企業ダイナミックマッププラットフォーム東証グロース:336A】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社グループは、「デジタル社会のインフラとして高精度位置情報基盤をグローバルに構築し、自動運転をはじめとする新しい未来を拓く」をパーパスとして掲げ、自動車関連及びスマートシティ(注)等、様々な用途に向けた高精度3次元データの構築・提供を行っております。

(注)都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区

(2) 経営環境

 国土交通省「令和6年版交通安全白書」によると、我が国においては、交通事故発生件数は2004年を境に減少しているものの、2023年における交通事故死亡者数は2,678人となっております。また、世界全体では2021年における交通事故死亡者数が約119万人(World Health Organization「Global Status Report on Road Safety 2023」、2023年12月発行)になるなど、引き続き交通事故死亡者数の減少に向けた取り組みが必要な状況が続いております。こうした中、交通事故の発生減少に大きく貢献する可能性のある手段として自動運転技術の開発が推進されてきました。

 また、我が国の地域社会においては、人口減少を背景とした利用者減等により公共交通手段の維持に課題が生じており、地域社会における移動手段の再構築が喫緊の課題となっております。

 当社グループでは、こうした環境において、HDマップの整備・提供を通じて、自動運転や先進運転支援システムへの搭載は勿論、地域社会課題解決のためのMaaS展開へと広がると想定しています。さらには、防災・減災システム、インフラ維持管理システム等、自動走行以外での用途を拡大し、多様化するニーズに応えることによって安心・安全で快適な社会の実現に貢献する所存です。

<市場規模・市場動向>

IHS Markitの予測によると、2030年には全世界で新規に販売される車両の約28%にレベル2+以上の自動運転及び先進運転支援システムが搭載される見通しです(「IHS Markit “Autonomous Vehicle Sales Forecast 2023”」を基に当社作成)。また、Markets and Marketsの試算によると、2023年における自動車分野を除くデジタルマップ市場規模はグローバルで3.4兆円とされております(「Markets and Markets “Digital Map Market Global Forecast to 2029”」を基に当社作成)。Markets and Marketsでは、デジタルマップを「衛星画像や航空写真、GIS(注1)、クラウドソーシングデータ(注2)等のさまざまなデータソースとテクノロジーを活用して、道路やランドマーク、地形、交通ネットワーク、PoI(注3)等の空間情報を提供するもの」としており、当社のHDマップをはじめとした高精度3次元データを活用した事業をカバーしております。本資料では、当社の2つの事業領域(オートモーティブビジネスと3Dデータビジネス)についてマーケット情報を示しておりますが、図表の左側ではオートモーティブについて示しており、右側では3Dデータビジネスについてのみを示すことを目的としております。このためTAM(Total Addressable Market:獲得出来る可能性のある最大の市場規模)は、オートモーティブ向けのデジタルマップ市場を除外しております。

 一方、SAM(Serviceable Available Market:実際にアプローチ出来る市場規模)については、当社事業とより近接した事業領域にあるものを抽出するため、地域と用途を絞り込んでいます。地域につきましては、現在の当社グループのデータカバレッジ地域と重なる北米・アジア・パシフィック市場としています。用途につきましては、インフラ、輸送、政府・防衛の3つの分野に限定しています。それぞれの代表的な内容としては、インフラ分野はインフラメンテナンス、輸送分野は各種情報に基づいたルート計画や交通計画・モデリング、政府・防衛分野は空間情報の提供による戦略的な計画や意思決定の支援が挙げられており、現在当社が3Dデータビジネスで取り組んでいる事業と重なるものです。なお、これらの記述は、本書に引用されている外部の情報源から得られた統計その他の情報に基づいており、それらの情報については当社グループは独自の検証を行っておらず、その正確性または完全性を保証することはできません。


