企業兼大株主リコー東証プライム:7752】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1)変わることと変わらないこと

 当社グループが変わらずに大切にしているものがあります。それは創業の精神である「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」からなる「三愛精神」です。「“はたらく”に歓びを」を「使命と目指す姿」と定め、“はたらく”に寄り添い変革を起こし続けることで、人ならではの創造力の発揮を支え、持続可能な未来の社会をつくることを目指しています。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。


(2) リコーの中期展望

 当社グループは、2023年3月に、同年4月からスタートする第21次中期経営戦略(以下、21次中経)を発表しました。使命と目指す姿である「“はたらく”に歓びを」の実現に向けて、中長期目標として「はたらく人の創造力を支え、ワークプレイスを変えるサービスを提供するデジタルサービスの会社」となることを目指しています。

 注力している領域は、働く人をタスクから解放するプロセスオートメーション、創造性を高めるワークプレイスエクスペリエンス、ワークプレイスの基盤となる環境を構築するITサービス、の3つです。

 この注力領域において、グローバルの顧客基盤や、ワークプレイス領域における課題把握力・提案力、そして魅力的な自社IPといった強みを活かしながら、ワークプレイスサービスプロバイダーとして、お客様に寄り添いながら継続的に価値を創造し、提供します。


◆将来財務(ESG)の視点

ESGの取り組みは、将来の財務を生み出すために不可欠なものと位置づけ、「ESGグローバルトップ企業」を目指し、お客様や株主・投資家の皆様からの高まるESG要求に応えるべくバリューチェーン全体を俯瞰した活動を進めます。

21次中経では、事業を通じた4つの社会課題解決と、それを支える3つの経営基盤強化の7つのマテリアリティ(重要社会課題)に取り組んでいます。また、これら7つのマテリアリティに対する評価指標として16のESG目標(将来財務目標)を設定しています。マテリアリティとESG目標は、グローバルなESGの潮流への対応と経営戦略の実行力向上の観点で設定しており、16のESG目標は各ビジネスユニット、機能別組織にブレークダウンして展開しています。

「事業を通じた社会課題解決」では、お客様の“はたらく”を変革するデジタルサービスを提供し生産性向上と価値創造を支援しています。また、脱炭素社会、循環型社会の実現にも引き続き注力し、当社グループの強みである技術力と顧客接点力を活かし、地域・社会システムの維持発展、効率化に貢献しています。「経営基盤の強化」では、人権問題への対応の強化、デジタルサービスの会社への変革に向けたデジタル人材の量・質の確保、デジタルサービス関連特許の強化等に取り組んでいます。

 また、社会課題解決に貢献する事業とその貢献金額を明確化し、2025年度までの売上高目標を設定しました。今後もESGと事業成長の同軸化の取り組みを加速させていきます。

2025年度の目標額、並びに2023年度及び2024年度における実績額は、以下表のとおりです。

マテリアリティ

社会課題解決型事業

21次中経目標

(2025年度末)

実績

2023年度

2024年度

“はたらく”の変革

オフィスサービス

スマートビジョン 等

10,170億円

9,260億円

10,060億円

地域・社会の発展

GEMBA(オフィス以外を

対象とした保守・サービス)

自治体ソリューション

教育ソリューション 等

320億円

200億円

280億円

脱炭素社会の実現

循環型社会の実現

環境配慮型複合機

商用印刷

シリコーントップライナーレスラベル

ラベルレスサーマル 等

4,280億円

3,150億円

4,100億円

◆21次中経基本方針

 中長期目標を達成するために掲げた「①地域戦略の強化とグループ経営の進化」「②現場・社会の領域における収益の柱を構築」「③グローバル人材の活躍」という3つの基本方針は継続して取り組んでいます。

 基本方針① 地域戦略の強化とグループ経営の進化

 オフィスプリンティング以外の収益を積み上げ高収益な体質に変革していくために、顧客接点における価値創造能力の向上、当社グループ内でのシナジー発揮、継続した収益改善のために環境変化への対応力をつけていくことを重視し取り組みを進めました。

 この収益構造の変革に向けて、特に注力すべき価値提供領域を「プロセスオートメーション」「ワークプレイスエクスペリエンス」「ITサービス」と定め、地域ごとの特性を重視しながらリソースを集中的に投下し、サービス分野のストック収益を積み上げる戦略を実行しています。

