コージンバイオ
【東証:177A】「化学」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針及び経営環境
当社は、1981年4月に動物血液の販売と細菌検査用培地の製造・販売(微生物事業)から事業をスタートいたしました。市場のニーズに合わせ、1986年4月には細胞培養用培地の製造・販売(組織培養事業)を開始し、続いて、2014年11月の「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の施行に伴い、細胞加工事業を開始いたしました。「組織培養事業」「微生物事業」「細胞加工事業」の3つの事業展開に加え、それらの事業を組み合わせることによって生みだされるシナジー効果を事業に活用する点が当社の最大の特徴であり、優位性であると考えます。
組織培養事業と細胞加工事業の関係性について、細胞加工事業の競合他社においては、当社のような培地を製造する企業から培地を購入し、細胞を加工する必要があるのに対し、当社では自社製品の細胞培養用培地を細胞加工事業で使用することができるため、細胞加工業務の原価率を低く抑えることができ、収益率の上昇に繋がります。また、細胞加工事業での自社培地使用により、その培地の性能に対するフィードバックを社内で速やかに得ることができ、製品性能・品質の向上、及び改善につなげることができる点にあります。
組織培養事業と微生物事業の関係性については、組織培養事業は細胞、微生物事業は細菌と、培養するターゲットは異なりますが、一部の顧客については、細胞を培養し、同時にその環境における細菌汚染を確認するなど、同一顧客に別事業の製品の販売が可能となることがあります。また、多くの販売代理店では企業や大学、医療機関などを顧客とし、様々な試薬を幅広く扱っていることから、当社が持つ組織培養事業と微生物事業の両製品を取り扱っており、顧客基盤や販売網を共有できる点が単一の事業のみの競合他社と比較して、優位であると考えております。
市場の状況といたしまして、組織培養事業では、再生医療市場における細胞培養用培地は、長きに亘り研究用途での使用が主流でありましたが、近年では、再生医療の市場発展により臨床用途での使用という新たな需要が生まれております。また、抗体医薬品やワクチンの研究、製造など、産業用においても細胞培養用培地が大量に使用されるようになってきたことから、その市場規模は数年間で急速に成長を続けており、グローバルでさらに大きな市場へ拡大していくと予想しております。
細胞加工事業では、ここ数年、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、細胞加工の主要な患者層だったインバウンドによるメディカルツーリズムが減少いたしました。しかしながら、各国における海外渡航制限の緩和により、インバウンドも回復している様子が見られ、新たに再生医療、細胞治療を実施する医療機関数も増加傾向にあることから、国内の再生医療市場は今後も大きく発展していくと考えております。
微生物事業では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、抗原検査キットなどの新型コロナウイルス感染症関連商材という新たな市場が創出されました。当初は需要が供給を大きく上回ったことから、市場における製品不足に陥りましたが、各社積極的な設備投資の実施により、現在の市場は落ち着きを取り戻しております。
すべての事業において共通しているのは、新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響は収束し、アフターコロナへの移行を見据え、これまで停滞していた海外への事業展開が動き出すとともに、今後は各市場の成長に合わせた製品開発、価格戦略などの競争が激化していくものと考えております。
当社は、販売数量と売上高の拡大が企業価値向上に寄与するものと考えており、中長期かつ持続的な成長を実現するために、当社がこれまで培った製造技術に加え、特注で対応できる強みを活かして、製品のラインナップの拡充のために、更なる生産技術及び営業体制の強化に努めております。さらに、再生医療等製品の臨床試験用細胞の製造受託事業(CDMO事業)に参入し、更なる事業拡大を目指します。
また、下記の「社是」と「基本理念」を経営の中核に置き、市場・社会、法制度等への対応力強化と、各事業の強みを生かし、バイオテクノロジーの発展と共に、持続的な成長を続けてまいります。
