企業カルナバイオサイエンス東証グロース:4572】「医薬品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社は、主にキナーゼ(*)タンパク質を標的とした低分子の分子標的薬(*)であるキナーゼ阻害薬(*)の創製研究(*)及び医薬品候補化合物の開発を行うため、研究開発へ積極的に先行投資を行っております。さらに、キナーゼ阻害薬等を創製するための基盤となる技術である「創薬基盤技術」をさらに強化するための研究開発を行うとともに、長年培ってきたこの創薬基盤技術を駆使し、他の製薬企業やアカデミア等からのニーズが高いキナーゼ関連製品・サービスを開発するための研究開発も行っております。

 当連結会計年度において当社グループが支出した研究開発費の総額は1,903,859千円であり、セグメント別の研究開発活動は以下のとおりであります。

(1) 創薬事業

 当社は、創薬事業において、がん、免疫・炎症疾患を重点領域としてキナーゼ阻害薬を中心に低分子医薬品の創薬研究開発を行なっています。2023年12月末現在で、臨床試験段階にある3つのパイプライン、ならびに2つの導出済みのパイプラインを保有しています。

臨床開発中のパイプライン

化合物

標的

対象疾患

概況

AS-1763

BTK

血液がん

・健康成人を対象としたフェーズ1試験 SADパート及びBAパート

 を完了(オランダ)

・フェーズ1b試験(米国)

2023年8月に最初の患者様に投与開始、現在、3用量目の投与を実施中。

*多施設共同試験

主導:テキサス大学MDアンダーソンがんセンター

白血病科 准教授 Nitin Jain医師

sofnobrutinib

(AS-0871)

BTK

免疫・炎症疾患

・フェーズ1試験(健康成人対象、オランダ、SAD試験及びMAD試 

 験)を完了(11月)

安全性、忍容性、並びに良好な薬物動態プロファイルと薬力学作用を確認

フェーズ2試験へ移行することが支持された

・導出交渉を本格的に開始

monzosertib

(AS-0141)

CDC7/ASK

がん

・フェーズ1試験 (がん患者対象、日本)

・連日投与スケジュールで用量漸増パートを実施中

*治験実施施設

国立がん研究センター中央病院及び東病院

導出済みパイプライン

 

化合物

(対象疾患)

進捗状況

契約一時金

マイルストーン総額

ロイヤリティ

契約地域

契約時期

受領済マイルストーン

DGKα阻害剤

ギリアド社へ導出

GS-9911

(がん免疫)

フェーズ1試験

20M$

(約21億円)

450M $

(約630億円)

上市後の売上高に応じた一定の料率

全世界

2019年6月

10M$

(約11億円)

2021年12月

5M$

(約7億円)

2023年12月

住友ファーマとの共同研究

(精神神経

疾患)

開発候補化合物を探索中

80百万円

(契約一時金+

研究マイルストーン)

約106億円

上市後の売上高に応じた一定の料率

全世界

2018年3月

 

*STINGアンタゴニストについては、導出先のFRTX社が2023年9月に清算・解散計画を発表したため記載しておりません。

*受領済の契約一時金及びマイルストーンは受領時の為替レート、マイルストーン総額は140円/ドルで換算。

 各パイプラインの概況は以下のとおりです。

BTK阻害剤 AS-1763(血液がん)

 イブルチニブを代表とする第1世代の共有結合型BTK阻害薬は、CLLを含む成熟B細胞腫瘍の有効な治療薬として幅広く使われていますが、これらBTK阻害薬に対する薬剤耐性が深刻な問題となってきています。近年、耐性患者においてC481S変異したBTKが高頻度に見い出され、この変異が第1世代BTK阻害薬の共有結合を妨げ阻害活性を低下させることが主な薬剤耐性の原因と考えられています。また2023年に承認されたピルトブルチニブや開発中の非共有結合型BTK阻害剤に対する新たな耐性変異もすでに報告されています。このような背景から薬剤抵抗性変異型BTKに対する新しい治療方法の開発が非常に望まれています。当社が創製した非共有結合型BTK阻害剤AS-1763は野生型BTKだけでなく、これらの薬剤抵抗性変異型BTKにも高い阻害効果を示すことから、BTK阻害薬耐性患者を対象としたベストインクラスの次世代型BTK阻害剤として開発を進めています。

AS-1763のフェーズ1試験は、ヒトでの安全性、薬物動態等の検討を早期に行うため、まず健康成人を対象として、簡易製剤を用いたSADパートおよび新製剤を用いたBAパートをオランダで実施しました。当該SADパートにおいて、AS-1763の安全性、忍容性および良好な薬物動態プロファイルが確認されています。また、BAパートでは新製剤の良好な薬物動態を確認しています。

