マツダ
【東証プライム:7261】「輸送用機器」
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企業概要
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、企業理念として、『PURPOSE』『PROMISE』『VALUES』を定めております。
また、当社は、未来に向かってステークホルダーの皆さまと共に価値創造を進めていくべく、2030年時点の当社のありたい姿を「2030 VISION」として定めております。
企業理念
PURPOSE:前向きに今日を生きる人の輪を広げる
PROMISE:いきいきとする体験をお届けする
人の頭、身体、心を活性化する
コミュニティと共に
VALUES :ひと中心 / 飽くなき挑戦 / おもてなしの心
2030 VISION
「走る歓び」で移動体験の感動を量産するクルマ好きの会社になる。
1. マルチソリューションで温暖化抑制に取り組み、持続可能な地球の未来に貢献する。
2. 心と身体を見守る技術で、誰もが安全・安心・自由に移動できる社会に貢献する。
3. 日常に動くことへの感動や心のときめきを創造し、一人ひとりの「生きる歓び」に貢献する。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
① 中期経営計画(2020年3月期~2026年3月期)
当社は、企業として存在し続け、持続的な成長を遂げるために「人と共に創るマツダの独自性」を基本方針として中期経営計画を策定し、それに基づいた施策を着実に進めております。
中期経営計画 主要施策
■ブランド価値向上への投資 -独自の商品・技術・生産・顧客体験への投資-
・効率化と平準化による継続
・段階的な新商品/派生車の導入
・継続的な商品改良の実行
■ブランド価値を低下させる支出の抑制
■固定費/原価低減を加速し損益分岐点台数を低減
■遅れている領域への投資、新たな領域への投資開始
■協業強化(CASE対応(*1)、新たな仲間作り)
これまでに築いてきた資産を活用して本格成長を図り、時代の大きな変化に耐えうる強靭な経営体質の実現に向けて取り組みを加速してまいります。また、グローバルでの環境規制の強化・加速などによる経営環境の変化やCASE時代の新しい価値創造競争を踏まえ、技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の実現に向けて2030年を見据えた事業構造の転換に取り組んでおります。
中期経営計画 財務指標
売上 | ・約4.5兆円 |
収益性 | ・売上高営業利益率(ROS)5%以上 |
| ・自己資本利益率(ROE)10%以上 |
将来投資 | ・設備投資+開発投資:売上高比7-8%以下 |
| ・電動化・IT・カーボンニュートラル実現に向けた対応 |
財務基盤 | ・ネットキャッシュ維持(*2) |
株主還元 | ・安定的に配当性向30%以上 |
損益分岐点台数 | ・約100万台(出荷台数) |
(*1)コネクティビティ技術(connected)/自動運転技術(autonomous)/シェアード・サービス(shared)/電動化技術(electric)といった新技術の総称。
(*2)現金及び現金同等物から有利子負債を差し引いた金額がプラスの状態を維持すること。
② 2030年に向けた経営方針(2030経営方針)
現在、当社は2026年3月期までの財務目標達成に向けて中期経営計画の取り組みを推進しておりますが、各国の環境規制動向、社会インフラ整備をはじめ、電源構成の変化、そして消費者の価値観の多様化など、経営を取り巻く環境の不確実性が高まっていることを受け、視点を2030年まで延ばし、世界の潮流を想定した経営方針と主要な取り組みを以下のとおり定めております。
経営基本方針
1. 地域特性と環境ニーズに適した電動化戦略で、地球温暖化抑制という社会的課題の解決に貢献すること
2. 人を深く知り、人とクルマの関係性を解き明かす研究を進め、安全・安心なクルマ社会の実現に貢献すること
3. ブランド価値経営を貫き、マツダらしい独自価値をご提供し、お客様に支持され続けること
未来を拓く主な取り組み
1. カーボンニュートラルに向けた取り組み
当社が目標とする2050年のカーボンニュートラル(*3)(以下、「CN」)実現に向けては、まず自社のCO2排出について、「2035年にグローバル自社工場のCN実現」と中間目標を定め、省エネ、再エネ、CN燃料活用の3本柱で取り組みを進めてまいります。加えて、サプライチェーン(*4)への対応も必要であり、輸送会社様や購買お取引先様と共にCO2排出量を削減する活動を段階的に進めてまいります。国内においては、サプライチェーンの構造改革に取り組むほか、CN燃料の活用拡大を進めてまいります。
2. 各フェーズにおける電動化の取り組み
電動化時代への移行期間には、地域の電源事情に応じて、適材適所で内燃機関、電動化技術、代替燃料など様々な組み合わせとソリューションを提供していく「マルチソリューション」のアプローチが有効と考えております。当社は各国の電動化政策や規制強化の動向を踏まえ、2030年のグローバルでのバッテリーEV比率の想定を25–40%としており、パートナー企業と共に段階的に電動化を進めてまいります。
