企業兼大株主ツムラ東証プライム:4540】「医薬品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 経営方針

 当社グループは、究極的に成し遂げようという事業の志である「一人ひとりの、生きるに、活きる。」を起点とし、基本的な価値観である経営理念「自然と健康を科学する」、社会から必要とされる存在意義である企業使命「漢方医学と西洋医学の融合により、世界で類のない最高の医療提供に貢献します」を基本理念として掲げ、理念に基づく経営を継続的に実践しています。

(2) 経営戦略等

 当社グループでは、2022年4月1日、TSUMURA Group DNA Pyramidを刷新し、プリンシプル「順天の精神」及び究極的に成し遂げる事業の志であるパーパス「一人ひとりの、生きるに、活きる。」を新たに制定しました。また、サステナビリティビジョン「自然と生きる力を、未来へ。」と、3つの“P”(PHC:Personalized Health Care 一人ひとりに合ったヘルスケア提案、PDS:Pre-symptomatic Disease and Science “未病”の科学化、PAD:Potential-Abilities Development 潜在能力開発)を通じて、心と身体、個人と社会が「“Cho-WA”(調和)のとれた未来を実現する企業へ」を掲げた、長期経営ビジョン「TSUMURA VISION “Cho-WA” 2031」を策定しました。


 ツムラグループのサステナビリティビジョンは、長期経営ビジョンの上位に位置づけられるものであり、漢方バリューチェーンを通じてツムラグループだからこそできる、持続可能な社会の実現を目指しています。そのために、ツムラグループが優先的に取り組む必要のある重要課題(マテリアリティ)を特定し、事業を通じた社会課題の解決と経営基盤の強化の両面から取り組みを行っています。

ツムラグループのマテリアリティ


(3)資本政策の基本方針

 当社は、ROEを持続的な株主価値向上に関わる重要な経営指標として捉え、収益力や資産効率を高めることで、資本コストを上回るROEを目指してまいります。また、財務の健全性を確保しながら経営効率を高め、営業活動によるキャッシュ・フローや負債の活用、最適資本構成から許容される資金を、成長投資と株主還元へ適切に分配してまいります。

 なお、株主還元においてはDOE(株主資本配当率)を指標として設定し、堅牢なバランスシートに依拠して、長期的な配当拡充を目指してまいります。

 

指標

2031年度に目指す水準

経営効率

ROE

10%

財務基盤の健全性

自己資本比率

50%以上

配当

DOE(株主資本配当率)

5%

(上記の業績見通し等の将来に関わる記述は、2031年度に目指すべき方向性のビジョンであり、今後さまざまな要因により上記数値と異なる可能性があります。)

(4)中期経営計画

2025年5月12日に公表した、第2期中期経営計画(2025年度-2027年度)は、5 つの戦略課題に取り組み、長期経営ビジョン実現に向けた積極的な設備および事業への投資を推進し、日本事業の安定成長と中国事業の拡大に努めてまいります。また、事業を通じた社会課題解決への貢献により、企業価値を高めてまいります。

第2期中期経営計画 戦略課題

① 漢方の標準治療の拡大と個別化治療の推進による漢方市場のさらなる成長

② KAMPOmicsによる新たな価値の創造、エビデンスに基づいた「未病三防」の市場展開と漢方のグローバル化への挑戦

③ 中国における中成薬事業への参入、飲片の付加価値サービスの展開と中薬研究開発体制の確立

④ 最高の顧客体験価値の創造を目的とした漢方バリューチェーンの DX 化による安定供給・ローコストオペレーション体制の確立と製品価値の向上

⑤ ビジョン実現に資する人的資本の充足と漢方薬的組織の開発推進による組織・人的資本価値の向上

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 第2期中期経営計画(2027年度)数値目標は以下のとおりです。

 

2027年度

売上高

2,340億円

営業利益

430億円

ROE

8%

 前提条件:薬価改定(2025年度、2026年度、2027年度)

 為替レート 20.1円/元(2025年度-2027年度)

-戦略課題達成のための重点施策-

① 漢方の標準治療の拡大と個別化治療の推進による漢方市場のさらなる成長

・医療ニーズの高い処方に対するエビデンスとプロモーションの強化により漢方治療の標準化を拡大する。

・診療領域基本処方※1すべてを処方する医師が4人に1人以上となる医療現場を実現し、漢方治療の個別化を推進する。

・情報提供のデジタル化を DX 化へ発展させ、医療従事者一人ひとりがいつでも必要な情報を取得できる体制を実現する

② KAMPOmics※2による新たな価値の創造、エビデンスに基づいた「未病三防※3」の市場展開と漢方のグローバル化への挑戦

・漢方治療の標準化をさらに拡大させるため、重点3領域のアンメットメディカルニーズに密接に関与する処方を中心としたエビデンス創出に注力する。

・未病の科学的解明により未病マーカーを創出し、エビデンスに基づいた未病改善サービスの開発に注力する。

・個人に合わせた最適なヘルスケアサービス、漢方治療(個別化医療)を提供するため、KAMPOmics®をベースとした健康状態の可視化とともに、漢方処方のレスポンダーマーカー※4のエビデンス構築をする。

