企業兼大株主キリンホールディングス東証プライム:2503】「食品業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループでは、長期経営構想キリングループ・ビジョン2027(KV2027)のイノベーションを実現する組織能力の一つとして「確かな価値を生み出す技術力」を掲げています。従来から強みを持つ発酵・バイオテクノロジー、パッケージング、エンジニアリングをより発展させるとともに、知的財産の取り組みにも力を入れています。当社グループの研究開発活動は、食領域、ヘルスサイエンス領域においては、キリンホールディングス㈱の4研究所(キリン中央研究所、ヘルスサイエンス研究所、飲料未来研究所、パッケージイノベーション研究所)及び各事業会社の研究所で行っています。また、医領域においては、協和キリン㈱が中心に研究開発活動を行い、さらに医薬品にとどまらない価値提供も目指してキリンホールディングス㈱との協働取り組みを推進しています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は849億円です。セグメントごとの主な研究開発成果は以下の通りで、キリンホールディングス㈱の研究開発費は<全社(共通)>に含まれています。

<国内ビール・スピリッツ事業>

 国内ビール・スピリッツ事業は、麒麟麦酒㈱が、キリンホールディングス㈱の研究所と連携しながら研究・技術開発並びに商品開発を実施しています。

「キリン一番搾り生ビール」を中味・パッケージともに1月にリニューアルしました。麦汁の仕込み工程を見直し、麦本来の澄んだうまみを最大限引き出すことで、飲みごたえの向上と雑味・渋みを抑えた飲みやすい後口を実現しました。また、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」を中味・パッケージともに4月にリニューアルしました。フローラルな香りを持ちつつ穏やかな苦みが特長のザーツホップを新規で採用することにより、ビールの上品な苦みや味の厚みが生まれ、飲みごたえを向上させると共に、トラディションホップの増量によって、柑橘様のフルーティな香りの印象を高め、後味がより爽やかに感じるよう進化させました。

 クラフトビールブランドである「SPRING VALLEY (スプリングバレー)」の「SPRING VALLEY 豊潤<496>」を中味・パッケージともに1月にリニューアルしました。希少な「日本産ホップ」を含む5種類のホップの比率を調整し、ホップを7日間漬け込む当社の技術「ディップホップ製法」のホップを増量しました。それにより、ホップの華やかな香りを引き出し、苦味の質を穏やかにすることで、豊潤でありながらすっきりとしたバランスの良いおいしさはそのままに、より心地よい後味へ進化しました。「SPRING VALLEY シルクエール<白>」を中味・パッケージともに7月にリニューアルしました。ホップの配合比率を調整し、より「まろやかさ」と「華やかな香り」が引き立つ味わいへ進化しました。また、「SPRING VALLEY JAPAN ALE<香>」を10月に新発売しました。華やかな香りが感じられる海外ホップと、いちじくやみかん、マスカットのようなユニークで爽やかな香りの日本産ホップを組み合わせ、双方の良いところを引き出し調和させることで、お客様の味覚に合う爽やかな香りを実現しました。

RTD※1カテゴリーでは、新ブランド「キリン 上々 焼酎ソーダ」を10月に発売しました。メルシャン八代不知火蔵の本格麦焼酎原酒を一部使用し、「米麹抽出物」や「食塩」といった焼酎の特長を引き立てる素材を使用することで、焼酎の本格感や満足感を感じられながら、クセがなくすっきり爽やかな味覚を実現しました。また、新ブランド「麒麟百年 極み檸檬サワー」を4月に発売しました。皮ごと搾ったレモン果汁を含む複数のレモン果汁に、ビール酵母で発酵させたレモン果汁を加え、さらにビールの泡にヒントを得た独特の泡立ちにより、なめらかな口当たりとギュッと詰まったレモン感を実現し、お酒としての満足感と飲みやすさを両立したおいしさに仕上げました。この味覚特長を実現する技術は、「発泡性アルコール飲料で、『炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たり』と、『柑橘香の良好な香り立ち』を両立する技術」として特許出願中です。