「社是」
敬天愛人成善 ~公明正大 謙虚な心で仕事にあたり 人に恥ずることなく 人を愛し 仕事を愛し 善業を成す~
「基本理念」
「コージン」、つまり「考える人(考人)の組織集団」として、
1.常に誠心誠意で仕事をする
2.今、必要とされている最先端の製品を世に出す
3.喜びに満ち満ちた会社である
という基本理念のもと、私たちはバイオテクノロジーの発展のために日々努力しています。
「経営理念」
当社グループは、「考える人」の組織集団として、「顧客第一主義・品質第一主義」をモットーにバイオテクノロジーの発展に貢献していきます。
「ビジョン」
・グローバル企業としての位置を確立し、培地業界における国内シェア1位に
・新規事業を開拓し、高付加価値サービスを提供し続ける
「行動指針」
1.顧客の理解と満足が得られる製品であること
2.品質最優先で製造された高品質な製品であること
3.社会が今必要としている最先端の製品であること
4.一人一人が品質に自覚と責任を持てる製品であること
5.各種法規・規格・標準を遵守すること
(2) 事業展開方針
当社グループは、「組織培養事業」「微生物事業」「細胞加工事業」の3つの事業を展開しております。
組織培養事業では細胞を培養する際に用いる細胞培養用培地の製造を、微生物事業では細菌検査と感染症に関連する製品の製造を、また、細胞加工事業では医療機関より細胞の加工業務の受託を行っています。
今後、再生医療市場の拡大が見込まれており、周辺産業としての組織培養事業と細胞加工事業を成長の核と位置付け、重点戦略を実施していきます。
また、上記事業に加え、微生物事業においてもアジア圏で新たな市場が創出されており、各地域の需要に応じた製品を開発、供給することで、海外展開にも注力していきます。
《事業セグメント別成長イメージ》
組織培養事業:グローバルで市場が拡大傾向にあり、それぞれの需要に応じた製品を供給
微生物事業 :海外展開による新たな市場の開拓
細胞加工事業:再生医療等製品製造受託への新規参入
《中期事業目標》
重点戦略①:組織培養事業/開発から製造、販売までをワンストップで対応できる強みを活かし、種々の細胞に合致する製品の供給と、新たなニーズに沿う製品を開発することで、アジアNo.1の培地製造販売会社を目指す。
重点戦略②:細胞加工事業/現在実施している特定細胞加工物に加え、再生医療等製品の製造受託に参入することで、この両輪を回し、研究開発から産業化まで対応が可能な高品質、高水準の細胞加工受託業者の地位を確立する。
重点戦略③:微生物事業/アジア圏における感染症の簡易検査キットを開発し、製品投入することで新たな売上を獲得する。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
① 組織培養事業
再生医療分野や抗体医薬品の製造などグローバルに再生医療・細胞治療の市場が拡大している中で、細胞培養用培地を含む周辺産業では、これまで研究用途が中心だったものから、再生医療分野や抗体医薬品の製造など臨床用途への移行が進んでおり、より高性能、高品質の製品需要が高まっております。
そこで、当社がこれまで培ってきた製造技術に加え、特注で対応できる強みを活かして、今後は自社製品のラインナップの拡充と新たな特注製品やOEM製品の製造受託に対応すべく、更なる生産技術及び営業体制の強化に努めてまいります。
また、当社が事業展開しているアジア圏においては、各国現地企業による市場参入が見られ、これまで以上に性能面、価格面での競争が激化しておりますが、当社が蓄積してきた高性能製品の開発能力と日本産という高品質製品の製造能力を武器に、競合他社との差別化を図っております。そのような環境の中、当社では、大学や企業と積極的な共同研究を実施しており、そこから創出される開発製品の拡充と営業体制の増強により、新規顧客、新規案件の開拓に加え、アジア圏での販売代理店網を拡大していくことで、細胞培養用培地の販売数量アジアNo.1を目指してまいります。
同時に、世界中でバイオ医薬品の研究開発や最終製品の上市が相次いでいる中で、これら製造にも細胞培養用培地が必須であり、その需要が拡大しております。バイオ医薬品製造のための細胞培養用培地は使用量が多量となることから、液状ではなく粉末状での供給が必要となり、当社においても粉末培地の開発にも力を入れております。今後、国内外へ粉末培地を供給するために専用の製造設備の新設を計画しております。
② 微生物事業
