コニカミノルタ
【東証プライム:4902】「電気機器」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)当連結会計年度の総括
当連結会計年度(以下「当期」)における世界の経済情勢は、地政学リスクの高まりやインフレの根強さに加え、米国新政権発足に伴う大規模な関税の引き上げ方針をめぐり世界経済の悪化懸念が高まり、先行きに対する不透明感が増大しました。
このような経営環境の下で、当社は中期経営計画(2023年度‐2025年度)において、収益力を回復し再び持続的な成長軌道に戻すことを目指し、事業の稼ぐ力である事業貢献利益の増大に取り組んでおります。また、中期経営計画の中間年度である当期は、覚悟を持って経営改革を完遂する年と位置づけ、事業の選択と集中、及びグローバル構造改革に取り組み、これらを計画どおり完遂しました。
事業の選択と集中については、時間軸も含めて当社の成長戦略との適合性や追加投資の必要性などを判断の軸に取り組み、非重点事業と位置付けた事業群において、事業譲渡や持分譲渡を実施しました。また、方向転換事業と位置付けた事業においても、再編による赤字の縮小や株式譲渡契約の締結を行い、ソリューション・サービス拡大への転換を図り、事業収益力強化に向けた取組として成果を挙げることができました。また、グローバル構造改革の実施と事業譲渡等により、労務費の適正化を実行しました。一方で、データとAIを活用したDXを推進することにより業務生産性と顧客への提供価値の向上に取り組み、各業務遂行の質とスピードを高めております。
当期における当社グループの連結売上高は、為替の影響もあり1兆1,278億円(前期比1.8%増)となりました。事業別の売上高は、前期比でデジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業、画像ソリューション事業は増収となりましたが、インダストリー事業は減収となりました。
事業貢献利益は、319億円(前期比4.2%減)となりました。当期の監査において、連結調整における未実現利益消去の計算に関して監査法人から指摘があり、114億円を売上原価として計上しました。オフィス事業の継続的なコスト削減やグローバル構造改革効果による販売費及び一般管理費の抑制などが寄与し、デジタルワークプレイス事業は増益となりましたが、先に述べた連結調整における未実現利益消去の計算の影響により、プロフェッショナルプリント事業は減益となりました。また、画像ソリューション事業、及びインダストリー事業は減益になりました。
営業利益は、事業構造改善費用216億円、事業の選択と集中による損失202億円、のれんや有形固定資産等の減損損失511億円等の一過性費用計上などにより、 640億円の損失(前期の営業利益275億円から915億円の減益)となりました。
税引前損失は791億円(前期の税引前利益153億円から944億円の減益)、海外の連結子会社の繰延税金資産の取り崩しなどを行った結果、法人所得税費用として162億円を計上しました。一方、Ambry Genetics Corporationの株式譲渡完了に伴う株式譲渡益などにより450億円を非継続事業からの利益として計上しました。非継続事業を含めた親会社の所有者に帰属する当期損失は474億円(前期の非継続事業を含めた親会社の所有者に帰属する当期利益45億円から520億円の減益)となりました。経営改革として進めた事業の選択と集中により資産を圧縮し、事業譲渡で得た対価を活用して有利子負債を大幅に削減し、バランスシートの改善を進め、財務基盤を強化しました。経営改革の完遂に伴う一過性費用等もありましたが、営業キャッシュ・フローは510億円、投資キャッシュ・フローは事業譲渡による譲渡益等により246億円となりました。この結果、フリー・キャッシュ・フローは、757億円(前期比368億円増)となり、キャッシュ創出力の向上と財務健全性を図っております。
(注)「事業貢献利益」は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
(2)翌連結会計年度の経営方針
翌連結会計年度において、当社は、米国新政権発足に伴う大規模な関税の引き上げ方針をめぐり、米国を含む世界経済の悪化懸念が高まっており、欧米を中心とした物価高と景気減速、為替変動など経営環境の不確実性が高まると見込んでおります。
このような中、2025年度は成長基盤を確立する年として「Turn Around 2025」とし、売上高1兆500億円、事業の成長と当期に完遂した経営改革による利益改善効果を活かし、事業貢献利益525億円、営業利益480億円及び当期利益240億円の利益回復を目指し、中期経営計画で目標としたROE5%以上の達成を目指していきます。
