イリソ電子工業
【東証プライム:6908】「電気機器」
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企業概要
下記の文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社は「人の心を尊重し、豊かな価値を創り、社会貢献に努める」ことを経営理念とし、全社員の知恵をお客様の課題解決に注ぎ、お客様が提供する製品・サービスの未来に続く架け橋となるべく、「顧客価値を創造する100年企業」となることを目指しております。
2023年4月には、新たに当社のステートメント(行動宣言)として「私たちは、社会やお客様の期待を超える“つなげる”を実現します」という言葉を策定し、当社が製造するコネクタを通して、人と環境にやさしく、様々な機能を容易につなげる未来を創造していくことを、社会に対して実現したいこととして掲げました。
この経営理念とパーパスから、約10年後の2035年にありたい姿として、「社会やお客様の期待を超える“つなげる”で、成長を続ける企業」、「社会、環境、品質を重視し、社員とステークホルダーが“わくわく”する企業」の2つを設定しています。
(2)マテリアリティ(重要課題)
2035年のありたい姿と、将来の業界メガトレンドを分析し、多数の社会課題項目からステークホルダーにとっての重要性と当社が継続して成長していくための重要項目について、それぞれスコアリングを行い、外部の専門家も交えて議論を重ね、当社が持続的成長を実現するための5つのマテリアリティを特定しました。
マテリアリティ | 目指す姿 |
①社会課題の解決と事業成長の実現 | 社会課題解決を通した価値提供による業界グローバルTop10企業(市場拡大・高利益体質) |
②価値創造を支えるモノづくり力の変革 | 業界グローバルTop10企業として高品質なモノづくり力を安定的に発揮する企業 |
③人と環境にやさしい安心、安全、快適な社会への貢献 | 持続可能な社会の実現に向け貢献する企業 |
④多様な人財づくり | 多様な社員がはたらきがいを感じて働き続けられる企業 |
⑤経営基盤の強化 | 業界グローバルTop10企業にふさわしい経営基盤を持ち、信頼される企業 |
(3)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当社の事業領域において、車載関連市場では100年に一度と言われる電動化によるパワートレイン部品の増加、自動運転に向けたADAS(先進運転支援システム)の普及による情報量の飛躍的増大・高速伝送化という2つの大きな変革に加え、「空飛ぶクルマ」の開発加速など、現在の車載市場だけに捉われず、モビリティ市場全体を俯瞰して事業領域を見直す変化が起きています。
いずれの市場における変化も当社が培ってきた三次元可動並びに大容量情報伝達等の独自技術による当社コネクタ事業を飛躍的に拡大する好機ととらえ、グローバルでの成長市場への展開を重点戦略として、顧客ニーズを先取りするマーケティング、顧客ニーズに対応した顧客密着型営業体制により、お客様の期待を超える「つなげる」を実現する製品開発を進めて参ります。また、生産・サプライチェーンにおいても、最適生産拠点の決定、集中購買・複数購買、各生産拠点での材料の現地調達、内製化・合理化を推進し、グローバルでのQCD(品質・コスト・納期、Quality Cost Delivery)をより一層強化していくことを目指しております。
当社は、以上の市場環境の変化を確実に捉え、グローバルでの新規顧客開拓を推進し、事業規模の確保とブランドの向上を図り、将来的に接続部品業界でグローバルトップ10入りを目指して参ります。
①業績目標
当社は、中期経営計画期間の2024年度~2026年度(2025年3月期~2027年3月期)を、課題克服と成長軌道への回帰に向けた足場固めの3年間と位置付け、2027年3月期に売上高650億円、営業利益率15%超の達成を目指す計画を2024年5月に策定しました。
事業規模拡大において市場別では、販売台数が増加する電動車向けの拡販を加速すると共に、ECU(Electric Control Unit)統合化の流れを掴み製品の市場投入を進めて参ります。また、課題であるセンサー分野(カメラ分野)やインダストリアル市場を2027年以降の飛躍的成長実現に向けた土台づくりの期間と位置づけ、注力分野として推進して参ります。
モノづくり力強化においては、生産性・工場稼働率の向上に努め、設備の標準化、金型内製化の拡大や資材費の低減、設計VEなどを通じコスト削減を進め利益率向上を図って参ります。
②重点施策
中期経営計画期間において、当社は、以下の重点施策に取組んで参ります。
a. 「車載のイリソ」から「モビリティのイリソ」への基盤構築
・パワートレイン分野:ワールドワイドでの事業拡大、高電流・耐振動・耐熱性能の更なる向上
・統合ECU分野:高速BtoBコネクタに加え、統合ECU化に向けWtoB(ワイヤーtoボード)スケーラブル
コネクタ投入によるラインアップ拡充
・センサー分野:共同開発等によるカメラ事業再構築、新規顧客開拓
・車載で培った耐振・耐熱、高速伝送を武器に、建機、農機、eVTOL等のモビリティ市場への事業ポート
フォリオ拡大
