ウインテスト
【東証スタンダード:6721】「電気機器」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.経営方針
(1) 会社の経営の基本方針
ミッション:半導体の自動検査技術で人々の豊かな生活と幸せ、社会の発展に貢献します。
ビジョン:(我々のあるべき姿)
人とデジタルを繋ぐ主要インターフェースである「ディスプレイと周辺デバイス」、そして電子の目「イメージセンサー」を始めとする半導体の自動検査における、トップリーダーを目指し、世界的企業へと成長します。
バリュー(会社価値の創造において優先すること)
①我々は、顧客満足を第一にする
②我々は、自分の事業領域に、常に創造・挑戦し、No.1を目指す
③我々は、高い製品品質と持続的な改善を通じ顧客に貢献する
④我々は、PDCAを早く回し、スピード感を持って、目標を達成する
⑤我々は、仕事を通じ、豊かで生きがいのある人生を構築する
(2) 目標とする経営指標
デジタルと人間のコミュニケーションは「ディスプレイ:出力」と「イメージセンサー:入力」が主流となっております。我々は、人とデジタルを繋ぐ最も重要な半導体を検査する仕事を、主軸にして事業を拡大します。売上高経常利益率20%以上の確保と配当性向30%の回復」を目標としております。このため当社は、次世代ディスプレイドライバIC向け検査装置、高精細化著しいイメージセンサー、ディスプレイ(アレイ)分野向け検査装置並びに先端ロジックデバイス向けの検査装置の設計開発と製造そして販売並びにサポートを継続し、メインマーケットを市場の消えた日本国内から中国、台湾に移し、事業の拡大を図ってまいります。引続きIoTヘルスケア市場への参入(一部特定顧客への販売開始)、インダストリー4.0を念頭においた、自重補償型マニピュレータの自社装置への実装と国内輸送業界への展開を進め、またBtoCを含む、水素ナノバブルイオン洗浄水市場を通した環境配慮型事業を推し進めてまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社の検査装置の対象のひとつであるイメージセンサーの分野は、スマホを含む情報端末市場を今まで牽引してきたリードアプリケーションに代わる目玉が少なく足踏み気味ですが、調査会社MordorIntelligence社によると、今後、産業用途、メディア、医療、そして自動車、監視カメラなど民生用途で広く応用分野が広がり、2024年時点でUSD 283.2億ドルに達し、予測期間中(2024年~2029年)では、8.24%のCAGRで成長すると予測されています。
(近時レートの上下が激しく誤解を避けるため、また情報元データを尊重するため、市場規模は米国ドルで記載し、日本円へのレート変換は行っておりません。)
特に当社が力を入れる、ディスプレイ・ドライバIC市場においては、上述同社によると2025年からの2030年までの予測期間中7.3%のCAGRを記録すると予想しています。今後、ディスプレイ・ドライバは、テレビ、スマホやPCの画面だけではなく、白物家電製品、スマートウォッチ、車載ディスプレイなどの生活周辺ディスプレイ・デバイスなど広がりを見せています。また近年ではOLED(有機EL)でフレキシブルなディスプレイの製造が可能となり今後需要の高まりが期待される、スマートウェアラブルデバイスやAR/VRデバイスの急速な導入などの要因により、参入企業が増加しており、急速な成長が期待されます。
当社の戦略として検査装置では、現行装置WTS-577SRの上位機種にあたるWTS-577SXを2024年12月に開催されたセミコンジャパン2024に展示し2024年12月5日に「次世代ディスプレイ・ドライバIC検査装置「WTS-577SX」セミコン2024出展のお知らせ」にて販売の開始を開示いたしました。当該装置は新開発した次世代リソースを搭載し、今後お客様によって新規にリリースされる次世代デバイス向けに対応するものとなっています。また、当該市場向けにフラッグシップとなる、超多ピン、高速、高精度で同時多数個測定を実現するWTS-9000並びに、お客様の開発現場において研究開発に最適化させた小型のWTS-588Dを同じくセミコンジャパン2024に展示し、同時に販売開始のお知らせを行いました。今後ともディスプレイ・デバイス検査装置における市場シェアの拡大を図ってまいります。