 基本方針② 現場・社会の領域における収益の柱を構築

 デジタルサービスの領域を拡げ、より幅広いお客様に価値を提供していくため、「現場・社会」領域での収益の柱の構築を21次中経の基本方針として掲げています。商用印刷事業を中心に進捗しており、リコーグラフィックコミュニケーションズの当連結会計年度の業績は前年度比で増収・増益となっています。

 引き続き「現場・社会」領域での収益の柱の構築に取り組むと同時に、事業ポートフォリオマネジメントを通じて、出口プロセスへの移行を判断した事業については適切な出口戦略を探索しながら、注力する事業領域を見極めていきます。

 基本方針③ グローバル人材の活躍

 事業構造を変化させ、グローバルでの提供価値を拡大させるためには、社員の活躍が不可欠です。当社グループでは社員の能力やスキルを資本と捉え、人に対して積極的に投資をしていく人的資本戦略を策定しています。

◆企業価値向上プロジェクト

 目指す姿の実現に向けて2023年4月から企業価値向上プロジェクトに取り組んでいます。株主・投資家・アナリストの皆様との対話や資本市場目線での分析など、様々な角度から企業価値向上に向けて当社グループが取り組むべき課題について検討を進めました。低PBRの最大の要因は収益性の低さにあり、今後デジタルサービスの会社として成長を実現するためには、各事業のビジネスモデルに適合した収益構造の実現が必要であることから、抜本的な収益構造変革を推し進めています。

 具体的に、① 本社改革、② 事業の「選択と集中」の加速、③ オフィスプリンティング事業の構造改革、④ オフィスサービス事業の利益成長の加速 の4つの領域で収益構造の変革に取り組んでいます。
 


① 本社改革

R&D投資は、デジタルサービスと親和性の高いワークプレイス領域によりフォーカスしていきます。また、顧客接点でより多くの価値を創造するデジタルサービス型へグループの経営体制をシフトしています。

② 事業の「選択と集中」の加速

 デジタルサービスの会社への変革・資源配分の最適化に向けて、従前より進めていた事業ポートフォリオマネジメントの取り組みをさらに加速しています。当社グループの強みが生きる「ワークプレイス」を注力領域として、リソースを戦略的に配分し、事業ポートフォリオマネジメントで出口プロセスへの移行を判断した事業については出口戦略の検討とその実行を進めています。

③ オフィスプリンティング事業の構造改革

 オフィスプリンティング市場は縮小するという認識のもと、売上高が減少したとしても収益を確保するための体質強化を進めています。東芝テック株式会社(以下、東芝テック)との合弁会社組成に加え、当該合弁会社への沖電気工業株式会社(以下、OKI)の参画を発表し、開発・生産の効率化やSCMの最適化などの取り組みを進めています。

④ オフィスサービス利益成長の加速

 デジタルサービスのコアであるオフィスサービス事業については、お客様におけるオフィスサービスの導入率の向上やストック売上成長率の向上といった利益成長のメカニズムを意識しながら、継続的な収益性向上に取り組みます。また、提供価値最大化のため販売・サービスや支援業務については、インサイドセールス等も活用しながら、顧客との関係性を重視したデジタルサービスの会社として相応しい体制へと見直します。

 デジタルサービスの会社としての利益成長を着実に進めるための継続的な収益改善とあわせ、中長期の視点を見据えた成長施策にも取り組むことで、継続的な企業価値向上を実現していきます。

◆成長を支える資本政策

 当社グループは、ステークホルダーの皆様の期待に応えながら、株主価値・企業価値を最大化することを目指しています。専門家の意見も取り入れながら様々な手法・複数の視点で当社グループの資本コストを把握し、株主の皆様からお預かりした資本に対して、資本コストを上回るリターンの創出を目指します。


 企業価値最大化の実現に向けて、厳正な事業ポートフォリオ管理のもとで、各ビジネスユニットを投下資本利益率(以下、ROIC)や市場性などで評価した上で、合理的な判断・意思決定を行い、経営資源配分の最適化に取り組んでいます。当社グループでの事業ポートフォリオマネジメントでは、収益性と市場性という従来型のポートフォリオの切り口に加えて、「デジタルサービス親和性」という観点からも評価を行っています。この3つの観点において、各ビジネスユニット・事業を客観的に評価し、成長加速、収益最大化、戦略転換、事業再生の4つに分類し、デジタルサービスの会社として必要な経営基盤の強化に努めています。

