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【東証プライム:3612】「繊維製品」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針等
当社グループは、「創造全力、価値共有。つねに、その上をめざして。」をコーポレート・ステートメントとして設定し、お客様へ価値を提供し続ける仕組みをつくり、それを実行することにより、お客様の共感をいただき、つねに新たな可能性に向けて自らを革新し続けていくことに挑戦しております。
具体的には、当社グループは、1992年、顧客価値と生産性の最大化を目的に、消費者を起点に小売から生産までを一気通貫させ、ロス・無駄を価値に変える「スパークス(SPARCS)」構想を発表しました。これはファッション産業において、それまで分断されていたビジネスモデルをつなぎ、在庫ロスと機会ロスを最小化すると同時に、当社グループにおいてコアとなる生産系、開発系、マーチャンダイジング系、店舗運営系のそれぞれの業務において再現性のある仕組みをプラットフォーム化することで競争優位性を高め、変化する顧客のニーズにスピーディーに応えることを意味しております。当社グループは、「スパークス(SPARCS)」モデルを日々進化させ、これまで培ったプラットフォームを梃子に、生産から販売に至るすべての業務やリアルとネットのオペレーションを情報で同時につなぐべく、IT技術で事業基盤を絶え間なくアップデートし続けております。
そして、現在、中長期な基本方針として、「SPARCS構想」をライフスタイルやサーキュラー領域にまで拡張するとともに、プラットフォーム機能をさらに強化していくことで「ワールド・ファッション・エコシステム」の確立と進化を目指しております。また、「ワールド・ファッション・エコシステム」を当社グループ以外のお取引先様にご利用頂くことで、多様なブランド、ファッションの楽しさ、価値あるモノを、あらゆる形でお客様にお届けし、ロス・ムダのない持続可能なファッション産業の構築をめざしております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループでは、本業の稼ぐ力を表す「コア営業利益」を最も重要視する経営指標としております。コア営業利益は、IFRSに基づく売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いて算出した、日本会計基準の営業利益に相当する数値であり、この持続的な向上を成長性の視点での重要指標に位置付けております。
この他、当社グループでは、次期の中期経営計画で本格的な成長戦略を追求できるよう、価値創造的な状態を当中期経営計画「PLAN-W」で創り上げることが重要と認識しております。具体的には、「PLAN-W」において、最適資本構成の下でROEがCOEを超過する状態や、投下資本利益率(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を上回る状態を目指します。このため、これまでのROA(コア営業利益ベース)に替えて、新たにROICを経営指標に設定しております。また、債務返済の能力及び事業の収益性・成長性を持続的に向上できるよう、有利子負債と株主資本の最適な資本構成を検討する目的から、従来のD/Eレシオに替えて、新たにネットD/Eレシオを財務体質の健全化指標といたしました。さらに、株主資本に対するリターンの効率性を表すROEの維持・向上にも注力しております。
なお、現在の収益の柱であるブランド事業においては、商品(在庫)の収益性の指標として、交叉比率の分解能である「粗利益率」と「在庫回転率」の改善に取り組んでおります。また、成長性の指標としては、事業拡大に取り組んでいる非アパレル事業のコア営業利益が、当社グループ全体のコア営業利益に占める割合のほか、当社グループの持続的な成長をけん引するECチャネルでの売上高の連結売上高に対する比率も重視しております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、SPARCS構想を進化させ、ロス・ムダのないファッション産業世界の追求を行い、ファッションの多様性と持続性を実現し、お客様にあらゆる形でファッションの楽しさを提供し続けたいと考えております。そのために、ファッション産業の共通基盤となりうるワールド・ファッション・エコシステムの確立を目指しております。ファッションビジネスで培ったノウハウ・仕組みをさらに進化させ、多様なサービス・商品を提供してまいります。事業戦略におきましては、ブランド事業を中心としたB2C事業に加え、プラットフォーム機能をワールドグループ以外のお取引先様へ提供することで、B2B事業の拡大を進めております。ブランド事業・デジタル事業・プラットフォーム事業を中心とした事業ポートフォリオマネジメントによりグループ全体での成長性と収益性の改善を進めてまいります。
