ビーアールホールディングス
【東証プライム:1726】「建設業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、『「人と人」「技術と技術」の橋渡し』を経営理念に掲げ、「人」と「技術」を事業の中核として、より豊かで快適な未来の暮らしの実現に挑戦し続けることを経営の基本方針としております。
(2)経営環境
当社グループの主力事業である建設事業では新設PC橋梁の発注は減少傾向にある一方、既存社会インフラの老朽化に向けた市場の拡大や、国内建設投資(公共投資・建設投資)の増加傾向といった市場環境の変化が生じております。当社グループは市場環境の変化を新たな機会と捉え、積極的な対応を模索しております。
当社で認識する経営環境及び競争力の源泉は次のとおりであります。なお、記載は当社グループの経営成績及び財政状態へ大きな影響を与える主たる事業(建設事業及び製品販売事業)に絞り記載を行っております。
(建設事業)
a.新設橋梁事業
社会インフラの整備が概ね進み、計画路線の逐次完成に伴う新設PC橋梁の発注は減少が予測される一方、整備新幹線の着実な整備やリニア中央新幹線プロジェクトの推進、高速道路のミッシングリンク解消や4車線化計画等も進捗する事から一定の発注量を想定しています。
b.補修・補強事業
既存の社会インフラの老朽化の拡大による補修や、国土強靭化政策に伴い各高速道路会社が進める「高速道路リニューアルプロジェクト」による補修・補強工事の需要が増しています。当社では、他社に先駆けて、高速道路の床版取替工事で使用する部材の製作設備を自社工場に整え、社会の要請に応えています。
(製品販売事業)
各高速道路会社の大規模修繕事業(橋梁・トンネル)及びその他発注者の補修事業も拡大を予想し、建築製品については、全国でスタジアムや物流倉庫等の建設が進められ、旺盛な需要を見込んでおります。
(3)中長期的な経営戦略
当社グループは、今後も外的環境の変化に柔軟に対応しつつ、新たな事業領域拡大と組織力強化に向けた経営資源の適切な配分に取り組みます。また、新設橋梁事業の再成長と補修・補強事業の更なる強化、製品販売の事業領域拡大を軸に、新たな成長に向けた取組として、一般土木・建築・防災分野等の新規領域へも挑戦し、以下の中期目標(2027年度)の達成を目指します。
業績目標 (連結 単位:百万円) | 2024年度 実績 | 2027年度 目標 |
売上高 | 40,770 | 50,000 |
営業利益 | 1,953 | 3,000 |
営業利益率 | 4.8% | 6.0% |
当社グループの事業セグメント別の経営戦略は次のとおりであります。
(建設事業)
a.新設橋梁事業
当社グループの経営上の重要課題(マテリアリティ)のうち、最重要課題と位置付けているのは、「人材
確保の推進と育成の強化」です。活発な求人活動と大学等教育機関との共同研究を通して優秀な人材を確保し、若手技術者の早期育成や実績付与、ベテラン技術者の力量アップ、サプライヤーの確保に取り組みます。その上で、新設橋梁分野のシェア向上のために、人的リソースの再投入及び、これまでの高い工事成績評定点を獲得した技術力を強みとして、営業・設計・施工組織の連携による技術提案力の強化によって顧客満足度を向上し、継続的な受注獲得に努め、品質確保とコスト低減を両立していきます。
b.補修・補強事業
高速道路リニューアルプロジェクトによる大規模更新・修繕事業は引き続き、継続されると見込んでいます。そのノウハウの蓄積と、工事の大規模化や長期化に対応しうる社内体制の再構築を図り、技術者の増強による施工体制の確保とDX推進による生産性の向上及び、資本コストを意識した経営を行い、事業拡大に繋げていきます。今後は、都市部での狭隘で難易度の高い床版取替工事に積極的に挑戦し、事業量と利益の拡大を目指します。
また、当社グループ独自の高度な技術(マイクロパイル・K-LIP工法・ELSS Joint等)をさらに磨き、多角的な営業展開を図っていきます。
(製品販売事業)
旺盛な土木製品・建築製品の需要を背景に、働き方改革や人手不足の影響を克服するためにも、工場に経営資源を更に投入していきます。その上で、組織としての着想力の強化と、顧客の問題解決に繋がる独自技術や製品を提供していくことで、事業の拡大を目指します。営業面では、トップ営業による大規模なプレキャスト建築製品の受注拡大に注力し、業容拡大を図ります。
(情報システム事業)