・個人の状態に合わせた最適な漢方治療(個別化医療)の提供のため、アライアンスの強化により、漢方診断サポートシステムの開発をさらに推進し、一般消費者向けサービスへの横展開を図る。

・漢方のグローバル展開を目指し、米国における TU-100(大建中湯)の開発活動を強化する。

・生薬から製剤までの一貫した製造および品質管理手法をグローバルスタンダードにする。

③ 中国における中成薬※5事業への参入、飲片※6の付加価値サービスの展開と中薬研究開発体制の確立

・古典処方を保有する中成薬企業との事業展開を図り、ツムラの生薬およびノウハウを活用した中成薬を提供する。

・公立病院チャネルを有する飲片企業との連携、保険適用外の民間病院チャネルの拡大、ならびにオンライン販売の拡大により、付加価値サービス「一人一方※7」を展開し、飲片の外販を拡大する。

・飲片事業の拡大とともに、医療用漢方製剤の原料生薬の価格安定化を図ることも踏まえ、品質や取扱量、価格などにおいて優位性のある生薬の品目数を増やす。

・中国の研究機関との連携により、生薬・製剤の国際標準化を目指し、研究開発・品質評価体制を確立する。

④ 最高の顧客体験価値の創造を目的とした漢方バリューチェーンの DX 化による安定供給・ローコストオペレーション体制の確立と製品価値の向上

・安定供給と適正在庫の両立のため、販売・生産・調達計画の高精度化などにより迅速な意思決定体制を構築する。

・最高の顧客体験価値の創造のために製品剤形・包装形態最適化のグランドデザインを描き、ロードマップを策定し推進する。

・ローコストオペレーションや組織間の知識共有・連携を実現するために、データ一元化・標準化と生成 AIの活用を連動させ推進する。

・工場における医薬品製造の生産性および品質の向上のため、スマートファクトリー化を加速する。

・AI を活用した生薬選別自動化の拠点拡大のために、選別可能な品目を増やし、設備コストパフォーマンスを向上させる。

⑤ ビジョン実現に資する人的資本の充足と漢方薬的組織※8の開発推進による組織・人的資本価値の向上

・理念浸透・コーチングの継続により理念経営を昇華させるとともに、漢方薬的組織を目指し、組織開発を実施する。

・経営人財養成機能を最適化するとともに、理念経営を支える多様性に富んだグローバル経営人財の輩出を推進する。

・動的な人財ポートフォリオ実現に向けて、スキルマップ(管理職・専門人財)を策定・更新し、それに基づいた人財の採用、配置、育成を実施する。

・ツムラ流“養生”健康経営を実践する。

※1 診療領域基本処方

 各診療領域において、患者数が多い疾患・症状に対して、適正に使用することができる(適用を有する)処方を当社独自に設定

※2 KAMPOmics®

 ツムラの強みである先端技術(メタボローム・遺伝子・腸内細菌・システムバイオロジーなど)の研究を組み合わせ、日本の伝統医学である漢方医学と、多成分で複雑な漢方薬を統合的に理解するためのツムラ独自の研究パッケージ。当社の登録商標。

※3 未病三防

 治未病(未病先防)、重症化抑制(既病防変)、再発抑制(癒後防復)

※4 レスポンダーマーカー

 治療に対して効果がみられる可能性が高い患者様(レスポンダー)を層別化するための生理学的指標

※5 中成薬

 中医学の理論に基づいた処方を顆粒や丸剤等の形にした薬剤。

※6 飲片

 原料生薬を切裁したもの。刻み生薬。

※7 一人一方

 患者様の代わりに、スマートファクトリー設備で処方箋どおりに飲片を煎じ、煎液、流エキス、エキス顆粒に加工・包装したのものを、直接患者様に郵送するスマートサービス

※8 漢方薬的組織

 生薬を「人」「部門」に、漢方薬を「部門」「会社」に例え、成果を創出する調和した組織のこと

(6) 経営環境

① 国内市場

 超高齢社会において、医療費の増大に伴う各種制度変更、地域医療のあり方や、生活者のセルフメディケーション意識の向上など、製薬会社が直面する課題は少なくありません。

 国の施策においては漢方への期待と役割が大きくなっています。2015年に厚生労働省より公表された「医薬品産業強化総合戦略」の中の一つに、漢方薬は「我が国の医療において重要な役割を担っている」と明記されています。また、「がん対策加速化プラン」では、支持療法の開発・普及のために実施すべき具体策として、「漢方薬を用いた支持療法」があげられています。当社は、このような政策に準ずる施策に加え、「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」や総合診療医・在宅医療の推進などを含む「地域包括ケアシステム」の構築などの医療政策、人口動態に伴う疾病構造の変化(高齢者疾患、女性特有の疾患など)を踏まえた取り組みを進めてまいります。