日本における細菌検査について、医薬品や食品、化粧品等の産業分野で使用される細菌検査用培地は、供給が不安定、かつ、定期的に価格が上昇している輸入製品から国産製品への切り替え需要があることから、国産の強みを活かした提案営業を強化してまいります。
一方、病院等の臨床分野では、国内の細菌検査の市場が飽和状態となっていることから、今後も市場拡大が見込めるアジア圏への事業展開を模索しております。
アジア圏では細菌検査の体制が整っていない地域が多数存在しており、これらのエリアにおいて、感染症の簡易迅速診断を可能とする検査キットが普及する可能性が高く、アジア圏需要が大きい感染症をターゲットとした製品開発と供給の整備を進めてまいります。
③ 細胞加工事業
再生医療の進展により、大学や企業による臨床試験を目指した研究開発が活発になっておりますが、この臨床試験で用いる細胞製剤の製造を受託する企業が不足していることが市場拡大のボトルネックとなっております。
当社の細胞培養用培地のユーザーからも、臨床試験用細胞の製造委託の相談が寄せられており、当社がこれらの受け皿となるべく、新たに細胞加工施設を立ち上げ、再生医療等製品の臨床試験用細胞の製造受託事業(CDMO事業)に参入いたします。
競合となる細胞加工受託企業と差別化すべく、当社の組織培養事業と組み合わせ、「培地×細胞加工」というアプローチでの新規案件の獲得を進めてまいります。
また、がん免疫治療や幹細胞治療を主とする特定細胞加工物の受託について、海外渡航制限の緩和により、インバウンドによるメディカルツーリズムが再開し始めており、再生医療等提供医療機関は増加傾向となっております。
引き続き新たな医療機関との委受託契約の締結を見込んでおりますが、日本のみならず、アジア圏で自国での細胞治療という市場が創出され始めていることから、細胞加工施設の新設、並びにこれまで培った運用のノウハウを活用し、海外での細胞加工受託事業の展開を計画しております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 人材の採用・育成
当社グループの主要事業である組織培養事業、微生物事業及び細胞加工事業においては、様々な専門スキルを有する人材が必要となっております。今後、市場の成長に伴う新規参入などによる更なる競争の激化が見込まれるなか、多様な専門人材の採用・育成が不可欠となっていることから、当社グループでは、グローバルな人材の確保に注力する方針であります。
また、組織規模の拡大・多様化に対応した会社組織としてのガバナンス、従業員サポート、教育の質的向上にも尽力してまいります。
② 新型コロナウイルス感染症への対応
当社グループにおける3年以上に亘る新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う影響は事業によって異なります。
微生物事業においては、同感染症のPCR検査用のウイルス輸送液及び抗原検査キットが業績に貢献いたしました。
細胞加工事業においては、当社の取引先の医療機関へ来院するインバウンドの患者の減少を招き、細胞加工受託数の減少の要因にもなりましたが、2021年以降は、これを契機に国内患者向けのクリニックへ新規開拓に向けた営業活動の誘因となりました。
現状、世界的には軒並み個人行動の制限は解除され、正常化への歩みが進んでいるほか、国内においては、2023年5月から感染症法上の分類がインフルエンザと同じ5類に引き下がることが決まりましたが、当該感染症が完全に終息することは考えづらく、今後の見通しとしましても引き続き不透明な状況が続くと見込まれます。
新型コロナウイルス感染症の5類移行後の検査需要について、当社製品の一部は既に2023年4月にOTC医薬品の認可を取得しており、「KBM ラインチェックnCoV」について、ドラッグストアやインターネットを通じた販売経路の拡大に努める方針であります。また、細胞加工事業においては、中国などの一部地域を除き、海外渡航制限の緩和により、インバウンドによるメディカルツーリズムが再開したことで、外国人患者検体の細胞加工受託が回復しており、引き続き積極的な営業活動を進めてまいります。
新型コロナウイルス感染症の収束及び5類移行による影響を多岐にわたり想定しておりますが、リスクを十分認識した上で対策を取り、企業価値の確保、向上を図ってまいります。
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