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【東証プライム:9434】「情報・通信業」
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企業概要
文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営理念
当社グループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、創業以来一貫して情報革命を通じた人類と社会への貢献を推進してきました。情報・テクノロジー領域においてさまざまな事業に取り組み、「世界に最も必要とされる会社」になるというビジョンを掲げ、企業価値の最大化に取り組んでいます。
(2) マテリアリティ(重要課題)
上記の経営理念に基づき、社会インフラを提供する当社グループは、本業を通じて、さまざまな社会課題の解決に貢献すべく、「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中」の実現を通じて、持続可能な社会の維持に貢献し、中長期的な企業価値向上を達成すべく、当社グループが優先的に取り組むべき課題として、6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。各マテリアリティ(重要課題)の概要については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) サステナビリティ全般 c.戦略及び指標と目標 (b)マテリアリティ(重要課題)の特定」をご参照ください。
(3) 経営方針
a. 経営環境
2024年度の経営環境は、地政学リスクの高まり、インフレおよび為替の大幅な変動による先行き不透明感が続くなか、大企業の堅調な設備投資需要などにより緩やかな回復傾向にありました。一方、テレワークやオンラインショッピング、非接触型決済の利用拡大など、コロナ禍をきっかけとした人々の生活様式の変化や深刻化する人手不足に対応するため、企業や行政のデジタル化は必要不可欠なものとなりました。デジタル化は、生産性向上やイノベーションの創発を促すことで今後の日本の社会を変革していく原動力となり、さらに、文章・画像・プログラムコードなどさまざまなコンテンツを生成することができる生成AIの出現により、変革のスピードは加速しています。
b. 中期経営計画(2023年度〜2025年度)
当社は長期的に「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」を目指します。これは、AIの加速度的な進化により急増すると予見されるデータ処理や電力の需要に対応できる構造を持ったインフラを構築し、未来の多様なデジタルサービスを支える不可欠な存在となることを意図しています。当社は、この実現のために必要となるテクノロジーを特定し、これまでさまざまな準備を行ってきました。2023年度から2025年度における中期経営計画では、この実現に向けた事業基盤の再構築を目指しています。
c. 事業戦略
当社グループの掲げる成長戦略「Beyond Carrier」は、コアビジネスである通信事業の持続的な成長を図りながら、通信キャリアの枠を超え、情報・テクノロジー領域のさまざまな分野で積極的にグループの事業を拡大することで、企業価値の最大化を目指すものです。また、通信事業とそれらのグループ事業との連携を強化することで、通信事業の競争力を強化するとともに、グループ事業のサービス利用者数の拡大やユーザーエンゲージメントの向上といったシナジーを創出することを推進しています。
(a) 通信事業のさらなる成長
当社グループのビジネスの基盤となる通信事業では、5Gの展開やスマートフォン・ブロードバンドの契約数の拡大、モバイルサービスにおけるARPU(1契約当たりの月間平均収入)の向上を図ることで、さらなる成長を目指します。
ⅰ.スマートフォン契約数・ブロードバンド契約数の拡大
当社グループは特長の異なる3つのモバイルブランドを展開することで、大容量ユーザーから節約志向まで、幅広いユーザーのニーズに応えています。引き続き、総合インターネットサービス「Yahoo! JAPAN」の各種サービスやコミュニケーションアプリ「LINE」、キャッシュレス決済サービス「PayPay」といった、当社グループが提供するさまざまなサービスとの連携を強化することで、スマートフォン契約数の着実な拡大を図ります。また、「SoftBank 光」を中心とする家庭向け高速インターネットサービスについても、販売の拡大に注力します。
ⅱ.モバイルサービスにおけるARPUの向上