当社グループは、2025年3月末現在、日本・北米・欧州・韓国・中東26か国において150万Km超にもわたるHDマップのデータカバレッジを広範に拡張し、世界で初めてレベル2+以上の自動運転/先進運転支援システムが搭載されたGeneral Motors CompanyのCT6への搭載以降、現在は36車種(販売予定が公表されている車種数を含む) の量産車へのHDマップ搭載を実現している等、オートモーティブビジネス向けのHDマップ市場において高い競争優位性を確保していると考えております。またオートモーティブ以外の3Dデータビジネスは、社会・産業のDX化のニーズの高まりを背景として、全世界で3.4兆円、現在の当社グループのデータカバレッジ地域と重なる北米・アジア・パシフィック市場において、当社が具体的に事業拡大を進めているインフラ、輸送、政府・防衛の3つの分野に限定しても1.6兆円と広大なマーケットが存在しています。当社がオートモーティブビジネスを中心としてこれまでに蓄積してきた高精度3次元データに関する深い知見と豊富なデータカバレッジ、データ精度の高さといった強みを活かして、顧客・協業先との関係性をより一層強固にすることで、広大な市場の獲得を目指していきます。今後、市場が拡大した後も当社グループの競争優位性を維持・強化すべく、顧客との関係の維持・強化、潜在顧客との取引の実現、高精度3次元データの用途拡大、技術的優位性の一層の強化の可能性の模索等、不断の努力を行ってまいります

(注1)Geographic Information System(地理情報システム)の略で、地理的位置に基づいた情報を管理・解析し、視覚的に表示する技術。地理的なデータを総合的に扱い、高度な分析や迅速な判断が可能になる

(注2)一般のユーザーが提供する地理情報を基に作成・更新される地図データのことで、リアルタイムで最新の情報を反映することが可能。具体的には、道路の変更、施設の情報(店舗の開店・閉店等)、渋滞・事故情報等が含まれる

(注3)Point of Interestの略で、地図やナビゲーションシステムで特定の地点を示すために使用される情報。具体的には、レストラン、ガソリンスタンド、観光名所、病院などユーザーが関心を持つ場所を指す

(3) 目標とする客観的な指標等

 当社グループは、(1)経営方針に記載のとおり、「デジタル社会のインフラとして高精度位置情報基盤をグローバルに構築し、自動運転をはじめとする新しい未来を拓く」をパーパスとして掲げており、その実現のためには、中長期的な売上収益の成長、収益性の向上、また、事業活動を支えるキャッシュ・フローの創出が重要と考えております。当社グループは、成長性、収益性及びキャッシュ・フローの状況を把握するために、売上高、ライセンス型売上高、調整後EBITDAを重要な経営指標と位置付けております。

① 売上収益の中長期的な成長

 当社グループでは、将来の黒字化に向け、売上収益の中長期的な成長を重視しております。2020年3月期から2025年3月期までの当社グループ全体での売上高年平均成長率は52%を実現しております。当社グループは、今後中期的にも同様の高成長性を維持することを目指して取り組んでまいりますが、そのためには自動車メーカーを中心とした顧客からの継続的な受注が重要と考えております。

 売上高(連結)の推移

                                                              (単位:百万円)

 

2024年3月

2025年3月

売上高

5,567

7,465

 国内

1,654

2,693

 海外

3,913

4,771

② ライセンス型売上の成長

 当社グループでは、収益モデルの違いから、売上高をプロジェクト型とライセンス型に大別でき、将来の黒字化、一層の利益成長に向けて、整備済みのデータやシステム等を活用したライセンス型売上の成長が重要な課題と認識しております。

 プロジェクト型売上には、主にHDマップデータ整備等による事業基盤の構築や官公庁向けプロジェクトを通した研究開発投資見合いの性質があり、オートモーティブビジネスにおけるHDマップ新規整備に係る開発プロジェクト及び固定価格でのHDマップ更新整備に係るメンテナンスフィー、3Dデータビジネスにおける官公庁からの開発プロジェクトが含まれます。

 ライセンス型売上には、主に整備済みのデータやシステムをベースに、車載用や多用途向けに商品を提供するものが含まれます。オートモーティブビジネスにおける量販車へのHDマップ搭載に際し、販売台数に応じて受領するライセンスフィー(HDマップ搭載車の販売時に売上計上)及びメンテナンスフィー(HDマップ搭載の期間に応じて売上計上)、法人向けHDマップライセンス等(整備済み地図データ提供によるライセンスフィー、HDマップの利用対価として自動車メーカーより収受する開発利用料等)が含まれます。また、3DデータビジネスにおけるViewerやGuidance商品を通じたライセンスフィー、法人向けデータライセンス(整備済み地図データ提供によるライセンスフィー等)が含まれます。ライセンス型売上に係る売上原価は固定的なものが中心であり、限界利益率が高い性質を有しているため、今後、より高い粗利率が期待できるライセンス型売上の比率を高め、当社グループ全体の粗利率の向上を目指します。

