ニデック
【東証プライム:6594】「電気機器」
へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)会社の経営の基本方針
当社は2027年度をターゲットとする新中期経営計画(Conversion2027)を策定しました。2025年度より事業再編・拠点統廃合・人員削減等収益構造の抜本的転換を図り利益率の改善を実現するため、3つの観点で強力に「転換」を実行していきます。
①高収益構造へ「転換」
変動費については、不採算・ノンコア事業の見直しにより収益性の高い事業ポートフォリオへの転換に加え、技術力により材料費の更なる削減や品質の作り込みを加速します。固定費については、拠点統廃合やプロセス抜本変革(PSI/MRP等)により製造間接中心に人員削減を断行します。一方で、システム・DX投資、先行開発投資、自動化投資には売上高の1%を目途に戦略投資枠を確保し、高収益構造を確立します。
②成長を支える「事業5本柱」へ「転換」
市場動向を踏まえた5つの注力事業領域を「事業5本柱」として明示し、①AI社会を支える、②サステナブル・インフラとエネルギーの追求、③産業の生産効率化、④より良い生活の追求(Better Life)、⑤モビリティイノベーションの各領域で、既存事業の枠を超えてシナジーを追求します。各地域の需要に応じて地産地消をベースにビジネスを展開し、顧客目線の”One Nidec”活動へリソースを結集します。
③真のグローバル体制へ「転換」
チーフオフィサー制(CxO)の強化と執行役員のスリム化を図り、よりスピーディーな経営体制を実現します。高度な技術・技能・知識を有する「フェロー」と次世代の役員候補者である「理事」を新設し、グローバルでリーンな体制を構築します。
新中期経営計画(Conversion2027)の業績目標は次のとおりです。
2027年度
①連結売上高 2.9兆円
②営業利益 3,500億円(営業利益率 12%)
③ROIC(投下資本利益率) 12%
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
経営の基本方針を踏まえた経営環境及び経営戦略については次のとおりです。
①精密小型モータ
精密小型モータ事業にはHDD用モータ事業とその他小型モータ事業があります。HDDは主にPCやサーバをはじめとした多くの情報機器に用いられていますが、その心臓部を担うのがHDD用モータです。タブレットやスマートフォン等の新しいIT端末の普及によりPC用途のHDDは今後大きな市場拡大を望めませんが、一方で5G通信の拡がりにより画像や動画等の高画質・高容量化、ソーシャルメディアやゲームの普及といったビッグデータ化は益々加速すると考えられます。それに伴うストレージ需要の拡大により、今後もサーバ用途等ではHDD用モータ需要は安定して継続すると見込まれます。2024年度ではデータセンター向けのニアラインHDDの需要が増加したことで売上高が増加しました。
その他小型モータに関しては当社が手掛けてきた光ディスク用やOA機器用モータは中長期トレンドとして需要が減少しています。そこで成長事業として新しく取り組んでいるのがAIサーバ向け水冷モジュールです。今後拡大が見込まれるAIは膨大なデータを基に学習処理を行うため、AI向け半導体演算装置(CPU/GPU)が高い熱を発します。AIの発展に伴い、空冷式に対して格段に高い冷却能力を持つ水冷モジュールの需要が高まっており当社では生産キャパシティの拡大、パーツの内製化、次世代製品の開発等に取り組んでいます。また、電動二輪車向けモータの開発にも取り組んでいます。四輪車同様、二輪車でも電動化の波が押し寄せており、駆動ユニット向けモータ需要の大幅拡大が今後期待できる市場と認識しています。最大の市場であるインドにて、インドの二輪車メーカー向けの営業活動に注力し、既に複数のトップメーカーへ製品を供給しています。その他のAV・IT・OA・通信機器や家電・産業機器等多岐にわたる分野においても新たな活用の場を開拓し、持続的な成長につなげていきます。
②車載
車載オーガニック(既存事業)においては、「CASE革命」に伴う自動車部品の電動化といった市場の変化の追い風を捉え、世界No.1シェアを誇る電動パワステ用モータやブレーキ用モータをはじめとした車載用モータに加え、電動オイルポンプや電動ウォーターポンプ等の車載製品を提供し、更なる市場シェアの獲得と、売上・利益の成長を強力に推進していきます。また、欧米オペレーションに強みを持つ家電産業事業本部(ACIM)と統合することで地域毎の強力な横串機能によりオペレーション(調達、生産、物流)を統合し競争力強化を図っています。更に、拡大する電子・電源制御領域において、ニデックモビリティとニデックエレシスを統合することで協業・知見集約を図り、更なる競争力の強化を進めます。