世界的な米国の相互関税による影響の動向を注視しながら、Go To Market戦略の見直し、経費の追加削減、低関税率国への生産のさらなるシフト検討等により影響の吸収を目指します。
(収益基盤の強化)
収益基盤の強化に向けて、2024年度に実施したグローバル構造改革及び事業の選択と集中による効果に加え、各事業で以下の取組を行うことでさらに改善させていきます。デジタルワークプレイス事業のオフィスユニットは、為替の影響を含めて減収を見込みますが、グローバル構造改革の効果創出とともに、さらなるコスト削減やDXを活用した生産・販売・サービスの効率化を進めていきます。
プロフェッショナルプリント事業のプロダクションプリントユニットは新製品投入によるヘビープロダクションプリント(HPP)機シェア1位の堅持とミッドプロダクションプリント(MPP)機の拡販により、中大手商業印刷の顧客を中心にノンハード収益を拡大します。産業印刷ユニットはデジタルラベル機のシェア1位堅持と、一層の市場拡大やUVインクジェット機の新製品投入により市場のデジタル化を加速させ、年度での黒字化を目指します。
インダストリー事業は、センシングユニットでは顧客のディスプレイ設備投資の回復に伴う収益の改善、自動車外観検査及びハイパースペクトルイメージング技術を活用した検査装置の販売伸長、機能材料ユニットでは需要が増加している新樹脂フィルムSANUQIの生産能力強化とあわせ、新素材フィルムSAZMAの投入により大型TV領域のさらなるシェア拡大を目指します。
画像ソリューション事業のヘルスケアユニットでは当社が唯一世界で提供するX線動態解析システムを引き続き拡大させ、インドやアジアを中心とした地域でITやAIを活用した医療のデジタル化の機会を捉えて、収益改善に取り組みます。
(財務基盤の強化)
財務基盤の強化に向けては、経営改革として進めた事業の選択と集中により事業譲渡で得た対価を活用して、有利子負債を大幅に削減し、2025年度末には約1,940億円の削減を目指します。また、のれんは2024年度の減損損失の計上により、2024年度末で約1,260億円となりました。棚卸資産・営業債権の最適化による運転資本の圧縮なども進めて、総資産の圧縮を行います。事業の収益力回復や、有利子負債の削減による金融費用の圧縮、赤字子会社の黒字化等による実効税率の適正化等と併せて財務基盤を強化することで、ROE5%以上を目指します。
(3)中長期の成長に向けて
(領域No.1づくり)
まず、事業の成長として、各既存事業のなかで市場セグメントや領域においてNo.1を獲得できる製品やサービスを創出していきます。既にトップポジションにある製品やサービスはNo.1を堅持していきます。
(利益成長につなげる成長の芽を育成)
当社はこれからもサステナビリティを経営の中心に位置付けていきます。当社が目指すサステナビリティは、「事業によって社会・環境の課題を解決することで持続可能な社会の実現に貢献し会社が成長していくこと」です。持続可能な社会の実現に向けた取組の中で、当社にとっても様々な事業機会が生まれております。その中から技術や人財、お客様とのつながりなど、当社の強みをいかせるテーマを厳選して成長につなげてまいります。
具体的には既存事業から派生した精密加工、樹脂成形、材料・製膜、分光計測などのコア技術をAIで強化することで長期の利益成長をけん引する新たなテーマを育てております。インダストリー事業の半導体製造装置向け光学コンポーネントは、強化領域の一部として既に展開しており、2025年度では設備増強も行い生産体制を強化していきます。また、再生プラスチック材料製造、ペロブスカイト太陽電池用バリアフィルム、バイオものづくりのプロセスモニタリングなどは「成長の芽」として、いくつかの技術テーマの中から市場の成長性、競争優位確立の可能性、事業としての収益創出の蓋然性などを評価しながら選別し、利益の拡大に貢献する事業に育てるための投資を実施していきます。
(PBR1倍に向けTSRを意識した経営へ)
2025年度は本中期経営計画の最終年度として、まずはROE5%を確実に達成し、2026年度以降の中期でROEのさらなる改善を目指していきます。また、2026年度以降、執行役に対する株式報酬制度の評価指標としてTSR(株主総利回り)を導入する方針を決定し、評価期間を2025年度から開始します。TSRを意識した経営にシフトしていき企業価値を向上させることにより、早期にPBR1倍を達成します。
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