当社グループおよび社会に貢献し続ける自立した会社、働き甲斐のある会社になることを根幹とし、目標達成に向け受注環境の多角化、IoT、AI、RPA等の先端技術への取組みによる新規ビジネスの創成、開発プロセスの標準化・効率化による品質向上と原価改善の取組みを要点とし、事業の変革を推進いたします。
(不動産賃貸事業)
当社保有の極東ビルディングのテナント収入が収益の柱となっておりますが、売上と老朽化による維持管理費の収支バランスをとりつつ、売上と利益の最大化を目指します。
また、広島駅周辺開発に伴う需要の高まりを受け、建替えや移転等も視野に費用対効果の最大化を実現し、不動産活用を経営戦略の一環としてとらえ、企業価値向上を目指します。
(4)資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
今後の持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現を図るため、資本コストや株価を意識した経営を当社の重要課題と認識しており、定量目標にROE10%以上、PBR1倍以上、連結配当性向40%以上、DOE4%以上を設定しております。
財務KPI | 2024年度 実績 | 2027年度 目標 |
連結自己資本利益率(ROE) | 8.6% | 10%以上 |
連結株価純資産倍率(PBR) | 1.00倍 | 1.0倍以上 |
連結配当性向 | 53.0% | 40%以上 |
連結株主資本配当率(DOE) | 4.6% | 4%以上 |
(目標とする理由及び目標に向けた取り組み)
①自己資本利益率(ROE)
当社グループの株主資本コスト(期待収益率)は6~7%程度と認識しており、ROEは株主資本コストを十分に上回る10%以上が必要であると認識しています。
ROEを要素分解した結果分析に基づく中長期の改善に向けた以下の取り組みを行っております。
要素 | 結果分析 | 改善に向けた取り組み |
収益性 | 収益性低下の要因 ・手持ち工事高の増加による施工体制の逼迫(技術者不足の顕在化) ・大型工事案件の設計変更における新単価協議遅延による売上高計上の時期のずれ ・下請労務の需給逼迫による労務費の高騰と鋼材を中心とした資材価格等の高騰 | ・生産性向上に向けた働き方改革(人事制度改革等)の確実な実行 ・PC橋梁・床版取替事業などの優位技術を軸とする安定した収益基盤の構築 ・既存事業の減少を見据えた成長分野への領域拡大と開発力強化 |
資産効率性 | 総資産回転率低下の要因 ・大型工事案件の設計変更における新単価協議遅延による立替金の増加(借入金の増加) ・出来高に見合った工事代金回収の遅延(売上債権の増加) ・JVサブ工事のプール方式による未収入金の増加(未収入金の増加) | ・売上債権回転期間の短縮による資金収支の改善 ・持続的な成長に向けた、収益力・成長分野・人材基盤の強化への経営資源の適切な配分 |
財務レバレッジ | 大型工事案件の設計変更における新単価協議遅延による立替金の増加(借入金の増加) | ・財務規律を意識した柔軟な資金調達 ・成長投資と健全性を備えた最適な自己資本水準の確保 |
②株価純資産倍率(PBR)
当社グループでは、PBRを市場評価の指標と認識しております。2024年度のPBRは1.00倍と継続して1.0倍以上を維持しているものの、株価の低迷に伴い低下傾向となっており、ROEの改善と資本効率を意識した株主還元の実施等により、今後継続して1.0倍以上を維持していく必要があると認識しています。
PBRの向上に向けた取り組みは以下のとおりです。
自己株式の取得 | ・株主還元及び資本政策の一環として、市場環境と資本の状況を見ながら、機動的かつ弾力的に自己株式取得を実施する |
株主還元方針の 見直し | ・配当政策の見直し:連結配当性向40%以上、DOE(株主資本配当率)4%以上 ・流通株式比率増加のための施策を検討 |
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、長期ビジョン「Br.VISION 2030」に基づき、「インフラ整備を通じて社会に貢献し、持続的に成長する企業グループ」の実現を目指しております。このビジョンの達成に向けて、2024年度を初年度とする「第1次中期経営計画(2024~2027年度)」を策定し、持続的成長のための経営基盤の整備に取り組んでおります。