当事業に係る研究開発費は8億円です。

※1 Ready to Drinkの略。栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料

<国内飲料事業>

 国内飲料事業は、キリンビバレッジ㈱が、キリンホールディングス㈱の研究所と連携しながら研究・技術開発並びに商品開発を実施しています。

 キリンの独自素材「プラズマ乳酸菌」を配合した「健康な人の免疫機能の維持をサポート」する機能性表示食品「キリン おいしい免疫ケア」を3月に新発売しました。満足感のある飲みごたえがありながらも、ほどよい甘さと酸味でさわやかなおいしさに仕上げました。また、「プラズマ乳酸菌」に加え「GABA」も配合した、“免疫ケア”と“睡眠の質向上”をサポートするダブルヘルスクレームの機能性表示食品「キリン おいしい免疫ケア 睡眠」を10月に新発売しました。

「キリン 午後の紅茶」から「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖 ミルクティー」を3月に新発売しました。茶葉にこだわり、ミルクティーでありながらも無糖でスッキリとしたおいしさを実現しました。「キリン 生茶」を味覚・パッケージデザインともに4月にリニューアルしました。原料の配合バランスを見直すことで、お茶感を担保しながら、よりすっきりとした味わいにブラッシュアップしました。環境に貢献する取り組みとして「キリン 生茶」「キリン 生茶 ほうじ煎茶」(525ml)に、再生PET樹脂を100%使用した「R100ペットボトル」を順次拡大しました。

「キリン 生茶 リッチ」を9月に新発売しました。約8時間以上かけて10μm(=0.01mm)以下まで粉砕した「微粉砕かぶせ茶」をぜいたくに「キリン 生茶」の10倍使用し、さらに、じっくりうまみを引き出す45℃抽出を主に、複数の温度帯で淹れた抽出液をブレンドすることで、苦渋みを抑えた深いうまみを感じる味わいに仕上げるなど、手間と時間をかけた工程をあえて採用し、本当においしい緑茶を追求しました。

 キリンビバレッジ湘南工場で、リサイクルレジン※1を100%使ったペットボトルのプリフォーム※2の製造を3月より開始しました。(1)リサイクルレジンの製造工程では、バージンレジンと比べ、GHG※3排出量を50~60%削減※4、(2)「R100ペットボトル※5」の安定した調達量の確保、(3)容器包装の自社製造による品質管理の精度向上 の3点の効果を見込んでいます。

 人手不足や待機車両時間などの物流の2024年問題に向けた取り組みとして三菱重工業株式会社と三菱重工グループの三菱ロジスネクスト株式会社とともに行った、飲料出荷拠点への「自動ピッキングソリューション※6」導入に関する共同実証において、物流現場への実効性が検証されたことから、海老名物流センター(神奈川県海老名市)に本ソリューションを2024年12月に導入することを決定しました。

 当事業に係る研究開発費は9億円です。

※1 使用済みのペットボトルを粉砕・洗浄して造られたPET容器の原料となる樹脂

※2 膨らませる前のペットボトルの原型。試験管のような形をしている

※3 GreenHouse Gas:温室効果ガス

※4 キリングループ環境報告書2022

※5 再生PET樹脂を100%使用したペットボトル

※6 三菱重工グループが開発した、ピッキング作業を自動化・知能化したソリューション

<オセアニア酒類事業>

 近年、豪州では多様性のある消費の拡大や、技術力の向上による味覚評価の高まり、爽快感を感じられることなどを背景にRTD市場が拡大しています。

 オセアニア酒類事業を担うLION Pty Ltdは、キリンホールディングス㈱が長年培った技術を活用しながら、オーストラリアおよびニュージーランドの市場およびお客様の嗜好に合った商品中味や容器の開発に取り組んできました。2023年8月、「氷結®」の特長である「みずみずしく、スッキリとしたおいしさ」はそのままに、豪州での健康志向ニーズの高まりに合わせ、糖類0.3g未満・カロリー116kcal・アルコール度数6%の「KIRIN HYOKETSU LEMON」を新たに開発し、発売しました。

 当事業に係る研究開発費は0億円です。

<医薬事業>

協和キリン㈱グループは、研究開発活動へ資源を継続的かつ積極的に投入しています。多様なモダリティを駆使して画期的新薬を生み出すプラットフォームを築く技術軸と、これまで培った疾患サイエンスを活かしつつ有効な治療法のない疾患に"only-one value drug"を提供し続ける疾患軸の両方を進化させ、競合優位性の高いパイプラインを構築し、Life-changingな価値をもつ新薬をグローバルに展開することを目指しています

 主な後期開発品の各疾患領域における進捗は、次のとおりです。(◆は当第4四半期連結会計期間の進捗)

腎領域

KHK7580(日本製品名:オルケディア)