 売上カテゴリー別のビジネスの概要及び収益モデルについては、「第1 企業の概況 3 事業の内容(売上カテゴリー別のビジネスの概要及び収益モデル)」をご参照下さい。

 売上高(プロジェクト型、ライセンス型)の推移       

                                      (単位:百万円)

 

2024年3月

2025年3月

売上高

5,567

7,465

 プロジェクト型

4,572

6,293

 ライセンス型

994

1,171

③ 調整後EBITDAの向上

 当社グループは、持続的な成長と高い収益性の実現を目指す観点から、また事業活動を支えるキャッシュ・フローの状況を把握するため、調整後EBITDA(注)を重要な経営指標と位置付けております。

調整後EBITDAの推移
                                                                (単位:百万円)

 

2024年3月

2025年3月

調整後EBITDA

△2,203

△609

(注)調整後EBITDA

EBITDA(営業利益+減価償却費)に営業外収益に計上される政府補助金を加えたものです。

(4) 当社グループの強み

①  厳しい精度要求に応え得る高水準の正確性を有する技術力

 自動運転や先進運転支援システムへ搭載されるHDマップにおいては、走行ルートから逸脱しないよう、自己位置推定機能において従来のナビゲーション地図(メートル級の精度)より厳しい精度水準が求められております。

 当社グループは、高精度3次元データの測定技術にRTK(Real Time Kinematic)(注1)を採用するとともに、衛星測位、計測、図化、統合の各プロセスにおいて高い技術力を結集することにより、1桁のセンチメートル精度を実現しております。高水準の精度で3次元点群データを取得する測位・計測技術により、自動運転及び先進運転支援システムに用いられるHDマップの提供を可能としており、また、多様な顧客要求に応じたデータ形式・仕様での提供を可能にする図化・統合技術により、大手自動車メーカー各社の優位性ある自動運転及び先進運転支援システムの提供に寄与しております。

 また、高精度3次元データは社会DXサービスの提供に必要な高精度の位置情報データ基盤としてデジタル社会のインフラとしての役割を担います。国内外の大手自動車メーカー各社による採用実績から、当社グループの有する技術は社会DXサービスを実現する様々な用途展開を可能にする汎用性を有していると考えております。


(注1) 「相対測位」と呼ばれる測定方法のひとつ。固定局と移動局の2つの受信機で4つ以上の衛星から信号を受信する技術で、2つの受信機の間で情報をやりとりしてズレを補正することで、単独測位よりも精度の高い位置情報を得ることが可能

②  国内外を網羅する広域なカバレッジ範囲

 当社グループは設立以来、自動運転の本格到来を前に必要となるデータを構築すべく、国内外においてHDマップのカバレッジ範囲を急速に拡大させてまいりました。2025年3月末時点において、日本国内において高速道路・自動車専用道路:33,000km、北米において高速道路・幹線道路:1,200,000km、欧州において高速道路・幹線道路:255,000km、韓国において高速道路:20,000km、自動車メーカーの求めるカバレッジ範囲のHDマップの整備を完了させており、顧客ニーズを充足しています。また2025年度中には、北米における更なるカバレッジの拡充・中東への展開を予定しております。今後の新規データ整備によるカバレッジ範囲の拡大は、顧客と綿密なコミュニケーションを行い、顧客ニーズや事業性を考慮した上で取り組み、競合他社に対する先行優位性をより強固なものとする方針です。

 オートモーティブビジネスに加えて、当社グループが各国で保有する広範な高精度3次元データを活用し、3Dデータビジネス(自動運転及び先進運転支援システム用途以外でのソリューション提供)の拡大にも取り組んでまいります。