当社グループはモバイルサービスにおいて、セキュリティや端末保証、エンターテインメント、店舗でのサポートなどの領域で、ユーザーにとって魅力的な付加価値サービスを拡充しています。加えて、さまざまな特典を付与することで「ソフトバンク」ブランドの魅力を高め、「ワイモバイル」からのブランド移行を促進しています。
ⅲ.5Gの展開
当社グループが2020年3月に商用サービスの提供を開始した5Gは、人口カバー率95%を超え、その後もエリアを拡大しています。これまでは主に、ノンスタンドアローン方式と呼ばれる5Gサービスで、超高速・大容量の通信を実現していました。これに引き続き、スタンドアローン方式と呼ばれる5Gサービスの高度化を順次進めることにより、超高速・大容量、超低遅延、多数同時接続の通信を実現し、これらの特長を生かした5Gサービスの提供を目指しています。一方、設備投資については、既存の基地局サイトを最大限に活用するほか、他社との協業、通信設備の効率化などのさまざまな工夫を行うことで、コスト効率化を図ります。
なお、当社はモバイルブロードバンドのさらなる高速化とトラフィックの需要増加に対応するため、4.9GHz帯を使用する特定基地局の開設計画を総務省に申請し、2024年12月に総務大臣より認定を受けました。今後、当社は2031年3月期末までにすべての都道府県に特定基地局を開設し、2032年3月期末までにサービスを開始することを目指していきます。
(b) エンタープライズ事業におけるDX/ソリューションビジネスの拡大
当社グループは、法人顧客向けに通信サービスを提供することに加えて、急速に拡大する企業のデジタル化ニーズに応えたDX/ソリューション商材の販売や生成AI関連ソリューションの開発・提供に注力し、新規顧客の獲得および顧客1社当たりの取引額拡大を目指します。また、社員のリスキルや採用活動を通じてデジタル人材を確保し、企業の抱える課題を解決する高付加価値なソリューションの提案を行います。さらに最先端テクノロジーの知見を駆使し、社会課題の解決に繋がる新事業の創出を目指します。
2024年9月には、ICTサービスの中核子会社であったSBテクノロジー㈱を完全子会社化しました。同社の有するエンジニアやセキュリティ・クラウドサービスおよび当社の有する経営資源を相互活用し、高付加価値なサービスにより注力することによって収益力の向上を目指します。
(c) メディア・EC事業の成長
当社グループはメディア・EC事業において、総合インターネットサービス「Yahoo! JAPAN」やコミュニケーションアプリ「LINE」など、国内最大級のユーザー基盤を有するインターネットサービスを提供しています。同事業では、検索やニュース、オンラインショッピングなど、多様なサービスを展開しています。
ⅰ.メディア領域の拡大
インターネット広告などを扱うメディア領域では、グループの技術やアセットを活用した配信精度の向上などにより広告単価を高めることで、既存広告の売上の最大化を図ります。加えて、データの連携によるマーケティング分析の強化やコミュニケーションアプリを通じたリピート購入の促進により、新規顧客の獲得から継続的な利用の促進まで一貫したマーケティング支援を行うことで、さらなる売上成長を目指します。
2023年11月からクロスユース施策として、新たな会員サービス「LYPプレミアム」の提供を開始しました。旧「Yahoo!プレミアム」で提供していた特典に加えて、「LINE」アプリがもっと楽しく便利になる特典を利用できる サービスを通して新規会員を獲得し、LINEヤフーグループのサービス利用の拡大を目指します。
ⅱ.コマース領域の成長
オンラインショッピングなどを扱うコマース領域では、ユーザーのニーズが多様化する中、「Yahoo!ショッピング」や「ZOZOTOWN」など、特長の異なる複数のコマースサービスを展開することで幅広いユーザーの取り込みを図っています。今後は、「LINE」「Yahoo! JAPAN」「PayPay」という国内最大級のユーザー基盤を持つグループサービスの相互利用をさらに促進し、グループ経済圏を拡大することで、収益の持続的な成長を目指します。
また、今後の取り組みとして、「LINE」アプリのリニューアルを予定しています。新たに「ショッピング」タブを追加することで、メッセンジャーアプリを起点とした購入体験を提供します。「LINE」アプリのリニューアルを通じて、「LINE」の利便性向上と、さらなるクロスユースの促進強化に取り組みます。
ⅲ.セキュリティガバナンスの改善