■ 第1フェーズ(2022–2024年):蓄積した資産を活用したビジネス基盤強化
既存の技術資産であるマルチ電動化技術をフル活用して魅力的な商品を投入し、市場の規制に対応してまいります。ラージ商品群を投入し、プラグインハイブリッド車やディーゼルのマイルドハイブリッド車など、環境と走りを両立する商品で収益力を向上させつつ、バッテリーEV専用車の技術開発を本格化させます。
■ 第2フェーズ(2025–2027年):電動化へのトランジション
電動化への移行期間における燃費向上によるCO2削減を目指し、新しいハイブリッドシステムを導入するなど、これまで培ってきたマルチ電動化技術をさらに磨きます。電動化が先行する中国市場においてバッテリーEV専用車を導入するほか、グローバルにバッテリーEVの導入を開始します。内燃機関における再生可能燃料の利用可能性を踏まえ、熱効率の更なる改善技術の適用等により、内燃機関の性能についても極限まで進化させてまいります。
■ 第3フェーズ(2028–2030年):バッテリーEV本格導入
バッテリーEV専用車の本格導入を進めるとともに、外部環境の変化や財務基盤強化の進捗を踏まえ、電池生産への投資なども視野に入れた本格的電動化に軸足を移してまいります。
3. 人とITの共創による価値創造への取り組み
自動車技術の改良を進め、クルマを取り巻く様々な人々や社会の声に耳を傾けつつ、人の幸せを第一に、事故のない安全・安心な社会づくりに貢献していくことは私たちの重要な責務です。安全技術開発に加え、地域や社会と連携し「死亡事故ゼロ」を目指し取り組んでまいります。安全技術開発については、独自の安全思想「MAZDA PROACTIVE SAFETY」のもと、これまで大事にしてきた「ひと」を中心としたものづくりに、デジタル技術を掛け合わせた高度運転支援技術の開発を継続し、運転者も同乗者も周囲の人も安全・安心なクルマづくりを進め、2040年を目途に自動車技術で対策が可能なものについては、自社の新車が原因となる死亡事故ゼロを目指します。
(*3)地球上の炭素(カーボン)の総量に変動をきたさない、二酸化炭素(CO2)の排出と吸収がプラスマイナスゼロになるようなエネルギー利用のあり方やシステム。
(*4)商品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった一連の流れ。
4.原価低減とサプライチェーンの強靭化
原価低減は、従来の商品原価や、製造原価だけにとどまらず、その範囲を拡大し、サプライチェーンとバリューチェーン(*5)全体を鳥瞰し、商品ラインアップの見直し等による投資効率・在庫回転率の向上を図るなどムリ・ムラ・ムダを徹底的に取り除く取り組みを通じて原価の作りこみを行うよう変えてまいります。
サプライチェーンについては、材料調達からお客様へのデリバリーに至るまでの全ての工程における個々の改善にとどまらず、モノがよどみなく流れ、しかもそのスピードが最大化される「全体最適の工程」を実現するよう取り組みます。また、材料・部品調達の階層を浅くし、種類を産む場所を近場に寄せていくなどの調達構造の変革や、汎用性の高い材料や半導体の活用拡大に取り組み、地政学的リスク、地震といった大規模災害などの外部環境の変化に対する影響も最小限にとどめてまいります。
③ 企業価値向上に向けた「ライトアセット戦略」
電動化を取り巻く環境は、インフレによる投資コストの増加や地域毎の電動化進度の違いなど多くの不確実性を抱えています。当社は2030年までを「電動化の黎明期」と捉え、2030経営方針のもと、多様化するお客様ニーズや環境規制に柔軟に対応すべくマルチソリューションで電動化を進めます。その具現化に向け、本年3月、既存資産の活用度を高めることで、スモールプレーヤーとしての企業価値を向上させる実行戦略として「ライトアセット戦略」(*6)を公表しました。その主な内容は以下のとおりです。
■ ものづくり領域では、独自の開発・生産プロセス革新を展開し、開発領域においては、より複雑な開発に対し、既存リソース水準を維持しつつ、生産性を3倍に向上させて対応してまいります。
■ 2027年に導入予定のバッテリーEVについては、協業・パートナーシップによって、従来と比較し開発にかかる投資と工数を大幅に低減させる見通しです。
■ 電池投資については、当初見込みにインフレ影響を加味した投資総額から半減できる見込みです。
■ 生産においては、既存資産を活用してバッテリーEVとエンジン車を混流生産することにより、バッテリーEV専用工場新設と比較し、初期設備投資と量産準備期間を大幅に低減できる見通しです。
■ 上記の取り組みを通じて、低投資で高い資産効率を確保の上、競争力ある技術・商品を提供し、資本コストを上回るリターンを創出することで、持続的な成長と企業価値向上を実現してまいります(*7)。
④ 2030経営方針の進捗
当期が最終年度となる第1フェーズでは、成長投資の資金を確保すること及び将来の電動化やカーボンニュートラルなどへの準備を行うことを目標としており、その主な進捗は以下のとおりです。
売上高の成長
■ 第1フェーズの3年間で、出荷台数は25%増加し、売上単価の増加と併せて売上高は過去最高を更新しております。