 また、中長期的に目指すROE 10%超を継続できる資本収益性の実現に向け、資本コストを上回る収益性を追求するため、各ビジネスユニット・部門にてROICツリーを用いた施策管理を実施しています。さらに、それらの主要施策を全社のROICツリーに採用し、単純に財務数値化できないグループ本部の施策についてはKPIとして目指す内容を言語化した上で、「リコー版ROICツリー」として定期的にモニタリングし、財務目標と施策の関連、KGI*1とKPIマネジメントを実施しています。

 なお、当連結会計年度のROIC*2は、3.2%となりました。

*1 KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標

*2 ROIC(投下資本利益率) = (営業利益-法人所得税費用+持分法による投資損益) / (親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債)

「リコー版ROICツリー」の概略

 損益計算書(P/L)に加えて、貸借対照表(B/S)も意識したKPIを設定し、個々の組織と全社の両視点でKPIマネジメントを実施。


 デジタルサービスの会社への変革に向けて、リスク評価に基づき適切な資本構成を目指し、投資の原資に借入れを積極的に活用しながら、負債と資本をバランスよく事業に投資していきます。オフィスプリンティング事業などの成熟し安定した収益を生む事業には負債を積極的に活用し、リスクの比較的高い成長事業には資本を中心に配分する考えです。

 なお、2025年度は、経営環境の不確実性が残る想定のもと、格付や資金調達リスクを鑑みた資本構成で、成長のための資本を確保します。以降は、成長投資領域の安定事業化とあわせ、新たな成長投資戦略に伴う事業構造変化を考慮し、柔軟に最適資本構成を調整していく考えです。

 事業投資によって創出した営業キャッシュ・フローは、さらなる成長に向けた投資と株主還元に対して計画的に活用していきます。デジタルサービスの会社への変革に向けた成長投資については、欧米におけるワークプレイスエクスペリエンス領域やアプリケーションサービス領域でのM&A投資など、事業成長のための投資を着実に進めています。財務規律を考慮しつつ企業価値最大化に向けた成長投資を継続します。投資原資は、営業キャッシュ・フローを中心に有利子負債も活用しながら戦略的に実施します。


 株主還元方針については、引き続き総還元性向50%の方針を堅持していきます。総還元性向 50%を目安とした上で、配当利回りを意識し毎年利益拡大に沿った継続的な増配を目指します。さらに、自己株式取得などの追加還元策は、経営環境や成長投資の状況を踏まえながら、最適資本構成の考え方に基づき、機動的かつ適切なタイミングで実施し、TSR*の向上を実現していきます。

 この株主還元方針を踏まえ、2024年2月7日から2024年8月30日の期間に 300億円の自己株式取得を実施しました。内訳は、前連結会計年度に 75億円、当連結会計年度に 225億円となります。なお、2024年9月30日に当該自己株式の消却を実施しました。

 また、2024年12月3日に 300億円の自己株式取得を実施し、2025年1月31日に当該自己株式の消却を実施しました。

 また、翌連結会計年度の配当見通しについては、当連結会計年度から1株当たり 2円増配し年間 40円を予定しています。

* TSR(Total Shareholder Return):株主総利回りは、キャピタルゲインと配当をあわせた、株主にとっての総合投資利回り


(3)翌連結会計年度の見通し

 当連結会計年度は、世界経済はインフレの鈍化もあり緩やかな成長は見せているものの、経済摩擦の増加やインフレの継続、為替相場の変動など、不透明な状況が続いています。また、米国の新たな関税政策はグローバルなサプライチェーンに大きな影響を与えることになります。

 翌連結会計年度の業績見通しについては、連結売上高 25,600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は 560億円としました。今般の新たな関税政策の導入に伴い、営業利益で 130億円程度の影響が生じる見込みです。この試算値は今後の前提の変化によって変更が生じる可能性がありますが、生産・商物流・投入商品・価格政策・販売チャネルなどの各軸で対策を機動的に実行し、影響の軽減に取り組みます。加えて付加価値の高いストック契約の獲得などオフィスサービス事業での利益成長を図り、オフィスプリンティング事業においても効率的なMIF(市場稼働機)マネジメント・顧客ターゲティングの徹底により収益維持・改善に取り組みます。企業価値向上プロジェクトの活動を確実に実行することに加え、組織力を強化し環境変化への対応力を高めながら、デジタルサービスの会社として相応しい収益構造へと変革を進めていきます。

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