メディア・EC事業の中心的な企業であるLINEヤフー㈱は、2023年11月に公表した不正アクセスによる情報漏洩に関して、2024年3月および4月に総務省から行政指導を、同年3月に個人情報保護委員会から勧告および報告等の求めを受けました。これに対し、同社は2024年4月以降総務省および個人情報保護委員会へ定期的に報告書を提出しています。また、2024年11月に生じた「LINE」のアルバムでサムネイル画像が正しく表示されない不具合に関して、2025年3月に総務省より行政指導を受けました。同社は、多数のユーザーを抱えるプラットフォーム事業者としての信頼を損なう重大な事態であると重く受け止め、再発防止策を推進しています。当社は、同社の親会社として、定期的なリスク状況の評価や緊急事態発生時の連絡体制強化などの実効的なセキュリティガバナンス確保の取り組みを進めています。
(d) ファイナンス事業の成長
ファイナンス事業には、PayPay㈱とPayPayカード㈱に加えて、決済代行サービスを提供するSBペイメントサービス㈱やスマートフォン専業の証券サービスを提供するPayPay証券㈱などが含まれます。
ⅰ.「PayPay」のさらなる成長と周辺金融サービスの成長促進
効率的なプロモーションを通じたMTU(Monthly Transaction Users:月間取引ユーザー数)の増加、「PayPayクレジット」「PayPayカード」の利用拡大による決済単価・決済回数の増加、およびグループシナジーで「PayPay」のさらなる成長を図ります。加えて、「PayPay」の決済プラットフォームとしての強みを生かし周辺金融サービスの成長を促進することにより、当社グループのファイナンス事業の拡大を目指します。なお、PayPay㈱は2024年12月にPayPay銀行㈱の株式取得(注)を、2025年2月にPayPay証券㈱の子会社化(注)を発表しました。今後は、PayPay㈱主導で銀行・証券サービスの強化を目指します。
(注) PayPay証券㈱は2025年4月1日に、PayPay銀行㈱は2025年4月11日にPayPay㈱による子会社化を完了しました。
ⅱ.決済代行サービスの決済取扱高の最大化
SBペイメントサービス㈱が提供する決済代行サービスにおいては、当社の通信料金などの決済以外の領域(非通信領域)における決済機会を積極的に取り込み、決済取扱高の最大化を図ります。
(e) 新規事業の創出・拡大
当社グループが有する通信、eコマース、決済、SNSといった異なる複数の分野における数千万人規模のユーザー基盤を強みに、AI、FinTech、モビリティ、ヘルスケア、再生可能エネルギーなどの領域で、最先端テクノロジーを活用した革新的な新規事業の創出・拡大を目指します。
当社では特に生成AI領域に注力しており、複数の大規模言語モデル(LLM)を顧客のニーズに応じて提供する「マルチモデル戦略」を推進しています。その取り組みの一環として、日本語に特化したLLM(Sarashina)の自社開発に取り組みつつ、米Googleが提供する「Google Workspace with Gemini」や、米マイクロソフトが提供する「Azure OpenAI Service」「Microsoft 365 Copilot」など、さまざまな生成AIソリューションの販売を行っています。さらに、2025年2月には、米OpenAIと企業用の最先端AIサービス開発・販売に関する提携を発表しました。加えて、今後の生成AIサービスの提供に必要となる大規模AIデータセンターの構築にも取り組んでいます。
(f) コスト効率化
当社グループは、事業投資を機動的に実施する一方で、コストの効率化に継続的に取り組みます。例えば、コールセンター業務やネットワーク運用・監視業務等を、AIを活用して自動化することに取り組み、さらなる効率化を図ります。また、PHS・3GサービスやADSLサービスの終了などに合わせ、通信設備の最適化を継続します。加えて、グループ企業との共同購買や、グループ企業を活用した業務の内製化などを推進し、グループ全体のコスト効率化を図ります。
d. 財務戦略
当社グループは、プライマリー・フリー・キャッシュ・フロー(注)を重要な経営指標と考えています。高い株主還元を維持しながら、成長への投資を実施していくため、今後も安定的なプライマリー・フリー・キャッシュ・フローの創出を図ります。また、健全な財務体質を維持しつつ、適切な財務レバレッジを伴った資本効率の高い経営を行っていきます。なお、生成AIを用いたサービスの実現や次世代社会インフラの構築などの長期性の成長投資には、社債型種類株式などを活用する予定です。
(注) プライマリー・フリー・キャッシュ・フローの算定方法は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4) <財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標」をご参照ください。
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