■ ラージ商品4車種や販売が好調な北米市場の牽引により、第1フェーズの3年間におけるネットキャッシュは4,000億円余りとなるなど、財務体質の強化も進捗しております。
サプライチェーン・バリューチェーン全体での原価低減推進
■ パワートレインの種類数をお客様が選択しやすい仕様に絞り込み、増加傾向にあったサプライチェーンの在庫を改善することなどにより、原価低減活動に取り組んでおります。
■ サプライヤーから調達する部品種類数を適正化することでサプライチェーンの構造改革を推進するとともに、マツダの強みである混流生産ラインに無人輸送車を採用した効率性の高い生産設備を導入するなど、部品調達コストや輸送費等の固定費低減に取り組んでおります。
■ 原価低減に向けたコスト構造改革活動を加速するため、本年4月より新たに「コスト低減統括役員」及びその実務を担当する原価企画変革室を設置し、コストガバナンス体制の整備と原価企画機能の抜本的な見直しに着手いたしました。
■ 経営の適応力・回復力の強化に向けて、サプライチェーン、バリューチェーンの最適化を含めた構造的原価低減で1,000億円、加えて業務の選択と集中、投資効率化、DX活用などによる生産性向上によって固定費1,000億円の削減を目標とし、取り組みを進めております。
(*5)商品の付加価値を創出するための、商品企画、デザイン、開発、生産技術、製造、販売、サービスといった一連の事業活動の流れ。
(*6)ライトアセット戦略を説明したマツダ・マルチソリューション説明会2025の様子はこちらをご参照ください。
https://www.mazda.com/ja/about/vision/multi-solution-briefing-2025/
(*7)企業価値向上に向けた取り組みの全体像については、マツダ統合報告書2024「CFOメッセージ」をご参照ください。
https://www.mazda.com/ja/investors/library/integrated-report/
人への投資
■ 今後一層重要となるより高度なソフトウェア技術の開発やイノベーションに対応するため、ソフトウェア技術者の獲得に向け、2025年7月に麻布台ヒルズに「マツダR&Dセンター東京」を新たに開設するとともに、東京本社を移転いたします。
■ 従業員一人ひとりが最大限の能力を発揮し、自由にアイデアを出し、活発に意見交換できる風土づくりに注力しており、その一環として2023年11月から全社的に「BLUEPRINT」プログラムを展開しております。本年5月までに全間接・直接従業員が同プログラムに参画し、今後は全従業員への浸透定着ステージに移行し、全社的な取り組みをさらに進めてまいります。
電動化技術・電池の準備
■ 2024年9月、パナソニックエナジー株式会社と当社は、バッテリーEV向け電池供給に合意し、本年1月には、車載用円筒形リチウムイオン電池のモジュール・パック工場を山口県岩国市に新設することを公表いたしました。2027年度の工場稼働開始を目指しており、完成した電池パックは、マツダの国内車両工場にて、マツダ初のEV専用プラットフォームを採用するバッテリーEVに搭載予定です。生産能力は年間10GWhを予定しております。
■ 次世代電池技術の自社開発を、GI基金(*8)事業として推進しており、社内に試験ラボを開設するなど、研究開発は予定通りに進捗しております。
■ 商品に関しては、多様なお客様のニーズに対応すべく、昨年11月には「MAZDA CX-50」にトヨタ自動車株式会社の技術を活用したハイブリッドモデルを追加いたしました。また、第2フェーズに導入予定の次期「MAZDA CX-5」には、電動化時代の主軸エンジンとして開発中のSKYACTIV-Zをマツダ独自のハイブリッドシステムと組み合わせて2027年中に搭載する予定です。
■ 電動化の進展が早い中国市場においては、昨年10月よりバッテリーEVとプラグインハイブリッドの2つのモデルを用意した「MAZDA EZ-6」の販売を開始しております。欧州やタイでは「MAZDA6e」として市場導入を予定しており、欧州向けは本年4月に生産を開始いたしました。また、中国では、本年中に「MAZDA EZ-60」を発売予定です。
⑤ コンプライアンス及びガバナンス強化の取り組み
2024年6月3日公表の型式指定申請における不適切事案については、再発防止策の一環として、次の取り組みを行っております。
1. 試験が認証法規に準拠した状態で実施されたかをチェックする仕組み及びガバナンス体制の再整備
2. 認証法規に準拠した試験を適正に実施するための手順書の見直し・教育・実践の徹底
3. 認証法規に準拠した試験条件を安定的に満たす設備の整備強化
当社に関係するすべてのステークホルダーの皆様からの信頼回復に向けて、コンプライアンス及びガバナンスの更なる強化を図ってまいります。
(*8)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるグリーン・イノベーション基金。
※文中における将来に関する事項につきましては、本報告書提出時点において当社グループが判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。
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