アステリア
【東証プライム:3853】「情報・通信業」
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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「組織を超えた連携を実現するソフトウェアを開発し世界規模で提供する」ことを使命(ミッション)としています。そのために、当社グループ自体が「『つなぐ』エキスパート」として社会的な価値を生み出し、社会に貢献することを目指しています。
また、当社グループは「『売上収益』は当社グループが社会に生み出した価値、『利益』は当社グループが生み出した価値と消費した価値の差分」との考え方を基本に、社会的価値の提供を通じて企業価値の増大に努めてまいります。
(2)経営環境、戦略
当社グループは、創業時より「世界で通用するソフトウェアを開発し提供する」ことを事業のミッションとして掲げています。世界で通用するソフトウェアとは、米Microsoft社や米Google社のソフトウェアなど世界の大半の国や地域で使われるソフトウェア(サービス含む)を指し、当社グループはかかるミッションの実現のためのソフトウェアの開発と販売を基本的な事業としています。当社グループは、顧客からの注文に基づく受託開発ではなく、独自の製品を自ら企画開発して提供する事業形態であるために、市場やニーズの変化に先行して製品化を行う必要があり、そのために将来有望な新規技術に関する研究開発が必要です。そして、このような研究開発には先行投資が必要となります。当社グループがこれから世界市場での展開をより具体化させていくにあたり、研究開発のスピードも競合他社と同等又はそれ以上のものが必要となるため、以下に記載の重点技術領域における、現行製品・サービスの次世代版、ブロックチェーン、AIなどに関連する研究開発を推進しています。
当社グループは、これからの投資分野として4つの”D”「Data(データ)」、「Device(デバイス)」、「Decentralized(分散化)」及び「Design(デザイン)」の領域を対象とすることとしています。クラウドをベースとしたビジネス基盤が構築される現代において、当社グループがこの4つの”D”を加速させるソフトウェアを提供してまいります。
<「Data(データ)」データのみがIT資産になる>
クラウドによって、ハードウェアもソフトウェアも企業のIT資産ではなくなり、データのみが企業のIT資産となります。そして、近年では、生成AIや大規模言語モデルの進化により、データの価値はさらに高まりつつあります。当社グループでは、これらの技術をつなぐことで、企業の価値向上に貢献してまいります。
<「Device(デバイス)」デバイスが不可欠なインフラになる>
インターネットが始まって以来初めて、コンピュータよりIoTなどの周辺機器の接続数が増える時代になります。当社グループでは、「Handbook」によりスマートデバイスへの対応だけでなく、「Platio」(プラティオ)や「Gravio」(グラヴィオ)でIoT機器をつなぐことで、新たなデバイスを活用するシステムの価値向上に貢献してまいります。
<「Decentralized(分散化)」分散して協調ができるようになる>
クラウドの普及が進展し、非中央集権型のシステムが構築可能となります。ブロックチェーンやピア・ツー・ピアの技術を活用することで、これまでは不可能だった非中央集権型組織のサービスも構築が可能となり、当社グループでも当該サービスの提供を通じて未来型組織の実現に貢献してまいります。
<「Design(デザイン)」機能ファーストからデザインファーストへのシフトが起こる>
デジタルサービスの高度化と利用者ニーズの多様化により、従来の機能重視の開発から、ユーザー体験を最優先する「デザインファースト」への転換が進んでいます。当社グループでは、ユーザー視点に立脚したデザインファーストの開発姿勢を重視し、各製品において視認性や操作性の向上を目的としたデザインリニューアルを継続的に実施することで、ユーザー体験の質的向上に貢献してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、2025年3月期から2029年3月期までの期間を中期経営目標期間と位置づけ、売上収益および利益の持続的な拡大を定量的な経営目標として設定しております。
主たる指標である連結売上高については、既存事業からのオーガニック成長を前提に、年平均8〜12%の成長率を目標としています。加えて、戦略的M&Aによる非連続的な成長の機会も検討対象とし、成長率の上振れ余地を確保する体制を整えております。
利益指標としては、中期経営目標の最終年度(2029年3月期)において、調整後営業利益(EBITDA)率25%の達成を目標としています。売上収益の拡大に向けた成長投資を実施しつつ、収益性の改善とバランスの取れた利益構造の確立を図ってまいります。
また、当社では、継続的な収益基盤の構築を重視しており、サブスクリプションおよび保守サポート収入を安定収益として位置づけております。これらの売上高を四半期ごとに開示しており、当該数値をもって、ストック型ビジネスの拡大状況および収益の安定性を判断するための客観的な指標の一つとしております。今後も継続収益の拡大を重要な経営目標と捉え、施策を推進してまいります。