(注)2025年3月末現在
③  今後のパイプラインを生み出す顧客基盤
a 国内外の有力自動車メーカーとの緊密な関係性

 日本国内のHDマップの生成は、日系自動車メーカー10社の要求に基づき共通の仕様が定義されています。こうした背景から、当社はHDマップ作成を一元化する目的で、上記日系自動車メーカー10社からの共同出資を受けた上で設立され、HDマップの整備に取り組んでまいりました。

 また、連結子会社であるDynamic Map Platform North America, Inc.(旧 Ushr Inc.)も、当社買収前においてGM Venturesを通じて開発資金が提供され、技術者同士が協力するなど、General Motors Companyとの緊密なパートナーシップを構築してきました。General Motors Companyは北米高速道路におけるハンズフリー運転を可能とすべく2014年に開発を開始した同社のSuper Cruise™において、2013年にDynamic Map Platform North America, Inc.をパートナーとして選定した結果、Dynamic Map Platform North America, Inc.のHDマップは、Super Cruise™の開発とその市場投入に際して、重要な役割を果たしております。

 こうした背景から、当社グループは上記に挙げた国内外の有力自動車メーカーとの緊密な関係性を既に有しており、各社への販路を構築できております。また、当該自動車メーカー以外においても、北米・欧州メーカーなど商談を開始している先が複数存在します。

 上述のとおり既に販売中の量産車に当社グループのHDマップが複数搭載されていることに加えて、今後の利用を目的とした開発利用契約(注2)を複数社と締結している他、将来販売予定車種への搭載に向けて広範な商談が進んでいる取引先も複数存在し、当社グループのHDマップ搭載台数の一層の拡大を見込んでおります。

(注2) HDマップ開発に係る費用を当社グループ開発のHDマップの利用そのものへの対価として自動車メーカーより収受する契約

b 政府・自治体・企業等との緊密な連携

 当社は、内閣府が所管する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、HDマップの開発・作成を一元化する目的で設立され、官民一体となりHDマップの整備に取り組んできた経緯があり、政府・自治体・企業等と緊密に連携し事業を行っております。HDマップを活用した自動運転及び先進運転支援システム以外のソリューション提供、高精度3次元データの多用途展開を進める3Dデータビジネスでは、産業のデジタル化、脱炭素、高齢化社会・過疎化への対応等、各種社会課題解決に資する政府研究開発プロジェクトに継続的に参画している他、社会実装に向けた各種実証実験、商品開発に自治体や企業等と共同で取り組んでいます。これら政府・自治体・企業等の緊密な連携・関係性を活かして、研究開発・商品開発を進め、社会課題の解決を通じて新たな市場を創造し、一層の事業拡大に取り組んでまいります。

 以下は、当社グループで契約済の案件、見積り依頼を受領している案件、商談中の案件のパイプラインの状況を示したものです。自動車メーカーは複数年にわたって新車開発を進める関係上、当社グループへの発注も新車販売タイミングより、相当の期間先んじて行われる傾向にあり、段階的な見積依頼(RFI: Request for Information(「情報提供依頼書」を指し、新しい製品・サービスを導入する前に、ベンダーから当該製品・サービスに関する基本的な情報を収集するための文書です)、RFQ: Request for Quotation(「見積依頼書」を指し、具体的な製品・サービスの購入を検討するに、ベンダーから正式な見積りを依頼するための文書です))及び発注書(PO: Purchase Order)の受領は、当社グループの将来収益の実現性を図る上で重要な要素となっております。当社グループでは、自動車メーカーの業界慣行に照らし、顧客との緊密な交渉を経ている等の一定の案件については、必ずしも法的拘束力のある契約書の締結には至ってはいないとしても、オートモーティブビジネス売上高に係る目標を議論するに際して将来売上高として考慮しております。3Dデータビジネスにおいては、政府プロジェクトの受注実績やViewerやGuidance商品の契約実績等の指標に着目し、契約書の締結に至ってない案件についても商談の状況を踏まえて、見込み案件毎に売上高を設定し、売上高に係わる目標を議論するに際して考慮しております。ステータスがRFQ、RFI、商談中の案件パイプラインについては、当社グループが受注に至っていないものであり、当社グループが想定する時期及び取引条件通りに受注・契約に至る保証はありません。