 当該フェーズ1試験結果を基にして、米国において患者を対象としたフェーズ1b試験を計画し、米国FDAにより新薬臨床試験開始届(IND application)の承認を得て、2023年8月に投与を開始しました。フェーズ1b試験は、治療歴を有するCLL・SLLおよびB-cell NHLの患者を対象としており、用量漸増パートと用量拡大パートの2つのパートから構成されており、現在、用量漸増パートを実施しています。用量漸増パートでは、最大耐用量(MTD)及び用量制限毒性(DLT)を決定することを主目的とし、副次的に安全性、忍容性、薬物動態、さらに有効性についても評価します。用量拡大パートでは、用量漸増パートで推奨された複数の用量で症例を追加し、安全性、有効性、薬物動態を調査し、フェーズ2試験の推奨用量(RP2D)を決定することを目的としています。

 すでに、用量漸増パートの最初の2用量群において、安全性、忍容性が確認されたため、2024年1月に3用量目に移行しております。また、現時点で、8つの治験実施施設において患者の募集を行っており、今後、12施設まで拡大する予定です。

BTK阻害剤 sofnobrutinib(AS-0871、対象疾患:免疫・炎症疾患)

BTKは血液がんだけでなく、自己免疫疾患やアレルギー疾患の治療標的分子としても注目されていますが、これまでに同適応疾患を対象として承認されたBTK阻害薬はありません。sofnobrutinibは当社が創製した非共有結合型BTK阻害剤で、BTKに対して非常に高い選択性を示すことから、免疫・炎症疾患を対象に開発を進めています。

sofnobrutinibのフェーズ1試験は、健康成人男女を対象としたSAD試験およびMAD試験BAパート・MADパートで構成され、オランダで実施いたしました。SAD試験においては、全ての用量で安全性、忍容性および良好な薬物動態プロファイルが確認され、また、薬力学的評価の結果から血中の好塩基球およびB細胞の活性化を100mg以上の用量で強く持続的に阻害することが確認されました。SAD試験に続き、MAD試験・BAパートを実施し、新たに開発した複数の製剤(カプセルおよびタブレット)での相対的バイオアベイラビリティを比較し、その結果、タブレット型製剤がより良い薬物動態を示しました。当該結果を基に、タブレット型製剤を用いて、2023年1月からMAD試験MADパートを開始し、2023年11月に、MAD試験の臨床試験報告書が最終化されました。これまで実施したフェーズ1試験の結果から、sofnobrutinibの安全性、忍容性、並びに良好な薬物動態プロファイルと薬力学作用が確認され、フェーズ2への移行が支持されました。sofnobrutinibについては、フェーズ2以降をライセンスアウトもしくは共同開発により実施することを目指しており、当該結果を基にした導出パッケージを作成し、導出活動を開始いたしました。

CDC7阻害剤 monzosertib(AS-0141、対象疾患:固形がん/血液がん)

monzosertibは、当社が創製した選択的CDC7キナーゼ阻害剤でファースト・イン・クラスが期待される経口投与可能な低分子化合物です。様々ながん種の細胞増殖を強く阻害し、各種ヒト腫瘍移植動物モデルにおいて優れた抗腫瘍効果を示しています。2021年上期に、日本国内において切除不能進行・再発又は遠隔転移を伴う固形がん患者を対象としたフェーズ1試験を開始しました。フェーズ1試験は、用量漸増パート及び拡大パートの2段階に分かれており、用量漸増パートでは、薬剤の投与量を増やしながら安全性と忍容性を評価し、また薬物動態や薬力学についても調べます。本パートで決定した最大耐用量と推奨用量に基づき、拡大パートでは、より多くの患者で本剤の安全性及び有効性を評価いたします。