ブランド事業においては、市場の変化に応じて、業態開発・ブランド開発を進めてまいりました。これにより百貨店、駅ビル、ファッションビル、ショッピングセンター、ECチャネルなどあらゆるチャネルにブランド展開を行うとともに、取り扱うアイテム・価格帯も市場のニーズに対応し、広範囲に展開しております。今後も市場の変化に対応したブランドポートフォリオ戦略により、ブランド事業は今後も持続的な成長に取り組んでまいります。
デジタル事業においては、テクノロジーを駆使した他社向けのデジタルソリューションサービスを拡大することで、B2B事業を拡大しておいります。B2C事業におきましては、ユーズドセレクトショップやオフプライスストア事業の運営、大量生産から生じうる大量廃棄を回避してムダなく消費者に製品をお届けするサーキュラー事業に資源を集中して成長を加速させてまいります。
プラットフォーム事業においては、アパレル雑貨のOEM・ODMにより商品を提供する生産プラットフォーム、店舗開発から販売代行・教育研修などのサービスを提供する販売プラットフォーム、ブランディング・空間設計・店舗デザインからVMD業務などを提供するライフスタイルプラットフォーム、経理代行業務・購買コンサルなどを行うシェアードサービスプラットフォームなど、ワールドグループが保有するプラットフォームを業界内外のお取引先様へ提供しております。さらにこの機能を強化し、お取引先様のニーズに対応した商品・サービスを開発・提供することでB2B事業を拡大してまいります。
当社としては、ブランド事業を着実に利益成長させながら、ファッションビジネスで培った仕組み・ノウハウを生かし、デジタル事業・プラットフォーム事業など独自の多様な事業を展開していくことで、持続的な売上・利益成長を実現してまいります。
また、次の柱となる再生投資事業・海外事業にも着手しており、次なる成長に向けた準備も進めております。
(4)経営環境及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く経営環境は、人口減少や少子高齢化の進行にともなう販売数量減少に加えて、国内アパレル市場も成熟化してプレイヤーの淘汰が進む一方、海外生産地での加工賃上昇や為替変動による仕入価格の上昇に加えて、人手不足による人件費や物流費といった経費増加も生じるなど、引き続き厳しい状況が続くことが予想されます。また、デジタル化の進展を背景として消費者の購買行動は急速に変化しており、新たなビジネスチャンスが生まれているものの、新規参入企業の誘発などを通じて異業種や外資系も巻き込んだ競争激化が継続しております。
新型コロナウイルス感染症は消費者の生活様式や購買行動を変化させたほか、ロシア・ウクライナ情勢の緊迫による原料価格の高騰等、深刻な世界的ダメージにより、引き続き厳しい市場環境が続くことが想定されます。
こうした国内アパレル市場や消費者の大きな変化の中で、永続的に成長を遂げ、勝ち続ける企業組織であるためには、これらの環境変化の認識のもと、更なる変革が必要であると認識しております。そして、自己変革を具現化するためにも、以下の点を対処すべき課題と認識し、解決に向けて重点的に取り組んでまいります。
①事業収益力の向上
当社グループは、各事業セグメント間の密接な連携や相互の活用で一枚岩を図りつつ、それぞれのセグメントで異なる外部顧客に向けた営業活動等に取り組んでおります。
それぞれの事業セグメントの具体的な課題や取り組みについては、以下のとおりであります。
(ブランド事業)
国内外のアパレルブランド及び国内ライフスタイルブランドにおいては、強化すべきブランドと店舗への選択と集中に取り組んでまいりました。デジタル事業、プラットフォーム事業を拡大させていくためにも、ブランド事業が強靭であるということが当社グループの競争力の源泉との認識のもと、子会社各社が市場最適に向けた改善活動を行っていることに加えて、様々なテーマの改革をグループ横断で実施しています。