b. インダストリアル市場のグローバル強化~ 第二の柱に成長するための土台づくり
・高速フローティングBtoBコネクタによる新規顧客開拓とシェア拡大、商社等活用による販売チャネル
拡大、調達品による品揃え強化
・グローバルFAE(Field Application Engineer)による新規顧客開拓、現地対応力強化
・半導体製造装置、エネルギーマネジメント領域の事業構築
c. ワールドワイドでの生産体制見直し、設備・金型の標準化拡大による生産性・投下資本効率の向上
・全生産拠点の体制・役割を見直し、生産効率15%%改善、秋田工場の円滑な立ち上げ、国内生産比率の
向上
・DXを活用した製品・設備・金型設計の生産性向上、標準化、内製金型拡大によるコスト削減、リード
タイム短縮
・現地調達、集約購買拡大による資材費低減、樹脂・めっき等の使用量削減
d. 資本コストと株価を意識した経営の強化
・資本コストを上回るROIC達成を図り、最適な資本構成による投資効率の改善を実現
・成長投資と株主還元のバランスを取り、配当性向40%超または株主資本配当率(DOE)5%程度を目標に
株主還元
e. サステナブル経営の更なる深耕
・人と環境にやさしい経営 ~ 再生可能エネルギー積極利用、リサイクル・再利用の促進
・多様な人財作り ~ 役員・管理職人財の多様化、働き方、処遇改善を通じたエンゲージメント向上
・経営基盤の強化 ~ グローバルリスクマネジメントの強化、デジタル経営基盤の構築、セキュリティ
向上
③経営目標
・中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)
| 2024年3月期 (実績) |
| 2027年3月期 (目標) |
売上高 | 553億円 |
| 650億円 |
営業利益 | 59億円 |
| 100億円 |
営業利益率 | 10.7% |
| 15.4%超 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 56億円 | → | 75億円 |
EPS | 237.75円 |
| 330円 |
ROE | 7.8% |
| 10.0% |
ROIC | 7.3% |
| 10.0% |
売上高研究開発費比率 | 2.4% |
| 3.5% |
※中期経営計画期間の為替レート設定は140円/ドル、155円/ユーロ、20円/人民元
(4)2026年3月期の重点施策、対処すべき課題
①市場環境
当社を取り巻く事業環境は、米国の関税政策がグローバルに波及することにより不透明感が増しており、インフレや報復関税などにより景気後退のリスクもあります。
モビリティ市場においては、2026年3月期はグローバルでの自動車生産台数は前期比で減少し、生産台数に占めるPHVやHEVを含めたxEVの構成比も前期比微増に留まると想定していますが、インフォテインメント分野での高速伝送ニーズの増加、中国顧客向けでの伸長が見込まれます。コンシューマー市場はゲーム機向けの需要低迷が継続し厳しい環境になると見込んでいますが、インダストリアル市場は、エネルギーマネジメント分野など新たな領域での需要が見込まれます。
②2026年3月期の重点施策
2024年5月の中期経営計画の策定時に想定していた経営環境から、景気後退リスク、日欧米自動車メーカーの販売不振やEV市場の減速、中国自動車メーカーの台頭と価格競争の激化、原材料価格の高騰などの変化が起きています。この変化と現在の中期経営計画の進捗も踏まえ、中期経営計画の2年目である2026年3月期は以下を重点施策として取り組んで参ります。
a. ビジネス拡大
[モビリティ市場]
・パワートレイン分野での欧米規格対応製品の拡販活動強化、Z-Moveのラインナップの拡充
・インフォテインメント分野で、統合ECU向けに次世代高速対応製品、スケーラブルコネクタを投入し市
場開拓
・センサー分野において、ケル株式会社との共同開発による新製品の早期量産化(2026年3月期以降)
[インダストリアル市場]
・エネルギーマネジメント分野での売上拡大推進、AI、半導体製造装置、通信分野の新規開拓
・2025年3月期に契約したArrow Electronics社等の販売代理店活用による新規顧客開拓推進
[全市場]
・中国国内での製販技の一体体制を強化し、中国顧客を拡大
b. 経営基盤強化
[全社組織再編]
・秋田工場の立上げ加速による生産性向上および生産体制の見直し(BCP、地産地消、関税)
・設備・金型の標準化、金型内製化の推進
・本社組織の機能見直し、DX推進を行い間接部門の生産性向上
[業務効率改善]
・新ERPを活用した業務標準化とサプライチェーンの可視化による間接コスト削減
・設備標準化、金型内製化の拡大による設備投資効率向上、固定費圧縮
③2026年3月期の見通し
連結売上高550億円(対前期比2.4%減)、連結営業利益55億円(対前期比3.6%増)、連結経常利益54億円(対前期比1.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益39億円(対前期比46.5%増)を見込んでおります。為替レートは、145円/ドル、162円/ユーロ、20円/人民元を前提としております。
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