(オートモーティブビジネス)

 プロジェクト型


(注)1.これらのパイプラインはあくまで契約に基づいて想定される収益見込み金額であり、記載の図の通りに推移しない可能性がある。

2.為替レートはFY22は131.43円/ドル、FY23は140.56円/ドル、FY24は151.58円/ドル、FY25以降は140円/ドルで計算

ライセンス型

(注)1.これらのパイプラインはあくまで契約に基づいて想定される収益見込み金額であり、記載の図の通りに推移しない可能性がある。

2.為替レートはFY22は131.43円/ドル、FY23は140.56円/ドル、FY24は151.58円/ドル、FY25以降は140円/ドルで計算

(3Dデータビジネス)

プロジェクト型

(注)1.これらのパイプラインはあくまで契約に基づいて想定される収益見込み金額であり、記載の図の通りに推移しない可能性がある。

ライセンス型

(注)1.これらのパイプラインはあくまで現状の想定であり、記載の図の通りに推移しない可能性がある。

(5) 中長期的な経営戦略

①  搭載拡大に向けた幅広いステークホルダーとの連携

 自動運転・先進運転支援システム市場の立ち上がりに合わせて、近年、搭載車種が高級車種から、普及車種に広がり、その搭載台数が拡大しています。既に北米においては普及車種にも広く搭載が進んでおり、他地域においても同様の進展が期待されます。また、生成AIの利用が進むなかで当社データを活用することで自動運転技術の安全性・快適性が向上することが期待されます。当社は、従来の自動車会社との連携に加えてTier1自動車部品メーカー(注3)・地図会社・半導体メーカー・AI企業等のステークホルダーとの連携を強化することで,自動運転及び先進運転支援システム全体を俯瞰した活動を通じて、自動車会社各社の自動運転社会の実現に向けた取り組みに貢献してまいります。

②  顧客ニーズに基づいたグローバルなデータ提供

 国内は、自動車メーカーからの需要に応じて自動車専用道路につながる基幹道路や直轄国道等への展開を図り、当社データの利用機会を段階的に拡大します。また、スマートシティプロジェクトなどへも積極的に参画し、単に整備路線の拡充を図ることに限らず、線と面の両方から整備範囲の拡張を行います。また北米では,主要幹線や都市部の利用率の高い路線・地域から順に整備を開始し、顧客の高いニーズを充足すべくエリアを拡大いたします。既に北米においては1,200,000kmの整備を完了させており現時点での顧客ニーズは充足していますが、自動運転社会の進展に伴った具体的な顧客ニーズを受けてデータ拡大を進めてまいります。

 また、欧州、アジア市場においても既に自動車メーカーと当社のHDマップデータの利用に関する契約を締結しております。今後は、当社グループの日本市場・北米市場における既存の取引関係を横展開することで、当社HDマップデータのより広範な搭載を訴求し、さらなる拡大を図ってまいります。加えて、当社グループが高精度3次元データを保有する各国において、保有データを活用した3Dデータビジネスの事業化・拡大にも取り組んでまいります。

③  デジタル社会における共通インフラの確立

道路管理情報、工事情報等の産業データを収集し、自社の「点群データ」、「ベクトルデータ」等に紐づけして「データ連携基盤」を構築いたします。当該「データ連携基盤」を道路台帳の整備・更新、除雪支援、電線/電柱の日常点検、維持管理等、様々な用途での活用を図ってまいります。また、インフラ・物流・建設領域等におけるプラットフォーマーとのアライアンスも視野に防災・減災、社会インフラの維持管理、輸送システム、建設生産システム(i-Construction)(注5)など、幅広いデータ利用者へ展開・提供するとともに利用アプリケーションの開発にも取り組みます。「過疎地域等移動,公共交通ICT(Information and Communication Technology = 情報・通信に関する技術)化等」、「郊外、観光地等での移動」、「駅、スーパー、病院等、拠点巡回」等、自治体向けモビリティサービスを地域整備(点)からはじめ、全国整備(面)へと拡大していきます