また、セミコン2024での展示及びリリース開示の効果もあり、2025年初頭からWTS577SX及びWTS-9000へのお引合いを多く頂いており、より積極的にベンチマーク(お客様工場に装置を貸出し、実際の現場で量産半導体の検査ラインに投入し、検査スピードや精度、そしてデータの相関度などを評価頂くこと)を進め、お客様の重要なパートナーとしてご信頼を頂く活動を継続してまいります。
次世代検査装置WTS-577SXの製造強化及びWTS-9000に関しましては、内蔵されるPCボード(電子回路が乗る基板)製造の強化を行い、当社100%製造子会社偉恩測試技術(武漢)有限公司(ウインテスト武漢)での当該装置等の組立増産体制整備及び品質管理の強化を行い、業績の向上を目指します。なお、WTS-577SRにつきましては、ローエンドデバイス、リペアマーケット向けに引続き販売を継続してまいります。これによってローエンドデバイスからハイエンドデバイスまでをカバーするフルラインナップを揃えることが可能となりました。
2024年の半導体市場は、調査会社Search Labs社によると、前年比で19%増と成長し、4年ぶりのマイナス成長から脱却しましたが、牽引役は、AI関連の投資が中心となり、メモリやGPU(画像生成プロセッサで最近はAIの計算に使われる)が大きく伸びました。しかし、AI関連を除くと、自動車関連や産業用途を含め民生用半導体の需要は鈍化することとなりました。
2024年の業績につきましては、AI関連以外の市場鈍化の影響を受け、当社が関係する各お客様半導体製造工場の稼働率は2023年に続き低迷状態から脱却できず、生産工場稼働率は、7割前後にとどまりました。2024年に話題となりました複数のお客様における各地の新工場は一部を除き順次予定どおり竣工となっているものの、新規設備投資は見送りが続くこととなりました。この結果、当社2024年通期連結業績は低迷し、無償デモやベンチマーク貸出にて予定をしていた受注目論み分については、2024年年度末までに一部を除いて受注売上とすることが出来ず、2025年にずれ込みました。
上述のような市場環境から、当社グループとして2025年及びそれ以降に向けた市場攻略を大きく進めるため、上述いたしました次世代検査装置の研究開発に一層注力し、次世代半導体向け検査装置を複数機種同時リリースすることができました。また、イメージセンサー検査装置用新光源装置ではWLS-150に続き更に演色性を高めたWLS-150Sをリリース、日本の大手イメージセンサー製造メーカー様よりお引合いを頂いております。加えて当社の持つ撮像素子検査技術を生かしたマイクロCT X線断層撮像検査装置「WTS-CT-130」の販売を開始いたしました。その他の新規装置に関しましては、2024年12月18日付開示の「「SEMICON JAPAN 2024」に出展のご報告」をご参照ください。
今後当社は、当社のグループ会社である上海精積微半導体有限公司(PMI社)と更に緊密に協業を行い、また台湾方面は、既存販売店Viccom社の協力のもと事業の加速、営業活動の加速をしてまいります。
2.経営環境
当連結会計年度(2024年1月~12月)における世界半導体市場は、WSTS(World Semiconductor Trade Statistics/世界半導体市場統計)の発表によると、前年比+16.0%増の6,112億ドルになるとの見通しでした。AI関連投資が好調で、これに伴ってメモリー製品やAIで使用されるGPUなどの複合ロジック製品半導体が市場の牽引役となりました。一方AI関連を除くと、自動車用途が低迷したほか、設備投資の冷え込みを背景とした産業用途の不振、また民生向け半導体など全方位に亘り多くの製品で前年比マイナス成長となりました。2023年の半導体ダブつき解消後の「復活の年」という意味でも大きく期待された2024年の新規設備投資は、半導体工場各社の稼働率低迷継続をうけ、新規設備投資の抑制が年度末まで続く事態となりました(2025年1月6日付ストックマーク社記事「2024年の半導体市場は「復活の年」だったのか?」より引用)。そのため、当社グループの2024年度の受注、売上は低調に推移いたしました。