株主還元については、一過性損益を除いたベースで連結配当性向30%を中期目標とし、累進的な配当を基本方針としています。自己株式の取得に関しては、資本効率や事業投資機会等を総合的に勘案の上、必要に応じて実施する方針です。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、ソフトウェア分野を中核とし、製品開発やサービス提供を通じて、デジタル時代の価値創造に取り組んでまいりました。今後、変化の激しい市場環境に柔軟に対応し、さらなる成長を力強く実現していくために、以下に掲げる重点分野への取組を一層加速させてまいります。
① コーポレート・ガバナンスのさらなる強化
当社は創業時より一貫して社外取締役を2名以上選任し、また2015年6月以降は社外取締役を過半数の構成とし、社外の目と知見による意思決定と執行の監督を実行しております。今後も株主との建設的な対話や構成の多様性を重視した取締役会構成を継続し、コーポレート・ガバナンスの質的向上に努めてまいります。
② ソフトウェア事業における新たな市場機会の創出
当社製品による売上収益のさらなる拡大に向けて、具体的なユースケースの提案を通じて市場ニーズに的確に応え、各分野で確固たる地位を確立していくことを目指します。当社グループとしては、特に市場性の高い以下の分野に注力してまいります。
(ア) クラウド連携市場
デジタル化の加速により、企業の情報システムはクラウド化がますます加速すると予想されています。こうした潮流の中、クラウド上のシステムと柔軟に連携できるデータ連携基盤としてのニーズは着実に高まっており、大きな成長機会が広がっています。「Warp」シリーズは、月額課金(サブスク)モデルの「Warp Core」を軸に、順調に導入が進んでいます。今後も、同製品のさらなる普及を通じて、持続的な収益基盤の強化に貢献してまいります。
(イ) AI連携市場
企業のDX推進が加速する中、機械学習(Machine Learning)を基盤とするAI技術は、中長期的に大きな成長が期待される領域です。とりわけ近年注目を集めているのが生成AIであり、当社においても「Warp」シリーズにおいて生成AIの代表格ChatGPTへの対応をいち早く発表したり、「Gravio」や「Handbook X」でもAIを活用した機能を搭載するなど、先進的なAI技術の積極的な取り込みを進めております。今後とも、AIの研究開発専業のアステリアART合同会社と連携しつつ、外部の技術パートナーとの協業を通じて、AIの実用化・価値創出を加速してまいります。
(ウ) IoT/エッジコンピューティング連携市場
IoT/エッジコンピューティングは、クラウドコンピューティングに続く次世代の基盤技術として、中長期的に大きな市場拡大が期待される領域です。企業におけるIoT活用のためには、機器連携、クラウド連携、システム連携が重要であり、いずれも当社の得意とする領域です。特に、AI搭載エッジウェア「Gravio」においてパートナー企業との協業を加速させながら、当該領域での市場展開を力強く進めてまいります。
(エ) ロボティクス支援市場
自動化・省人化ニーズの高まりを背景に、製造・物流・宇宙開発等の分野でロボティクス活用が進んでおり、関連ソフトウェア市場の着実な拡大が見込まれています。こうした動向を捉え、当社では、2025年5月に新製品「Artefacts」の提供を開始しました。本製品は、ロボットアプリケーションの開発・導入を支援する仮想環境プラットフォームとして、ロボティクス領域でのDXを推進する新たな基盤となることを目指しています。
③ 戦略的投資および投資後の管理体制の強化
当社は、事業シナジーの創出、新規市場への参入、新技術の獲得、パートナーシップの深化など、中長期的な企業価値の向上に資する戦略的観点から、有望な企業への投資を推進してまいりました。これらの投資を通じて、当社の事業成長を加速させるとともに、保有資産の価値最大化を目指しております。
また、投資先企業の業績や市場環境の変動により、投資有価証券の評価が当社の財務・業績に影響を及ぼす可能性があることを踏まえ、従前より投資判断の精緻化および投資後のモニタリング体制の整備を進めてまいりました。
今後も引き続き、外部環境に応じた柔軟な運用方針のもと、市場環境に応じた適切な出口戦略を適時選択・実行できる体制を維持するとともに、保有残高の適正管理や流動性確保を通じて、投資ポートフォリオ全体の健全な運用体制を一層高めてまいります
④ 海外市場への展開
当社グループは、創業当初より海外に通用するソフトウェアの開発と提供を目指してまいりました。現在は「Gravio」と「Handbook X」を中心に積極的に海外展開を進めており、現地ニーズに対応した製品提供を強化しています。当社のソフトウェアは、日本語、英語、中国語の3ヶ国語に対応しており、多言語展開の強みを活用し、他の製品においても国際展開を戦略的に強化してまいります。
⑤ 成長を支える人材基盤の強化
当社製品やサービスの顧客企業は年々増加しており、ターゲットとなる業種・業態も幅が大きく広がりを見せています。今後さらに、マルチプロダクト/サービス化、グローバル化を本格化させ、各分野での成長をより確固たるものにするためには、開発・マーケティング・営業・管理などのあらゆる職能において、優秀な人材を適切なタイミングで確保・育成することが重要です。当社は、こうした人材戦略を中核に据え、持続的な競争力の強化を図ってまいります。
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