④  新規事業の創出

 民間企業とのパートナリングにより,「データ連携基盤」を活用した新事業の創出を図ります。データ活用技術の開発を他社とのパートナーシップも活用して推進します。

<業界横断的な社会へのインパクト>


(注)1.上記は当社グループが未進出の分野を含む、ターゲット市場のイメージを示しております

2.自動運転各レベルの内容は、「3 事業の内容 <自動車向けHDマップの特徴>③自動運転高度レベル2以上に有用な機能」に掲載する表のとおりです。

a あらゆる自動モビリティの制御データとしてのHDマップの提供

 センチメートル級の位置精度でデータ整備を行うノウハウを活用する一方で、乗用車の先進運転支援システム向けに構築したデータ仕様を発展させることで、自動走行シャトル(注5)やドローン、AGV(Automatic Guided Vehicle)(注6)等、完全自動走行モビリティの安全な運行を可能とする高精度3次元データの提供を国の法令改定に従いながらサービス事業として推進いたします。また、静的情報だけでなく動的情報に対するニーズが益々高まる中、動的データを生成するための技術開発や既に存在する様々な情報との連携に取り組み、新たなデータ提供ビジネスの確立にも取り組んでまいります。

b 省人化・省力化に繋がるソリューションの提供

 高精度な位置情報を持つ地図データは、自動モビリティの制御に役立つのみならず、人による行動や作業の効率化にも役立ち、カーボンニュートラルや高齢化社会への対応といった社会課題の解決にも寄与いたします。例えば、高さ情報や目的地の正確な座標情報を活用した無駄の少ない走行による電動車両の航続距離延伸(=CO2削減)や除雪機械の自車位置周辺の正確な地図データ配信による除雪作業の効率化、道路空間におけるインフラ管理の効率化、空港港湾等の制限区域内における位置情報の共有による安全性・効率性の向上などが用途として挙げられ、高精度位置情報を用いた様々なソリューションの提供に繋げてまいります。

c 自動車メーカー向け事業の盤石化

 自動車メーカーによる先進運転支援システム開発の効率化を背景に、当社グループではHDマップデータの全世界的共通または互換性のある仕様での提供が重要になると認識しており、北米市場において量産車への搭載実績を有することを活かしつつ、欧州や中東、アジアなど他地域でのHDマップデータ整備を進めてまいりました。また、HDマップデータの整備範囲拡大・更新頻度向上に活用するために、インフラ会社等の他社が計測・提供するCrowd Sourcedデータ(注7)を当社のHDマップと連携させる研究開発を継続的に進め、事業基盤を盤石なものとしていきます。

HDマップのデータを更新するにあたっては、道路が変化したことを検知することが非常に重要となります。日本においては、国道、県道など主要な道路については道路管理者を通じて新規開通や大規模工事情報を入手することができますが、標識などの設置物、道路ペイントなどの小さな変化や一般道路の変化情報については、現地を確認する必要があります。また、国によっては大きな工事情報でさえも入手できないこともあります。当社は、自動車メーカーや車載機器メーカー等から入手した車両のプローブ情報(注8)をもとにした変化点検知を取り入れており、当該情報を活用することで、速やかに再計測し、データ更新する仕組みを取り入れており、より低コストで高鮮度の地図更新プロセスを進化させてまいります

d V2Xにおけるデジタルインフラの提供

 自動運転・先進運転システムにおいてAI活用が進展することに伴い、車載センサーから得られた情報のみから判断する自律型から、より周辺情報を活用したV2X(注9)でのインフラ協調型での制御が求められます。既に海外においてはV2Xの実現に向けたデジタルインフラの検討が開始され当社グループも一部の取り組みに参画しております。当社グループは、中長期にわたりパートナーとの協力を通じて、車両・歩行者・天候・渋滞・交通規制といった動的情報を連携させる基盤を構築し自動運転社会の発展に貢献してまいります。