成熟した市場では、過去のようなブランド開発や新規出店だけに頼った収益成長が見込めないと判断しており、また、コロナ禍での新しい価値観に対応するためにも、既存のブランドや店舗の付加価値を再構築するべく、グループに分散していたマーケティング組織を統合しマーケティング強化を進めるとともに、店頭で販売を担うドレッサーのインフルエンサー化によるSNS経由でのマーケティングを進めるなど店舗とECのシームレスなサービス提供に向けて総力を挙げて取り組んでまいります。
これらの取り組みを通じて、既存店売上前年比については、「利益を伴わない売上は追わない」という基本方針を維持して、値引き販売を抑制しつつ、100%超を目指してまいります。この他、国内ライフスタイルブランド店舗の出店や、主に地域密着が重要な近隣商圏型ショッピングセンター(NSC)を対象に、当社グループのアパレル企画開発力とストアの運営ノウハウを最大限に活用したフランチャイズ事業の出店や、店舗での顧客体験価値向上の一環として店舗改装も進めてまいります。
投資サブセグメントには外部より連結加入してきた会社が含まれております。事業再生が必要な場合、ブランドポートフォリオや会社規模等を総合的に勘案し、㈱ワールドインベストメントネットワーク及びその傘下の㈱W&Dインベストメントデザインのもとで、事業再生支援を行っております。これらの会社に対する事業開発の推進やその先にある収益構造の確立といった実績を積み重ね、一連の取り組みをサービスとして当社がアパレル業界へ展開していくことを目指してまいります。なお、傘下の子会社については、事業のPMI(M&A後統合プロセス)を含む改革を実行し、一定程度の収益確保が認められる場合、当該子会社の事業内容に適した事業セグメントへ移管しております。
(デジタル事業)
デジタル事業では、B2BソリューションとB2Cネオエコノミーという二つの領域に分け、B2Bソリューションでは当社グループの内から外へサービスラインを展開しており、B2Cネオエコノミーでは顧客の変化に適合した新たなファッション・サービスの開発に取り組んでおります。
B2Bソリューションにおいては、EC等における受注、梱包、発送、入金等の一連のプロセスを指すフルフィルメント、バリューチェーンをフルカバーする多様な機能群に至るファッションビジネスに必要な全ての業務領域を支えるデジタルプラットフォームの構築と提供を推進しております。当社グループのリアルな事業経験に裏打ちされたシステムは、「中小企業でも低廉なコストで利用できるサービス」をコンセプトに他社への魅力あるサービス提供も視野に入れて、全業務領域のシステム刷新に伴う開発投資を行ってまいりました。今後は、ベンダーと協業で業界の共通基盤としてのシステムや付随するOMOコマース事業のソリューションを提供するほか、プロジェクトマネジメント、業務設計等のIT・業務コンサルティング、及びデジタルマーケティング運用等の受託事業へ進化させることで収益貢献を積み上げてまいります。
一方、B2Cネオエコノミーにおいては、顧客の変化に合わせたビジネス・シーズを増やすべく、デジタル軸で新たなサービスの開発・展開に乗り出し、当社グループに足りない技術や資源、ノウハウについて外部から獲得・補強を進めてまいりました。「所有から利用へ」、「マスからパーソナルへ」、「一方通行から双方向へ」といったキーワードに代表されるように、消費の在り方そのものが大きく変化するなか、「次世代ファッションのビジネスモデル開発で欠かせないのが『つなぎ目にあるロス』を埋める協業である」という思想に基づき、従来の大量生産・大量販売からリユース・オフプライスといった今あるモノを循環させるサーキュラー・エコノミーへと、過去における事業開発とは発想や仕様、手法から大転換していることが特徴です。今後、グローバルへの転換を図り、商品仕入を工夫することで魅力ある顧客サービスへ改善し、収益性も高めてまいります。
(プラットフォーム事業)
プラットフォーム事業においては、当社グループが長年にわたって培ってきた様々なノウハウと仕組みが凝縮された、多業態・多ブランドを支えてきたプラットフォームを、積極的に外部企業にも開放する形で各種サービスの提供へ取り組んでおります。
アパレルプラットフォームにおける生産プラットフォームにおいては、OEM受託として、国内から中国、アセアンにいたる幅広い生産基盤や商標資産、企画機能といった生産支援メニューを外部企業に提供しております。販売プラットフォームにおいては、店舗開発や販売代行、在庫消化といった多様な販売支援メニューを提供しております。