・中国において二次性副甲状腺機能亢進症を適応症とする販売承認申請中です(2022年7月申請)。

◆11月に韓国において二次性副甲状腺機能亢進症を適応症とする販売承認を取得しました。

KW-3357(日本製品名:アコアラン)

◆日本において妊娠高血圧腎症を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施しましたが、臨床試験結果を踏まえ開発中止を決定しました。

KHK7791(日本製品名:フォゼベル)

・9月に日本において透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善を適応症とする製造販売承認を取得しました。

がん領域

KRN125(日本製品名:ジーラスタ)

・7月に日本において自家末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員を適応症とする承認事項一部変更承認申請を行いました。

免疫・アレルギー疾患領域

KHK4827(日本製品名:ルミセフ)

・日本において全身性強皮症を予定適応症とする承認事項一部変更承認申請中です(2021年12月申請)。

・8月に日本において掌蹠膿疱症を適応症とする承認事項一部変更承認を取得しました。

その他

AMG531(日本製品名:ロミプレート)

・9月に日本において既承認効能の「既存治療で効果不十分な再生不良性貧血」を「再生不良性貧血」に変更する承認事項一部変更承認を取得しました。

 当事業に係る研究開発費は718億円です。

<その他・全社(共通)>

 メルシャン㈱は、キリンホールディングス㈱の研究所と連携しながらワインの研究・技術開発並びに商品開発を実施しています。

「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」シリーズから、「おいしい酸化防止剤無添加赤ワイン 濃厚ストロング」を8月に全国で新発売しました。ワインに濃厚な味わいと飲みごたえを求めるお客様の声にお応えし、ブドウ本来の濃さを感じられる果汁や酵母を厳選しポリフェノールをたっぷり含有することで、濃厚な味わいと、飲みごたえを高めました。

 世界の造り手とメルシャンの造り手が日本のお客様のために共に創るワインブランド「Mercian Wines(メルシャン・ワインズ)」から、ブランド初のボトル缶ワインとして「メルシャン・ワインズ サニーサイド オーガニック スパークリング 缶」(白・280ml)を8月に全国で新発売しました。「サニーサイド オーガニック」は、スペインのワイナリー「ペニンシュラ」と共創した、優しい味わいのスペインオーガニックワインで、「おいしく品質の良い、気軽に楽しめるオーガニックワイン」として好評をいただいている特長はそのままに、日本のお客様に向けた「スパークリングワイン」として開発しました。また、「メルシャン・ワインズ カンティアーモ スプマンテ」(ブリュット・ロゼ・750ml)を8月に全国で新発売しました。「飲みやすさ」「食事に合う味」に加え、華やかな香りや際立つフレッシュさにこだわり、どんな食事にも合う爽やかなおいしさと華やかな果実感が魅力です。

7月に山梨県で開催された「Japan Wine Competition(日本ワインコンクール)2023」において、「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー シグナチャー 2018」「同 桔梗ヶ原メルロー 2018」「同 北信右岸シャルドネ リヴァリス 2020」の計3品が金賞を受賞しました。また、「同 山梨甲州 2022」など4品が銀賞を、「同 北信左岸シャルドネ リヴァリス 2020」など5品が銅賞を受賞しました。

 アジア最大級の国際ワインコンクール「香港インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション 2023」の「ワインアワード部門」で、「シャトー・メルシャン 玉諸甲州きいろ香 2022」が金賞及び、出品された日本ワインの中で最高評価を得たワインに贈られる「ベスト日本ワイントロフィー」を受賞しました。同時に、「シャトー・メルシャン 山梨甲州 2022」など2品が金賞、4品が銅賞を受賞しました。

 協和発酵バイオ㈱は、「シチコリン」や「ヒトミルクオリゴ糖」をはじめとする、高収益型のプロダクトパイプラインを多数持つグローバル・スペシャリティ発酵メーカーを目指し、長年培ってきた最先端の発酵技術の研究開発に引き続き注力しています。

「シチコリン」については、協和発酵バイオ山口事業所での設備増設工事を竣工し、2023年11月に稼働開始しました。グローバルな安定供給体制を整えることにより、加齢に伴う脳機能低下予防、集中力やパフォーマンスの向上といったニーズに応えます。