「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」において、医療関連のオーソリティによって、漢方医療を取り巻く課題と対応策が「提言書」として2017年に取りまとめられました。その後、健康寿命の延伸に資する観点から個別化医療が重要視され、漢方薬の必要性がより一層見直されてきている現状を踏まえ、2021年に提言書が更新されています。当社は、日本漢方生薬製剤協会の活動を通じて、この提言を実現するために、産官学共同の課題として取り組んでいます。

 外部環境としては、インフレに伴う物価上昇等の影響による原資材価格の高止まりや為替変動など、厳しい事業環境が継続しています。また、少子高齢化に伴う生産年齢人口減少が予測されており、少ない労働量でも成果を生み出せる企業体質への転換を図るべく、デジタル・ロボット技術を用いた自働化投資や従業員のエンゲージメントの向上に継続的に取り組んでいます。

② 中国市場

 中医学の理論に基づき製剤化された中成薬や飲片(刻み生薬)などの中薬は中国において長年使われている薬ですが、近年は中薬の発展を促進する政策が発表されています。2016年に国務院が発表した「健康中国2030計画綱要」では、現代医学と中国医学の双方を重視し、中薬生産の規範化、規模化を推進するとともに、理論研究と薬品開発に取り組むという方針が発表されています。また、2022年1月に「第14次五カ年医薬工業発展計画」が発表され、中薬の研究開発、技術と品質、製造レベルなど多方面から計画を行っていく方針が示されています。

 また、中国では急速な高齢化が進行しており、高齢者人口は2022年現在で2.1億人を超え、2035年には4億人を超えると予測されています。

 中国における中薬の市場規模は、中成薬、飲片(刻み生薬)を合わせて2023年時点で約15.9兆円と日本の漢方市場と比較して約60倍と大きな規模ですが、このような環境の変化を踏まえると、さらに拡大するとみられています。

 当社は、これまで国内事業で積み上げてきた技術・ノウハウを最大限活用し、中国平安保険グループとの協業のもと、中薬業界の発展と中国国民の健康に貢献する企業を目指しています。

(7) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 第2期中期経営計画に基づく取り組み

「(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しています。

② 製商品の品質と安全性の追求
1) 品質保証

 当社は、製商品の品質と安全性の追求を最も重要なテーマであると考えています。この品質重視の考え方「ツムラクオリティカルチャー」を漢方バリューチェーンの基盤とし、品質保証における継続的な改善と強化に取り組んでいます。

「ツムラ品質マネジメントシステム」

 当社は、「品質方針」のもと品質保証システムのさらなる充実を目指した「ツムラ品質マネジメントシステム」の体制を整え、品質を重視する取り組みを推進しています。このシステムは、当社グループ全体を取り込む包括的なものであり、これによって経営陣の責務をさらに明確にしました。また、グローバル化(PIC/S※対応を含む)や法改正などにも適正に対応できる仕組みとなっています。

 品質方針

 当社およびグループ会社は、価値創造企業を目指し、“KAMPO”で人々の健康に寄与するため、以下の品質方針を定めています。

・高品質かつ安全で信頼される製品を安定的に供給します

・医薬品に関する薬事関連法規を遵守します

・お客様の声を聴き、継続的な品質改善に努めます

・安全な生薬の安定確保を実現します

・研究の信頼性を確保し、研究成果を適切に提供します

・全役職員に対し、適切な教育を実施し、高い意識を持つ人財を育成します

・これらを実現するため、経営資源を適正に配分します

 ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程のもと、生薬栽培から最終製品のデリバリーまでのサプライチェーン全般を対象として法令遵守や当社として守るべき基準を明記した文書をそれぞれ社規として体系的に構築しています。

 これは当社独自の「品質システム」であり、当社及びグループ会社のすべての事業における品質重視体制を構築し、高品質な漢方製剤を患者様に提供するための活動となっています。

※ PIC/S:

Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Schemeの略称。医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキームのことであり、GMP基準などの国際化を推進する枠組み。

2) 「ツムラ生薬GACP※」

 当社は、「ツムラ生薬GACPポリシーに関する規程」を制定し、運用しています。この規程は、「ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程」に基づき、当社およびグループ会社による生薬生産の管理において、生薬の安全及び品質を保証するために遵守すべき基本的要求事項を定めることを目的としています。

 ツムラ生薬GACPは、「ツムラ生薬GACPガイドライン」「生薬生産標準書」「生薬トレーサビリティ」「教育・監査・認証」で構成されています。

 その一つである生薬トレーサビリティは、生薬の生産地から生薬製造所に納入される各段階で、生産団体・生産者の情報や栽培・加工などの記録を収集・保管し、情報の追跡と遡及を可能とする仕組みであり、漢方製剤の製造工程、流通過程の履歴情報と併せ、医療機関から生薬生産地までの全履歴情報の追跡・遡及を可能としています。

 今後も、生薬の安全性・品質保証体制をより強固なものにし、安全で安心できる生薬の安定確保のために、ツムラ生薬GACPを継続的に強化し運用していきます。

※ GACP:Good Agricultural and Collection Practice(生薬生産の管理に関する基準)

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