また、ライフスタイルプラットフォームとして、当社グループが多様な販売チャネルへの直営店の展開を通じて培ってきたノウハウやアセットも活用します。例えば、店舗設計や什器調達、VMD(注)機能等をファッション関連企業に空間創造支援サービスとして提供するほか、競争優位性のある海外什器調達力を背景にホテルや飲食店の内装等にも事業範囲を拡大しております。この他、シェアードサービスプラットフォームとして、ファッションビジネスに関わる様々な事務処理・手続き等の各種事務サービスを一括で受託できる体制を整えています。
こうした当社グループの各種プラットフォームを顧客ニーズによって組み合わせ、ワンストップでサービスを提供することは、例えば、海外ブランド企業の日本進出支援に有効な手段となります。海外企業の日本初進出時には、店舗開発や店舗運営、経理等の本部機能やシステム構築、物流網の設置など、起業特有の多岐にわたる分野で幾つものハードルがあります。当社グループは、顧客の事業課題の特定、戦略構築から伴走しながら、顧客にとっての最適商品・サービス開発・提供によって付加価値を高め、真のパートナーとなることを目指してまいります。
(注)VMDとは、ヴィジュアル・マーチャンダイジングの略。ディスプレイ、インテリア、販売促進など商品MDを視覚面からサポートする専門機能
②財務体質の改善
当社グループは、保有資産の有効活用による価値極大化も目指しており、資産に対するリターンである資産効率の向上に取り組んでおります。
これまで、ブランド事業の中核的なアセットである棚卸資産の圧縮で在庫回転率の改善を進めたほか、不動産の入れ替えなどで固定資産の収益力も引き上げました。こうした資産の効率性及び収益力の向上を図るとともに、その対となる資金調達面において、負債・資本バランスといった財務体質の改善を進めました。
MBO時の資金源として銀行借入やメザニンを利用した経緯のほか、永久劣後特約付ローン(注)による資金調達で、資本に対する借入金の割合が大きいといった課題が依然としてあるものの、永久劣後特約付ローンについては当連結会計年度に全てを前倒しで任意弁済したことで、財務体質の健全化に一定の目処が立ちました。今後は、事業活動により得た利益を原資として、引き続き有利子負債の圧縮を進めるとともに、資金配分の重点を成長投資と株主還元へ移行していくことを目指してまいります。
なお、当社グループでは、債務返済の能力及び事業の収益性・成長性を持続的に向上できるよう、有利子負債と株主資本の最適な資本構成を検討する目的から、ネットD/Eレシオを財務体質の健全化指標としております。中長期的にネットD/Eレシオ0.5倍を目指してまいります。
(注) 永久劣後特約付ローンは、元本の弁済期日の定めがなく利息の任意繰延が可能なことなどから、国際会計基準(IFRS)における「資本性金融商品」に分類され、本劣後ローンによる調達額は、当社連結財政状態計算書上、「資本」に計上されることになります。
③人材等のリソースの確保
当社としましては、今後の事業の柱に不可欠な人材や資金といったリソースの確保も重要課題と認識しており、企業価値改善と従業員価値改善の好循環を通じてステークホルダーの価値改善を実現してまいります。
当社グループは、ファッションテックといった新たな分野に秀でた技術や人材を確保するため、グローバル・オファリングにより調達した資金をM&Aをする形で活用し、エンジニアや経営者等の人材を得てきました。今後は、当社グループの事業構造の非連続な変革の実現には、優秀な人材の確保が引き続き重要と認識しており、まずはコロナ禍で傷んだ従業員処遇の回復に加え、持続的な従業員処遇改善に取り組んでまいります。加えて、外部人材を登用し、継続的に次世代リーダーを輩出していく仕組み作りにも注力してまいります。
④コーポレート・ガバナンスの強化
当社はグループ企業価値を高めるため、事業持株会社としてグループ経営戦略を立案し、子会社間でのシナジー効果の追求や子会社に対する管理・監督機能を適正かつ有効に発揮すべく、今後もグループの業務や組織運営、事業ポートフォリオの最適化や保有資産の価値最大化に取り組んでまいります。
そして、企業の社会的責任(CSR)の高まりに継続的に応えていくため、今後も意思決定プロセスの透明性確保や企業経営の効率性向上に注力するとともに、コンプライアンス体制の強化と内部統制システムの充実を図ってまいります。
また、監督と執行の分離で迅速な意思決定を行うことにより、グループ企業価値の更なる向上を目指しております。同時に、社外取締役が過半数を占める取締役会の監督機能の強化や役員の健全な新陳代謝の進展なども図っており、グループの経営力の更なる向上ならびにコーポレート・ガバナンス体制の一層の強化に取り組んでおります。
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