 協和発酵バイオが世界で初めて※1工業レベルでの生産システムを構築した「ヒトミルクオリゴ糖」については、2022年11月にタイに新設した最先端の工場で3品目の商業生産を開始しました。「ヒトミルクオリゴ糖」は母乳に含まれるオリゴ糖の総称で、ビフィズス菌などの善玉菌の栄養素となる物質、プレバイオティクス※2です。ヒトの消化酵素によって代謝されず大腸まで到達し、腸内細菌によって代謝され、様々な生理機能を発揮します。研究が進むにつれ、乳児の「栄養素」に加えて「機能性成分」としての働きが期待されています。

3品目の「ヒトミルクオリゴ糖」については、製造に用いる菌株が、中国農業農村部(The Ministry of Agriculture and Rural Affairs of The People’s Republic of China, MARA )の安全性審査に合格しました。米国においては、米国食品医薬品庁(FDA:Food and Drug Administration)への GRAS※3通知手続きが完了しました。本通知によって、米国において一般の育児用ミルク※4や食品に協和発酵バイオの製品が使用可能になりました。また、3品目のうち6SL(6’-sialyllacotse sodium salt)が、欧州連合の欧州委員会により新規食品(Novel Food)として承認されました。本承認によって、2023年11月13日より、欧州連合加盟27カ国で製造・販売する乳児用ミルクや食品に、協和発酵バイオの6SL が使用可能になりました。今後、「ヒトミルクオリゴ糖」のニーズが高い世界各国への展開を通じて「健康」に関する社会課題の解決に貢献します。

※1 Tetsuo Endo et. al.,Appl. Microbiol. Biotechnol. 53, 257-261 (2000)

※2 人体に有益な微生物の選択的栄養源となり、それらの成長や増殖を促す物質

※3 Generally Recognized As Safeの略。「一般に安全とみなされている」という意味で、一定の使用目的における条件下での安全性を証明するもの

※4 医学的もしくは食事上の問題を有する乳児に使用する特殊なミルクを除く、乳児用ミルクおよびフォローアップミルク

 キリンホールディングス㈱は、独自素材である「プラズマ乳酸菌」を中心に、ヘルスサイエンス事業の拡大に繋がる研究開発に引き続き注力しています。2023年4月1日には、ヘルスサイエンス領域の研究開発を更に加速させるために、新たに「ヘルスサイエンス研究所」を設置しました。ヘルスサイエンス研究所の新設により、市場やお客様の健康課題をより正確に把握し、最先端のヘルスサイエンス研究成果を創出し、事業活用を加速させる体制へ移行します。また、新たな機能開発や機能性表示食品化の加速、研究とマーケティングの連動による素材の機能認知向上を目指します。

 プラズマ乳酸菌の発見・研究・事業化について、世の中を変革する優れたイノベーション事例を表彰する「第11回技術経営・イノベーション大賞」(主催:一般社団法人科学技術と経済の会)において文部科学大臣賞を受賞しました。更に、小岩井乳業㈱とともに、乳酸菌を含む免疫賦活用食品組成物の発明(特許第6598824号)が、「令和5年度全国発明表彰」(主催:公益社団法人 発明協会)において「恩賜発明賞」を受賞しました。恩賜発明賞の受賞は、両社が共同開発・事業展開を行うプラズマ乳酸菌の発見・商品化に関する発明、取り組みが評価されたもので、健康食品素材としては初、食品企業では59年ぶりの受賞です。

 プラズマ乳酸菌に関しては、国立大学法人長崎大学により、プラズマ乳酸菌を用いた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対する特定臨床研究が行われました。今回の特定臨床研究では、主要評価項目である自覚症状総合スコアでは明らかな効果は示されませんでしたが、プラズマ乳酸菌の作用によって免疫系の司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞(以下pDC※1)が維持された結果、新型コロナウイルスが早期から減少し、嗅覚・味覚障害の早期回復につながっている可能性が示唆されました。プラズマ乳酸菌が新型コロナウイルス感染症に対する新たな予防、治療法の一つになることを期待しています。

 免疫領域の研究において、和歌山県立医科大学が主宰し、NPO法人ヘルスプロモーション研究センターが取りまとめているコホート研究※2「わかやまヘルスプロモーションスタディ」に花王㈱とともに参画し、2022年11月から内臓脂肪と、pDCの活性※3について、その関連を調査する研究を共同で実施しました。本研究では、内臓脂肪と免疫活性の関連性を調査し、内臓脂肪が多いとpDC活性が低い(免疫機能が低い)こと、また、内臓脂肪が多く、かつpDC活性が低いと、新型コロナウイルス感染症・インフルエンザの罹患リスクが高いことを日本で初めて※4確認しました。この事実は世界でもまだ論文報告されていない※5発見です。