⑤  アライアンス・M&Aを活用した事業拡大

当社グループの持続的な成長のために、アライアンスやM&Aの活用による事業拡大は有効な手段であると考えております。当社は2019年に、当時General Motors Companyの投資先であった在米国HDマップ企業であるUshr Inc. (現・連結子会社Dynamic Map Platform North America, Inc.)を完全買収し、北米における事業基盤を確保すると同時に、同社が有するHDマップ生成に係わる技術・ノウハウ、優秀な技術者、現地市場における人脈を獲得しました。その後、同社を通じて、欧州・中東・韓国においても事業を展開しております。今後も事業領域の拡大や当社保有データの利用を促進するためのアプリケーション開発、データ解析、AI活用等に係る技術・ノウハウ獲得を目的としたアライアンスやM&Aの機会を検討してまいります。

   (注3) 自動車メーカーに直接部品を供給する部品メーカー

(注4) 国土交通省が推進する「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図る取組み

(注5) 自動運転でシャトル運行(イベントや空港・観光地など特定の目的地を利用する客を効率的に輸送するため短い間隔で運行)を行う輸送車

(注6) 産業用途で多く使用される自動運転車の一種。人間が運転操作を行わなくとも自動で走行できる搬送車

(注7)不特定多数の情報源から情報を収集し、その情報に基づき生成された地図データや位置情報

(注8)走行する車両を通じて収集される位置、時刻、路面状況等の情報

(注9)Vehicle to Everythingの略称。車両と様々な機器とを接続し、相互に連携する技術

(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題は以下のとおりであります。

①  事業成長の実現及び収益性の向上

 当社グループの事業は依然赤字状態にあり、収益性の向上に努めて黒字化を早期に実現することが特に財務上求められ、その対応が事業の持続的成長にもつながると理解しております。既存顧客との間では契約に基づく成果を生み今後も安定して継続する長期的な取引関係を築く他、車載向け事業に限らず広く潜在顧客との取引を実現し、事業・売上規模の大きな拡大を実現することを重要な課題として広範に対応を進めてまいります。

②  優秀な人材の採用と育成

 当社グループの将来にわたる持続的成長に向けて、優秀な人材の採用と育成が欠かせないものと認識しております。特に、技術革新の激しい当社グループの事業領域においては、当社グループの競争優位性を維持・拡大することにつながる技術向上を担うエンジニアの獲得あるいは育成が不可欠であると考えております。当社グループでは、優秀な人材の獲得に向けて今後も積極的な採用活動を実施するとともに、人材の育成と維持のための社内トレーニング体制の強化や企業文化の醸成などの施策を推進してまいります。

③  内部統制の強化

 当社グループは、デジタル社会における共通インフラとしての役割を担う企業として、ユーザーや市場からの信頼が必要不可欠であると考えております。情報管理、財務、IT、その他の社内制度などを含めた内部統制の継続的な策定、強化、改善を実施することで信頼を獲得し、企業価値のさらなる向上に取り組んでまいります。

④  HDマップ整備・更新プロセスの改善

 地物の選定、品質基準等、既存のプロセスの見直しや、Dynamic Map Platform North America, Inc.とのより一層の技術統合を強力に推進することでプロダクト生成の低コスト化を追求し、合理的で競争力のあるプロセスを確立します。特に、計測・図化の自動化、省人力化を徹底するほか、国や地方自治体と連携しオープンデータを活用することで整備費を圧縮し、競争力の強化を図ります。

 また、データ更新のコストと鮮度の維持について課題ととらえており、上記(5)中長期的な経営戦略 ④新規事業の創出 c 自動車メーカー向け事業の盤石化において記載しましたように対策を実行しております。

⑤  コスト低減に資する研究開発

Dynamic Map Platform North America, Inc.も含め衛星画像利用等によるモービル・マッピング・システム(MMS)以外の計測手法の開発、自動図化等のプロダクトによる生産性と効率の向上など、今後の成長に必要な技術開発力を強化します。また、更新コスト低減のキーとなる変化点抽出の効率化(自動化)については他社との提携なども含めて技術開発を進めます。

⑥  情報管理体制の強化

 当社グループでは、自社情報の他、提供するソリューションに関連して取得される、人物の顔と表札を個人情報に該当するものとして取り扱っております。これらの個人情報を保護するため、当社では個人情報保護に係るルールの整備や施策を講じ、流出等の事態が生じないよう万全の注意を払っておりますが、今後も社内教育の充実、施策の強化・整備を実施してまいります。

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