減少や高齢化基調が進行する中、1人当たり実質GDP成長率の鈍化、資源・エネルギーや食料品を含む消費財価格の大幅な上昇等、国内経済の環境は厳しさを増しております。加えて、欧州や中東等での地政学リスクの顕在化や国家間での関税競争の激化、急激な為替変動等、当社グループの業績に影響を及ぼす不透明な状況が続いております。
そのような環境においても、国内都市部人口やアジア圏も含めた世界人口は引き続き増加すると予測されており、純金融資産1億円以上を保有する富裕層世帯数は増加が予測されております。また、消費動向が二極化する中、百貨店が強みとする「こだわり消費」の市場は拡大することが期待されます。当社グループでは、環境が大きく変化する中でも成長が見込まれる要素を機会ととらえて、中長期的な成長を目指してまいります。
②内部環境
前述の通り、前中期経営計画(2022~2024年度)においては、グループの再生を大幅に進展させるとともに、「個客業」への変革の足場を固めてまいりました。
「再生」の主な取り組みとしては、徹底した販管費コントロールや事業再編、国内百貨店での要員数適正化等の“科学”の視点による生産性の向上を図りました。
「個客業への変革の足場固め」としては、アプリを中心に識別顧客数を拡大し、そのつながったお客さまに向けた個別のマーケティング活動や国内外の外商顧客へのセールス活動を強化する等の顧客基盤の確立を図ってまいりました。また、百貨店事業を支える金融事業や不動産事業、その他の関連各事業がそれぞれの独自性を磨くとともに、事業間での連携を深めて外部収益の拡大を図る“連邦”戦略を進めております。
(4)中長期的な経営戦略
①中長期ステップ
当社はグループが長期に目指す姿である「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」の実現に向けた中長期のステップを「再生」「まち化準備」「結実」の3つのフェーズで描き、バックキャストの視点で中期の経営計画を組み立てております。
②新中期経営計画(2025~2030年度)
当社グループは、前進の三越呉服店による「デパートメントストア宣言」(1904年)から120年余が経過した今、2025年4月より始動させた新中期経営計画において、前中期経営計画で固めてきた基盤を足掛かりとして、百貨店の館を前提としたこれまでのマス向けビジネスモデルである「館業」から、個のお客さまとのつながりをベースとする 「個客業」への事業構造の変革を本格的に進めてまいります。
「個客業」において、世界中からお客さまを集め、識別化し、つながったお客さまに多様な顧客価値を提案するとともに、“連邦”活動による事業間の連携を深めた上で、「世界」「時間」「空間」「用途」の4つの拡大をキーワードとした新たな事業機会を獲得し、利益拡大を図ってまいります。
当社グループが考える「個客業」プロセスの活動は次の通りです。
<集客> 店舗やコンテンツの魅力で世界中からお客さまを集めます。
そのために、伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店等の更なる「高感度上質店舗化」に向けた
店舗リモデル等により独自性の強化を図ります。
<識別化> 集まった顧客とカードやアプリ等の「仕組み」でつながります。
今後、国内顧客の識別化100%を目指し、更にターゲットを海外顧客へ拡大。カードとアプ
リの機能を駆使したさまざまな識別化戦略を展開してまいります。
<利用拡大> つながった顧客に当社グループの各種事業による多様な価値を提案します。
識別化により充実する顧客情報をもとに“個客”単位のコミュニケーション活動を強化す
るとともに、グループ内での“連邦”活動を活発化させ、BtoB・BtoCビジネスの展開拡大
を図ります。
<生涯顧客化>顧客とのつながりを深め、LTV(ライフタイム・バリュー)を最大化します。
つながった顧客との接点の深化を図りつつ、これまで百貨店が取り扱って来なかった商品
やサービスの提案強化により顧客の生涯におけるさまざまなニーズに幅広くお応えしてま
いります。
これらの「個客業」プロセスの活動を当社グループの中核である百貨店事業の他、金融事業、不動産事業、その他関連事業の多様な事業領域において「“連邦”戦略」や「まち化戦略」等の重点戦略と掛け合わせて推進し、「個客業」への変革を図ってまいります。
■事業別戦略
①百貨店事業
百貨店事業では、「個客業」プロセスを本格展開し、「まち化」の中核として圧倒的な独自性で世界からお客さまを集める“特別な”百貨店を目指します。伊勢丹新宿本店は世界一・唯一無二の「最新・最先端」、三越日本橋本店は比類なき「伝統・文化芸術・暮らし」、三越銀座店は銀座から世界へ発信する「グローバルストア」を標榜し、店舗リモデル強化によるハイタッチMDの拡充やPB等での独自性の追究等を通じ、各店のコンセプトに応じた魅力度の磨き上げを図ります。また、地域百貨店においても「百貨店の科学」の視点で構造改革を進めるとともに、エリアでの集客・識別化の推進等によりビジネスモデルを進化させ、安定黒字化を図り、地域の高感度上質消費を支える唯一無二の存在を目指してまいります。
②海外事業
海外事業では、“選択と転換”から“展開と深掘”フェーズに移行し、エリアのコンディションに応じた構造改革の進行とフード&ビバレッジ領域等での新たなビジネスモデルの探索により、事業領域を再構築してまいります。新たなビジネスモデルの一環として、フィリピン・マニラにおける小売事業とレジデンス、タイ・バンコクにおける小売事業とオフィスを掛け合わせた複合不動産開発に参画しております。
③不動産事業
不動産事業では、世界中から顧客を集め、用途をつなぎ合わせ、各事業の価値を最大化させる「まち化」の具現化を目指します。各拠点の開発計画と「まち」での提供価値の設計を本格化させながら、ホテルやレストランなどの高感度上質コンテンツの開発やその専門領域を担う人財の育成に取り組みます。
④金融事業
金融事業では、暖簾とグループ顧客基盤を活かし、“三越伊勢丹グループならではの価値”を提供する金融サービス業を確立します。カード領域では、アプリ会員などの百貨店ライトユーザーに向けた年会費永年無料の〈エムアイカード ベーシック〉を2025年3月にローンチ。今後、新たな上位カードの発行や新ポイント制度の導入も計画しており、顧客ニーズに沿ったカード戦略により顧客拡大を図ってまいります。金融領域では、ショッピング保険や資産運用等の百貨店ならではの金融サービスを拡充させるとともに、アプリのみ顧客などのカード会員以外の顧客へのサービス提供にも取り組んでまいります。
⑤国内関連事業
国内関連事業では、「BtoB」「BtoC」ビジネスの拡大による、各事業の収益拡大とビジネスモデルの進化を目指します。グループ内での内製化を推進するとともに、グループの持つアセットを活用した飲食等の新たな事業機会の創出や、「まち化戦略」で生じる新たな事業機会への参画等によるマネタイズで外部収益をさらに拡大していきます。
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