EVトラクションモータ事業においては、激しい価格競争の進展によって健全な競争環境が失われつつある中国EV市場において、開発や部品調達の更なる現地化による徹底したコスト削減、次世代のE-Axle開発等、中国EV市場の競争に対応するための施策を実行しています。一方、欧州ではStellantisグループとの合弁会社であるニデックPSAイーモーターズが2024年度にE-Axleの本格的な量産を開始し、連結業績への算入も始まっており、材料費・外注費の改善や品質の向上を通して収益性の向上を図っています。また、車載事業全般においては組織の枠を超えた一体化の取り組みを継続しており、一貫した戦略を基にしたシナジーにより市場に更なる価値を提供してまいります。
③家電・商業・産業用
現在、世界の電力使用量の約半分をモータが占めていると言われており、特に産業用モータによる消費量が大きいことから、より高効率なモータへの置き換えが急務となっています。当社は、家電関連では、洗濯機、乾燥機、食洗機用モータや冷蔵庫用のコンプレッサー及びコンプレッサー用のモータ等を手掛けており、効率に優れるブラシレスDCモータへの置き換え需要の更なる高まりに応えていきます。また、家電需要の新興国への拡大も中期的に期待されます。商業部門ではエアコン向けモータやECの配送センターで使用されるロボット向けのモジュール等を提供し、産業部門では農業、ガス、鉱業、上下水道、海洋といったマーケットを中心に事業を展開しています。特に、データセンターに必要不可欠な非常用電源向けの発電機、社会インフラ更新に伴う大型モータの需要が増大しており、これらの事業においては付加価値の高いメンテナンス事業にも注力しています。また各国の発電・送電事業者に向けたバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の需要も高まっています。再生可能エネルギーの増加と共に、当社BESS関連ビジネスは今後も大きな成長が期待されます。ブラジルの航空機メーカーEMBRAER社との合弁会社を設立したeVTOL(電動垂直離着陸機)向けモータも移動インフラの変化と共に今後の成長が期待される分野です。
④機器装置
機械事業本部は、主に減速機事業・プレス事業・工作機械事業に分かれます。減速機事業については、先進国を中心に広がる少子高齢化による労働力不足が今後の需要を拡大させると考えられ、中でも成長が期待される協働ロボット用減速機の開発・生産に注力していきます。プレス機事業については、プレス機、送り装置等の周辺機器を揃え、日本・アメリカ・スペイン他に生産拠点を持ち、グローバルで幅広い製品をワンストップで供給できる体制を整えています。工作機械事業については、現在の製品ポートフォリオとして、マシニングセンタ・旋盤・歯車機械・大型汎用工作機械が揃い、多くのお客様にワンストップで製品・サービスを提供できる体制が整っています。当社は新製品・新技術の開発を通じて新市場を開拓し、2030年度までにグローバルNo.1の総合工作機械メーカーとなることを目指しています。
⑤M&A
上記の目標を達成するために、当社では被買収企業と既存の技術を掛け合わせることで企業価値を最大化し、更なる成長を図っています。特に機械事業本部では、グローバルNo.1の総合工作機械メーカーを目指すためM&Aを積極的に行っています。2021年8月に高精度・高効率の歯車加工技術を持つ三菱重工工作機械株式会社(現 ニデックマシンツール)を買収し工作機械事業に参入して以降、2022年2月にマシニングセンタの老舗であるOKK株式会社(現 ニデックオーケーケー)、2023年2月に横中ぐり盤の世界トップメーカーであるPAMA社、2023年12月に旋盤の専門メーカーである株式会社TAKISAWAを買収しました。これら一連の買収により製品ラインアップの拡充と海外市場におけるシェア強化を図っています。また、2024年10月にプレス周辺機器製造、販売等を事業内容とするLinear Transfer Automation Inc.及び同関連会社を買収したことで、プレス機本体と前後工程の周辺ライン一式というトータルシステムのソリューション提供が可能になり売上拡大が期待できます。
⑥ESG
当社事業の持続性を担保する取り組みとして「脱炭素社会の実現」「人権の尊重・適正な労働慣行の浸透」「国際競争力が高い人材の確保・育成」を含む5つの重要分野(マテリアリティ)において改善活動を進めており、それらの成果は役員報酬に反映されます。「脱炭素社会の実現」を例に挙げると、2040年度までにスコープ1・2のCO2排出量を、2050年度にはサプライチェーンのCO2排出量(Scope3)をネットゼロ状態にする長期目標を設定しており、そこへ至る道程には、2030年度までにスコープ1・2排出量を42%削減(2022年度比)し、スコープ3排出量を25%削減(2022年度比)する中間目標を据えています。この中間目標は国際的気候変動イニシアティブであるSBTi (Science-based Target initiative)の検証を経ており、当社は再生可能エネルギーの導入や省エネ活動、ならびに軽薄短小技術を活かした省資源・省エネルギー製品の開発を目標到達の主軸としています。