 用量漸増パートでは加速漸増デザインを採用し、DLT評価期間中にGrade 2以上のAEが発現するまで各コホート1名の登録で増量し、Grade 2以上のAEが発現した場合、以降は3+3デザインの用量漸増に移行する計画としております。現在実施中の用量漸増パートでは、1日2回、5日間連日経口投与、2日間休薬する投与スケジュールで、コホート5(用量レベル:250 mg BID)までGrade 2以上のAEは観察されませんでしたが、コホート6(用量レベル:300 mg BID)においてGrade 2以上のAEが発現したため、計画通り3+3デザインに移行いたしました。その後、3名中2名でDLTが発現したため、300 mg BIDにおいてMTDを超えたと判断し、用量を下げて症例を追加しておりました。その結果、コホート3(80 mg BID)において、安全性、忍容性が確認されました。現在、薬効を最大化するために、投与スケジュールを、2日間の休薬をしない連日投与に変更して用量漸増パートを開始しています。今後は、用量漸増パートの結果をもとに、最大耐用量(MTD)および拡大パートでの推奨用量・用法を決定する予定です。また、成功確度を上げるため、非臨床試験より有効性が期待されている血液がん患者の登録も可能となるようにプロトコールを変更し、安全性、忍容性並びに探索的な有効性を確認する予定です。

ギリアド社に導出した低分子阻害薬の創薬プログラム

2019年6月に、米国のギリアド社と、当社が創製した新規がん免疫療法の低分子阻害薬およびその創薬プログラムの開発・商業化にかかる全世界における独占的な権利を供与する契約を締結しています。ギリアド社は現在、本プログラムから見出された開発中のDGKα阻害剤GS-9911について、固形がん患者を対象としてPhase1試験を実施中です。

 当社は、契約締結時に一時金として20百万ドル(約21億円)を受領したほか、開発状況や上市などの進捗に応じて追加的に最大で450百万ドル(約630億円、1ドル140円で換算)のマイルストーン・ペイメントを受け取ることになり、さらに、本プログラムにより開発された医薬品の上市後の売上高に応じたロイヤリティを受け取ります。ギリアド社は、2021年12月に本創薬プログラムを次の開発ステージに進めることを決定し、当社はライセンス契約に基づいた最初のマイルストーン・ペイメントを受領、また、2023年12月にPhase1試験が開始されたことに伴い、2回目のマイルストーン・ペイメント500万ドル(707百万円)を受領しました。当社はギリアド社から、これまでに契約一時金、1回目のマイルストーン・ペイメントと合わせて計35百万ドル(約40億円)を受領しております。

住友ファーマとの共同研究プログラム

2018年3月に住友ファーマ株式会社と精神神経疾患を標的とした共同研究契約を締結しており、当該共同研究の進捗状況から2021年12月に本契約の共同研究期間を2025年3月27日まで延長することを両社で合意しております。本研究では、沢山の知的財産が生み出されており、当該疾患領域における新薬の創出を目指して共同研究を継続しております。本共同研究により見出されたキナーゼ阻害剤については、同社が、がんを除く全疾患を対象とした臨床開発および販売を全世界で独占的に実施する権利を有します。その対価として、当社は契約一時金および研究マイルストーンとして、最大8千万円を受領し、その後の研究開発の進展に伴い、進捗に応じて追加的に最大で約106億円のマイルストーン・ペイメントおよび売上高に応じたロイヤリティを受け取ることができます。

上記以外の創薬研究プログラムにつきましても、画期的な新薬創製に向けて様々な創薬研究プログラムを実施しております。これらの創薬プログラムにつきましても、早期ステージアップを目指して研究を継続してまいります。

当事業に係る研究開発費は、1,773,348千円であり、主に臨床試験関連費用、人件費、化合物合成委託費用、研究材料費等で構成されています。また、当社は臨床試験に必要な原薬および製剤の開発・製造を医薬品開発製造受託機関(CDMO)に、臨床試験の実施に関わる業務を医薬品開発業務受託機関(CRO)に委託しており、臨床試験関連費用にはこれらの業務委託費用が含まれています。

(2) 創薬支援事業

創薬支援事業の研究開発では、キナーゼタンパク質に特化するメーカーとして、新たなキナーゼタンパク質製品の開発に継続的に取り組んでおり、現在は、当社のみが販売し、主力製品となったビオチン化タンパク質の品揃えの拡充を積極的に推し進めています。また、プロファイリング・サービスにおいては、次世代アッセイ機器によるプロファイリングシステムの開発に成功し、サービス開始に向けて順調に準備が進んでいます。当社製キナーゼタンパク質およびそれを用いた受託試験サービスは顧客から高品質との評価を得ており、今後さらなる信頼を獲得し売上拡大を図るため、一層の品質の向上に取り組むとともに、顧客ニーズに基づく新製品の開発にも取り組んでまいります。また、収益力の強化を目指した作業工程の改善にも取り組んでおります。

当事業に係る研究開発費は、130,511千円であり、主に新製品・サービスの開発に係る人件費および材料費で構成されています。

(注) *を付している専門用語については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に用語解説を設け、説明しております。

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