当社グループが属する半導体市場の2025年度は、WSTSによると市場規模は2024年比+12%増の6,873億ドルと、過去最高を更新し、2024年に引続きAI関連の需要が伸びると予想されております。2024年度との違いは、低迷していたAI関連投資以外の分野も伸びるとされており、再生可能エネルギーの電源や電気自動車(EV)のほか、自動運転に使う半導体の需要も増えるとされています。また再生途中である日本の半導体市場も、2024年は前年比5%増の約6兆8,670億円の市場規模となると予想されおり、特に民生半導体工場など政府の補助金によって半導体投資が活発となり、2025年は+9%増の約7兆5,088億円の市場規模となる見通しであるとの発表もされております。
ディスプレイデバイス市場の調査を行ったPando社によると、表示デバイス市場は、2025年から2032年にかけて +12.9%増のCAGR(年平均成長率)で成長すると予想されています。ディスプレイデバイス市場規模は、2027年までに1,900億ドルに達する見込であり。特にOLEDやMini-LED技術の普及がキードライバーとなり、スマートフォン、テレビ、業務用ディスプレイなどでの2024年に落ち込みがみられた民生品需要が、高まって来るものとされております。また、4K及び8K解像度への移行も進行中で、消費者及び企業向けの高性能製品へのニーズが強化されています。
今後もウインテストグループとして、横浜本社、大阪事業所における開発環境整備、人材育成及び増員に努め、組織の若返りを含めた強化を行い、総務経理部を含む各部署における業務推進体制を革新するため、ERPやITを駆使した、より機動的かつ最新の環境で、設計、開発及び経営能力を強化するとともに、トータルコストの削減、納期の短縮と品質の向上を目指し、顧客満足度を上げることで受注増、業績の向上、企業価値の増大を図り、株主様の利益につなげてまいります。
以上のように2025年以降のAI関連投資が見込まれるものの、2024年は新規設備投資の抑制を受け業績は低調に推移いたしました。
また、当社は、当社グループが保有する棚卸資産について厳格な評価を実施し、連結において574,470千円の棚卸資産評価損(売上原価)を計上いたしました。
近年、業界全体において市場環境が変化しており、特に受注の伸び悩みが見られる状況が続いています。当社におきましても、一部製品の市場動向を慎重に精査した結果、保有する棚卸資産の一部について、将来的な回収可能性について精度を高めて評価する必要があると判断しました。これに伴い、監査法人とも協議のうえ、適正な会計処理を行うために棚卸資産の評価損を計上することといたしました。
これは、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号)に従い資産評価の健全性を確保するために実施するものであります。今回の評価損計上により、短期的な財務指標には影響が出るものの、これは将来的な財務の健全性を確保し、持続的な成長基盤を強化するための戦略的な判断であります。当社は今後も、事業構造の見直しや市場ニーズに適した製品戦略を推進し、収益性の向上を図る施策を進めてまいります。また、当該棚卸資産に関しましては、2025年以降出荷される製品にすべて組み込む予定です。
3.対処すべき課題
(1)主たる既存事業への取り組み
ア.検査装置機能の高速化及び機能性向上
当社グループの主要事業である半導体検査装置事業では、高度化・多様化するお客様の検査ニーズにお応えするため、既存検査技術の革新を進め、お客様における設備投資機運が低迷するなか次世代半導体向け高機能検査装置(WTS-9000、WTS-577SX)の開発を完了させることができ、2024年12月開催のセミコン2024で販売開始のご案内をさせて頂きました。また開発段階で販売を加速させるため、WTS-9000を大幅に小型化し、お客様の半導体開発部門向けに小型化しデスク下に置けるWTS-588Dを同時にリリースし、2025年のマーケットに打って出る準備を整えました。
さらに足元の計画として、製造能力の強化、品質管理体制の整備推進を実施し、また、お客様にとってより信頼される企業として成長するために、以下の取り組みを進めております。
当社の主たる事業分野である半導体検査装置事業分野、特にディスプレイ・ドライバICは、スマートフォンに代表されるように新製品サイクルが非常に早く、おおよそ、6か月を目途として新製品がリリースされ、その技術レベルや機能のレベルが上がるごとに新機能を実現するための「新開発半導体チップ」が要求され開発されています。そのため、当社グループとして、量産向けだけではなく、上述のようにWTS-588D開発部門向け検査装置をリリースし、WTS-9000と操作環境、プログラム環境を同一とし、開発からデバイスチップの量産までをシームレスに繋げられるようにお客様に提案できることといたしました。加えて応用技術部門では、市場要求(新開発半導体チップ)に合わせた新機能を検査する手法の開発と多角的な検査のアプローチ方法を提案、ベンチマークを行い、より検査の幅を厚くする取り組みを続けてまいります。