今後、当社は「中長期の方向性」を明確化するため、市場動向を踏まえた5つの注力事業領域を「事業5本柱」として位置付け、①AI社会を支える、②サステナブル・インフラとエネルギーの追求、③産業の生産効率化、④より良い生活の追求(Better Life)、⑤モビリティイノベーションの各領域でニデック各社の強みを活かし、協業とシナジーの発揮によりビジネス機会を獲得し事業拡大を目指すとともに、顧客目線・要望を意識し、既存事業の枠を超えてグループ内の強み・価値を提供していきます。
(3)会社の対処すべき課題
1.第三者委員会の設置及びその他の社内調査等の趣旨及び経緯
当社は、当社の連結子会社で、家電・車載事業統括本部 家電産業事業本部配下の NIDEC FIR INTERNATIONAL S.R.L.(以下、「FIR社」)に関する貿易取引上の問題を認識し、国際貿易法及び関税法の経験を有する第三者の専門家に調査を依頼しました。当社は、FIR社製造のモータについて、原産国申告に誤りがあり、未払関税の発生につながった可能性を認識しました。受領した調査の状況報告に基づき、当社は第三者の専門家とともに、社内の更なる調査・検討を行いこの問題への対処を進めていました。また、FIR社に関する貿易取引上の問題及び関税問題に関し調査を進めていた際に、2025年7月22日に、当社の子会社であるニデックテクノモータ株式会社(以下、「テクノ」)から当社の監査等委員会に対し、その中国子会社であるニデックテクノモータ(浙江)有限公司において、2024年9月下旬にサプライヤーからの値引きに相当する購買一時金(金額1,000万元、約2億円)に関して不適切な会計処理が行われた疑いがある(以下、「テクノ事案」)との報告がありました。これを受け、当社は、当社の監査等委員会の監督の下、テクノ事案を解明するため、社外の弁護士、公認会計士その他の外部専門家を起用してデジタルフォレンジック手続を含む社内調査を行っていました。その調査の過程で、テクノ以外の当社及びそのグループ会社においても、当社及びグループ会社の経営陣の関与又は認識の下で、資産性にリスクのある資産に関して評価減の時期を恣意的に検討しているとも解釈しうるなど、不適切な会計処理が行われていたことを疑わせる資料が複数発見されました。上記に鑑み、これまでの外部専門家を起用した当社の監査等委員主導の調査体制には限界があり、会社から独立した第三者委員会による客観性のある調査を行う必要があると判断し、2025年9月3日に日本弁護士連合会の定める「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠した第三者委員会を設置することを決定しました。
また、上述のデジタルフォレンジック手続を含む貿易取引上の問題及び関税問題に関する調査の過程において、ニデックエレシス株式会社(現ニデック株式会社車載事業本部インバータ事業部)において、過年度の中国への輸出取引に際して、中古品の無償取引における申告価格を正当な理由なく適正金額より低く関税申告していたことが疑われる事案が発見されました。本件については、社内調査の一環として外部専門家による追加調査を依頼しています。
さらに、当社のスイス連結子会社が必要な登録をせずに輸出取引を行っていた事案について適切な対応がなされていなかった疑いがFIRの貿易取引上の問題及び関税問題に関する調査の過程において発見され、また、内部通報において当社の中国連結子会社が過年度を含む連結会計年度に源泉所得税を意図的に過少申告していたことが疑われる事案を認識したため、事実確認を含めて必要な対応を進めています。
(注)FIR社に関する貿易取引上の問題の詳細につきましては、インターネット上の当社ウェブサイトに掲載されている2025年6月26日付プレスリリースをご参照ください。(https://www.nidec.com/jp/corporate/news/2025/news0626-01/)
2.今後の対応及び会計処理の方針
当社は、第三者委員会による調査及びその他の社内調査等の一環としての外部専門家による調査に対し、全面的に協力していきます。現時点において、第三者委員会による調査及びその他の社内調査等は継続中です。調査の結果、不適切な事象が判明し次第、原因の究明と分析、再発防止策の策定及び実施を迅速に行います。また、過年度及び当年度の財務諸表に訂正すべき重要な虚偽表示が識別された場合には、過年度及び当年度の有価証券報告書の訂正等を含め、適切な対応を行う方針です。その際には、訂正の内容、影響額等を速やかに開示します。
- 検索
- 業種別業績ランキング