建設業界においては、高速道路の大規模更新や整備新幹線、リニア中央新幹線プロジェクトなどの大規模プロジェクトが進行しており、また、既存社会インフラの老朽化に伴う補修・補強需要も増加しております。当社グループにおいても、長期大型工事の受注により、建設事業の期末手持高は48,203百万円となっております。
(長期大規模工事受注件数の推移)
| 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
件数(件) | 4 | 4 | 6 | 7 | 4 | 4 | 7 |
(注)当社グループの建設事業は受注額が1件当たり100百万円から300百万円、工期が1年前後の工事が一般的となっております。上表では1件当たりの受注額 1,000百万円以上の工事を長期大型工事として件数を記載しております。なお、これらの工事は一般的な工事と比べ、工期は概ね2から6年(最長10年)と長くなっております。
このような社会インフラへの要請が高まる中、それを支える高度な技術人材の確保・育成が喫緊の課題となっております。当社グループでは、2025年度より段階的に新人事制度導入を進めるとともに、「人材確保の推進と育成の強化」を経営上のマテリアリティと定め、「優秀な人材の獲得・定着・育成」の基本方針のもと、高度な社会インフラを支える人材を育成し、社員と会社の健全な未来の実現に取り組んでまいります。
①人材の獲得
将来のグループを支える人材を確保するため戦略的な採用活動を展開しております。特に、土木・建設系の大学や高等専門学校との共同研究に積極的に取り組み、協働した学生へのリクルートや定期的なインターンシップの受入(2024年度実績:約100名)を通じて学生の採用をすすめています。また、シニア社員の活躍も重視しており、ベテラン技術者の雇用の70歳までの延長や、他社で定年退職を迎えた経験豊富な技術者を「Advanced Civil Engineer(ACE)」として中途採用し、即戦力として迎え入れる制度を確立しております。
②人材の定着
人材の定着には、安心して長く働ける職場環境の整備が不可欠です。当社では、2024年4月からの時間外労働上限規制への対応として、2023年度より段階的にフレックスタイム制度を導入し、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を推進しております。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による業務効率化も大きな柱の一つです。たとえば、現場におけるクラウド型ウェアラブルカメラ「Safie Pocket2」を用いた現場支援システムは、技術継承や安全管理の観点からも有効であり、現場と本部の連携強化によるサポート体制を構築しております。
さらに、新人事制度では、社員の成果と処遇の透明性を高めることを目的とし、昇給・昇格基準、評価制度、福利厚生の再整備を進めております。制度の再構築を通じて、社員満足度のさらなる向上に向けて、定着と成長を促す人財基盤の整備に努めております。
③人材の教育
次世代の当社グループを担う高度な技術者の育成に向け、2023年5月、極東興和株式会社にて「極東興和アカデミー」を開校しました。同アカデミーは、「施工管理」「設計」「積算」「営業」「一般教養」の5領域について、1年目から5年目の社員を対象とした段階的な教育プログラムを提供しております。今後は、中堅・ベテラン層や管理職向けのプログラムも拡充し、グループ全体を通じた教育体制へと発展させていきます。さらには、2025年1月より、企業理念やビジョンの共有、社員の業務環境改善、若手社員のキャリア形成のサポートを目的としたメンター制度も実施しております。
また、社外での成長機会として、博士号取得支援や、行政機関が提供する「人材育成事業補助金制度」を活用した大学院修学など、より高度な専門性を身につけるための支援も積極的に展開しております。こうした取り組みにより、単なるスキル習得にとどまらず、技術と経営感覚を併せ持つ人材の育成を通じて、持続可能な事業展開を目指しております。
当社グループは、これら人財戦略の実行を通じて、「日本の社会インフラを支える」という使命を果たすとともに、変化の激しい社会・経済環境に柔軟に対応する強靭な企業体質の構築を推進してまいります。
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