 独自に発見・開発した「熟成ホップ」に関して、「脳腸相関活性化により認知機能改善と体脂肪低減作用を有する熟成ホップの発見と事業応用」について、研究と事業応用が高く評価され、公益社団法人日本農芸化学会の2023年度「農芸化学技術賞」を受賞しました。また、民間が主体となって行う農林水産業その他関連産業に関する優れた研究開発を表彰する「民間部門農林水産研究開発功績者表彰」(主催:農林水産省及び公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会)において、公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会会長賞を受賞しました。エビデンスに基づいた食品素材として、「熟成ホップ」を活用した社会実装を進めています。

 明治大学 宮下芳明研究室との共同研究で、減塩食品の塩味を約1.5倍※6に増強させる独自の電流波形を開発しました。減塩に関する悩みを抱えるお客様が、おいしく生活習慣の改善ができるサービスの実現を目指し、この電流波形を用いた技術を搭載したスプーン、お椀型の「エレキソルト」デバイスを開発しました。2024年中の日本国内での発売を目指して、小売店舗やECサイト、社員食堂など、さまざまなチャネルでの需要性を確認する実証実験を展開しています。なお、2023年のイグ・ノーベル賞にて、明治大学の宮下先生は「イグ・ノーベル賞(栄養学)」を受賞されています。

 環境領域の研究において、高効率・環境負荷低減を実現する、PET※7ケミカルリサイクル※8技術の開発に取り組みました。PETを分解する工程を、短時間・低エネルギーで実現する「アルカリ分解法」を開発しました。また、早稲田大学との共同研究で、PET分解後のモノマー※9を精製する工程において、環境負荷軽減とコスト削減を両立した「電気透析」による精製法を開発しました。この2つの技術は特許出願中であり、組み合わせて使用することで、分解・精製工程で使用する化学薬品のリサイクル利用も可能になります。

 グループ会社との連携について、㈱ファンケルとヘルスサイエンス領域でのAIを活用した研究開発などについて、引き続き協働を進めています。また、アジア・パシフィックにおいて、サプリメントなどの健康食品(ナチュラル・ヘルス)事業を展開している豪州企業Blackmores Limitedを子会社化しました。これにより、ヘルスサイエンス事業の商品ラインアップやケイパビリティが充実し、展開地域と共に成長機会と事業規模が拡大します。両社の展開する事業領域で幅広くシナジーを創出することで、より多くの健康に関する社会課題を解決していきます。

 その他の事業及び全社(共通)に係る研究開発費は114億円です。

※1 細菌やウイルスが体内に入ってきたときに重要な働きをする司令塔役の免疫細胞。pDCが活性化することによって、NK細胞やT細胞、B細胞などさまざまな免疫細胞が活発に働きウイルス感染から防御する。

※2 疾病の要因と発症の関連を調べるための観察的研究の手法のひとつ。特定の疾病要因に関わっているグループと無関係のグループを作り、それぞれのグループの中での対象疾病発生率を算出することで、要因と疾患発症の関連性を調べることが可能。

※3 ウイルス感染を模した刺激を与えた際の抗ウイルス因子をつくるpDCの割合

※4 PubMed及び医中誌Webに掲載された論文情報・抄録情報に基づく(2023年11月22日現在 「pDC活性×内臓脂肪×感染症罹患」で検索 ナレッジワイヤ調べ)。

※5 PubMed及び医中誌Webに掲載された論文情報に基づく(2023年11月22日現在 「pDC活性×内臓脂肪×感染症罹患」で検索 ナレッジワイヤ調べ)。

※6 一般食品を模したサンプルと、食塩を30%低減させたサンプルでの塩味強度に関する評価の変化値。エレキソルトの技術(電流0.1~0.5 mA)を搭載した箸を用いた試験。現在または過去に減塩をしている/していた経験のある40~65歳男女31名に対し、試験用食品を食した際に感じた塩味強度をアンケートしたところ、31名中29名が「塩味が増した」と回答。

※7 ポリエチレンテレフタラート

※8 PETの中間原料まで分解、精製したものを再びPETに合成する方法

※9 PET(ポリマー)を構成する最小の単位

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