イ.営業力強化・顧客サポートの充実
半導体検査装置においては高精度、低コスト、高速化に加え信頼性の向上が求められるだけでなく、更に使いやすいユーザーインタ―フェースと、検査用プログラミング補助機能の強化などを実現する必要があります。それぞれをこれまでにないスピードで推し進めることが、同分野において求められることから、組織と業務運営体制の整備を進め、よりスピーディーな開発判断ができるように組織改革、横浜、大阪における事業所再編を行ってまいります。
また子会社である、ウインテスト武漢においては、次世代型検査装置の製造を早期に移管、製造規模の拡大を計画します。また、開発能力を生かし、従来機を中心に新機能や高速化を目的とした開発や改良を行い、製造品質の強化に努め、販売においては蘇州にサポートと販売拠点を設けておりサポート、営業の強化を進めてまいります。
(2)新規事業による事業の多角化への取り組み
当社は、業務範囲の拡充を目的に、産学連携を行っております。以下に産学連携の進捗につきご説明申し上げます。
検査装置向け工場FA化機器技術(「自重補償機構技術」)、当該技術については、慶應義塾先端科学技術研究センターと共同開発を進めており、特許等の申請については、積極的に特許申請を進めており、今までに取得した特許に加え新規の特許申請手続きに入っています。現在、同技術を民生「物流搬送市場」におけるトラック向け昇降補助装置(テールゲートリフター)として製品化を進めており、製品化に向け設計専門会社へ委託、製造会社とも協議を進め2025年中には小型トラック、ワンボックスバン、軽貨物向け製品を販売する計画です。販売に当たっては、物流関連の協会などを通し、大手物流企業と連携し拡販を図ってまいります。物流市場は、サーチラボ社によると、物流業界に激震が走った2024年問題を皮切りに、人手不足・荷役作業による怪我を防止する意味でも安価なテールゲートリフターが求められているとのことです。
奈良県立大学と進めております脈波(BCG,ECG)を利用したヘルスケア管理システムは、現在特定のお客様への試験販売を行っておりましたが、基礎データの収集も一段落したことから、共同事業提携先となる株式会社TAOS研究所を中心に奈良県立大学とアライアンスを継続、この度、製造における技術課題に目処も立ったことから製品化を行い、2025年早期に一般への販売を計画いたします。なお、販売にあたっては大手介護事業者並びに大手衛生機器関連会社等と連携し、進めて行く計画です。
水素ナノバブルイオン洗浄水に関しましては、今後内製化を行い洗浄用途だけでなく環境改善など幅広い用途に使えることが判明いたしました。小規模BtoB又はBtoC向けとしては、装置単体の販売を計画し、また大規模顧客向けには、装置のレンタルを含め提供してまいります。
そのほかでは、当社のCMOSイメージセンサー検査装置技術を生かし、業界一の低価格で提供できるX線による3D断層画像診断装置WTS-CT130を大学等の研究機関等を中心として販売してまいります。
(注)インダストリー4.0 検査装置向け工場FA化機器技術に使われる「自重補償機構技術」とは
一般的な「重量物搬送装置」は、電気モーターやエンジン等の動力源を持ち、かつ、重いカウンターウエイトや油圧・圧縮空気の出力を借りることで、数十キロから数百キロの重量物の移動をアシストしますが、装置が大掛りで重量が重くなることや、重量物に見合う外部動力が必要となるといった課題を有しています。これらの課題克服のため、当社と慶應義塾先端科学技術研究センターは、いかなる動力や重いカウンターウエイト、そして油圧・空圧機器をも使用しない「自重補償機構」の開発を進め、バネの弾性力を応用した軽量かつシンプルな構造を内蔵したロボットアームの継続開発を行っております。今般開発した試作機は、被搬送物の重量が変化した場合でもその重さに見合った自重補償ができる構造となっており、回転軸を除く各軸にて搬送する重量物の自重補償を達成し、自身の腕部分の自重をも含め、より安全な自重補償を成立させています。
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